美意識を磨く 文田聖二の『アート思考』

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初心者も経験者にもずっと大切なストレッチ

2012年03月09日 21時46分16秒 | 日記
たとえば、「ハッチング」といいたいところですが、あえて「写真模写」。
何の役に立つのでしょうか?

初心者がデッサンを描くときに、まず気になってしまうのが表面的な質感や形態だと思います。
そのモチーフが持つ構造(中身、内部の造り/骨組み/土台)や空間(奥行き)といったものは、なかなか観えてこないので初めから骨格を意識して描けないと思います。
描く工程(視点の変化)は、古典技法(油絵)の制作を参考にすると分かりやすいのです。
下地があって、ベース、中間層、描画層といくつかの層に分かれています。
それぞれの層(段階)でモチーフの観方(視点)が変っていきます。
デッサンも例外ではなく、グラデーション(色調、色幅をつくる、観られる)をつくるとき、鉛筆などの使い方でいくつかの層を重ねていく作業が必要になってきます。
古典技法を参考にした基礎デッサンでは、最終層となる描画層は、モチーフの質感(表情)が観察のポイントになってくるのに対し、最下層のベースは空間や構造といったものがポイントになった観方、作業になります。

さて、「写真模写」は何の役に立つかといいますとまず、デッサンの作業過程全般に必要とされる“グラデーション”の訓練になります。
一般の方だと日常、白、グレー、黒の段階をざっくりとしか意識して観ないと思いますが、アーティストだと十数段階の色幅を意識したりします。観られるようになるといった方がいいと思います。

野鳥の会(バードウォッチャー)のプロが、森の中から瞬時に小さな野鳥を見つけられるように、画家がモチーフから引き出す情報量はその習慣から多くなっています。
いずれ色彩表現をするときにもこの色調(グラデーション)力は大切な要素となってきます。

クラデーションの幅をつくるときに画材の使い方(鉛筆の硬さ、重ね方の組み合わせ、ハッチング、こするなど)で様々な表情をつくり出せます。これは質感対比や空間対比を出すために必要になってきます。
単純に筆圧の違いでも色幅はつくれますが、先ほど解説しました作業を意識して、層を重ねていきながら黒の濃さを出していくと奇麗に仕上がっていきます。漆塗りと一緒です。
形が歪んでも気にしないでたくさんの色幅(白から黒までの段階)をつくることが大切です。
『写真模写」は丁寧に根気づよくやることで、鉛筆の使い方など画材の扱い方に速く慣れていくだけでなく、しっかりとした基礎力がついていきます。
この作業は、絵画の色(明度や彩度)の横の関係(縦の関係は”重なる”層)があっているかどうか(明暗対比)の問題です。これはいずれ水彩など色を扱うときの色彩対比にも関係してきます。
スポーツでいえば、運動の基本となるストレッチや筋力トレーニングともいえます。

観る感覚を磨い(意識し)ているアーティストたちは,意識して観ていない人たちとは全く違った”世界”が観えているのでしょう。