冠天を衝く 其の伍

ほんの一握りの人間を除けば

金と暇が両立することは
まず有り得ない


金庫に金が唸っていれば
使う時間がなく


暇が有り余っていれば

使う金がない


となれば

そこそこ金があり
そこそこ時間がある

小市民が一番幸せということになるが

何故だかこの小市民という生き物には

上ばかり見つめて
無駄に階段を登りたがる人々が少なくない

ただ

人間という生き物は

一度上げた生活レベルを下げることは

尋常ではない自制心を持たぬ限り
ほぼ不可能に近い

人の歩むべく道程は

決して平坦なものではない


たまたまさしかかった登り坂で
生活レベルを上げてしまうと

その後には
必ずや下り坂が待っている

そこで生活レベルを維持するために

煩悩の仔羊が辿り着くのは

男女で選択肢の幅はありこそすれ


借金という底無し沼に片足を突っ込んでいくか

マルチなど
犯罪すれすれの生業で
己のツケを余所様になすりつけていくか


とどのつまり

何かしらの犯罪に手を染めていくことになる…