◆SORAの腎臓がん日記◆

2008年12月まさかの「腎臓癌」
12センチの腫瘍が右腎臓に!
発病~入院手術とその後15年間の記録

その日は突然やってきた。

2012-12-12 21:08:37 | 日常

ポロンが我が家にやってきたのは、
やわらかな日差しが降り注ぐ春の日だった。

その頃、同居の義父は胃癌による胃全摘手術をうけ
自宅療養生活を送っていた。
すっかり痩せて体力の落ちた義父を心配した義父の友人から
「犬でも飼って毎日少し散歩したらどうだ?」と言われ
柴犬を飼うことになった。

義父の知り合いのブリーダーさんの所へ
私は義父と2人で犬を迎えに行った。
はじめて見たその犬の愛らしかったこと。
一目で私は、その犬が大好きになった。








名前を「ポロン」と付けた。

それから子供2人とポロンの散歩へ行く。
そんな毎日が続いた。
散歩の時間になるとポロンは、喜んで思いきりしっぽを振り
私の前でクルクル回ったり飛び跳ねて喜んだ。

義父は、ポロンがやってきた年の秋に亡くなった。
結局、義父は庭でポロンを見るだけで
一度も散歩することはなかった・・・。

子供が小学校を卒業する頃には、
ポロンと私だけの散歩が日常となった。








雨の日も風の日も暑い日も寒い日も雪の日も
毎日ポロンと一緒に散歩へ行った。







病気ひとつせずに元気だったポロン。
5年、10年と月日は流れ
15年目の春頃には、すっかり老犬になっていた。
友達ワンコも皆、天国へ行き
ポロンは町内一の長寿犬になった。
それでも食欲旺盛でご飯もモリモリ食べ元気だったポロン。
そのポロンに異変が出はじめたのは今年の夏頃。





白内障で目がほぼ見えなくなり
次第に耳も殆んど聞こえなくなった。
そして、嗅覚さえなくなっていった・・・。

散歩にも行きたがらなくなった。
視力、聴力、嗅覚をなくしたポロンは
真っ暗で音の無い世界に最初の頃怖かったんでしょう。
よく吠えるようになり、
クルクルとあてもなくリードにつながったまま歩くようになった。
そして、リードが足に絡まり動けなくなっては吠え
そのことを家族に訴える日が続いた。





歩き回っていても目を瞑っていることが多くなった。

リードを外し首輪を軽いものに変え
庭を自由に歩き回れるようにしてやると、
あまり吠えることがなくなった。

だけど、クルクル一定方向へ歩き回る動作は続き
ある日、友達にそれが犬の”痴呆症”であることを教えられた。
昼夜関係なくポロンは歩き続けた。
そして昼夜を問わず吠えるようになった。
雨の日でも雨に濡れながらクルクル回り続けた。
家の中が嫌いなポロンは、
家に入れてやると興奮してしまい落ち着かず
ハァハァ息づかいまで荒くなってしまう。
仕方なく今までのように外でポロンの落ち着く場所へ
雨の日も関係なく雨に濡れながらクルクル歩き続けるポロン。
ポロンがなるべく雨に濡れないようにパラソルを差した。





長く生きるということは、人間も犬も同じ。
健康で長生き出来ればいいのだけど・・・。

まさか犬に”痴呆症”があるなんて。

ポロンは、昼夜を問わず
グルグルと小屋の周りを柵づたいに歩き回った。
柵の角に顔を押し当て動けなくなっても方向を変えることが出来ずに吠える・・・
顏にケガをする・・
ご飯の時間になっても臭覚も視力も聴力も失ったポロンには
持っていったご飯の有りかさえわからない。
口元にご飯を持っていってやると、ご飯に気付き食べる・・。
そんな毎日だった。

そんな毎日が、まだまだ続くのだろうと思っていた。

2012年12月9日の夕方から降り出した雪
明けて10日の朝には、私の住む町は
12月上旬の大雪としては16年ぶりとなる大雪となった。










雪の中、朝一出勤だった私は仕事へ
午後3時過ぎ携帯電話に着信。

「ポロンが危篤状態だから早く帰ってきて。」

突然、義母からの電話。

家に着いた時、ポロンは倒れたまま動けず目を開け
静かに呼吸だけしていた。
すぐに毛布に包み抱いた。

ダンボール箱に毛布をひいて湯たんぽを入れ
暖かい部屋でポロンを撫でた。
次第に瞑る目。
それでも呼吸をとめず横になったままポロンはじっとしていた。
あれだけ家の中が嫌いなポロンが興奮することもなく
力なく呼吸していた。


口元に食べ物を持っていっても何の反応も示さない。
ガーゼに水を含ませて口元を濡らしても何の反応もしめさない。

その夜、私はポロンの横で寝た。
時折、ポロンは4本脚をパタパタと横になったまま
まるで歩いているかのように動かした。
どこかを散歩している夢を見ているのか・・・
痴呆症の時のまま グルグル歩き回っているつもりなのか・・・
その動きを止め 少し目を瞑って寝たかと思うと
また、パタパタと歩いているような動作をする。
一晩中、その繰り返しだった。
でも、穏やかに歩いているように見えた。








朝方、その動きに少し異変が起こる。
4本脚を痙攣させながら、歩くような動作。
口を大きく何度も開ける。
少しだけ苦しそうな動作になった。
しばらく さすってやると痙攣はおさまり脚の動作を止め
目を瞑って寝た。
吠えることもなく静かに
それを何度か繰り返した。

その日も仕事だった私は、ポロンを義母にたくし出勤。

その1時間ほど後、ポロンは眠るように静かに息をひきとった。

私が帰宅した時に見たポロンは、昨夜眠っているポロンと
何ら変わりなく ただ眠っている・・・
そんなふうにしか見えなかった。

15年と9か月。

ポロンはその命を全うし天国へ行きました。

きっと今頃は、天国で義父と再会し一緒に散歩しているでしょう。
喜んでしっぽを思い切り振りながら
綺麗な花園を走り回っているでしょう。
仲良しだった仲間達とじゃれ合っているでしょう。


今朝、うちの畑の片隅にポロンのお墓を作りました。
目印に石を置き、1本の棒を立てました。
その棒にポロンの首輪を掛け石の上に置きました。 
お線香に火を灯そうとした時
ふいにポロンの首輪がクルッとずれて
「コトン」と音をたて動きました。

もしかしたら、ポロンがお別れを伝えようとしてくれたのかもしれません。

もうポロンが昼夜問わず吠える声はしません。
ご近所の迷惑にならないか心配することもありません。
夜中に庭に出てポロンをなだめることもありません。
ご飯の時間を気にすることもありません。
雨に濡れないか心配することもありません。
そして、ポロンのぬくもりを感じることも・・・

寂しいです。

庭を見てもポロンは居ません。

寂しいです。

最後の最後 家族に世話をかけることなく旅立ったポロン。
いつものように家族が出かけるのを見届け
自分の役目を果たし
静かにその長寿を全うしたポロンの最期でした。









視力が失われても聴力が失われても臭覚が失われても痴呆症になっても 
与えられた時間を一生懸命に生きたポロン

一生懸命に生きる姿を教えてくれたポロン



2012年12月11日AM10:45  ポロン永眠 (15年9ケ月)







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15 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
寂しいですね。 (mint)
2012-12-12 23:18:29
15年と9ヶ月、SORAさんは長い年月をポロンちゃんと過ごしてきたのですね。
長生きしたポロンちゃんはとても幸せだったと思います。

うちも7歳になる犬ココがいます。
元々心臓が弱い犬種である上に痙攣という持病があります。
何歳までココは生きていられるのだろうと心配していましたが、今となっては私と競争です!

ポロンちゃんは天国で、お義父さんと楽しくお散歩してますね。
しばらく寂しく思う日が続くと思いますが
あまり気を落とすことなく、お過ごしくださいね。

ご冥福をお祈りします




返信する
Unknown (A)
2012-12-13 02:20:20
ポロンちゃんのご冥福をお祈りします。

かつて我が家にもワンコとニャンコがいました。
彼らが旅立ったときのことを思い出しました。
ご心中お察し申し上げます。
返信する
ミントさんへ (SORA)
2012-12-13 19:16:49
ミントさん、ありがとうございます。

15年と9ヵ月長いような短いような月日・・・
でも、犬の15年9ヵ月は立派な長寿です。
頑張ってポロンは生きたんですよね。

目が見えなくなっても聴力が失われても臭覚がなくなっても、一生懸命に命ある限り生きている姿は飼い主にとっては とても辛いものがありました。
私達人間に命ある限り精一杯生きることを教えてくれたようにも感じます。

ミントさん家のココちゃんも持病に負けず頑張って生きていますね。出来るだけ長く一緒に過ごす時間を大切にしたいですね。
返信する
Aさんへ (SORA)
2012-12-13 19:21:26
Aさん、温かいお言葉ありがとうございます。

旅立ちを見送るというのは、人間でも動物でも
寂しいものですね。
Aさんもワンちゃんやネコちゃんとのお別れを経験してらっしゃるんですね。

今朝もポロンの居ない庭は、ガランとしていて寂しさがこみあげてきました・・・。
一緒に過ごせたことを幸せに思い 最期まで精一杯頑張って生きたポロンを褒めてあげたいと思います。


返信する
淋しいですね (Mitsuko)
2012-12-13 20:29:05
ポロンちゃんと過ごした長い年月、色々想い返しては お辛いでしょうね。

うちにもショコラという2才のチワワが居ます。

この子を残しては死ねないとの思いで 手術にも臨めましたし 今では大切な家族の一員です。

・・SORAさんとポロンちゃんとの繋がりを思うと 自分の事のように心が傷みました。

ポロンちゃんのご冥福をお祈りします。

返信する
Mitukoさんへ (SORA)
2012-12-13 22:43:00
Mitukoさん、温かいお言葉ありがとうございます。

子供の成長と共にポロンとも過ごした15年と9ヵ月
ポロンが人間なら15才で中学生です。
長い月日です。
私には2人の子供がいますが、どちらも男の子でポロンは私にとっては唯一の娘でした。
痴呆症で夜泣きが続いていたので、今は静かな夜です。
それが、とても寂しく感じます。

でも、ポロンは病気や事故ではなく老衰のようなかたちで息をひきとりましたので飼い主としては幸せな見送り方だったと思います。痴呆症でクルクル一方方向に歩き回る姿は、可哀想でしたが長い間、寝たきりなどになることなく過ごせたことはポロンにとっては幸せだったのかもしれません。

Mitukoさん家のショコラちゃんは、
まだまだ一緒に過ごせそうですね^^
ペットの為にも飼い主が元気でいないとですね!
返信する
明るい光の中で・・・ (だいちゃん)
2012-12-14 11:08:19

ポロンちゃんお疲れ様でした。

ポロンちゃん命はSORAさんのご家族に引き継がれていったんでしょうね。
使命があってSORAさんの家族になり義父さまを家族として見送られSORAさんのご病気やご家族の事故や悩みを癒されてきたポロンちゃんほんとうにご苦労様でした。

目の見えない暗いところでしんどかったでしょう。今頃はきっと明るく広いところで義父さまと散歩をたのしまれているでしょう。
空からSORAさんのことを見守ってくれていると思います。
返信する
だいちゃんさんへ (SORA)
2012-12-14 11:58:02
だいちゃんさん、温かいコメントありがとうございます。

目が見えないのは、本当に怖かったと思います。
いつも身体を柵や犬小屋や壁などにくっつけていました。
それがポロンの安心出来る唯一のことだったんでしょうね。 今は明るい世界で思い切り走りまわってることでしょう。

ポロンの誕生日は義父と1日違いでしたから、
義父が亡くなった後、
義父の代わりに私達を見守ってくれていたのかもしれないなぁ・・なんてずっと思っていました。
子供達も大きくなり安心して自分の使命を全うし
天に召されて行ったのだと思いたいですね^^


空の上には義父も祖母も私の父もいますし、ポロンのお友達犬たちがいるので喜んでいると思います^^


だいちゃんさん、ブログはじめられたのですね!
先ほどお邪魔してきましたよ。
だいちゃんさんの経験が誰かの役に立つこと間違いなしです。もうすでに仲間が集まってこられていて、お互いの情報交換の場となっていますね^^
それに だいちゃんさんはブログはじめられる前から
同じ病気と闘う方々にアドバイスというか、ご自分の経験と照らし合わせたコメントされていらっしゃったし、皆さんとても喜んでらっしゃるご様子で何よりです。

私もまたお邪魔させて頂きますね^^
返信する
Unknown (だいちゃん)
2012-12-14 13:35:13
ちょうど1年生の子供の国語の宿題で今本読みをしていると、「ずうっと、ずっと大好きだよ」というタイトルなんですがエルフという飼っている犬が亡くなる話で、主人公の男の子は成長と共にエルフが大きくなり老いていく、そして別れ・・という話です。この男の子がエルフが老いて動けなくなったときもちゃんと世話をして寝るときには「ずうっとずっと大好きだよ」と言ってあげていたことで亡くなったときも少し気持ちが楽だったという話です。

ポロンちゃんのことも話がダブってしんみりとしたけど、いい小説を読ませてもらった感じです。

ブログのことはお恥ずかしいです。自分の経験してることが参考になる。同じ辛さを感じてる人に勇気や元気をもらったりあげたりすることがあれば・・と思います。
つたない文面で読みにくいとは思いますがちょっとしたコミュニケーションを取れれば幸いで、難しい事はできないと思いますがマイペースで記録していきたいです。
返信する
SORAさんへ (みみ)
2012-12-14 16:22:52
初めて書き込みします。
ウチにも6歳の芝犬がいます。♀です。
私も寒い朝や暑い日、
「散歩面倒だな~」と思ってしまうことがありますが、
犬にとって散歩は何より喜ぶことですよね。
ポロンちゃんは、優しい家族がいて幸せでしたね。
今は天国から、お母さん(SORAさん)を応援していますよ。
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