TINKERBELL BLOG

茨城県取手市「美容室アトリエティンカーベル」ティンカーベルのスタッフを身近に感じていただければ嬉しいです

『今日が最後の山なんだよ…』

2014年11月17日 | Weblog
平成26年11月17日、この日『今日が最後の山なんだよ…』とおっしゃる方と山頂でお会いしました。

登ったのは群馬県と栃木県の境目にそびえる『根本山』と桐生の『鳴神山』です。
まず、根本山に熊鷹山と十二山を経由して登りました。比較的マイナーな山なので、枝道も多く迷いやすいです。里山の難しいところですね。
今日は登山とトレランを融合させて、スピードハイキングをテーマに登りました。
ザックはトレラン用のベスト式で、容量の多い20リットル。収納性が無いので、つまりただの袋なのでウエストにランニング用のポケットベルトを巻いてみました。登山として最必要なものはほとんど収納し、いらないものは持たないというスタンスです。靴はトレラン用ではなく、登山靴。もしくはザレてなければトレラン風味のスピードハイキングシューズで。鳴神山は後者で登りました。比べてみると一長一短ですね。登る山と登山形式によって変えるのが良いかもしれません。
根本山を下山しながら軽く走りを入れてみます。うーん…登山靴では軽快さに欠けますが、歩き時々走りの感じでも十分満足できるタイムを出しました。ま、12kmの短距離ですからね。疲労感もあまりないです。
ん?疲労感が無いのはザックのおかげかも?腰がフリーになるので、足さばきがしやすいですね。あと、荷物が揺れにくいです。(揺れないわけではない)

そして30分移動して鳴神山へ。
スピードハイキングシューズで登ってみましょう。
さすがに登りは足元が軽いだけで、あまり変わらないのかな?でも、下山はテケテケと軽く走りを織り交ぜて、コースタイムの4割でした。
低山はこのスタイルで楽しもうっと(^^)

さて、本題。
二座目ですから、スタートは10時半ごろでした。
身軽なのでサクサク登ります。中ほどで中年のハイカーを抜き去りました。『こんにちは~(^^)』
稜線に出ると左手に小さな岩峰が目に入りました。ここは登れないのかな?ふと見ると背後から攻められるらしいので、登ってみます。仁王立ちしてみたりします。
鳴神山の山頂はどこかな?
ふと『仁田岳こちら』と道標がありました。ふーん、じゃこちらも登っとけ。地図を見たら、桐生岳というのもあるぞ。よし、そちらも。
登ってみて気が付いたのは、つまり鳴神山塊ってことね(笑) なんせ昨日の晩に登ろっかな~と決めたもので。(鳴神山というのは山塊の総称ですね)
仁田岳は山頂が狭く人気がなさそうなので、一人で静かにお昼ご飯にしようかな?と思ったのですが、なぜかやめました。
そして鳴神山の主峰『桐生岳』でザックを下ろしました。誰も居ませんでした。お腹はすいていましたが、たいして時間がかかる山でもないので、我慢して下山してから蕎麦屋に行こうか…とも考えましたが、なぜかお湯を沸かし始めていました。
ラーメンにお湯を注ぎました。
そこに先ほどの男性ハイカーが上がって来ました。
『あ、お疲れさまでした(^^)』
彼『ああ、こんにちは(^ー^) あ、それジェット○イルですよね?』※ジェット○イル=バーナーとクッカーのセット。熱効率がとても良いので、速くお湯が沸くのです。
『ぜひお勧めですよ。僕もプリム○を3つ持ってましたけど、もうずっとこれです』
彼『そうですか!それはすごい。いろいろなサイズがあるんですか?…でも、あっても仕方ないか…実は今日が最後の山なんです』
『えっ?』
彼『癌になってね。レベル5なんですよ』
『レベル5って、相当なんですか?』
彼『うん…自覚症状もまったくなくてね。健康診断してなかったんですよ。健康診断は必ずして下さいね』

その後、暗い顔もせずに山の話をずっとずっとしてくれました。遭難した話、死にはぐった話、沢登り、藪こぎ、絶滅危惧種の花を培養して鳴神山に植えた話…
おにぎり食べながら喋るから、ご飯粒が口からポンポン飛ぶんですが、そんなことはどうでもよくて、とにかく今日は誰かに聞いてもらって楽になりたい…そんな気持ちが痛いほど伝わってきました。
彼は明日、手術です。
『大丈夫。遭難したって死ななかったし、低体温症になっても、吹雪の中で身体にエビのしっぽが出来ても、真冬の沢の中で指の皮が剥けるほど冷えても凍傷にならなかった。そんな人っているんですよね』
彼『本当はものすごく怖いんだ。自殺も考えたけど、けっこう出来ないもんですね』

そうだ。もし、回復して鳴神山に登る事が出来たら、あそこの道標にリボンを結びつけて下さい。それを確認したら僕も結びつけて帰ります。
それから…
僕、実は美容師なんですけど、あるお客様に言われたことがあります。
『大事な事がある時、必ず高橋さんに髪をお願いしに来るんです。すると今まですべてうまく行ってるんです。だから今日も…』
そういえば、ほかにもそんな事を言われた事が何度かあるなぁ…
だから、今日まさにこの時僕がここに来たのは、意味のある事かもしれませんよ(^^)
最初は笑っていましたが、『じゃ俺も髪を撫でてもらおうかな(笑)』と言ってこうべを垂れました。
すかさず頭をまさぐる僕。
そして癌のある胃のあたりを撫で回しました。
『これで大丈夫です!明日何も気にせず頑張ってきて下さい』
頭を上げた彼は泣いていました。
『ありがとうございます。ありがとうございます』と何度も言われました。

僕も健康診断に行こうと思います。
ありがとうございました。そして、いつかまたここでお会いしましょう。
コメント (3)
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