TANEの独り言

日々の生活の中でのつぶやきだから聞き流してネ

憧れの地に向けて その5

2020-06-25 07:42:00 | 山行
 “憧れの地” での最初の夜は気持ちが昂っていて、何度か目を覚ましました。
そんな時、テントから顔だけを出し夜空を見上げると、薄くかかったガスの合間から無数の星が見えました。

山の朝は早く、まだ暗いうちからヘッドライトをつけて出発する登山者がいます。
目線を上げると、随分上の方で小さな光の点が動いているのが確認できます。

私も日の出前から朝食の準備です。
といってもドライフーズに注ぐお湯を沸かすだけですが…

そうしてるうちに、カールをとりまく山々が徐々に明るくなり、稜線付近だけが赤く染まりはじめます。

「おぉー、モルゲンロートだぁー…」

山が私を祝福してくれているかのようです。

実は、この日は私の誕生日。
キャンプ先で食べようと思い、出発前に家族が準備してくれた無花果(イチヂク)のケーキをザックに忍ばせていました。

 “憧れの地” で見事なモルゲンロートをロウソク代わりに一人でお祝いのケーキを頬張りました。

今日はテントは立てたまま、空荷で急坂を登りあとは稜線を縦走します。そして、またカールまで急坂を降りてくる予定です。

その稜線部分の縦走が、かつて、仲間と共に歩いたルートでした。

今回は一人で歩きます。

空荷ですからどんどん高度があがっていき、その分視野が広がっていきます。

急坂を1時間ほど登り小休止をとっていた時です。
突然、私の携帯電話が鳴りはじめたのです。圏外で使えないと思っていた携帯電話が…

それは私の家族からの電話でした。
私の誕生日を祝ってかけてくれたのです。

空荷とはいえ厳しい急坂を登っていた私にとって、その電話は何よりの励みになりました。

私は目の前に広がる絶景をライブ映像で伝え、自分の感じている思いも伝えようとしていました。

稜線まで登りつめ、山頂直下の山小屋で入れたてのコーヒーをいまだきました。

その時、同じテーブルで休憩されていたのが昨夕、ウイスキーを勧めてくれた3人グループの方たちでした。

一人旅の私に「写真を撮りましょうか」と、またもや優しい言葉をかけていただき本当に有り難かったです。


その後の稜線の縦走は緊張の続くハードなものでしたが、一歩一歩慎重に歩みを進め、無事、テントのあるカールに辿り着くことができたのです。

もちろん、その日の夕食もドライフーズ&🍺でした。

 “憧れの地” での一日一日が夢のような時間でした。
       (その6に続く)

漆も気になるなー

2020-06-24 07:03:00 | 木のカトラリー
本などでプロの職人さんの作品を見るとその美しさに惚れ惚れします。

木の肌合いや年輪を生かすため表面にニスや塗料を施さない無垢の仕上げになっているものもたくさんありますが、中には漆(うるし)で仕上げているものもあります。

上の写真は、私が木のカトラリーをつくるようになったきっかけになった本です。

私は、この本の中で紹介された漆仕上げの匙(さじ)に魅かれ、東京へ行く機会があった時に国立にあった工房を訪ねたことがありました。

お店を兼ねた工房は昔の駄菓子屋さんのような懐かしい雰囲気でした。
屋号は ”匙屋” そのまんまです。

壁には、本に載っていた漆仕上げの匙が幾つも並んでいました。

わざわざ国立まで来たのでお匙を1本購入して帰りました。

それが、下の写真の匙です。


表面に迷いのない鑿の削り跡が残る私のお気に入りの匙です。
漆が剥がれてしまわないか心配で、1回使ってあとは仕舞い込んだまま…  時々、引出しから出しては撫でています。

漆はハードルが高く、なかなか手が出せません。

そこで、見つけたのが "漆調の塗料" です。


本物の漆のような上品さは出せませんが、黒や朱色は重厚感が出るように思います。



次は "象嵌” に挑戦です!


憧れの地に向けて その4

2020-06-23 07:17:00 | 山行
青い大きなザックの方とはすぐに親しくなりました。

奈良からきたというその方は、何度かここを訪れたことがあり、施設利用のことやテント泊の際のお役立ち情報についていろいろ教えていただきとても助かりました。
(私はその日からこの "憧れの地” で2泊するのですが、3日目の下山時もこの方とご一緒させてもらうことになります)
6時間かけてたどり着いた "憧れの地” は、カール(氷河の浸食でできた、スプーンで掬い取ったようなU字形の谷、圏谷)上にあります。

心配しているであろう家族に連絡しようとしましたが、すり鉢の底にあたるカールの中からでは私のスマホは圏外です。(小屋泊まりの人はWi-Fiが使えるようです)

ここまで担ぎ上げてきたツーリング用テントの重さは4kg強! (高価な超軽量のテントはたったの1kg なのに…  )
抜きつ抜かれつ登ってきた同年輩の "戦友” のテントの近くに設営したのでした。

夕飯は山小屋の広いデッキへ行き、ドライフーズにコンロで沸かしたお湯を注いで食べます。もちろん小屋の🍺も欠かせません。
何を食べてもここではご馳走です。

他の登山者と4〜6人がけのテーブルで思い思いの食事タイムです。
開放感もあってか同じテーブルの人達ともすぐ仲良くなれます。

近畿から来たという3人グループの方から
「どうですか、飲みませんか?」
と、ウイスキーを勧められました。
もちろん有難くいただきました。(久々のホットウイスキー、学生時代を思い出し、本当に懐かしかった)

夜のキャンプサイトは色とりどりのテントからランタンの灯りが漏れてとてもキレイでした。

明日の朝は、朝日で山肌が赤く染まる ”モルゲンロート” を見ることができるでしょうか…
      (その5に続く)

ウォルナットの小物入れ

2020-06-22 09:03:00 | 木のカトラリー
山行独り言は記録を引っ張り出したりで編集が大変… (独り言なのについ肩に、いや指先に力が入ってしまいます)

なので、再度、ブラックウォルナットで独り言…


これも数年前の話です。家族のために小物入れをつくりました。

“ものづくり“に入る時はたいがい夜です。
夕食をおえ、暗く静かになった作業部屋(父と母の畳部屋)で一人黙々と木を彫ります。

道具は鑿(ノミ)、鑢(ヤスリ)、小刀、鋸(ノコ)が主なものですが、そのほかにも硬い木を彫るときにはハンマーや電動機具も使います。

夜中、皆が寝入る頃にガリガリ、ゴリゴリ、時にはカーン!カーン!、バリバリやるのですから家族は大変です。

隣の部屋を使っていた家族の一人から、翌る朝に
「きのうも遅くまでやってたねー」

うるさくて眠れんかった!!』と言われるよりドキリとしました。

お詫びの品ではありませんが、ブラックウォルナットの小物入れを献上しました。


喜んでくれたかどうかはわかりません。

憧れの地に向けて その3

2020-06-21 12:33:00 | 山行
翌朝は予想通りの快晴です。

朝食を摂り、朝一番のバスに乗り登山口を目指します。(Facebookのご夫婦を見かけたのはこの時です。不思議な感覚を覚えながら「貴重な情報をありがとうございました」と心の中で…  )

バスの終点から10分ほどのところに、以前、友人から聞いていたキャンプ場があり、朝の7:30には到着したのです。

ここをベース基地に、空荷でいくつかのピークを目指すことができます。

また、ここから3時間ほぼ平坦な道を歩くと次のベース基地があり、さらに3時間登山道を登ると山登りをする人達の"憧れの地”ともいえるキャンプサイトがあります。

所要時間を考えるとその"憧れの地”へもたどり着くことができそうです。
「どこに初日のテントを張るか… 」
私は少しだけ考えましたが、足はすでに先を目指して歩み出していました。

20kgのザックも苦にならず、ほぼ1時間おきに建つ山小屋で小休止しながら、次のベース基地に着いたのは10:00前、ここが登山届を出せる最後の小屋です。

私は自分に問いかけます。
「3時間も歩けば"憧れの地”  あと3時間登山道を登ることができるか」

今の自分のコンディションとこれまで行ってきたトレーニング、これから先の天候、コース状況、明日以降の行程等々、総合的に考えて出した答えは…
「大丈夫、行ける」でした。

私はここの山小屋で登山届を出し "憧れの地” に向けて歩き出しました。


山道は次第に急になり、20kgのザックが肩に喰い込んできます。

今まで、1時間おきにとっていた休憩が30分おきになり、15分おきと短くなり、とうとう5分歩いては立ち止まるまでに疲れてきたのです。

そんな時、大型のザックを背負った私と同年輩の登山者が歪んだ笑顔でチョコンとお辞儀をして追い越していかれました。
その方は山道に入ってから互いに抜きつ抜かれつ登ってきた人で、大きな青いザックに見覚えがありました。

同年輩の登山者の、疲れで歪んだ笑顔の無言のお辞儀は、"お疲れ様、あと少しですよ。お互い頑張りましょう“ と励ましの声を掛けられたようでした。

それから先の山道はその方と共に登っているように私には感じられました。

雲が低く降り、冷たい風が吹きはじめるた午後2時頃、やっと"憧れの地”にたどり着きました。

先に到着し長椅子に腰掛けていたあの青い大きなザックの方は、登ってきた私の姿を見つけるとニッコリ微笑まれたのでした。