昨夜、夢の中で大きな地震にみまわれた。
それは10年前の3.11東日本大地震ほどでは無いけれど先週の震度6強の揺れよりも大きく、紐で押さえてあった天井まで届く本棚の本を全部吐き出す揺れだった。
本は飛び散り布団をかぶって小さくなっている自分に降り積もった。
それは夢なのに怖かった。
その後もう一段強い揺れがきて本棚が倒れ自分の頭に当たった。
布団に潜っていた自分だったが揺れが収まりかけた時、明かりを点けようと顔を出し、無防備の頭を直撃したのだった。
それは夢でも痛かった。
しかし、だから夢なのだろう。
出血するでも無く漫画の焼き餅のようなたんこぶが膨らんだところで目が覚めた。
覚醒との閾値にいた自分は周囲になんの変化もないことを見て地震が夢だったことに安堵した。
その後眠れないまま寝返りを繰り返していたが、頭が枕と擦れた時に違和感を覚えた。
まさか、と手を当てるとたんこぶがあった。
うそだぁ、なんで、と思いつつ起き上がり鏡を見て仰天した。
たしかにそれはたんこぶなのだが盛り上がったおでこには見覚えのある四角い穴が空いていたのだ。
穴はプラスティックでどう見てもUSBの差し込み口だった。
自分はまさかと思いつつもUSBの線を穴に差し込んでみた。
あらぁ、ぴったり入ったじゃないか、と驚いた。
混乱した自分は地震の夢のところから記憶をたぐろうと、とりあえずコップで水を一口飲んだ。
その時、洗面台の鏡に映った黒い電線がぶら下がる頭を見て可笑しくなった。
俺って新しいタイプの人間ってことかな、と少し嬉しくなった。
鏡に映ったUSBケーブルを見て閃いた自分はそれをスマホに繋いで見た。
ああ、やっぱりだ、とスマホが脳の外付けハードディスクとして機能することがわかった。
幾つかのことを試して脳とスマホのアクセスが自在なことを確認すると自分は身震いした。
そうか、苦節八年挑戦しているあの試験もこれならいけるとほくそ笑んだ。
しかし、こんな能力を身につけたのにあの程度のことしかしないのは勿体ないと考え、棋士になることにした。
これさえあれば今を時めく藤井聡太二冠にも勝てないわけがないと意気込んだ。
自分は最高スペックのスマホを手に入れありとあらゆる将棋の情報を詰め込んでその世界に入った。
下から登り続けやっと藤井聡太七冠と対戦する時が来た。
完敗だった。
そして、負けた理由はすぐにわかった。
藤井棋士がよく前屈みになるのには理由があった。
それは、羽織を着た背中にパソコンを背負っているので長時間の対戦では重いのだった。
そういうことなのだ。
藤井聡太七冠の髪にそって隠されたUSBケーブルは同じたんこぶを持つ自分にはすぐに見破れたが、相手のパソコンのスペックは自分のスマホを軽く凌駕していたのだ。
おしまい。
今どきのツールを使って
こういう創作もできちゃうんですね。
いや、ただの思いつきを無理やり綴っただけの恥ずかしいものであります。
でも、面白いと言っていただけると嬉しいであります。