⑨今回は「作家・津本陽さん」によるシリーズで、豊臣秀吉についてお伝えします。――――――――――――――――――――――――秀吉が大坂の地に安土城にはるかまさる、巨大な城郭建築を出現させようとしているのは、諸国大名に工事の様子を実見させ、驚倒させる狙いもあってのことである。五万人の人足がはたらくさまは、どのような大大名の領地でも見られるものではない。五畿内の住民たちは、前代未聞の大工事の状況をひと . . . 本文を読む
⑧今回は「作家・津本陽さん」によるシリーズで、豊臣秀吉についてお伝えします。――――――――――――――――――――――――それに、ぐずぐずしていれば、光秀の天下が固まってしまう恐れもある。いかに主君の仇とは言え、官僚としての才覚があり、旧幕府勢力などとも通じている彼が、畿内を固めたとなれば、情勢は地滑り的に彼の思う方向に動いてしまうやも知れない。まわりの武将たちにとっては、勝ち馬に乗ることこそが . . . 本文を読む
⑦今回は「作家・津本陽さん」によるシリーズで、豊臣秀吉についてお伝えします。――――――――――――――――――――――――武器は小荷駄(こにだ)で送るか、現地調達する。そして、身軽な兵隊を通常の軍団移動の二倍から三倍のスピードで動かしうる能力は、まさに敵の意表をつくものであつた。急速な移動のさいには、侍たちは甲胃をつけず、半裸で戦場へ馬をむける。平生(へいぜい)から養っている″兜着( . . . 本文を読む
⑥今回は「作家・津本陽さん」によるシリーズで、豊臣秀吉についてお伝えします。――――――――――――――――――――――――石松丸が生まれたあとで、南殿(みなみどの:秀吉の側室)に嫉妬をもったおねが、安土の信長のもとへご機嫌うかがいに参向(出向くこと)し、夫の行状について訴えたことがある。のちに、その件について信長からつぎのような手紙がおねに届いた。「そなたはどの女人を二度とめとれぬのに、あの禿( . . . 本文を読む
⑤今回は「作家・津本陽さん」によるシリーズで、豊臣秀吉についてお伝えします。――――――――――――――――――――――――宗久(そうきゅう)*1はわれにかえり、おのれの失言に気づいた彼は若年の頃から戦乱のうちで生きてきたので、度胸はすわっているが、独裁者の衿持(きょうじ)に触れたときのおそろしさも、充分承知している。「愚老が年甲斐ものう、つまらぬことを口走り、お耳をけがせし段、平に御容赦召されま . . . 本文を読む