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国境を越えて暗躍するヘッジファンド

2020年11月07日 | 外国
1997年7月、アジアは深刻な通貨危機に見舞われますが、その原因をつくったのはアメリカを中心にした英米の国際金融機関でした。当時の状況を簡単に振り返っておきましょう。

1990年代、アジア諸国には先進国から多くの資金が流入していました。今後の経済発展が期待されていましたし、その頃、アジアの多くの国々は固定相場制を採用していましたから為替変動リスクも少ないということで投資してひと儲けしようと考えたのです。

一方、アジア諸国も外資の流入を歓迎しました。積極的に資本規制の自由化を進めて、自国の長期的な設備投資資金などをまかなおうとしたのです。

そこに目をつけたのが欧米のヘッジファンドでした。
ヘッジファンドとは、公募により資金を集める投資信託とは異なり、機関投資家や富裕層などから私的に集めた資金をデリバティブや空売りを含めた様々な手法で運用するファンドのこと、あるいはそれを運用する国際金融業者のことを言います。

そのヘッジファンドが、「アジア諸国の通貨は過大評価され始めている」と考えたのです。
彼らはそこでアジア諸国の通貨に空売りを仕掛け、安くなったところで買い戻して莫大な利益を上げようと画策します。最大のターゲットはタイでした。

タイは1990年代前半、年間平均経済成長率9%を記録していましたが、1996年に入るとその成長が鈍っていました。それを見たヘッジファンドが一斉にタイの通貨であるバーツを売り浴びせたのです。

仕掛けられたタイ政府は必至でバーツを買い支えようとしましたが、為替レートの急激な下落を止めることはできず、結局、1997年7月2日には変動相場制を導入せざるを得ない状況に追い込まれました。

そして危機前には、1ドル24.5バーツだった為替相場が半年後には1ドル50バーツまで下がってしまい、それまで好景気を謳歌(おうか)していたタイの経済は跡形もなく崩壊してしまったのです。

タイでは企業の倒産やリストラが相次ぎ、失業者が街に溢(あふ)れかえり、経済は大混乱に陥(おちい)りました。さらに、その影響はすぐさま東アジア・東南アジアの各国に飛び火して、日本も少なからずダメージを受けることになりましたが、それでも、IMF(国際通貨基金)入りすることになったタイ、インドネシア、韓国に比べれば、被害を最小限度に抑えることができました。

それだけの強靭(きょうじん)さを日本経済は持っているということです。

それにしてもアジア諸国にしてみれば、そもそもヘッジファンドがどんなものかが理解できていなかったのです。

「国が発展しているのですから資金がいるでしょう。資金を用立ててあげますよ」という英米の甘言に乗せられて求めるままに外貨を受け入れたばかりに、訳のわからないヘッジファンドの不意打ちをくらったようなものです。

ちなみに、その頃すでにアメリカは、金融以外の産業はすっかりダメになっており、金融で経済を支えるしかなくなっていました。そこで金融商品に対する規制もどんどんユルユルにしていきました。

アメリカ国内にも、そうした動きに対して「あまりにも野放図(のほうず)な金融緩和だ」と警鐘(けいしょう)を鳴らす人もいたのですが、いわゆる「自由市場資本主義」を掲げるアラン・グリーンスパン(1987~20006年、FRB[連邦準備制度理事会]議長)らに押し切られてしまいました。

その成功を足場に、いわゆる国際金融資本は、素人にはとても理解できないような金融商品をつくり上げました。

そしてハイリスク・ハイリターンの危険性をひと言も説明しないまま、グローバルスタンダードを謳(うた)い文句に、自分たちが勝手につくったルールを強引に世界の国々に押し付け、ごまかしだらけの金融商品を売り浴びせました。

ところが国際金融資本の悪辣(あくらつ)さは、アメリカの経済をも蝕(むしば)んでいくことになりました。
今、世界中の景気が低迷して各国ともに苦しんでいますが、そのきっかけとなったアメリカ発の「リーマン・ショック」は、これまたごまかしの金融商品である「サブプライム住宅ローン」が原因で起きたものです。

---owari---
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