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世界有数の発酵大国・日本のカビの恩恵 (第2話)

2017年08月06日 | 日本

そもそも発酵とは一体何なのでしょうか?

発酵とは、微生物の働きによって物質が変化し、人間にとって有益に作用することをいいます。

微生物という目に見えない小さな生き物が働いた結果が「発酵」です。発酵を行う微生物のことを総称して「発酵菌」といいます。

 

発酵菌は、発酵中に香り成分や新しい味わい、色、栄養価を作り出します。それらの成分がとても美味しく、そして健康にもよく、食品の保存性も高まるため、私たち人間は古くから「発酵食品」を作って摂取してきました。

 

微生物を利用した発酵食品が人類の食生活を豊かにしてきたのは紛れもない事実です。パンや酒類も含め、世界中でありとあらゆる食品が発酵の力を借りて作り出されています。


発酵食品の4大特徴は、(1)保存が利くこと、(2)栄養価が高まること、(3)独特の味と匂いがつくこと、そして(4)究極の自然食品だということ。他の食品ではまず出来得ない、奥の深い神秘的な生命現象を人類は上手に利用してきたのです。

そんな身近な発酵食品ですが、発酵のメカニズムはちょっと複雑です。

近年発酵食品が持つパワーに注目が集まっていますが、その発酵の仕組みやおいしさの秘密について、よく知らないという人も多いのではないでしょうか。

 

ここでは発酵食品についての基礎的なお話をしていきます。

 

すでに述べましたように、「発酵」とは微生物の働きによって物質が変化し、人間にとって有益に作用することをいいます。食材についた微生物が自らの持つ酵素によって、でんぷん質やタンパク質を分解し、人体に有益なアミノ酸や糖分など様々な物質を新しく作り出します。


元の食材にはなかった味わいや豊かな香りを生み出し栄養成分豊富な発酵食品へと変化します。
ちなみに、微生物の活動の結果が人体に有益ならば「発酵」といい、有害ならば「腐敗」と区別されています。

 

世界にあふれる発酵食品だけに、微生物の種類もさまざまですが、ここではその代表選手5つについて解説します。

 

1.乳酸菌

糖分を分解して乳酸を作る菌。ヨーグルトやチーズは乳酸菌による乳酸発酵の成果物。実は、味噌や醤油、日本酒の生成にも乳酸菌の働きがかかわっています。強酸性のため、ほかの細菌を殺菌する働きもあるのです。

 

2.酢酸菌

アルコールを酢酸に変える菌の総称。酢は酒を酢酸発酵したもの。日本酒から米酢、ワインからワインビネガーというように酒の数だけ酢の種類があります。

 

3.納豆菌

稲わらに生息する細菌で、蒸した大豆に納豆菌を付着させると納豆ができます。納豆菌は「ナットウキナーゼ」という特殊な酵素を作り出し、腸内環境改善や血液サラサラ効果をもたらします。

 

4.麹菌

米や大豆などの穀物を加熱したときに繁殖する糸状菌(カビ)の一種。発酵の過程で2種類の酵素で糖分とアミノ酸を作り出します。これが食品に甘みと旨みをプラス。味噌や醤油には麹菌の働きが欠かせません。

 

5.酵母菌

糖を分解して二酸化炭素とアルコールを生成する菌。空気中から土の中、野菜の表面までいたるところに生息しています。酒のほか、パン、味噌、醤油などに幅広く利用されています。

 

2013年に日本の伝統的な和食がユネスコの無形文化遺産に登録されましたが、その根幹は醤油や味噌、納豆、漬物、日本酒といった発酵食品なのです。

 

一方、世界ではどんな発酵食品が食べられてきたのでしょうか。

代表的なのはアジアからヨーロッパにかけて広い分布を持つ乳酸菌発酵のチーズやヨーグルト類でしょう。主食として世界中で食べられているパンも、酵母による発酵過程を経て食欲をそそる香りを生み出す発酵食品です。キムチはもちろん、ピクルスやザワークラウト、カタクチイワシ科の魚の漬物アンチョビも、食べたことのある人は多いのではないでしょうか。

 

ブドウを原料としたワインも、大麦とホップでつくられるビールも、メキシコの蒸留酒テキーラも、ありとあらゆる酒が発酵食品なのです。

 

東京農業大学名誉教授で発酵学・醸造学が専門の小泉武夫さんは言います。

世界を旅した小泉さんによれば、やはり日本にかなう発酵大国はないという。たくあんやいぶりがっこなど、大根の漬物だけで70種を超え、イカやカツオ、めふん(鮭の背わたを塩で漬け込んだもの)など塩辛類も豊富。鮒ずしなどの熟(な)れずしも魚を保存する必要のない沖縄以外全国に存在していたという。

 

そして、「中国には23回行っていますけど、あれだけ大きな国なのに発酵食品は日本の半分あるかないか。海に接する面積の割合が小さく、塩が貴重だったからでしょう。搾菜(ザーサイ)は一般的ですが、あとは雲南省西双版納(シーサンパンナ)に納豆や漬物が結構あるぐらいですね」。

 

日本では、アミノ酸とブドウ糖の塊である発酵食品は、江戸時代には健康増進に用いられていた。「夏」の季語である甘酒は、現代の点滴代わりとして夏バテ回復に飲まれていました。滋養強壮のためには豆腐の味噌汁の中にひきわり納豆を溶いて入れ、油揚げを山盛りにして朝晩食したというのです。

 

そんな日本の究極の発酵食品とは何か。

それが石川県の郷土料理、フグの卵巣のぬか漬けだという。青酸カリの1千倍ともいわれる猛毒テトロドトキシンを、塩漬け1年、ぬか漬け4年で解毒した食べ物です。

 

ぬか味噌の中には1グラムに2億匹も乳酸菌がいて、これが卵巣の表面の穴から潜り込んでビッシリ増殖する。乳酸菌はテトロドトキシンをエネルギーとして取り込んで、二酸化炭素と水とアンモニアを分解して生きている。分解が進むと無毒になるのです。微生物の偉大なる力なのです。

 

続きは第3話へ。

 

---owari---

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