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世界有数の発酵大国・日本のカビの恩恵 (第3話)

2017年08月07日 | 日本

発酵すると何がいいのか?

発酵させることによって、元の食品とはまた違った利点が出てきます。

(1) 消化吸収がよくなる

微生物の働きによって、たんぱく質をアミノ酸に、炭水化物を糖に分解し、消化吸収がしやすい状態になります。例えば、甘酒はコウジカビがデンプンを分解し、ブドウ糖に変えるので甘くなり、吸収もよくなります。

(2) 栄養価があがる

発酵の過程で菌や、酵母、酵素の働きによって、栄養価があがっていきます。味噌は、大豆には含まれないビタミンB12が含まれ、ヨーグルトはビタミンB群が増えるほか、腸を整える働きのある乳酸菌などの働きがプラスされます。

(3) 独特のおいしさが生まれる

クサヤや鮒寿司のような独特で強烈な香りから、納豆やチーズの個性的な香りまですべて微生物がつくる物質です。味噌やしょうゆなどの旨味は、発酵の過程でつくられたアミノ酸の味です。

 

発酵食品の種類を以下に連記します。

〔ご飯のおとも〕

・キムチ ・・・〇乳酸菌⇒酢酸菌発酵 

キムチの発酵が進むと乳酸菌が発生。さらに発酵が進むと乳酸菌の力は弱まり酢酸菌が出てきて、酸味が加わります。

・イカの塩辛 ・・・〇酵母菌によって発酵

イカの塩辛の酵母菌はなんとビールの1.5倍。この働きでイカの含むコラーゲンも分解して体に吸収されやすくなる。

・納豆 ・・・〇大豆を納豆菌(枯草菌)で発酵 ※納豆菌は稲わら、麦わら、枯れ草に存在する菌

納豆菌は熱に壊れにくく、腸内でも発酵を進めて、腸内環境を酸性化させ、善玉菌を増殖させる。

・ぬか漬け・ぬか味噌漬け ・・・〇植物性乳酸菌、酵母菌で発酵

野菜を塩漬けにすると野菜に含まれている糖分がにじみ出てきます。その糖分を栄養源として乳酸菌が増えます。

・奈良漬(粕漬)・・・発酵食品の酒粕に漬け込んだ漬物。

・べったら漬け(麹漬)・・・〇米麹に漬け込んだ漬物。こうじ床に大根を漬け込んだものがべったら。

・漬物 ・・・〇野菜にもともと付着している植物性乳酸菌や酵母菌によって発酵。

※浅漬け、千枚漬け、松前漬けなど発酵を伴わないものもある。

・ピクルス・・・〇植物性乳酸菌で発酵

 

〔調味料〕

・醤油・・・〇大豆を麹菌、酵母菌で発酵

・味噌・・・〇大豆が硝酸還元菌→麹菌→乳酸菌→酵母菌の順に発酵

・本みりん・・・〇焼酎にもち米と米麹を入れて発酵。

原料は、もち米、米こうじ、醸造アルコール、焼酎、糖類で40~60日間熟成させて作られる。

・醸造酢・・・〇穀類を酵母菌⇒アルコール発酵⇒酢酸発酵

醸造酢は微生物による段階的な発酵を経て、最終的に酢酸菌によって酢酸が作り出された食酢。

醸造酢は穀物酢・果実酢に大別されます。穀物酢の米酢には、原材料が「米」のみの純米酢と、「米+アルコール」が原材料の米酢があります。純米酢は米を酵母菌によって酒にし、その酒を酢酸菌で酢にしたもの。

・黒酢(米黒酢)・・・〇日本では伝統的な静置発酵法で、米(玄米)を原料に1年以上かけて発酵・

熟成させてつくられ、褐色や黒褐色になったお酢を「黒酢」と呼んでいます。

・ワインヴィネガー・・・〇果物(ブドウ・イチジク等)を酵母菌⇒アルコール発酵⇒酢酸発酵

※代表的なのは「バルサミコ酢」

・塩こうじ(塩麹)・・・〇米こうじ(蒸したお米に繁殖する麹菌)に塩と水を加えて更に発酵

・しょうゆ麹・・・〇大豆を麹菌、酵母で発酵させた醤油と米麹を発酵。発酵食品である醤油に、さらに米麹を加えて発酵力を高めた調味料。

 

〔魚介類〕

・かつお節・・・〇麹菌(鰹節菌)で発酵。アミノ酸の一種であるうまみの成分、イノシン酸は新陳代謝を促進する。

・舞昆(発酵昆布)・・・〇昆布をあけびの花びらにある天然酵母を使って培地をつくり、漬け込んで発酵。

・アンチョビ・・・〇かたくちイワシを塩漬け発酵

・鮒寿司(なれずし)・・・〇鮒の乳酸菌醗酵

 

〔肉類〕

・サラミ・・・〇酵母菌(酵素=自己消化酵素及び内含する微生物が持つもの)によって発酵

・ペパロニ・・・〇酵母菌(発酵はサラミと同じ)

※アメリカ製で牛肉と豚肉を合わせて作るイタリア風のサラミで、ピザによく用いられる。

 

〔穀物〕

・パン・・・〇パンが膨らむためのパン酵母 (イースト)による発酵

※パンに適した強い発酵力を持った菌だけを集めて工場で純粋培養された単一酵母。

・天然酵母(ナチュラルイースト)・・・〇天然酵母とは、自然界のあらゆるところに生息している微生物(果物、野菜、穀物、ヨーグルトなど)から作られる天然酵母

 

〔乳製品〕

・チーズ・・・〇乳酸菌で発酵

チーズは発酵過程によりカルシウムの体内への吸収率がグンと高まり小魚の2倍。また牛乳に含まれ、おなかがゴロゴロする原因となる乳糖はチーズを作る段階で取り除かれてしまうため、牛乳が苦手な人にも取入れやすい食品です

・クリームチーズ・・・〇生乳と生クリームを乳酸菌で発酵

・発酵バター・・・〇生クリームやバターを乳酸菌で発酵

・サワークリーム・・・〇生クリームを乳酸菌で発酵

・ヨーグルト・・・〇乳酸菌(ブルガリア菌、LG21など)で発酵。乳酸菌の種類は350種類あると言われている。ヨーグルトの発酵に使う乳酸菌の組合わせにより、味や舌触りなど違ってくる。

・ナタ・デ・ココ・・・〇ココナッツジュースに酢酸菌の一種であるアセトバクター・キシリナム(ナ

 タ菌)を加えて発酵

・バニラ・ビーンズ・・〇・リグニンの発酵

 

〔ティー(発酵茶)

・紅茶、烏龍茶・・・〇茶葉に含まれる酵素による酸化発酵

 

〔アルコール〕

・日本酒・・・〇お米を麹菌と清酒酵母で発酵

・本格焼酎 ・・・〇麹菌でアルコール発酵⇒蒸留

・【芋焼酎・麦焼酎】・・・原料の芋、米、麦、黒糖、蕎麦、じゃがいもなどに麹菌を加えて発酵さ

 せ蒸留。

・ワイン・・・〇葡萄をワイン酵母で発酵

・ビール・・・〇麦芽をビール酵母で発酵。ビール酵母は、おおむぎの麦芽を煮てつくった麦汁に、ホップとビール酵母を加えて発酵させたもの。たんぱく質、食物繊維、ビタミンB群、ミネラル、

核酸、消化酵素など人間に必要な全ての必須アミノ酸を含んでいる他ビタミンB群も豊富。

・泡盛・・・〇黒麹を発酵

・甘酒・・・〇麹菌と乳酸菌の発酵

・マッコリ(どぶろく)・・・〇麹菌と乳酸菌の発酵 ※日本の「どぶろく(濁り酒)」と同じ製法

以上です。

 

 

また、カビには抗生物質という薬の効能を持っているものもあります。特に有名なのはアオカビから発見されたペニシリンです。このペニシリンは抗生物質の急速な進歩のさきがけとなり、これを発見したイギリスのフレミング博士は、この功績によりノーベル賞を受賞しました。

 

現在では、カビを利用した抗生物質の新薬が化学的に創り出されている時代ですが、昔から日本の各地にはカビから創った秘伝の妙薬が伝わっている。つまり、「毒を以って毒を制する」知恵を、ずっと昔に知っていたのです。

 

それは現在に受け継がれ、日本は近年、薬品、醸造など、カビを中心とした発酵産業の製品の総輸出額が、数千億円を超えています。

 

これらの発酵食品が今また注目されている理由は、ヨーグルトや漬物など発酵食品に含まれる乳酸菌が体に非常に良いということが明らかになっているからです。その効果として言われているのが、腸内環境のコントロールや、免疫力向上、アレルギー疾患の緩和、血圧改善など、薬品並みの効果が期待出来ると言われているからです。

 

さて、日本は世界有数の発酵大国で微生物(カビ・細菌など)の恩恵を大いに受けています。豊かな発酵食品に囲まれて知らず知らずのうちに、私たちは恵まれた環境で生活ができているのです。このことを神仏や日本の神々にまず感謝したいと思います。

 

それから、微生物の活動の結果が人体に有益ならば「発酵」といい、有害ならば「腐敗」と区別すると述べましたが、実はこの有害な「腐敗」によって、私たちの生活が守られていることにも注目しなければなりません。

 

微生物による水質浄化(汚水成分の分解除去)、土壌浄化(汚染の浄化、油の分解)、有害物の分解など環境浄化や腐敗による自然界の循環作用は私たちの生活環境に大いに貢献していることも忘れてはならないのです。

 

---owari---

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