ささやんの天邪鬼 座右の迷言

世にはばかる名言をまな板にのせて、迷言を吐くエッセイ風のブログです。

日馬富士事件 閉じたモンゴル共同体

2017-11-18 14:12:56 | 日記
テレビから加計を押し出し日馬富士
                 (朝日川柳のきょうの投稿作品)

日馬富士の暴行事件が連日テレビのワイドショーを賑わせている。この事件が
世間の耳目を集めるのは、そこに不可解な部分が多く、この事件が一種ブラッ
クボックスのように思えるからだろう。見えなければ、見たくなるのが人情と
いうものだ。

謎は大きく2つある。1つは、被害者・貴ノ岩の師匠である貴乃花親方の言動
である。これについては、きのうの本ブログで書いたように、相撲協会の次期
理事長をめざす彼の「権力への意志」がそうさせたのだと解することで、私自
身は納得できたと思っている。

もう1つの謎は、なぜ日馬富士が貴ノ岩を強打したかである。これについて
は、「この事件は、一般社会でもよく見られるような、一種のパワハラではな
いか」と、きのう私は本ブログで書いたが、きょうネットサーフィンをしてい
て、そこにはもっと大きな、今の政界にも通じる深い闇がひそんでいることに
気づいた。要約すれば、原因の1つは、貴ノ岩が首相、もとい横綱である白鵬
の「ご意向」を「忖度」しなかったことにある。え?どういうこと?と訝る読
者も多いだろうから、以下の記事を引用することにしよう。

スポーツ紙記者が「原因」とみているのが今年の初場所。1月24日の「白
鵬VS貴ノ岩」の取組だ。11勝2敗の白鵬が負けると、13勝1敗だった大
関・稀勢の里の初優勝が決まる大一番で、結果は左肩を突き出してぶつかった
貴ノ岩が右四つを取ると一気に寄り切り。わずか10秒ほどで勝った。たくさ
んの座布団が飛び交う中、テレビに映った白鵬の表情は同じモンゴル人力士に
優勝を阻まれた悔しさが漂っていた。
(日刊ゲンダイDIJITAL 11月18日配信《貴ノ岩に賜杯阻まれ 日馬富士暴行
事件の裏に白鵬“黒幕説”》)

優勝を左右する大一番があった1月24日、横綱白鵬は「この一番には、なん
としても勝ちたい」と思ったはずだ。競技者である関取なら、だれもがいだく
当然の心理である。

問題は、白鵬が加えてこう考えたことである。「貴ノ岩はガチで勝負にこない
はずだ」。ーーたしかに、「なんとしても勝ちたい」という横綱の「ご意向」
を「忖度」すれば、貴ノ岩は八百長をして、負けるべきだった。いや、こうい
う言い方は穏当でないから、当たり障りのない別の言い方をすることにしよ
う。貴ノ岩はこの場合、ガチンコ勝負を避けて、ほどほどの力で勝負すべき
だったのだ。

白鵬が貴ノ岩に「ほどほどの」ふるまいを期待したのには、それなりの理由
(わけ)がある。白鵬の期待は、モンゴル力士のコミュニティーに染み付い
た、次のような因習から来ている。

モンゴル事情に詳しいメディア関係者は、「もし、貴ノ岩が日本人力士だった
ら、日馬富士はここまでしなかったはず」と、こう話す。
「この事件の背景にあるのが、角界におけるモンゴルコミュニティーです。彼
らは横のつながりが非常に強い。喜びも悲しみも苦労も分かち合い、団結して
きた。当然、『困っている』力士がいれば、『助けて』やる。だからこそ、日
本人力士の牙城を崩し、一大勢力を築くことができた。この10年の計59場
所でモンゴル人力士が53度優勝しているのも、その成果です。貴ノ岩の言葉
は『僕は誰も助けないし、誰の助けもいらない』ということ。それはつまり、
彼らの団結を否定し、冷や水を浴びせたようなものです」
(日刊ゲンダイDIJITAL11月17日配信《謎が謎呼ぶ背景 日馬富士の凶行と
モンゴル力士会の深い闇》)

互いに「忖度」しあい、助けあい、もたれあう、そういうほほえましい小さな
家族的コミュニティーの、そのほほえましい規律からすれば、白鵬が「貴ノ岩
はガチで勝負にこない。手加減するはずだ」と期待したとしても、不思議では
ない。横綱のこの期待を裏切り、ガチンコ勝負に出た貴ノ岩を見て、日馬富士
をはじめとする他のモンゴル出身力士たちは、こう思ったはずだ。「あいつは
俺たちの血の掟を破り、俺たちの同族的結束を踏みにじった。許せん!」
日馬富士がそういう感情のわだかまりをその後も引きずり、常日頃「あいつは
先輩をリスペクトせず、屁とも思わないけしからん奴だ!」と苦々しく思って
いたとしたら、ちょっとした応対の不手際が引き金になって、怒りが爆発し、
凶行に及ぶことも、決してあり得ないことではない。

日馬富士が起こした今度の一件は、そういうふうにして起きたのではないか。
そう考えながら、私はまたこうも考えた。安倍内閣の内閣官房が、このモンゴ
ル・コミュニティーのような、閉じた同族的共同体でなければいいが、と。
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