映画とライフデザイン

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映画「青春残酷物語」 大島渚

2013-10-13 09:24:36 | 映画(日本 昭和35年~49年)
映画「青春残酷物語」は1960年制作の大島渚監督作品だ。

大島監督の初期の傑作として名高いが、ずっと見ていなかった。
小津安二郎、木下恵介といった松竹独特のホームドラマ的作風と違った日本版ヌーヴェルヴァーグ作風を生みだしたという評価だ。まさに60年安保阻止で民衆がデモで荒れ狂う街中で、ある学生と女学生の出会いを描いている。何よりカラー作品であるがゆえ当時の世相がくっきり浮かび上がる。貴重な映像だ。

夜の盛り場で遊び疲れた女学生(桑野みゆき)が、中年男性(山茶花究)が運転する乗用車に声をかけて自宅まで送ってもらおうとしているシーンからスタートする。中年男性は連れ込み宿に彼女を無理やり誘おうとしていた。そこへ一人の大学生(川津祐介)が助けに入る。彼女は助かる。
翌日2人は木場でおちあいデートする。男性が自分のことを好きかどうかを確認しつつ、2人は交わる。
ところが、デートを確認した後しばらく連絡がこないのに不安に思った彼女は彼のたまり場とするあたりを夜彷徨う。
そこには不良愚連隊がたむろしていた。危うく彼女はグループにからまれそうになったとき大学生が駆けつけて、乱闘になる。そこに顔を出したのが愚連隊の親分格(佐藤慶)だ。彼は金でカタをつけようとして、その場は収まる。
2人は支払いに充当する金を稼ぐために、女学生をおとりに中年を誘惑させて、金をむしり取ることを思いつく。早速おとりにかかる中年(森川信)がいたが、そうはうまくは続かないのであるが。。。




DVDのジャケットに写る若い2人の姿は白黒写真である。それなので、ずっと白黒映画だと思い込んでいたので、なおのこと映像が鮮烈である。いきなり安保闘争で大暴れのデモ隊の姿を映す。これって本物じゃない?と思わせてしまう迫力ある映像だ。手持ちカメラを使って実際のデモの横で撮った映像もあるようにも見れる。その後ろに映る自動車が昭和35年という時代背景を感じさせる。マツダの三輪車などが走っているとよりリアルに映る。あとは色彩設計もしっかり考えられていて、桑野みゆきの着る服はなかなか色合いもよくハイセンスだ。よく見るとクレジットに衣装は森英恵となっている。なるほどとうなずかされる。

夜の街にたむろう愚連隊という設定は、今ではない世界だろう。
ヤクザと不良グループを混ぜ合わせたようなものだが、渋谷あたりはこういう人種がたくさんいたような気がする。父と渋谷センター街を夜歩くとサングラスをしたお兄ちゃんがたくさんいて歩くのが怖かった。今とのギャップが一番大きい。ここに映る佐藤慶がいかにも適役だ。でも殴るのがいかにも嘘っぽい。それがどうも気になってしまう。

デビューして日の浅い川津祐介は若さを発散させている。家庭教師先の母親とできている大学生という設定である。身体で結ばれているせいか、その中年女にはずいぶんとぞんざいな態度をとるが、別の女がはらんだ時の中絶費用を中年女からむしり取ろうとしたり、割といい加減な男を演じている。それでも、木場で材木の原木に乗り桑野みゆきと戯れるシーンは当時としてはかなり鮮烈だったのではないか?桑野みゆき が行為の後に、何度も「私のこと好きなの?」と川津に聞き返すところがいかにも時代を感じさせる気がする。

この作品より後になるが、小学生のころ、川津祐介が主演のテレビドラマがあった。当時人気の007的アクションで、子供が見ても楽しめるように、シボレーコルベットをホバークラフトのように水上を走らせていたのがずっと目に焼き付いている。それ以来自分の川津への印象があのカッコいい60年代のシボレーと連結されている。

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2 コメント

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川津裕介と浮気している奥さんは (さすらい日乗)
2015-02-04 08:16:38
彼女は、『日本の夜と霧』でも芥川比呂の妻役で出てきますが、青年座の女優氏家鎮子さんです。
その名のとおり、元日本テレビ社長の氏家斎一郎氏の奥さんでした。彼女は、有楽町のバーで働いてきた時、読売新聞の記者だった氏家氏と知り合って結婚したのだそうです。彼女は多分まだご健在だと思いますが、女優はやめたようで、青年座の劇で見たことはありません。

また冒頭で桑野みゆきを誘惑する役は、最初は森雅之に話したが断れたそうです。出ていれば大島と森雅之の邂逅で興味深いものだったと思いますが。

大島渚は、助監督になったことはありませんが、木下恵介の影響を非常に受けていると思います。
特に『女の園』は、『日本の夜と霧』の原型のように思われ、『女の園』は戦後映画史に残る傑作だと思う。
川津裕介と浮気している奥さんは (wangchai)
2015-02-04 11:45:37
>青年座の女優氏家鎮子さんです。
その名のとおり、元日本テレビ社長の氏家斎一郎氏の奥さんでした。彼女は、有楽町のバーで働いてきた時、読売新聞の記者だった氏家氏と知り合って結婚したのだそうです。

それはビックリです。1年少し前に見た映画ですが、艶めかしい感じの女性だった記憶があります。上流家庭のご夫人という雰囲気もしました。この時もう結婚していたのかな?彼もナベツネと一緒で左翼に染まっていたのは有名な話ですね。

>冒頭で桑野みゆきを誘惑する役は、最初は森雅之に話したが断れたそうです。

当然でしょうね。1960年は銀行支店長役を演じていた高峰秀子主演「女が階段を上る時」や黒澤明「悪い奴ほどよく眠る」で黒幕の土地開発公団の副総裁役もやっているのに、こんな一瞬だけの登場のチョイ役じゃいくらなんでも受けない気がします。

>、『女の園』は戦後映画史に残る傑作だと思う。
好きなのになかなかブログアップできない作品なので、また書きます。

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