風の谷通信 No.5-140 一部訂正済み
かつてパリ(あるいは広く欧州全般)への飛行ルートは、アンカレッジ経由であった。夕方だったか夜だったかに出発するとアンカレッジで朝を迎えたように思うが、もう記憶が定かではなくなった。
それ以来飛んだことがなかったので、今回のルートには驚いた。まず関空を離陸すると京都上空を経由して上越から佐渡の日本海へ出る。翼のずっと向こうに佐渡の白浪を見る。大阪時間の12時頃か?に昼食。どこの時間だろうか?と気になる。ハバロフスクよりも北を通ってシベリアへ入る。関空を昼に発って太陽を追って飛ぶので、シベリアのタイガを眺めようと思ったが、座席が翼の上なので下界が見えなかった。オビ湾上空で残り5時間。モニターにムルマンスクなんて表示が出るので驚く。ここはソ連の北極艦隊基地のはずだ。つまり北極海で作戦を展開している潜水艦の基地のはずだ。冷戦終結以後はこんな処も開放するのか。
ここまでずっと座席前のフライト情報を観ていた。目的地までの距離が約9500km、飛行予定時間が12時間。巡航速度が870~900km/時、巡航高度は9500m。なんにもすることがないのでパリの案内本を読もうとしたが機内では読めない。結局はモニターを見たり眠ったりしただけ。フィンランド上空に達して残り2時間半となった。ここからバルト三国の一部を通ってヨーロッパへ入る。ヨーロッパへ入ってから速度が7800kmに下がり、逆に高度が1万1500mに上がった。
先回りして帰国ルートを記録しておこう。同じルートを逆に飛ぶのかと思いきや、中国上空のルートが大きく違った。まずパリを発つとベルリン北方で北海に入る。東南の方角に夕闇が近づく。雲が夕焼けに染まる。北国の冬の夜は早い。すぐにロシアに入り、リガ上空で夜になった。メモではペテルブルクの東を通過と記しているが、リガの位置を思い出せなくて前後関係が怪しくなった。モニターにノブゴロドなんて懐かしい名前が見える。ノブゴロドだのキエフだの、スラブ人の原初的な国家が世界史に初めて登場する地名である。訪ねてみたいとは思うが、どうもロシアと中国は躊躇する。シベリアは闇の中。
そこから機は南へ降り、ウランバートル、北京、天津、からソウルで韓半島を横切り、南へ向かった。北京通過の頃に東の空が明るくなり始めた。それから隠岐、出雲、小豆島から四国のどこかを通り、紀伊水道の南側から関空に着陸した・・・と思うがこの頃に眠くなったので記憶が定かではない。
長々と航路をまとめただけ。片道12時間、合計24時間の記憶。