風の谷通信

専業農家からの引退を画策する高齢者。ままならぬ世相を嘆きながらも、政治評論や文化・芸術・民俗などに関心を持っている。

12-013 我が子を想う 「土の記」を読んで

2017-01-27 17:49:01 | この道の先に

風の谷通信No12-013

高村薫の作品「土の記」を読んでいて興味深い記述に出会った。

70歳を過ぎた主人公が夏の稲田を世話している。目の前の稲の
有様から、近隣仲間たちの動きから、亡妻が死の直前に見せた
奇妙な行動から、天候の気配から、草の伸び具合から、稲の生育
や天候や、、、、さまざまな事柄が頭に浮かんでは消え浮かんで
は消える。事細かな農村生活の物理的心理的描写である。

その中で興味を惹かれたこと。ニューヨークへ移り住んだ娘とその
また娘(主人公の孫娘)が住むアパートに思いが及ぶ。時差が気に
なる。用があるならば先方の夕方、こちらの早朝に電話してくるだろ
う、、、と想像している。そのうちに、隣の部屋の老夫婦が飼って
いる子犬のことや、アパートの足許の店で売っている何かのファスト
フードの匂いがその10階の部屋まで昇ってくるという状況まで
想像してしまう。

実に克明な描写が続く。

ふと気が付くと自分が同じことをしている。夜に、、、ちょうどこれから
のデスクワークに時間帯に、、、パリとの時差を想像する。あの
アパートの前の道を頭に描いてみる。夕方のパリの繁華街を想像
する。かと思うと早朝の畑の中で頭の上を飛ぶエールフランス機の姿
を見て二人が帰ってきそうな夢も見る。この時刻にこの上空を飛ぶ旅客
機は他にはないのだ。

かと思うと、主人公自身の記憶が既に鈍りかけていて、なんとなく
認知症の走りのような気配を彼自らが疑っているかのような記述が
ある。そんな中で、娘の気持ちへの推理が働く。

 

ニューヨークに脱出した陽子は、娘と共に文字通り親からも上谷の
一統からも解き放たれたのだと言ってもよかったが、伊佐夫の思考
はそこでもう一回転し、待てよと思い至るのだ。娘の渡米は、言い換
えれば陽子と親の自分が未だに各々の根に持つものが、遂に行き場
を失ったということだろうか。・・・父も娘も積年のわだかまりを清算し
ないまま、その機会を失ったということだろうか。


ここには、崩壊してゆく稲作農村とそこに棲む家族の崩壊をも描き
込んである。不幸な親子である。私自身には、パリの街への嬉しい
想いとは別に、この現住地での苦しい思いが重なって、なかなかに
読み応えのある作品「土の記」である。


12-012 稀勢の里 と真珠湾攻撃

2017-01-23 16:30:47 | この道の先に

風の谷通信No12-012

 

大相撲界が湧いている。もう何と言っても止まらず、一丸となって「稀勢の里
が横綱に」しかないみたい。

世間に通用しないとは思いながら一言記録しておきたい。

「稀勢の里の横綱を急ぐな。せめてもう一場所待て」と。

もしこのまま横綱に昇進したら、幕内40人ほどの中で、横綱が4人・大関が
3人、それに関脇と小結の合計4人がいる。そんなバカな話?番付票の上が
重くてひっくり返るぞ。

加えて、今場所に琴奨菊がどれほど苦しんだであろうかと思うと胸が痛む。
それにも懲りずに「強い大関・弱い横綱」を演出するのか。

角界の外野が騒ぎすぎで、浮足立っている。ちょうど、真珠湾攻撃に似た
世相だ。

みんなが浮かれている。世相に流されている。そして誰も責任を取らない。
この記録が杞憂に終わることを切望するのみ。


12-011 アパホテルの主張

2017-01-20 18:37:07 | この道の先に

風の谷通信No12-011

アパホテルの宿泊室内にその経営者の主張を書いた本が
置いてあるという。
聖書や「ブッダの言葉」などの書物が置いて
あるのと同じ手法である。

問題になっているのはその主張の核心が「南京事件は捏造である」
と言うにある。
まぁ世界に通用しない、日本の勝手な思い込みの
ひとつである。だから、この本
を手にした宿泊客は意外に思うか
不快に思うかするであろう。

問題は「果たして捏造であったかどうか」というにある。捏造であった
と主張する
人達が「先の戦争で日本は悪くはなかった」という人達と
重なること。日本は神の国
であるとの主張とも重なる。カミに選ばれた
エリート民族であると想い、世界に
君臨することを願う。

 

だけど、その日本はアメリカの前でペコペコペコペコしているよ。
なぜなの?

まるで飼い犬みたいじゃないの?ほんとうに神の国の、神に選ば
れた民なの?

オスプレイを海岸まで運んでから落としたので、住民を巻き込ま
なかったことで感謝されるべきだ、という屈辱的なことを言われて
抗議もしない政府、そんな国民を守る意識ももなく、アメリカに
へばりつく国が世界一級のエリート国といえますか?むしろ、
属国という地位を確認する方が正確であると思いますよ。(まぁ
それはともかくとして)

 

それで 南京事件捏造説は世界で通用するんですか?もうずっと
以前に書いたけど、本当に正当な主張ならば、世界へ打って出て
論争すればどうですか。南京虐殺事件は事実だと主張する人達を
相手に一戦交えて論破してくればよろしいがな。そんな、自分が
経営するホテルの部屋だけに印刷物を置いて、曳かれ者の小唄
みたいなことをしても埒があきませんぜ。

蛇足ながら、わたしはこの国が神に導かれる国であると信じています。
もっとも、考える次元が少し違うけどネ。


12-010 凍結路面でスリップの経験

2017-01-17 17:28:47 | この道の先に

風の谷通信No12-010

気持ちの悪い経験をしました。

今朝の8時半くらい、もう路面は溶けているものと信じて、それでも
ゆっくりゆっくりと走っていたのですが・・・。道路の東側に高い建物が
ある地区では路面がまだ溶けてはいないことに気づいていました。

時刻が時刻だから四輪駆動をはずしていたのです、もう大丈夫だろうと思って。
いつもの走り慣れた場所で・・・ツルリ‣ツツツーと滑りました。オヤオヤ、
オイオイ、助けてくれー、というまでもなく車体は右へ逸れて対向車線へ
少し侵入しました。ブレーキを踏むのは禁忌だし、カウンターを切る技術も
無いし、40キロで走っているのをさらにシフトダウンで減速して、とにかく
事なきを得ました。

参ったなぁーーー。もし対向車が来ていたら『高齢者の事故』という騒ぎに
なるところだった。いつもの道とはいえ、ゆっくり走っていたのが救いの元
でした。

それにしても、この時期にアベさんはまたしてもベトナムへ1400億円提供
するんですなぁ。ゼニもちですね、本当に。


12-009 歴史に学ばないこと(続)

2017-01-16 19:44:45 | この道の先に

風の谷通信No12-009

全国的に大雪が降っている。その時にセンタ―試験が行なわれている。まるで無関係のような話題ではあるが、大いにあり。

毎年(と言っても過言ではないほどに)大雪に見舞われて受験生たちの行動が阻害されている。毎年被害を被るのならば実施時期を変えれば良さそうなものを、いつまでたっても変更(改善)の気運がない。一過性なんだ。一回受験したら《あとは知ーらない》。なにしろ文部省なんて難しい国家機関に入省した役人たちは優秀な人ばかりで、試験の苦労なんて知らないから、それで済むのです。

そのくせ、学制度を秋入学に変えようなんて難しい問題には取り組んではくれない。この国は過去の苦しみに素知らぬ顔で過ぎてゆくのです。それは《明治維新》という「長州の下級武士集団による暴力革命」以来の伝統です。その軍閥の上に乗っかっているのが奈良時代から連綿と続く藤原一族の公家支配です。このクニは飛鳥時代から少しも変わりなしです。但し上部構造だけが変化しています。公家の一段下にいる軍閥達の行動が少しずつ変わっているのです。

こんな大雑把な歴史の捉え方って・・・たのしいですよ。

 

きょうのメモ:女性が安心して子育てできる社会にするには、男が家庭を見守ることが必要。男が会社に縛られて/あるいは仕事に没頭して、家庭を顧みないような社会は女性にとって敵性である。その意味で社員に長時間労働を強いる経営者は、自らが将来の労働人口抑制に寄与しているのだから《反社会的》である。