風の谷通信

専業農家からの引退を画策する高齢者。ままならぬ世相を嘆きながらも、政治評論や文化・芸術・民俗などに関心を持っている。

6-045 予言的中 東日本大震災10

2011-03-31 20:30:51 | 世相あれこれ

風の谷通信 No.6-045

 今回の地震被害はメディアによって「東北関東大震災」とするものと「東日本大震災」とするところがある。それなりの事情があるのだろう。 

 さて、神戸新聞に「水の透明画法」を連載する作家・辺見庸さんが朝日ジャーナルに書いている。朝日ジャーナルが復刊され、その第2号の巻頭に「標なき終わりへの未来論」という文章を寄せている。辺見さんらしいいかにも難しい文章である。読んで理解するのに苦労する、イヤ読むだけでも苦労する。それはともかくとして、大胆かつ大掴みな社会批評であるが、ここで描いたある種の「予言」が見事に的中しているのが怖ろしい。復刊して2号を出版する計画を前提に原稿を依頼したならば、筆者が稿を起したのは何週間か以前のことであろう。その時点で予測したことが、出版直前に起きてしまった。内容は次の通り。

 その1:すさまじい大地震がくるだろう。それをビジネスチャンスとねらっている者らはすでにいる。富める者はたくさん生きのこり、貧しい者達はたくさん死ぬであろう。
 その2:ひじょうに大きな原発事故があるだろう。
 その3:マスメディアはひきつづき権力の意のまま、いや、いまよりいっそうたくみに偽装された権力の構成要素でありつづけるだろう。

 文中のパノプティコンと天恵ドームの比喩は難しくて理解できない。だけど何となく薄気味悪い未来像である。

 


6-044 東電の無知 東日本大震災9

2011-03-28 19:57:31 | 世相あれこれ

風の谷通信 No.6-044 

 東京電力福島原発の事故が起きて以来、東電の技術陣や経営陣が適切な対応をしていないという声が強い。どうしてだか、情報を隠している/あるいは少なくとも正直に公表してはいない、という声が上がっている。隠蔽体質だという。

 これに関係して、以前に覗いたブログを思い出したので何日か前に開いてみたら、どうしたことか昨年末までに閉鎖されてしまっていた。どんな事情か知らないが残念。もし今開いていたらその的確な指摘が役に立っただろうに。それは「原発震災を防ごう」というブログだった。なんとか復活して頂ければ有難いのだが。

 技術系ではない私から見て印象に残った指摘は「東電の人間は原発のことを知らない。なぜならば大切な箇所、細部はすべて下請け任せであるから」と言うことだった。(実際に設計し発注し組み立て、運転し、保守点検し、修理するのはだれだろうか。)この指摘はもしかしたら本当かも知れないナと思う。なぜならば事故発生以来の対策が不的確で後手後手で、しかも混乱しているからだ。事故がどこで起きたのか、何が問題なのか、どうすればただ今の状況を修復できるのか・・・を東電が知らないのではないか・・・と思える。その一つの論拠が先日の作業員3人の被爆事故である。異常に高い放射能値を測定していながら6日間も、その事実を危険部位に入る作業員に対して通告しなかった。

 それにしても、ニュース番組も世間の関心も地震・津波の被害よりも原発事故の方が中心になってしまった。地震に無関係なはずの東京首都圏でも買占めや停電という社会問題が大きくなってしまった。東京の知人と連絡がとれて無事が確認されたが、その人の言葉では「街の姿が異様だ」という。買占めでカラの棚が並ぶ商店を指す言葉であった。きょうただ今でもその状態であろうか。


6-043 作業員被爆 東日本大震災8

2011-03-27 20:46:53 | 世相あれこれ

風の谷通信 No.6-043

 細かいニュースだけど目に留まった。久米宏さんが今回の被災に対して2億円の寄付を申し出た。復興応援!すごいな、大きなニュースだよ。こちらはその一万分の一=2万円=でも自由にならないのに。学生運動で走り回っていた人が、マスコミで時流に乗るとこんなカネを動かせるんだな。そんな皮肉よりも称賛を。頭のいい人はカネも儲けるし、献金もするんだ。ありがとう。

 朝の喫茶店での会話。「この頃東電の社長がテレビに登場しないな。副社長が出ているが・・・」「責任がないと考えているのかな。お前達がやれやれ!と言ったんだろうが。オレの社長時代にやったんじゃないぞ。昔の役員と自民党がやれやれ!と言ったんだろうが。オレに責任はないぞ・・・なんてネ」。原発を推進したのは自分じゃないぞ!ということか。
 なんて無責任なことを話していたら、夕方のネット・ニュースではこの社長が体調を崩して「ダウン」していたとのこと。これだけの時間と苦労を事故が起きる前に払っておけば、つまり予防に手をかけていたら、こんな後ろ向きの負担をしなくて済んだのにね。

 ところが、昨晩のニュースでは3人の作業員が被爆した件で、東電では作業に入る6日前に強い放射能を確認していたが、これを作業員に知らせてはいなかった・・・ということが明らかになった。これは意識的に遅らせたのか隠したのか・・・が問題。遅らせたのであればまるで「未必の故意による障害事件/または殺人事件」だ。誰が遅らせたのか、無視したのか隠したのか。重大さが理解できなかったのか。これが東電の本来の社風だというkと。

 だけど・・・何か「私にもできること」はないのかなぁ。でなきゃ、いたずらに時だけが過ぎて行き、イライラ感だけが募る。イライラは「イラ菅さん」だけに任せておきたいょ。

 


6-042 保田與重郎 東日本大震災7

2011-03-25 18:33:20 | 世相あれこれ

風の谷通信 No.6-042

 災害時における日本人の規律ある態度に関係して、前田英樹著「日本人の信仰心」を先ず読了した。むずかしい。稲作農民の持つ倫理観を各方面から解釈しているが、その中心にあるのが保田輿重郎の思想である。再読してもまだ理解できないだろう。

 この論考には日本人の最も古い時代の考え方とでも言うか、稲作生活が持つ循環の有様とそこから生まれる「カミと共にある生活哲学」とでも言うべき態度が描かれている。こんな思想家がいたことやその名前さえ知らなかった。大学時代にもその名前を聞いたことが無い。大学ではマルクス的唯物史観という西欧的な価値尺度ばかりが重視されていて、日本的なもの=まして稲作文化とその自給自足的思想なんかは問題にもならなかった。一体大学では何を学んだのだろう。

 こんな思想家がいたことを知ると、自分如き素人にとってはごくごく日常の生活規範の解釈でさえも、それを論ずることが賢しらな行為に思えてくる。実際のところ、この本を読んでいる間、記録を残すことさえおこがましく思えて、しばらくはキーを叩くのに気が重かった。


6-041 お天道様が 東日本大震災6

2011-03-23 19:58:09 | 世相あれこれ

風の谷通信 No.6-041 

 この項はきのう記録したものであるが、言葉不足だったので最後部に補足訂正した。

 大災害にあっても規律を保つ日本社会のすばらしさについて、世界各地で称賛の声があがっている、という報道はうれしかった。世の中には何事にも表裏があるもので、「ダイアモンドオンライン」の筆者がその声に疑問を投げかけている。即ち、ここ最近の全国的な乱れも同じ日本人の行為だ・・・と言う訳。振り込め詐欺・幼児虐待・高齢者保護遺棄・汚職・八百長・年金需給詐欺・・・いずれも日本人の行為である。

 そう言われればその通りで、外国の称賛の声を手放しで喜んでいるわけには参らない。早速にも現れたのが「募金箱の盗難」という持ち逃げ事件。世人の善意を盗んでゆくという非情な世界。新聞紙上には何件か見えた。その心情や哀れ。

 そんな悲しいことには深入りしたくは無い。むしろ日本人の素晴らしい点について考えてみたい。混乱の中で略奪や暴動に走ることなく整然と耐える日本人の心の底にある高い倫理観は多分稲作と関わりをもつのであろうと思う。そこでは生産即信仰であり、神の意思とともに稲を育てて米を作り、神と共にその豊かな恵みを祝う・・・毎日の生活の中で、四季の巡りの中で、神の意思にかなうことが生活の規範であっただろう。こうした表現は先日記録しておいた前田英樹の著書から借りたものであるが、もっと私なりの表現をすると日本人には「お天道様が見ている」という考えがある。この「お天道様」は物理的存在としての太陽ではない。もっと深い人間社会の底に横たわり、日本人社会を支えている規範とでも言える。縄文時代よりもずっと後期の「恥の文化」と通じるのかな?浅ましい姿を世に晒すよりはじっと耐えることを選ぶとでも言える姿である。・・・・・・[以下手補足訂正部分]こうした眼には見えないが人々の行動を規制しているものがこのクニの市民にはごく当然の如くに遍在しているので、外国から見たときに驚きを与えるような姿を表わすのであろうか・・・。それにしても、こんな毅然とした態度を危機においても保持することは実に難しいことだ。私には成しおおせる自信がない。