風の谷通信No.9-097
日本人は忘れやすい国民だと言われます。事実、フクシマの大事故でさえ、既に忘れようとする力学が働いていて、子供たちの甲状腺ガンさえもフクシマ事故からは切り離し、放射線汚染が高いにも拘わらず住民を帰還させようという動きが明らかになっています。もちろんオリンピックを招くためには汚染の事実を隠すことが第一義の大切さらしいです。
その一方で、関東大震災を忘れないでいよう、そのために防災訓練を広く実行しよう、という努力がなされています。これは結構なことです。
ところで、ここに一冊の本があります。題して「郷土の魂 副題・加西市出身者の戦記」です。筆者の身内の戦死について確かめたいことがあってこの本を借りてきました。神戸新聞で「墓島の将校」という連載記事がちょうど今日の掲載分で終了したのですが、記事の中に墓島のジャングルの中を撤退した記事があります。「郷土の魂」にはこのタロキナ周辺で戦死した人などの名前がたくさん載っています。
この書物は当市のさる人が戦後間近に個人的に調査編集されたものです。驚くなかれ西南戦役から本土決戦までの長い戦記と戦死者の名簿が採録されています。
(個人的には、筆者はシベリア抑留体験者の話しやフィリピン工作の特務将校の体験記も持っています。)
先の戦争の記憶を捨て去ろうとするかのような動きが強い一方で、戦争指導者たちを「自らの魂を賭して祖国の礎となられた殉難者」として讃えようということが公然と語られる時代です。戦争に参加した人たちや、銃後で悲惨な体験をした人たちの言葉を集積すると、とてもじゃないが先の戦争を讃える気持ちにはなれませんし、いかなる意味でも正当化する気にはなれません。
先の戦争・神戸淡路大震災・東北大震災とフクシマ原発事故などの記憶を風化させずに守るのは現代人の義務でしょう。