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うまがスラムダンクの続き

うまがスラムダンクを勝手にアレンジ。
スラムダンクの続きを書かせていただいています。

#397 【打倒深体大】

2010-12-11 | #12 大学 新人戦編
決勝戦、試合残り時間は、30秒を切った。


ゴール下では、鍛えられた3つの体が競り合っている。


赤木のシュートに、前後から畳み掛ける徳永と河田。


深体大、世代最強クラスの2人が赤木に襲い掛かる。



「ウホォォォーーー!!ウホッ!!!!」



「打たせるもんかよ!!」



「赤木!ジエンドだーー!!!」



「負けーーん!!」



『バス!!』



『ザシュ!!!』



赤木の力強いゴール下のシュートが決まった。



そして。



『ピィーーーー!!!』



「青!#9!プッシングーーー!!!」




「バスカーーーン!!!」

「ファウルは河田だーーーー!!!」

「赤木が河田から、バスカンを奪ったーーーー!!!」

「いいぞ!!赤木ーーー!!!」

「ゴール下では力強い!!!」




「うぉぉーーー!!!」


再び雄たけびをあげる赤木。



「赤木!!見事だぜ!!!」


諸星が詰め寄る。


「ナイッシュ!赤木!!!」

「いいぞ!!」

藤真、真下、野辺らも赤木のプレーを大いに称えた。



「うぉぉぉーーー!!」



なおも叫ぶ赤木。



(俺は河田にも負けてはおらん!!!)



今までに感じたことのない興奮状態にいた。



「赤木のやつ。」

と河田。

「わりー。今のは俺のファウルだよな。審判、どこ見てんだか。」

「構わねぇよ。決められたのには、変わらねぇからな。」

「まぁ、そうだな。」



(俺は、インサイドなら河田にも負けておらんのだ!!!
もっと技術を磨いて、やつの、河田の全てを超える!!!!)

赤木は拳を握り締め、河田を睨んだ。



「いつでも相手してやる。うはっ!」


「いつまでもいい気にはさせんぞ!」



だが。



『ガンッ!』



「あっ・・・。」



「なに、やってんだよ!!決めろ!バカ!!」

ワンスローを外した赤木。


リバウンドは、C辻が奪い、深津がゆっくりとボールを運ぶ。



そして。



『シュパ!!』



先ほどのお返しとばかりに、河田が赤木を抜いて、ゴールを決めた。



「うし!!」にかっ。

力瘤を見せ付ける河田。


(あのやろう。)


『プルプルプルプル。』

怒りを抑える赤木。




決勝戦ラストプレー。



『スパ。』


諸星が、深体大ディフェンスを切り裂いた。



「どうだ!このやろう!!見たか!!深体大!!」


無駄に吼える諸星。



エンドラインから深津にボールが入ったところで、試合が終了した。



「醜いぞ。諸星。」

と赤木。

「さぁ、整列だ。」

と藤真。


「なっ!!赤木てめーー!てめーだって、吼えていただろう!!!」



「諸星、今も昔も変わらねぇな。うはっ!」

「いじられキャラは昔からピョン。」

「ぐっ、河田、深津・・・。」



「諸星君は、口を開かなければ男前なのにね。」

「そうだな。話すとバカそのものだ。」

「なっ、牧瀬!徳永!!」



『ガツッ!』


「ぬ!」

「整列だ。ばかもん。」


赤木は、諸星の頭を掴み、強引に整列させた。




「スコアどおり、青!深沢体育大学!!!!」




審判が、深体大の優勝を宣言した。




「優勝おめでとうーーー!!」

「両チームともよかったぞーーー!!!」

「深体大おめでとう!!!!」

「慶徳もよくやったぞーー!!」




「この点差で、よくやったか。」

と三井。

「ちっ、まだまだ練習が足りないっすね。」

宮城が答える。

「この新人戦、深体大の凄さを骨身まで感じたな。」

「決勝戦で、14点差・・・。」

「難攻不落の深体大。あと2年のうちに、打ち崩すことができるか・・・。」


花形を初め、慶徳に14点差をつけ、圧勝ともいうべき勝利で、優勝を飾った深体大に、
どの選手も自信を失う。


だが、それを打ち消すような言葉が発せられた。



「2年後、うちが深体大の首をもらう。」



「!!!」


「!!!」


声の方向に振り返る各選手。



「やはり、お前か、牧。わりーが、深体大の首はうちがもらうぜ。なぁ、仙道。」

三井は、仙道に問いかけた。



ビックリしたような眼で、牧を見る仙道。



しばし、沈黙が流れた後。



「ええ。」

柔らかに答えた。



「ふっ、楽しみになったな。」

と牧が笑った。


「いや、深津や藤真、牧でもねぇ。No.1PGはこの宮城リョータだ!ねぇ、新庄のダンナ!」

「宮城、それをいうならスタメンPGを奪ってからにしろ!!
悪いが、白金にも、横学にも、河田を止められる選手はいない。
河田を止められるのは、俺だけだ!」


「柔よく剛を制す。河田を止めるのは、俺だ。」

答えたのは、花形。


「深津さんは、俺が止めます。」

「徳永は、俺が。」

両サイドの織田、大和も花形に続いた。



「では、2年後、全日本大学バスケットボール選手権大会の決勝の舞台でお会いしましょう。」



神がその場を締める。



「ふん!相変わらず生意気なやつだ。」

と三井。


「全日本大学バスケットボール選手権大会、楽しみだな。」

と新庄。


「2年後といわず、来年でもいいけどな。」

と大和。




「これより、表彰式を行います。」

と体育館にアナウンスが流れる。




「おっ!表彰式が始まるぞ!」


「牧さん。」

「あぁ。」



「仙道、帰って練習だ。」

「ふーーー。」



「さぁ、俺たちもだ。」

「あぁ。」



「ダンナ、俺たちも負けてられねぇぜ。」

「まずは、スタメンを奪え。他の大学のことは、それからだ。」

「ダンナは、そればっかりだな。」

「期待してるんだよ、お前に。」

「そうなんすか。」

「松本!余計なこというな!」

「ふっ。」




アナウンスの声を合図に、選手たちは、各方面へと歩みを進めた。



再び、熱い火花を散らす日を信じて。




第50回 関東大学バスケットボール新人戦


優勝 深沢体育大学


準優勝 慶徳義塾大学


第3位 名稜大学


第4位 白金学院大学



最優秀選手 河田 雅史



得点ランキング
1 河田雅史(深体大) 30.9
2 諸星 大(慶徳義塾大) 27.3 
3 市原朝日(名稜大) 27.2 


アシストランキング
1 深津一成(深体大) 13.1 
2 藤真健司(慶徳義塾大) 12.8 
3 仙道 彰(横学大) 12.0 


リバウンドランキング
1 赤木剛憲(慶徳義塾大) 14.5 
2 河田雅史(深体大) 14.2 
3 里中悠介(名稜大) 14.0 


ベスト5
G 深津一成(深体大)
G 諸星 大(慶徳義塾大)
F 河田雅史(深体大)
F 里中悠介(名稜大)
C 赤木剛憲(慶徳義塾大)







#12 大学 新人戦編 終了
#13 神奈川 国体編 に続く。

#396 【河田を超えろ】

2010-12-09 | #12 大学 新人戦編
新人戦決勝が行われている。


組み合わせは、深沢体育大学×慶徳義塾大学となっていた。



準決勝第1試合、優勝候補に名を挙げられたライバル大学名稜大を16点差の圧勝劇で下し、
堂々の決勝進出を果たした深体大。



準決勝第2試合、壮絶なシーソーゲームを制し、ラスト3分で脅威の底力を見せ、
6点差で白金学院を破り、初めて決勝戦に進出した慶徳義塾。



現在、試合終了まで、1分を過ぎ、深体大応援団は、カウントダウンを始めていた。




「50秒!!!」




ボールは、MVP確実の河田がキープしている。


対峙するのは、C赤木。



(河田・・・。)


「随分、成長したな。」にっ。


「・・・。」

睨みをきかす赤木。



「だが、それはインサイドだけの話だ。」


「!!!」



『ダム!』


3Pラインのわずか内。



サイドにワンドリをすると、鮮やかなジャンプシュートを放つ。



そのスピードに赤木はついていけない。



『シュパ!!』




「うぉぉぉーーー!!いいぞ!河田!!!!」

「ナーーーイッシュ!!!」




「ぐっ。」

拳を握り締める赤木。



この試合、河田はアウトサイド主体でオフェンスを展開。


ジャンプシュートから、確実にネットを揺らしていた。



『パン!』


「赤木、まだ諦めんな!!」

尻を叩くのは、藤真。


「当たり前だ!!」


(くそう。河田!)

悔しさを表に出す赤木。



ボールは、素早く藤真に投げ入れられた。


『ダム!』


ハーフラインを越えたところで、深津が並走する。



「簡単に抜かせないピョン。」



『チッ!』



深津の指先が、わずかにボールに触れた。



「!!!」




「ナイススティール!!」

「深津!!ナイスディフェンス!!」

「残り40秒!!!」




体勢を崩しながらも、まだ藤真がボールをキープしていた。


「藤真!こっちだ!!」



『ビィ!!』


ボールは、諸星へ。


その諸星をマークするのは、SF徳永。

高校3年生時、選抜準決勝以来の対戦である。


身長はもちろん、体格で優位に立つ徳永、そして、スピードにおいても、諸星と同等の力をつけていた。

慶徳義塾が、思うように得点を奪えないでいたのは、この徳永が諸星を抑えていた功績が大きい。



『キュ!!』


「そう何度も止められてたまるかよ!!」


「何度でも止めちゃうよ!」にや。



『キュッ!!!』


『ダッダム!!』


『ダムダムッ!!』



「!!!」


(ぬ!!)



「もらったーー!!」


諸星は、徳永をかろうじて抜き去った。


瞬発力では、わずかに諸星。


深体大インサイドを切り裂くように、ゴールを狙った。



「黒星!こい!!」


河田が笑いながら、諸星のコースに入った。



「諸星だっつってんだろ!!」



『ダン!』



凄まじい跳躍を見せる諸星。



「ビッグスターーシューーーート!!」



「面白い!」にかっ。



河田も諸星目掛けて跳んだ。



「なんてな。かかったな。河田ーー!!」にやっ。



『シュ!』



諸星は、一瞬にしてボールを背中に送り、バックビハインドパスを放った。



「赤木!!受け取れ!!」



「甘いぜ!!白星!!」



『バチ!!』


「!!!!」


「!!!」


「なっにーー!!」



河田の右手がボールを止めた。




「うわぁぁーーー!!さすが河田!!!」

「あのパスを止めやがった!!!」

「すげーーー!!!」

「ゴール下の守護神だーーー!!!」




「まだだ。」

「ボールは生きている。」

牧と仙道がつぶやく。




弾かれたボールを、慶徳のSF真下が拾い上げる。


『バッ!!』



「打たせませんよ。真下君。」

目の前には、深体大SG牧瀬。


真下は、背筋を伸ばし、藤真に眼をやる。



(リターンパスですか。)


その瞬間。



『クル!』



「!!!」


「!!!!」




「巧い!!!」

「絶妙!!!」




真下は、牧瀬の予想の逆を突き、鋭い回転から抜き去ると再び深体大ゴールを狙った。




「あぁいうところ、ついてくるんですよね、真下さんは。」

と神がつぶやく。

「試合終盤、真下にようやられおったからな。」にこ。

土屋が答える。

「それをいわれるとつらいですね。」

「真下とお前、よう似てるで。嫌なところをついてくるところとかな。」にこ。

「んっ、褒め言葉と受け取っておきます。」にこり。




『キュッ!』


「まだまだ!!」


インサイドの要、河田が真下の前に。


慶徳義塾のオフェンスを幾度となく、止めにかかる。



「・・・。」



『ビィ!!』



だが、真下は、河田との距離を冷静に測り、ゴール下にボールを供給。



「!!!」



『パン!!』



ボールを受け取ったのは、もちろん、この男。




「赤木いけーーーー!!!」

「決めろーーーー!!!」




「うぉぉーーーー!!!!」



だが。



「打たせるもんかよ!!!」



後ろから徳永が、ブロックに跳んで来た。



そして、前からは河田が立ちふさがる。



(決めてやるぞ!ゴール下では、誰にも負けん!!!)



「ウホォォォーーー!!ウホッ!!!」


「!!!!」


「!!!」


「!!!」








続く。

#395 【決勝戦の行方】

2010-12-06 | #12 大学 新人戦編
『ダムダム!』



『キュッ!』



『キュ!』



『パシ!』



『ダム!』




「ディーフェンス!ディーフェンス!ディーフェンス!」

「オッオッオフェンス!オッオッオフェンス!オッオッオフェンス!」

「ディーフェンス!ディーフェンス!ディーフェンス!」

「オッオッオフェンス!オッオッオフェンス!オッオッオフェンス!」




東京代々木第二体育館に、埋め尽くされた観客席。


そして、両大学を応援する大応援団。


全ての人の視線が、体育館の中央に位置する28m×15mのバスケットコートに注がれていた。



本日は、第50回 関東大学バスケットボール新人戦の決勝戦当日。


午前中に、第3位決定戦が行われ、現在、午後2時過ぎ。


決勝戦の第4Qを迎えていた。


一般観衆、応援団とは、雰囲気の違う一団が、腰をかける観客席があった。



真剣な眼差し。


そこには、決勝の舞台に辿り着けなかった各大学の選手らが座っていた。




『ザシュ!!』



「ぶし!!!」




「ナーイシュ!カワタ!ナーイシュ!カ・ワ・タ!」




河田が、力瘤を見せ、チームメイト、応援団を盛り上げる。


アシストを決めた深津がクールに手をあげる。




観客席の最後方。


「河田をどう見る?」

ある男が仙道に問いかけた。


「・・・。コート、いやこの体育館にあの人を超えられる人はいない。
間違いなく、河田さんがこの世代のNo.1でしょうね。」

「あぁ、そうだな。そして、深津。その河田の力を余すことなく、発揮させるゲームメイクと・・・、これだ。」




『パシ!!』




「スティーーーール!!」

「さすが深津!いいぞ!!」




「一瞬の隙もないディフェンス能力。」




『シュパ!!』




「きっ決めやがった!!」

「速攻からのジャンプシュート!!」


「ナーイシュ!フカツ!ナーイシュ!フ・カ・ツ!」




「シュートの安定性。」

「トータルバランスを考えると、紛れもなく深津さんが、現No.1PG。」

と仙道。

「そうなるかもしれないな。」

苦笑いする男。




『バチィン!!』


リバウンドをむしり取る深体大#24の選手。




「控えCにしては、いいプレーヤーですね。」

と織田。


「辻・・・。」

横学大のC品川が、名前をつぶやいた。

「あの#24、知ってるのか?」

横学大SG三井が問う。


「岡山県代表桃倉工業出身の辻崇。
高校当時は、決していい選手とは呼べなかったが、深体大に入学し、化けたようだ。」

「唐沢監督という名指導者、そして、河田を初めとする最高峰のプレーヤーが相手、化けても不思議はない。」

拓緑大SF大和が付け足す。

「体格を活かしたリバウンドと、あの高身長。深体大はまたひとつ高見に上ったな。」

と同じく拓緑大PF花形。




深体大はこの日、1年生SGの加藤をシックスマンに使い、スタートには、206cmのC辻崇を投入していた。




試合終了まで残り3分。



まもなくして、新人戦優勝大学が決定する。




「保のパワードライブは、さらにキレが増した。
どんな練習したら、あぁなるのか、全く恐れ入るな、深体大。」

と元チームメイトの神体大PF新庄。

「牧瀬さんの3Pは威力絶大。シックスマン加藤さんの得点力も脅威。この深体大に穴はない。」

と拓緑大PG織田。



「正しく最強のチームだな。」

三井が締めた。




だが。



コート上で、鼓舞する#14の選手。



『パンパン!!』


「いくぞ!まだいけるぞ!!!」


それに応える各選手。


「おう!!」

「あぁ、やってやるぜ!!」



パスを回し、フリーマンを探す。



トップから45°、45°からインサイド。



再び、45°へリターンパス。



シュートフェイクでディフェンスを引き寄せると、ノールックでトップへ。



(任せたぜ。)

と#15。



(外してもかまわん。リバウンドは絶対に俺が獲る!!)

と#20のインサイドプレーヤー。



(このパスは、必ず決める。)



『シュ!!』



綺麗な放物線を描いたボールが、会場の視線を集める。



『パサ!』



伸びる左腕。



仲間の想いに応えるように、鮮やかにネットを揺らすシュートを決めた。



電光掲示板の数字が変わる。


60

61

62

63 



「よし!!」

強く拳を握り、叫ぶ。


「もう1本!!引き続き、オールコートだーー!!!」

「おう!!」

「あぁ!!」



「最後まで俺たちの力を出し切るぞ!!」


「おう!!!」




その光景を見つめる観客席の一番後ろの男がつぶやいた。




「藤真・・・。ナイスシュート。」

「さすが、藤真さん。いいところで決めてきますね。」

「あぁ。あいつは、俺が認めた唯一無二のPGだ。」にこ。



そこには、準決勝、慶徳義塾に敗れた白金学院の牧の姿があった。








続く。

#394 【激戦終止符】

2010-12-04 | #12 大学 新人戦編
白金 80
慶徳 83




第4Qも3分が経過。


出口の見えないトンネルを通っている。



『ダム!』


トップでボールをつくのは、粕谷。


野辺をゴール下から引きずり出し、牧に変わりゲームを作る。



その牧は、ローポスト。


インサイドにいた。



第4Q、藤真とのミスマッチを利用し、1本のシュート、1本のアシストを記録している。




「あのやろーが、PGをすることにより、野辺を引きずり出し、牧にスペースを与えている。
一石二鳥じゃねぇか!」

と宮城。

「でも、俺たちとの試合では、あんな素振りを一つも見せなかったぜ。」

と三井。

「白金に甘く見られていたんじゃないか。」

「いや、仙道が相手じゃ、牧がインサイドにいるメリットもなかったということだ。」

新庄に答えた大和。


「この粕谷のPGも苦肉の策ではないでしょうか。
点に繋げやすいポジションが、牧さんのインサイドだけという考えもできます。」

分析する織田。

「それほど、慶徳のディフェンス、藤真さんのディフェンスが白金や牧さんを追い詰めているということかな。」

仙道が締めた。




『パシ!』




「キターーーー!!」

「いけーー!牧ーーーー!!」

「ノッている牧だーーー!!!」




「ノッている?果たして、そうかしら。」

と弥生。

「ん!?」

と中村。




「ぐっ!」


『バッ!』



『シュ!』



インサイド、ローポストの牧は、藤真と詰め寄る赤木の間を割り、シュートを打つ。



(俺の前では決めさせんぞ!!牧!!!)


赤木の手の平が、牧の視界を遮る。



『ガッ!』



ボールはリングを通らない。



(ちっ。赤木め。)



『パシ!』


零れ落ちるボールを諸星が奪う。




「うわーーーーー!!!」

「おしいーーーー!!!」




「惜しくはない。当然よ。藤真君と赤木君のディフェンスは、強固なもの。
そして、慣れないローポストでのプレー。
そう簡単に点が奪えるものじゃない。それに・・・。」

と弥生。


「それに?」


(牧君も気付いているはず・・・。藤真君たちとの差が昔ほど大きくないことを・・・。」




ボールは、諸星から真下へパスアウト。


真下は、ボールをキープし、各選手の動きを確実に把握してから、藤真にパスを出す。


決して慌てた素振りは出さない。


冷静に試合を読み、スローゲームへと持ち込む。





「あの辺の試合読みはさすがだな。浦安の裏エースと呼ばれていただけのことはある。
決して、ペースを乱さない。
1番から3番、どのポジションでも高いクオリティを見せ、
裏方にも徹しられる真下は、藤真や諸星とも相性がいいはずだ。
なにせ、あのワガママの市原を一流のスコアラーにさせたんだからな。」

と新庄。




「藤真、落ち着いていこう。」


「あぁ。さぁ、1本奪うぞ。」


そういうと藤真は、右手の人差し指を上げた。




再び観客席。

「諸星、野辺、真下だけでも、ベスト8くらいの力を持ち合わせ、そこに藤真と赤木・・・。
台風の目は、やはり慶徳だったか。」


「いや、試合はまだ終わってない。」

大和にきっぱりと答える仙道。




そして、5分が経過。


試合残り時間1分。


勝負は、ほぼ勝敗決したといっても過言ではないスコアとなっていた。



トップの位置でボールをつく牧。



『ビィ!』



『パシ!』



『パシ!』



『シュパ!』



的確にパスを回し、土屋が冷静にミドルシュートを決めた。




「30点目!両チーム、通じて最高得点をたたき出した!!」

「土屋君の場合、あの位置からのパスも考えられるから、あのシュートを防ぐことは難しい。
打点の高さも魅力的だわ。」




(ちっ、土屋のやろう、この時間帯でも、跳躍力が落ちねぇ。)



慶徳のオフェンス。



(藤真!)



『コク。』



(やり返してやるぜ。)



藤真から諸星へ。



『パシ!』



『パン!』



『ザシュ!』



野辺と諸星のコンビプレー。


白金のディフェンスを切り裂いた。




「負けてない!!諸星君も29点目ですよ!!」

「第2Qから本調子と考えると、最強SGは伊達じゃないわね。」




両校が次元の高いプレーを見せる。


ワンプレーワンプレーが会場にいるものの胸に深く刻まれていく。


そして、観客を魅了するなか、試合時間だけが消費されていった。



白金の十八番。



『ビィ!!』


牧のペネトレイトから、パスアウト。



『シュ!』


神の放つ3Pシュート。



『キュ!!』


真下が強烈なプレッシャーをかける。



『ガツ!』



リングに弾かれた。




「いつもの神なら決めて当然だぜ。」

「真下相手に相当な負担があったのだろう。」

三井に答える新庄。




「この時間帯で神君が外したーーーー!!!」

「勝利の女神が微笑むのは・・・。」




ゴール下。



赤木と荻野のポジション争い。


野辺が粕谷を抑え、牧が飛び込みリバウンドを狙う。


土屋も諸星のスクリーンアウトを外した。




「うぉぉぉーーーー!!!」


「誰にもやらん!!!」


「おぉぉーーーー!!!」


「もらったぁーー!!」


「トゥーーーーース!!」



『チラ。』


藤真が残り試合時間を確認する。


観客席からは、カウントダウンが始まっていた。




「3!!」



「2!!」



『バチィーン!!』



ボールが、大きな手の中に収まった。



そして。



『ビィーーーー!!』



試合を告げるブザーが響き渡った。



高く放り出されたボール。



沸き立つ会場。



なだれ込む控え選手。



激戦を戦い抜いた選手に安堵の表情が見えた。



そして、涙を溜める男の姿があった。








続く。

#393 【得体の知れぬもの】

2010-12-02 | #12 大学 新人戦編
白金 73
慶徳 77




-----------------------------------------------

 C…#26 村松 忠文 195cm/2年/浜ノ森

PF…#43 粕谷 力 192cm/1年/梅沢

-----------------------------------------------




「粕谷だーーーー!!」

「なぜここで粕谷だーーーー!!」

「白金血迷ったかーーー!!」




「ぬっ。この粕谷を馬鹿にしておるな。」


『パン。』


「結構じゃないか。白金の秘密兵器の力を見せてやれ。」

と牧。


「トゥース!!」



(得体の知れないやつ・・・。)

粕谷には野辺がついた。



「野辺殿。容赦はせぬぞ。」

(ぬっ。なんだこいつ。桜木と同じ匂いを感じる。)



エンドラインには神。



『キュッ!!』


『サッ!』


慶徳は、再びオールコートを敷いた。




「どっちだ!!」

「オールコートプレス!!」




オールコート、綺麗な1-2-1-1を形成。



『ビィーーー!!』



開始。



『キュ!』



(作戦通りいくで。)

「何度もやられるわけにはあかんやろ!」


そういうと、諸星を引き連れて、土屋は駆け上がる。


「ん!」

(どこいきやがる!)



『キュ!』



「!!!」


「!!!」


(ついて来い!藤真。)

あわせて、牧も駆け上がる。


(牧!何をする気だ!)



「なにーー!」


入れ替わるように、粕谷が慶徳コートから、神の下へと走り出した。



「なっ!!」

驚く野辺。


慶徳ベンチ、観客、仙道らも驚いた表情を見せる。



「神殿。」



『パシ!』


神から粕谷へ。

そして、神も走り出した。




「なっなんだーーー!!」

「粕谷が運ぶのかーーー!!」

「PFじゃねぇーーのかよ!!」

「ドリブルできるのか!!」




「あいつはインサイドプレーヤーとしては3流でも、ガードなら1流だ。」

とベンチの村松は汗をぬぐう。




白金の予想外のオフェンスに。



『ダムッ!!』


「!!!」


「!!!!」




「野辺が抜かれたーーー!!」

「あの体で意外と速い!!!!」




「織田、あの粕谷ってやつ知ってるか?」

と花形。

「埼玉県代表梅沢高校のプレーヤー。それしか知りませんが。」

「何者だ、あいつは・・・。」




ドリブルで駆け上がる粕谷。


『キュ!』


「てめー、なにやってんだ!!」

諸星がカバーに入る。



『ダム!』



「きらーーん!」



『クル!』



「!!!」


「!!!」


「なに!!!」




「巧い!!」

「あいつ!やるぞ!!」




鮮やかなバックロールで諸星を抜き去る粕谷。


そして、すぐに土屋にパス。


視野も広い。


自身は、インサイドへ飛び込んだ。



『バッ!』


カバーに入った赤木の前で面を取る粕谷。



「パス!!」



(いけるんか!)

そこに、土屋からのリターンパス。



「きらーーん!」



『ダム!』



ワンドリ。



『クル!』



『シュ!!』



そして、シュート。



『バチーーン!!!』



「ぬお!」


「!!!!」


「!!!」



「あっちゃーー。」

と土屋。

「・・・。」

無言の神。

「やはりな・・・。」

苦笑う牧。



粕谷のシュートは、赤木のハエタタキにより、豪快に叩き落された。




「なっ何だ、あいつ!インサイド、めちゃくちゃ弱いぞ!!」

「確か、準々決勝のときも、見せ場がなかったはず!!」

「面白れーーー!!」




「なんだ、こいつは・・・。単調すぎる。」

(昔の桜木のようだ。)

赤木も困惑する。



ボールは、サイドラインを割った。



「・・・。」

「・・・。」

野辺と諸星が無言で見つめあう。

(なんだ、あれ・・・。)



「牧、あいつは?」

思わず藤真が問いただした。

「ふっ。俺にもわからんやつだ。」



埼玉県において、一時その名を轟かせた192cmの長身PG。

それが、粕谷であった。

その身長、体格とドリブルテクニックを買われ、白金学院に入学したが、
手薄なインサイドを考え、すぐにPFへとコンバートされる。

現在、インサイドの猛特訓中であった。



白金にとって、最終局面での大きな大きな賭け。


慶徳のオールコートの突破口、逆転への起爆剤として、投入された切り札G粕谷。


白金の思惑通りの働きを披露するのか、はたまた、慶徳が抑え込むのか。


まもなく終演を迎える。




白金 73
慶徳 77







続く。

#392 【慶徳のオールコート】

2010-11-30 | #12 大学 新人戦編
白金 73
慶徳 73




第4Q開始。


慶徳は、得点を奪うや否や、オールコートプレスを繰り出した。

エンドラインの荻野がパスの供給先を探す。



『キュキュッ!!』


『キュ!!』



(いれられない!)




「パスがいれられない!!」

「プレスが効いているぞ!!!」

「足が止まらない!!」




慶徳ベンチ。

「・・・2!1!」




白金ベンチ。

「パス!パス!」

「前に投げろーーー!!!」




「0!!」




『ピィーーー!!』




「オーバータイムだーーーー!!」

「慶徳が抑えたーーー!!」

「すっ凄いプレスだーーーー!!!」

「足動いているぞ!!!」




「よっしゃ!」

諸星がガッツポーズをする。




「あの白金を抑えるか。」

「このオールコートは本物だぞ。」

大和と品川。




「すっすごい!いきなり、抑えちゃった。」

「慶徳にこんな隠し玉があったなんて・・・。」

記者席の2人。




会場が騒然とするほどの破壊力を披露した慶徳のオールコートプレス。



(ちっ。慶徳のプレスにここまでの完成度があったとは・・・。藤真のやつ。)

「切り替えるぞ!ディフェンス、やり返すぞ!!」

「おう!!」






慶徳のオフェンス。


藤真から真下、真下から赤木へと回ったボール。




「また赤木だーーー!!!」

「ノッてるぞ!!」

「来るぞ!ゴリラアタックーーー!!!」




『ダム!』


ワンドリからポストプレー。



『シュ!』


シュートフェイク。


C村松があっさりとひっかかる。


そこに諸星が土屋を振り切り、突っ込んでくる。



『サッ。』


赤木のハンドオフパス。



「!!!」


「!!」



『シュパ!』



諸星がドライブを決めた。




「慶徳!逆転だーー!!!」

「来たぞ!来たぞ!!」

「けーーいとく!けーーいとく!」




白金 73
慶徳 75




「もう1本いくぞ!!!」

「おう!」



『キュッキュ!!』


疲れを微塵も感じさせない。

慶徳は再び粘り強いディフェンスを見せる。



(一気にケリをつけてやる!!)


(この時間帯の神には要注意だ。)


「土屋がいったぞ!気をつけろ!」


「死守ーーーー!!!」



藤真の執念が仲間に波及する。


「ここが勝負どころだーー!!!」



エンドラインの荻野。

(まただ。パスが出せない!)



慶徳ベンチが再び盛り上がる。




「・・・3!2!1!」




そのとき。


「こっちだ!!」

牧であった。


藤真のマークは外れていない。



「投げろ!」



『ビィ!』



荻野の苦し紛れのパス。



牧へは。



『パシ!』



届かない。



「諸星!!」

「なぜそこにいる!!」




「また獲った!!」

「慶徳のオールが凄い!!」




「マンツーじゃない。」

観客席の仙道。


「ゾーンプレスだ。」

眺めのいい観客席からはよく見える。




2本目のオールコートは、マンツーマンではなくゾーンであった。

そのため、いるはずもない場所に、諸星がいたのであった。



『キュッ!』



『ダム!!』



「しゃーーー!!!」



『シュパ!』


荻野を交わし、2本連続のシュートを決めた諸星。




「うわぁぁーー!!」

「慶徳がノッてきたーー!!!」

「いけーーーーー!!!」




白金 73
慶徳 77




『ピィーーーー!!』


第4Q開始わずか、白金はたまらずタイムアウトを取った。




『パチ!』


ハイタッチを交わす慶徳ベンチ。

最高の雰囲気を作り出している。




かたや、白金。

思いがけない連続失点に、意気消沈。


「なんてプレスしてくるんだ・・・。しかも、マンツーとゾーン・・・。」

「2年間でここまで完成させてくるなんて。」

「さすが慶徳やな。個々の能力が高い分、プレスの完成度も高い。」


「飽きさせないやつらだな。」


しばしの沈黙。


こういう場面では決まって、この男が口を開く。


「まずはボールを入れないと何も始まりませんね。パサーは俺がやります。
藤真さんと諸星さんを相手では、牧さんも簡単に運べるわけじゃないですから、
ここは牧さんを囮にして・・・。」


『チラ。』


牧、土屋が振り返る。



「粕谷、準備はいいか?」



「トゥース!」



準々決勝、横浜学芸大戦。

全く活躍する場のなかった粕谷が、再びコートに足を踏み入れる時を迎える。








続く。

#391 【執念】

2010-11-27 | #12 大学 新人戦編
白金 71
慶徳 70




一般受験、一般入部を経て、新人戦のスタメンを勝ち取った藤真と赤木に、
世代最強クラスのSG諸星と山王工業のPF野辺が加わり、大学制覇を狙えるチームに仕上がった慶徳義塾。


かたや、白金学院。

深体大の推薦入学を断り、世代トップクラスの土屋、荻野とともに、全国制覇を誓い、
神という最強パートナーを再び得た牧は、深体大の首を虎視眈々と狙う体勢を整えた。


決勝戦並みに白熱してきたこの両校の試合も10分で雌雄が決する。




『ピィーーーー!!』




「オッ!オッ!オフェンス!!オッ!オッ!オフェンス!!」

「ディ!ディ!ディーーーフェンス!!ディ!ディ!ディーーーフェンス!!」

「オッ!オッ!オフェンス!!オッ!オッ!オフェンス!!」

「ディ!ディ!ディーーーフェンス!!ディ!ディ!ディーーーフェンス!!」

会場を飲み込む大声援。




神のスローインから、第4Qが開始された。


「牧さん。」

「いくぞ。」


迎え撃つ慶徳は、ハーフで構える。



『キュッ!』



『キュッキュ!!』




「慶徳は、マンツーマンに変更してきましたね。」

「悪いゾーンじゃなかったけど、白金を抑えるまでには至らなかったからね。」

と弥生。




「最後の勝負は、マンツーマンを選んできたか。」

「そのほうが選手も観客も・・・、俺たちも燃える。」

「それに、ダンナがノッている今、そう簡単にゴールを奪えねぇ。ねぇ、三井サン。」

「あぁ。終盤の赤木は、俺の次に頼りになるからな。」

「えっ。あっ、そうすね。」




赤木は村松、野辺は荻野、真下は神、諸星は土屋、そして、牧には藤真。


両校、メンバーチェンジはない。


正真正銘の真っ向勝負を挑む。



『ダム!』


牧がいきなりペネトレイトを発動した。




「うぉぉーーー!!いきなり!!」

「第4Qも牧全開だーーー!!!」

「全く失速してねぇーーー!!」

「いや、むしろさらに鋭いぞーーーー!!!」




藤真も負けていない。



『キュッ!!』


コースを塞ぎ、諸星のほうへと牧を誘い込む。




「巧い!!!」

「誘い込んだ!!!」




『バッ!!』


(心でぶつかってやるぜ!!牧!!)


諸星が一瞬にして、牧のコースへと入った。



と同時に。



『ビュン!!』



「あっ!!」


藤真と諸星の間を裂く、ハイスピードなバウンドパス。



(逃げやがったな!!)



『バス!!』


ミドルポストでボールを受け取ったのは、諸星のマークが外れた土屋であった。



だが、慶徳もそれくらいのことは、承知の上。


すぐに土屋に襲い掛かる赤木。



「来い!!」


両足を広げ、どっしりと構える。



(赤木か。)



『ダム!』


ワンドリをつく土屋。


そして、赤木の体を抑えるように、フック気味にシュートを放つ。



「!!!」


「!」にっ。



『スト。』


赤木のディフェンスを物ともしない鮮やかで軽やかなフックシュート。




「入ったーーーー!!!」

「巧いぞーーーー!!!」

「さすが土屋だーーー!!」




「・・・。」

(あの体勢から・・・。やはり、仙道に近いものを感じる・・・。)



「おい!牧!!俺の心を踏みにじったな!」

「何のことだ?」


(ちきしょう、牧め。俺との真剣勝負を避けやがって・・・。)


諸星もまた、藤真や赤木とは違った意味で牧に執着するのであった。




白金 73
慶徳 70




「ドンマイ!諸星も赤木もナイスカバーだ。」にこ。

藤真が声をかける。




「インサイドを自由にやられるとなると慶徳は厳しいぞ。」

「土屋も巧いが、牧のパスも凄い。」

「やはり、藤真では牧を抑えられないか。」

「そんなことはない!藤真は、牧を超える。」

花形が力強くいう。


しばしの沈黙。


仙道が口を開いた。



「勝てる要素も十分にあります。例えば・・・。」




『ザシュ!!』




「!!!」

「!!」

「!!!」


「外角とか。」

と仙道。




「藤真の3Pーーーー!!!」

「あっさり同点!!!」

「すげーーぞ!藤真!!!」




「やるな。」にや。


「まだまだ。」にこ。


牧と藤真はこの緊迫した状況を楽しんでいるかのように微笑んだ。




「牧さんにはないモノを藤真さんは持っている。」


「それが外角か。」

「まだありますよ。」にこ。

「ん!?」

「!?」




白金 73
慶徳 73



(勝負をかけるぞ!)

「いくぞ!オールコートだ!!」




「オールコート!!」

「第4Qも始まったばかりだぞ!!!」

「慶徳が勝負に出たーーーー!!」




「OK!作戦通りといこうか。」

と諸星。 

「抜かれてもかまわん!ゴールは俺が死守する!!思いっきりいってこい!!」

と赤木。



『キュッ!!』


『キュッキュ!!』



マークマンに張り付く慶徳選手。


そして。



「ボールは入れさせない。」

と睨む藤真。


「望むところだ。」

睨み返す牧。



『キュキュ!』


『キュッキュッキュ!!』




「凄いオールコートだ!!」

「慶徳が走りこんでいるぞ!!!!」

「足が止まらない!!!」

「これはいけるかもしれない!!!」




「仙道、牧になくて藤真にあるモノって体力か?」

尋ねる新庄。


『チラ。』

仙道は、軽く三井を見る。


「いや、執念だな。」

三井が代わりに答えた。


「俺にもよくわかりまっせ。ライバルにはぜってー勝ちたいもんすからね。
特に負けっぱなしはな。」

と宮城も答える。


「執念?」


「ただの執念じゃねぇ。牧への執念だ。」

新庄に答える三井。

「牧への?」

「確かに牧さんへの執念は、牧さんにはありませんね。」

と織田。

「牧に勝つことを夢見て、励んできた藤真は、赤木や諸星といった強力な仲間を得て、
今牧を倒す最高のチャンスを得た。
このチャンスを簡単に失う藤真じゃない。」



「波乱はきっとある。」

最後、仙道が締めた。




試合終了まで残り10分。



藤真の牧への執念が勝つか?


牧の勝利への飢えが勝つか?


5年目の対決を迎えた2人の対決はいかに・・・。




白金 73
慶徳 73







続く。

#390 【差】

2010-11-25 | #12 大学 新人戦編
白金 69
慶徳 68




第3Q、残り30秒を残すあまり。


白金のオフェンス。

牧はペネトレイトから、藤真の4つめのファウルを狙った。


土屋は赤木と激しいポジション争い。

藤真へのフォローに行かせない。


神は動き回り、荻野も再び3Pライン外で構えた。


白金の全ての選手が、牧の援護に回る。




『ダム!』


『ザッ!』



牧はやや強引にインサイドを狙う。


藤真も壁となり、簡単には突破を許さない。



(点もファウルもやるつもりはない!!)


(そう簡単には奪えんか。)




「止めたーーーー!!!」

「いいぞ!藤真ーーー!!!」

「藤真さーーーん!!!」




(負けてたまるか!)


藤真はここ一番の集中力を見せ、牧の猛攻に耐えた。



(やるな。)


『チラ。』


土屋にアイコンタクトを送る牧。



(人遣いの荒いやっちゃな。)


牧に応えるように、土屋が動いた。



『ガッ!!』



「!!」


「!!!」



ハイポから藤真の死角へスクリーンプレー。



「!!!」



『ダム!』



(ナイススクリーンだ。)


牧のスピードが上がる。



『キュ!』 


藤真を抜き去る。




「巧い!!!」

「土屋のスクリーンプレー!!」

「ナイスコンビプレーーーー!!」




(土屋!何度邪魔するか。)

と藤真。


土屋の完璧なスクリーンは藤真の動きをシャットアウトした。


(任せたで。)



再び対峙する牧と赤木。


「・・・。」にっ。


かすかに牧が笑った。



『ピク。』


それを見て、赤木も反応。



そして。



赤木の脳裏に浮かぶ光景。


牧の誘導に乗って、藤真が与えたバスケットカウント。


鮮明に映し出される。



「勝負だ!赤木!!」

牧は誘った。



「・・・。」

(受けて立つ!)



藤真の脳裏にも赤木の言葉がよぎる。


(「俺もブロックに跳んだかもしれん。例え、ファウルになるとわかっていてもだ。」)



「赤木!!!」



(わかっておる!だからこそ、止める!!)



「うぉぉーーー!!」



『サッ!』



牧は簡単なパスフェイクをひとついれ、ゴールに向かって跳んだ。



『ダン!!』


『ダンッ!』



(叩き落す!!)


赤木も跳んだ。



(もらったぞ!!)



だが。



牧のコースに赤木の体はない。



「!!!」



(ちっ。交わしてきたか!)



赤木は牧との接触を避け、最高のタイミング、コースで牧のブロックに跳んでいた。



(だが、2点はもらう!!)



『シュ!』



牧は、赤木の腕を交わし、シュートを放った。



とその瞬間。



『バッチィーーーン!!!』



「なに!!」



牧のシュートは豪快に弾き飛ばされた。


それは、センターラインに届きそうなほどの威力であった。



「!!!!」


「!!!」



「リングは通さんぞ!!」



『ピィーーーー!!』



「ハッキング!!ツースロー!!」 


審判が、赤木のファウルを告げ、2本のフリースローを与えた。



ざわつく会場。




「今のがファウル!?」

「審判厳しいーーーー!!!」

「ノーファウルだろ!!!」




会場は、赤木のブロックに沸き立つ。




「でも、赤木すげーーーー!!」

「うぉぉーーーー!!!」

「すげーーーブロックーー!!!」

「赤木が叩き落したーー!!」

「すごいぞ!赤木ーーーー!!」

「なんてブロックなんだーーー!!」




「はぁはぁ。」

(ファウルか・・・。)

赤木の呼吸は激しい。


(・・・。)

赤木を見つめる牧。



「赤木!ナイスファウルだ!」にっ。

藤真は微笑んだ。

「ん。」


「ナイスファウルだ。惜しかったな。」にこ。

藤真は繰り返した。


「すまん。俺も・・・。」

「お前も牧には負けてない。俺が保証する。」

「藤真・・・。」


「さぁ、フリースローだ。」


高校時代から打倒牧を掲げた両雄は、心が通じ合っている。

お互いの実力を信じ、認めている。



「昔のようにはいきませんでしたね。」

と冷静な口調の神。

「あぁ、少し侮りすぎたかもしれん。差が詰められたかもな。」

「そんなことはないですよ。赤木さんに体で張り合える選手はそうはいない。
しかも、PGで張り合えるなんて、牧さんくらいしかいませんよ。」にこ。

「ふっ。ありがとな。」



(だが、藤真も抜けなかった。赤木にもブロックされた。本当に差は縮んでいるかもしれんな。)



「ったく。藤真も赤木もどうかしてるぜ。牧に対して、執着しすぎなんだよ!」

と諸星。

「うらやましがるな。」

「なっなんだよ、野辺っち!」

「お前も牧に相手にしてほしいなら、心でぶつかることだ。」

「いつから、俺に物いえるようになっ・・・!おっ、おい!」


「さぁフリースローだ。」



このあと、牧は2本のフリースローを沈めた。



第3Q残り18秒。



慶徳オフェンス。

藤真は、きっちりと時間を計り、最高のパスを供給した。



『バス!!』



「うぉぉーー!!!」




応えたのは、もちろん赤木。

先ほどのお返しとばかりに、白金のゴール下でねじ込んだ。



『ピィーーーー!!』



第3Q終了。 


勝負の行方は、第4Qに託された。




白金 71
慶徳 70







続く。

#389 【牧の狙い】

2010-11-22 | #12 大学 新人戦編
白金 66
慶徳 66




第3Qも残り1分を切り、同点。


ボールは、牧がキープ。

そして、意表をつかれたパスアウト。

3Pライン外。


ボールを受け取ったのは、PF荻野であった。



『シュ!』


3Pを放つ。


神もうなずくそのシュートは、力強く回転し、藤真、赤木、牧の頭上を越え、ネットを激しく揺らした。



『ザッシュ!!』




「きっ決まったーーーー!!」

「入ったーーー!!!」

「荻野の3Pーーー!!!」

「すげーーーー!!!」




「よぉし!」

荻野は軽く拳を握る。


「ナイッシュ!!」

「いいぞ!!」

「おう!!」

仲間の声に答える荻野。


牧の想いがパスを通して伝わり、土屋や神らに応えた荻野のその表情は、
本日一番の笑顔となっていた。



「練習していたのか?」

諸星が尋ねた。

「まぁな。いい手本が身近にいたんでな。嫌でもいいイメージがインプットされたんだ。」

「神か・・・。」


2ヶ月とはいえ、大学バスケ界をリードするであろうシューターが身近にいたために、
荻野は手本とすることができ、3Pに対し、苦手意識を持つことはなかった。

自分も神のように打てば入るのでは。

その妄想にも似たイメージが、荻野に強気なシュートを打たせたのであった。



(ちぃ。俺としたことが、焦っちまったか。赤木一人に牧を任せておいても、そう簡単に点を奪われるわけじゃねぇ。
俺たちが焦ってボールを奪いにいったことで、結果的にフリーマンを作り、点を奪われた・・・。
荻野の3Pを警戒できなかったのは、俺の責任だぜ・・・。)

悔しい表情を浮かべる諸星。



試合も終盤に差し掛かろうとするころ、慶徳はついに白金学院にリードを許した。



「勝負は、お預けだ。」

と自軍コートへ戻る牧。


「フン!次は逃げるなよ。」



『パン!パン!』


「!!」

「!!!」


「切り替えてくぞ!!1本取り返すぞ!!」

再び赤木の咆哮。


(へっ。そうだな。考えていても仕方がねぇ。)

「藤真!頼むぜ!!」

「ああ。」




白金 69
慶徳 66




赤木の力強い言葉は、チームを活気づけた。


藤真から真下、真下から野辺、そして赤木へ。



『ダム!!』


ローポストから、赤木がアタック。

荻野、神のダブルチームも物ともせずに、激しく攻める。



「うぉぉぉーーー!!」



『バス!!』



赤木は決めた。

ここに来て、攻守で慶徳を支える活躍をみせるインサイドの大黒柱。



「ウホッホッホ!!!」




「ゴリラ丸出しだな。」

「へっ。ダンナらしくなってきたぜ。」

薄っすらと笑う三井と宮城。




白金 69
慶徳 68




第3Q、残り39秒。

1点差。


白金オフェンス。

慶徳は、1-3-1。


トップの牧が睨みを効かせる。

目の前には、藤真。

そして、赤木の姿が目に映る。


(来い!牧!)


(次は止めるぞ!!)



『チラ。』



(35秒。)

「・・・。」


牧は考えた。

この35秒をどう有効に使おうかを。


点を決める。


流れを引き込む。


最終Qに繋げる。



『グワ。』

牧にオーラが放たれた。



「!!!!」

(来る!!!)



「土屋!!」

「OKやで!」


牧が声をあげ、土屋にハイポを指示した。

それに伴い、赤木が土屋を抑えにいく。



(これで、赤木は動けん。)にっ。


「・・・。」


(いくぞ。藤真!)



『キュ!!』


『ダム!』



藤真目掛けて、突っ込む牧。



「!!!」


(止める!!)



『キュッ!!』


『ダムッ!』



牧と藤真の1on1が開始される。

両翼の諸星、真下は、フォローに行く構えを見せるが、神が積極的に動くことにより、思うように動けずにいた。

そして、荻野も3Pを意識させるような動きを見せる。


(ちっ。神を放したら、パスアウトってか。荻野も打ってくるかもしれねぇ。
ここで3Pを許すわけにはいかねぇ。)


(牧さん、任せましたよ。)


神は、牧の作戦を理解していた。

そして、藤真もまた見抜いていたのであった。



(狙いは得点じゃない。)



『ダム!』


『ドン!』



激しいボディコンタクト。

審判も苦渋の表情を浮かべている。



『キュッ!』



(狙いは俺の4つめのファウル!!)



『ダム!』



(もう牧の思い通りにはさせない!!)  




白金 69
慶徳 68







続く。

#388 【PF荻野】

2010-11-20 | #12 大学 新人戦編
白金 66
慶徳 66




第3Qも残り1分を切った。


牧がボールを持つ。


白金のパスワークによって散らされた慶徳ディフェンス。

牧の前に立ちはだかるのは、赤木のみであった。



「来い!!牧!!」


「受けて立つ!!」



『キュッ!』 


『ダムッ!』


『キュ!!!』



『クル!』



牧はドリブルをし、赤木の前で回転。

赤木を背中で背負う形となった。




「なにーーー!!」

「牧はポストプレーをする気か!!」

「赤木には勝てないぞ!!!」




「PGがC相手にポストプレーで挑むなんて・・・。」

と中村。




「ナメられるな!赤木!!囲むぞ!!」

と諸星が叫ぶ。



だが。



「待て!パスアウトがあるかもしれない!諸星は土屋を、真下は神をマーク!
牧は、俺と赤木に任せろ!!」

「おう!」


(ちっ、藤真め。お見通しか。)

と牧。



『ダムッ!』


「ぐっ!!」


牧の力強いドリブル。


強い衝撃が赤木の腹に伝わる。


(負けんぞ!インサイドで、負けるわけにいかんのだ!!)


(さすがに重いな!)



『ダムッ!!』


「ぐっ!!」


2度目の衝撃が赤木を襲った。



「パワーでは通用せんぞ!!」

跳ね返す赤木。



そこに藤真が参戦。




「囲んだーー!!」

「慶徳がダブルチームだーー!!」

「牧!ピーーンチ!!」




赤木が壁となり、牧の動きを封じ、藤真がボールを奪いにかかる。



「もらったーー!」



『パシ!』にっ。


牧は、藤真の手を交わし、ボールを掴む。


そして、ノールックパスを放った。



神には真下、土屋には諸星が、ピッタリとマーク。


ボールを受け取る隙を与えない。


ローポストでは、野辺が村松を押さえ込む。


藤真の予想通りの牧からのパスアウト。



(狙い通り!!)



「カットぉーー!!」

藤真は叫んだ。


だが、ボールは右45°ややトップよりぽっかり空いたスペースへ向かう。

そこは藤真が守るべきポジションだが、今は誰もいない。



『パシ。』


ボールを受け取る男。



(藤真、悪いが狙い通りはうちだ。)にや。

と牧が笑う。



ボールを受け取ったのは、PF荻野。

PFが3P外トップの位置でボールを受けたのであった。



『クル。』


(荻野がそこでもらって何をする?)



「ディフェンス!仕切りなおしだ!」



ボールスティールは出来なかったものの、藤真は再びディフェンスの建て直しを指示した。



そのとき。



『バッ!!』


牧が赤木をスクリーンアウト。



「なに!」



そして、小声でつぶやく。


「打て。」



「!!!」


「打つぞ!藤真!!」

と赤木が叫ぶ。


「やっやべぇ!荻野は打つぞ!!」

諸星も叫んだ。


「!!!」

と藤真。




「あっ、まさか!」

と観客席の織田も叫んだ。



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<<回想>>

愛和学院体育館。

3月。


卒業式を間近に控え、バスケ部の練習に遊びに来た諸星と荻野。



『シュパ!』



『シュパ!』



諸星の3Pが連続で決まる。



「まさか、お前の3Pがこんなに決まるようになるとはな。1年のときは、全く想像できなかったのにな。」

「俺はドライブはもちろん、外も射抜ける最高のSGを目指しているからな。こんなのはまだまだ序の口だ。」

「外角か。PFの俺にはあまり縁のないプレーだな。」


「練習すればいいんじゃないですか。」

そこの新キャプテンの織田がきた。


「キャプテンがだいぶ板についたようだな。」

と諸星。

「翼が上手い具合にフォローしてくれるので。」

と微笑み、続ける。


「荻野さん、PFの3Pなんて結構いい武器になったりするんじゃないですかね。
そんなに打つ機会もないと思いますから、プレッシャーはかかると思いますが、俺はいいと思いますよ。
あの河田さんもたまに打ちますしね。」

「俺と河田じゃレベルが違うさ。だけど、俺の秘密の武器としては面白いかもしれないな。
大学に入ったら、少し練習してみようかな。」

「荻野さんは器用だし、大さんより入ったりして。」

「そうかもな。あはっ。」

「んなことねぇーよ!!」



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「まさか、本当に練習していたのか!!」

と驚く諸星。



3P外、荻野が構えた。




「打つぞーーーー!!」

「マジでかーー!!」




荻野を止めるものはいない。


力が膝から腰、腰から腕へと伝わる。


そして。



『シュ。』


ボールが手から離れ、回転がボールが伝わった。



『スー。』



審判が3本の指を上げる。



「しまった!!」

と藤真。


「打ちやがった!!」

と諸星。


「リバウンドーー!」

と赤木。



「うん。いい感じです。」

神が微笑みながら、つぶやいた。




白金 66
慶徳 66







続く。