tyokutaka

タイトルは、私の名前の音読みで、小さい頃、ある方が見事に間違って発音したところからいただきました。

下取りと新規購入の輪が途切れる時(後編)

2008年09月28日 19時15分33秒 | エアーガン/実銃
STI EDGEを下取りに出した私は、タナカのグロック17を手に入れた。
それは、当時出ていたグロックの中では目を見張る機能を有していた
しかし、何かが気に入らなかった。

ただ、なぜ私が先ほど「目を見張る機能」という表現を使ったのかについて説明しなければならない。
同時期、ガスブローバックのグロックとして、KSCからも出された。同じ17である。しかし、KSCのグロックは、タナカに比べて中途半端と言うイメージがあった。まず、当時の写真をみるといいのだが、フレームのテカリがかなりあったことである。近年のウェスタンアームズのマグナテックシリーズもそうなのだが、比較的廉価なエアーガンの大半は、その生産地が海外であることが多い。マグナテックもそうだが、KSCのフレームも生産地は台湾である。この海外での生産は、必ずしも国内の設計者の望むように製造をやってくれない。KSCも同様で、金型からフレーム成型品を取り上げるための剥離材を多めに入れた結果、あのようなテカリを生み出したと聞く。しかし、同時にKSCグロック17の定価も非常に安かった。だが、それら以前に、私がKSCではなく、タナカに手を伸ばした理由は別のところにある。

「トリガー位置によるコッキングインジゲーター」としての役割である。知っての通り、実銃のグロックは、コッキングが行われていれば、トリガーが前進し、そうでなければ、後退している。KSCもタナカも実銃のもつストライカーによる「セイフアクション」ではなく、ハンマー方式なのだが、それでも実銃の機能と同様のトリガー位置を再現しているのは、リアルであるという以前に安全面で高い。当時、このシステムを再現していたのがタナカ製品であった。KSCでは金型が改修されるまでこの仕様変更はなかったし、その後のマルイの26でも再現されていなかった。もっとも、最近のマルイ17は再現されているが。

これも購入して10ヶ月後に手放した。
余談ではあるが、私はこれまで、20丁以上のエアーガンを手放したのだが、それらはそれなりの理由があって手放した。しかし、唯一後悔した製品があった。それこそがタナカのグロックである。しかし、かなり後になって、なぜ受け入れがたかったのかという理由が明確になった。それについてはいずれまた書く時がくるかもしれない。

ともかく私はタナカのグロックを下取りに出して、次は新品のKSC SIG PROを手に入れた。この時点で2000年5月。

賢明なる読者の多くは、ここで一つの規則性に気づくかもしれない。それはKSCとタナカ製品を行ったり来たりしているのである。私もあとあと気がついて驚いたが。

あれやこれやと実銃の機能をかなりのレベルまで再現したKSC SIG PROは一つの頂点である。しかし、私は今ひとつピンとこなかった。少しパワーが弱いのと、KSC製品によく見られたリアサイトが動きやすいという現実。BB弾の装填のやり方を間違えるとフィーディングトラブルを起こしやすいという実感があった。リアルライブコッキングシステムなどは問題にもならない。ショップの人間の話では、あれの機能を知らずに、故障だと言って持ち込むパターンが後を絶たなかったそうだが。

あまり好きになれなかった理由の最大は、モデルとした実銃の口径にあった。個人的に40S&Wは好きではない。だが私はこのエアーガンをずっと手元に置き続け、すでに8年が経った。私はグロックよりもベレッタよりも、SIGの人間だが、それでもそれだけの理由で置き続ける人間でもない。現にタナカのSIG P229を手放したではないか。この8年間にSIG PROを手放そうと思ったことは何度かある。しかし、一番最後に手放そうと考えて、それを取りやめるに至った過程があるのだが、それもまたの機会としたい。

ともかく、下取りと新規購入の終わりなき連鎖は、ここで終わった。そして2001年7月14日、この日を最後にして、ショップでの売却をやめた。この日でやめたのは、たまたま持ち込んだ最後の日ということである。それ以降、私はネットオークションでの販売を中心にした。ショップでの買い取り金額は「雀の涙」ほどと書いたが、それは事実で、2500円から多くて4000円が関の山だ。一時期はマグナブローバックが高価に取引されたが、それも短期間であった。今では何が高く売れるのやら。安く買いたたかれることもあったが、何よりも売り物になるかの視点で見られるのもイヤだったというのもある。まあ、当たり前の視点だが、ネットオークションなら欲しい人間に売っているという実感がある。そして価値は相手が付ける。

一度、ほとんど新品同様のJAC HK MP5SD6を持ち込んだことがある。欠品もなかったが、旬はとうに過ぎていた。これに付いた価格は3500円だった。たしか、別のショップの閉店セールで11900円で手に入れたはずである。後日、その店で中古品として付いた値段も11900円であった。これを見て「どうにかならんものか」と思ったものだ。

これだけ書くと、あたかも買いたたくショップが悪いように聞こえる。確かに私もヒトの子である。怒りや不満の感情はそれなりに持つ。だが一方で、金もない個人の範疇で、「およそエアーガンとは」と言えるくらいの知識と物を見る目を養ってくれたのは、これまたショップの中古品であった。

いろんなものを持ち込み、時として新品を買い求めた私は、ショップのオーナーと親しくなった。その結果、ガラスケースに収まった中古品を、オーナーに断れば、手に取ってみる立場になった。ここで、実にいろんなものを見た。さすがにアサヒのFNCは手に取れなかったが、あのタナカの怪作ともいえるWz63を手に取ったこともあるし、JACステアーAUGのスコープをのぞいてはその解像力の悪さに言葉を失い、サビだらけのマガジンをつけたコクサイのM16A2カービンガスブローバックにビビった。ホコリだらけで動くのかどうかもわからないJAC MP5A5も見た。ポイントのウィンチェスターは欲しかったものの一つだ。モデルガンのワルサーP5も見たことがある。

ある意味では「墓場」の様相を呈していた。
だが、相対的に使い込まれたものが多かった。
それは、前オーナーと一番良いつきあい方をしていた証拠でもある。

下取りと新規購入の輪が途切れる時(前編)

2008年09月27日 22時46分03秒 | エアーガン/実銃
ネットオークションが一般化する以前、私にとって、「使わない」あるいは「気に入らなくなった」エアーガンを処分する場所は、やはりエアーガンショップであった。すなわち、ショップで売り払って、それを中古としてまた販売されるというものである。最近、こうした中古品を「セカンドハンド」というのを知った。

さて、かつて金のなかった中学、高校のころは、かなり下調べを行って購入したものである。今では、一万円前後のガスブローバックなど無いだろう。しかし、当時はこの一万円前後でスライド固定式といっても、かなりのレベルのものが手に入った。ただ、あれだけ下調べしたにもかかわらず、買ってはみたものの、今一つ気に入らなかったものがある。MGCのブラックパンサーである。とにかくユニットバルブの耐久性が低かった。しばらく叩くとバラバラに分解されて本体の中を転げまわる。修理に持って行くと、やっても居ないのに「分解しませんでしたか」などと聞いてくる。怒りは頂点に達し、友人に売却した。

とは書くが、少ない小遣いからようやく出して買ったものである。根本的に親からモノを粗末に扱うことは教えられていない。友人の手元へ流れたとはいえ、あまり良い気がしなかった。

大学に入ると、バイトで自由になる金が出来ると、エアーガンを購入しだした。すでにガスブローバックは普及していたが、WAのマグナがようやく登場したくらいである。もともとハイパワーが好きだった私は、会社そのものが倒産していたにもかかわらず、JACのブローニングハイパワーを購入し、その後、「ベラボウに」安くなったMGCのP7M13を手に入れた。

この二丁は持っていた人間はすぐにわかるのだろうが、それなりにクセのあるエアーガンであった。列記するのも面倒なので、明らかなる問題を書くと、ハイパワーは、そのブローバックの構造から着弾点が大幅に下がった。そして、構造が華奢なのだ。
一方のP7M13は驚くほどに大きなグリップと、金属変形を起こすセフティシステムを持っていた。

せっかく買ったにもかかわらず、問題点がやたらと目についたのはブローニングハイパワーである。さんざん考えた末に、次の購入の足しになるかと考え、あるショップに持ち込んだ。マガジン3本と合わせて付いた値段は、書かないが、雀の涙ほどであった。これの所持期間は1年半ほどだ。次のP7M13は2年ほど手元においた。グリップが大きいとは言え、それなりに気に入っていたが、ある時握り込んだグリップセフティともいえる「スクウィズコッカー」が握り込んだ状態で戻らなくなった。
内部の金属が変形しだしたみたいだ。部品を取り替えようと、当時ミナミにあったやまもとへいくと、部品こそはあったが、組み込んで、うまく作動するかどうかわからないと言われた。ここはイチかバチかだ。

「幸いにも」復旧することはしたのだが、いつまた壊れるかわからない状態というのは、あまり気分のいいものではない。「動くうちが勝負」と思った私は、再び売却した。やはり雀の涙だ。部品を買えたすぐにも関わらず、「さびてるね」と言われたのをおぼえている。「野郎、さびパーツを売りやがったな」・・・・

さて、ここまでの話を読むと、「昔持っていた手放すときの、ためらいはどうしたんだい」という声が聞こえてきそうだ。
金が自由になると、ますます溜め込む人間と、使いたがる人間が現れる。私は後者だが、不思議なことに「残るもの」だけに金を投じてきた。タバコも賭け事もすること無く、酒を少々たしなむくらい。ただ、金を投じた分だけ物が増える。増えて行く物のすべてに満足がいくのならば、それはそれで幸せだ。しかし、かつてMGCのブラックパンサーを手放したときのように、必ずしも満足を得るために買った物から、満足を得られないのが事実だった。

「売っぱらう」という行為に、なにがしかの大義名分が欲しかった。ハイパワーを手放したときに得た金の少なさに少しがっかり来たというのもある。その結果、いらない物を売って、新しい物の購入の足しにする。すなわち「下取り」を行うことにした。その第一号こそが、MGC HK P7M13だった。これはタナカのSIG P229に化けた。

しかし・・・、P229はここまでひどいのかという状態で売ってもらうことになる。これも中古品なのだが、フロントサイトはぼろぼろ、スライドのかどはダレていて、マガジンはガス漏れで、修理が必要なものであった。すでにマガジンの分解はP226でお手のものだったが、それでもあまり良い買い物ではなかった。これは1年9ヶ月持っていた。

P229を売り払うと、ショットショーでの新品の購入資金に充てた。その結果がKSC STI EDGEである。大して欲しい商品でもなかったが、売り出されてすぐというところで飛びついた感じだ。マガジンは初期の鉄板プレスで熱保持も悪く、集弾性もどことなく気に入らなかった。何よりもその短いトリガーストロークは、ガバ系の遊びのあるトリガーを引き続けた人間にとっては、短すぎた。知らんうちにハンマーが落ち、発射されている。

STIを7ヶ月所持し、下取りに出して、タナカのグロック17レイルドを手に入れた。もちろん新品である。軽いトリガープル、シャープすぎるブローバック。それなりの命中率。しかし、私はスライドストップの溝の摩耗の方が遥かに気になった。シャープなブローバックで後退し、そのままスライドストップがかかると、「食い込む」という表現がそのまま使えるのである。

やはり何かが気にいらなかった。

以下次回

国産品擁護への意志

2008年09月21日 19時34分49秒 | エアーガン/実銃
KSCグロックのシリーズで、フレームからグロックのマークが消えて久しい。
19や26においては、スライドですら独自の刻印になってしまい、何処に価値を見いだすのかが難しいくらいだ。
人によっては、エアーガンは撃ったときの性能であるという人間もいる。刻印などどうでもいいと。
ただ、私の立場は違う。モデルガン並みのリアルさで、刻印は実銃と同じく入らないと面白くないという人間だ。実際、こうした立場を取る人は多い。かつて、ウェスタンアームズは自社の刻印を入れたシグマを売り出したが、まったく鳴かず飛ばずの販売成績であったらしい。消費者の判断も捨てたものではない。国内における刻印、わけても商標権の管理は厳しく、本家の実銃メーカーとの交渉でしっかりと入れるところも多くなってきた。それでも、一時期KSCが行ったような、「何処までもリアル」というレベルではないのだが。

ただ、最近、リアルフレームと称する、台湾や中国の製品が入ってくるようになった。もともと、アルミのフレームだのスライドだのを輸入していたころから、実銃に忠実な刻印は入っていたのだが、リアルな刻印が入れば、ABSのフレームでも売れるという発想を見越したものだ。実際私も食指が動きそうになった(買っていない)。しかし、「当然」なのだが、こうしたフレームの刻印が本家の実銃メーカの許可を得ているかというと、そうでもなかろう。

過日、新聞で以下のようなコラムが載った。

2008年9月18日(木)付 朝日新聞「天声人語」

 もう十数年も前になる。北京のCD店に、「日本からの輸入盤」を並べた一角があり、そこで「南ニラせつ」なるジャケットが目についた。はて?と手に取ると、フォーク歌手の南こうせつさんのアルバムである▼どうやら海賊版のジャケットを作るとき、「こうせつ」の「こう」を、よく似たカタカナの「ニラ」と取り違えたらしい。憎めぬ馬脚の現しように、苦笑させられたのを思い出す▼カナは苦手でも、こちらは「さすがは漢字の国」と言うべきか。青森に似た「青ビョウ(品の口がそれぞれ水)」なる商標が中国で申請されたと、先日の紙面にあった。間違えたのではなく、承知の上である。中国では青森リンゴの人気が高いと聞けば、意図はおおむね察しがつく▼岩手県の南部鉄器も、「南部鐵器」と旧字を使って登録申請されていた。松阪牛も「松坂牛」とやられた。「九谷焼」など本名そのままも含め、日本の地域ブランドや地名が次々に申請されている▼漢字は2千年ほど前に日本に伝えられた。恩に思うが、里帰りよろしく「商標漁(あさ)り」をされてはかなわない。登録されると、中国で同じ商標を使うのは難しい。その名で粗悪品が出回れば本家の信用にもかかわる。関係する日本の自治体などは、異議を申し立てて防戦に追われている▼知的財産の保護をめぐって、中国はとかく国際社会の評判がよろしくない。紙に火薬、活字から羅針盤まで、多くの発明品を広めてきた国である。大いなる「知的財産」の恩恵には感謝しつつ、今は今。ブランドただ乗りのあこぎな商魂は、いただけない。


2006年10月、私は念願のAimPoint ML-2 を手に入れた。個人の持ち物で、ゲームで使用するものの予備に持っていたものをオークションに出したそうだ。軍用の実物である、耐久性は特に優れている。M-2ならば、本当に軍用でナイトビジョン(暗視鏡)対応だが、こんな機能はいらない。だから、ML-2で充分だ。結構な金額になって、36000円を払った。それでも定価で買うよりも安い。まして、最近のあらゆる値上げで、一般のショップでは定価で10万円の値段を付け出した。箱もマニュアルも本物。箱が本物で、本体が偽物とは考えにくい。

その後、私は仕事を失い、職安通いが続いた。ある時、あるエアーガンショップの正社員の求人を見つけた。そこは大陸系の輸入品を中心に販売している会社だった。趣味の延長だから、社長とも話はある程度合ったが、金属製のリボルバーをたいした安全対策を講じることなくキットとして販売しているのは気になった。

その後、ショップで展示品を見ていると、あるものが目についた。ドットサイトである。よくあるAimPointのコピー品であるが、商標までコピーしているの見て、正直気分を害した。大陸系の製品が知的財産権の問題をクリアできていないとわかっていて、なおかつ起きた感情である。

要はそういうことなのだ。

オリジナルが持つ権利、すなわち築き上げてきたクオリティや信頼性は非常に高いが、当然ながらそれはその分値段に跳ね上がってくる。クオリティや信頼性が落ち、値段を低いものに価値を見いだすことに無意味であると断じるのはどうかとも思うが、少なくとも私が手に入れたのはクオリティや信頼性が非常に高い、誇るべき「オリジナル」である。それと一色端にするこの行為に腹を立てたのだ。

しばらく生活が苦しくなることは明白であったが、採用であったにもかかわらず、私は辞退した。

いま、台湾や中国のエアーガンの中には、安かろう悪かろうという域をこえて、品質も良くなっているのだが、それでも壊れたときの修理の受け入れ先がなく、使い捨てというパターンも見受けられる。これでは高いだけで悪い商品を押し付けられているようなものだ。

日本製エアーガンの品質やディティールは、世界を見ても群を抜いてレベルが高い。
だが、台湾、中国、韓国の安い製品に押されて、パーツに至っては国内で製造するメーカが減少している。ミニミやM60を作っていたTOPも大陸の安い製品に押されて、製造と販売を終了するそうだ。国内のエアーガンメーカーも減る一方だ。

同じ財布をはたくのならば、国内製品の方だと私は決めている。

Quark X Pressの斜陽

2008年09月16日 20時17分40秒 | DTP/Web


時間が出来たので、いろいろと身辺整理を行っている。
技術としてある程度持っていても、もはや使うことの無いDTPやWeb。
こういった関連に手を付け出した。とは言っても、パソコン関係の本だが。

ほんとうに自分にとって重要なもの、既に手に入れたものを大事にしたいから、捨てなければならないものがあるとしたら、今はこうしたものだ。

一時期は血道をあげて、パソコン関連の勉強をしたり、試験を受けようとした。
そんな時代、本気で欲しかったソフトがあった。Quark X Pressと呼ばれるレイアウトソフトだ。

Quarkは日本語に対応した3.3から4.1を通り、MacOS10に対応した6.1や6.5にバージョンアップを行い、どうやらこの8月の後半に8.0へと進化したらしい。

私がスクールに通って勉強したのはInDesignであった。「これからはInDesignですよ」とスクールの担当者も言っていた。2003年のことである。しかし、まだ当時、Quarkが幅を利かせていた。そのバージョンも3.3や4.1である。だから、仕事で指定されたら、使えないと困る。というよりも、仕事にありつけるかどうかわからない。

ただ、Quarkは一台30万円近くするソフトだった。たしかにコストパフォーマンス的には、InDesignの新規、9万円の方が良い。

こんなもの買えない。

だが、かえって欲しくなった。たかだかソフトにである。その代わりに、古本屋でQuark関連の参考書を見るたびに、買っていた。ある意味、上っ面の記号を消費していたのだ。その参考書にはCD-ROMが付いていて、評価版と呼ばれるソフトが付いている。

これを使って練習するが、保存は出来ないのはともかく、印刷もまともに出来ないのは参った。しかしわたしのなかのQuark信仰は深かった。

2004年10月、Quark X Pressは6.1へバージョンアップした。
翌月11月17日、私は大阪心斎橋のApple Storeで行われた新型Quark X Pressのデモイベントに参加した。
だが、同じ頃、奈良では女児誘拐と殺人事件が起こった。

しかし、高かった。確か当時、28万円はしていたはずである。どうした訳か、その後15万円まで価格が下がったことがある。どうにも売れなかったのだろう。確かにそうだ。印刷関係がバージョンアップするなどということは考えられなかったからだ。

「浸透していた」という表現はあまりに小綺麗すぎる。「保守的である」とは、本当にそれだけの職業威信があって、初めて使える。「不況だから」だったら、露骨だがある程度的を得ている。

ソフトのバージョンアップで新しくなると、パソコン関係の出版社はこぞってソフトの使い方や機能を網羅した本を出す。Quarkのバージョンアップも、そうして祝福されたはずだ。しかし、事態は全く逆だった。いやむしろ、それはある程度予想できたことではなかったか。

ともかく、ソフトの発売から半年以上経って、ようやく一冊の解説書が出された。毎日コミュニケーションズの『QuarkXPress 6.5マスターブック―for Macintosh&Windows (マスターブックシリーズ) 』である。さすがに食指が動かなかった。Quarkへの信仰は変わらなかったはずだが。

今年の3月だったか、ブックオフにこの本が入っていた。コンディションはそれほど良くない。結構長いこと書棚に置かれていたはずである。わたしは、つい先ほどこの本について調べてみようとアマゾンを開いたが、そこにあったのは、すでに古本屋を通じてしか手に入れることが出来ない事実だった。出版元のホームページの検索にも入れたが、出てこない。すでに版元品切れで、カタログから落ち、絶版状態なのだろう。だが、Quark JAPANのサイトは長いこと、この唯一に等しい参考書を、誇らしげに宣伝していた。トップページにバナーをつくってまでである。さらに驚いたのは、古書としてのこの本の価値である。販売価格は実に7900円。定価が2730円の本に対してである。

おとつい見た楼閣は、一夜にして砂に埋もれ、今日掘り起こして、考古学的価値を与え、喜ぶ。
そんな感じだろうか。

それから私はオペレータをはずれ、DTPからもWebからもはずれた。その世界から見て、私はもともと異質なる人間だったのかもしれない。

偶然にも知り合えた人物からの紹介で、私は短いレポートを書いて発表する機会を与えられた。編集者と話を行い、書いた文章をより読んでもらうための文章にし、初校を行う段階まで来た。

初校用原稿を見た時、私は、版面のそとに「.indd」を見つけた。InDesignで作って、直接出力したものらしい。少し私は苦笑した。スクールの担当者が言った言葉、「これからはInDesignですよ」を思い出したからだ。確実に浸透しているのだ。少しずつなのかもしれないが。

冒頭に話を戻そう。
身辺整理の結果、私はいらなくなった本の何冊かをブックオフへ持って行くことにした。
その中に、買い集めたQuarkの本も忍び込ませた。すでに、ネットオークションでは何冊かの本が出されているにもかかわらず、買い手が付いていないからだ。誰も見向きしなくなった、とは言いがたいが、参考書を買って勉強する人間は少なくなってきている。現に、この種の関係書を多く出していたエクスメディアは昨年倒産した。

持っていった本で値段が付かない本は、すべてDTPやWeb関連だった。
「残念ですが、これらの本は発行から時間が経ちすぎているので」
その中にはQuarkの3.3や4.1の参考書も混じっていた。
「時間が経ちすぎている」そう、あのままの、あの世界はなんの革新性もないのだ。

風が通り抜けて行くみたいだった。

「処分をお願いします。」わたしはゆっくりと笑みを浮かべて伝えた。

それがすべてである。