Cosmos Factory

伊那谷の境界域から見えること、思ったことを遺します

線路際に見るキキョウ

2009-08-05 12:44:07 | 自然から学ぶ
 雑草の伸びきった緑に囲まれた世界に、数株の紫色の花が目立つと、それこそひのき舞台に上ったように目だった揺れを見せる。それほど丈の長くない雑草地帯に、そこから首一つ飛びぬけて姿を現すキキョウ。ちょうど半月ほど前からその姿を現すようになった。飯田線を約1時間乗っている間に、車窓にその姿を確認できる場所が二つほどある。ひとつは昨年も日記で触れた伊那本郷駅の北側、いわゆる飯田線がΩカーブに入ってまもなくのところである。耕作地の脇ではなくここから段丘崖に入るという荒地空間といった方が良いだろうか、線路際の手にとどきそうなところに一輪の花を咲かせる。たった一輪でもしっかりと確認できるというあたりがこの花の印象度の高さである。もちろんそれは雑草の中に輝いているからであって、人家の庭先で咲いているキキョウに、人は見向きもしないかもしれない。

 もう一箇所は高遠原駅の南、ループ式の魚道を眼下にする鉄橋を渡って山林を抜けたすぐにある耕作放棄地の脇である。ここも線路際のごく近くにその姿を確認することができる。何より今年は耕作放棄された土地に夕方になるとキスゲがたくさん花を開いている。絨毯を敷いたというところまでは至らないが、そこそこ賑やかに咲いた黄色い花の中にキキョウの紫は一段と映える。夕方になると花開くキスゲもなかなかのもので、実は線路際に咲くキスゲは多い。昨年も触れたように、線路際というものはあまり乱されない空間である。どれほど手が入っているのか知らないが、伊那電気鉄道が敷かれて以降、基本的には軌道敷きから外れた法面については当時のままなのかもしれない。その敷地を管理する人はいないが、それだけにまったく人の手の入らない空間になっている。キキョウの咲く空間も前者はそんな軌道敷きから外れたかつての国有地ということになる。そして後者は国有地と民有地の境界線上である。

 高遠原駅南の耕作放棄地は、毎年一度は草刈りがされる。したがってキスゲの一群はきっと刈られてしまうのだうが、花期である今はもう少し待って欲しいという窓越しに眺めているわたしの願いである。キスゲは意外にも駒ヶ根市伊那福岡のやはり飯田線が中田切川のΩカーブに入っていく手前の国道の端の線路際にもたくさん咲いている。ようはそれほど珍しい種ではないのだが、だからといって水田や畑の脇に頻繁に確認できる花ではない。どちらかというと頻繁に管理されない(草刈りがされない)空間に花を咲かせている。何度も言うように、管理しつくされると植生は限られていくということをよく示しているわけである。
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