司法書士内藤卓のLEAGALBLOG

会社法及び商業登記に関する話題を中心に,消費者問題,司法書士,京都に関する話題等々を取り上げています。

期限付解散決議の可否について

2017-04-23 18:40:49 | 会社法(改正商法等)
 旬刊商事法務昭和59年9月5日号に,「【実務相談室】期限付解散決議の可否について」がある。

cf. 期限付解散決議
http://blog.goo.ne.jp/tks-naito/s/%E6%9C%9F%E9%99%90%E4%BB%98%E8%A7%A3%E6%95%A3%E6%B1%BA%E8%AD%B0

 このブログでも再々取り上げていることであるが,2週間を超える期限付解散決議について,法務省が否定説に立っていることは,筋が通らないように思われる。

 例えば,本日(4月23日),平成29年5月31日終了時の解散を発意したとしよう。

 本日,株主総会の決議を行えば,定款変更による存続期間の定めの設定の登記を経た上で,解散の登記をすることになる。

 存続期間の定めの設定の登記は,2週間以内,すなわち5月8日(月)までに登記申請をしなければならないが,登録免許税の関係で,これを留保して,解散の登記と一括申請をすることも,是非はさておき,可能である。大都市圏では,相当長期にわたる登記懈怠でも,過料を科されないと聞くので,このように処理されているケースが多いのではないか。これでは,第三者保護の観点から存続期間の定めを義務付ける意味がないように思われる。

 また,本日,解散を発意しながら,株主総会の決議をぎりぎり5月31日に行うケースもあろう。第三者保護は,問題にならないのか? 不意打ちという点では,同じであろう。

 第三者保護を云々するのであれば,解散の日の一定期間前(例えば,2週間前)までに官報での公告を義務付けるべきである。

 現行法における解散公告(会社法第499条第1項)をこの公告に吸収させれば,会社にとっての負担にもならない。

 会社法第911条第3項第4号は,「存続期間又は解散事由についての定款の定めがあるときは」登記しなさいと定めているのであり,会社法第471条が「定款で定めた存続期間の満了」及び「定款で定めた解散事由の発生」以外に,「株主総会の決議」による解散を認めているのであるから,株主総会の期限付解散決議を否定し,「存続期間についての定款の定め」の登記をせよ,というのは,筋が通らない話である。

 上記のとおり,株主総会の決議による解散の場合に,解散の日の一定期間前(例えば,2週間前)までに官報での公告を義務付けるような法改正がされるべきであろう。
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条件付き株主総会決議が完全否定?

2013-03-27 08:57:28 | 会社法(改正商法等)
商業・法人登記申請
http://www.moj.go.jp/ONLINE/COMMERCE/11-1.html

 「1-22 株式会社解散及び清算人選任登記申請書」の記載例の解説では,

「(注)解散日を将来の日としようとする場合には,当該解散日を満了日とする存続期間の定めを設ける定款変更を決議し,その登記をする必要がありますので注意してください(その上で,当該存続期間の満了により解散したときは,2週間以内に解散の登記をすることになります」

 条件付き株主総会決議が完全否定されている。

 拘り過ぎ・・・。

cf. 平成24年8月10日付け「株主総会の期限付決議(2)」

平成23年7月29日付け「期限付解散決議と書面決議の活用」
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株主総会の期限付決議(2)

2012-08-10 17:16:23 | 会社法(改正商法等)
「株主総会の決議の効力の発生を条件または期限にかからしめることは,法律の規定,趣旨
または条理に反しない限り,原則として許される」(最高裁昭和37年3月8日第1小法廷判決,民集第16巻3号473頁)。
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=56207&hanreiKbn=02

「本来,株主総会の決議や,会社が行おうとする特定の行為の効力の発生については,これに条件を付すことが可能である」(相澤哲編著「立案担当者による新・会社法の解説」(商事法務)355頁)。

 私は,全く異論はないのだが,登記実務は長期間に及ぶ条件付決議については,なぜか否定的である。

 期限付解散決議に至っては,存続期間の定めが登記事項であることの一事をもって,2週間(?)を超える停止条件付決議は,原則として不可であるらしい。

 会社法においては,条件付決議は,禁止されていない(上記のとおり立案担当者も肯定している。)し,期限付解散決議についても明文の禁止規定は存しないにもかかわらずである。

 会社法第911条第3項第4号の規定は,存続期間又は解散の事由についての「定款の定めがあるときは」,その定めを登記事項としているのみであり,これをもって,「会社法は,期限付解散決議を原則として否定する趣旨である」と解することはできないはずである。

cf. 平成22年12月26日付「期限付解散決議に基づく解散登記の可否について」

 株式会社が例えば3か月後に事業の継続を中止しようと決意する場合に,会社法は,「株主総会の決議による解散」(会社法第471条第3号)及び「定款で定めた存続期間の満了による解散」(同条第1号)の2つのメニューを用意しているのである。すなわち,

 ① 条件付解散決議を行う。
 ② 定款に存続期間の定めを設ける。

という2つの選択肢があり,株式会社の合理的判断によっていずれか決定することができる,ということで,何ら問題はないはずである。

 これを否定する理由が「存続期間の定めが登記事項であるから」では,全く説得力に欠けるように思われる。
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「期限付解散決議と書面決議の活用」

2011-07-29 22:31:55 | 会社法(改正商法等)
 月刊登記情報2011年8月号に,鈴木浩巳「期限付解散決議と書面決議の活用」(6頁以下)がある。

 期限付解散決議に否定的な登記実務(登記所の取扱い)に対して,書面決議を活用することにより,期限付解散決議と類似の効果が得られるとするものである。

 書面決議の効力が生ずる日時を調整して,意図する解散の効力発生日時に,決議の効力が生ずるようにする工夫である。

 すなわち,書面決議の効力が生じた時に,解散の決議の効力が生ずるわけであるから,「期限付決議」ではないのである。

 慧眼である。

 唯一の穴は,当然のことではあるが,活用範囲が,書面決議を利用できる規模の株式会社(株主全員の同意を得ることができる株式会社)に限定されることであるが,相当数活用できるであろう。

cf. 平成23年1月8日付「株主総会の期限付決議」

 ここまでしなければならないものか・・・。

 なお,書面決議は,このように活用法をいろいろと考えることができそうであるので,難題が持ち上がったら,書面決議を利用できないかを検討してみるとよいであろう。
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株主総会の期限付決議

2011-01-08 22:37:41 | 会社法(改正商法等)
 株主総会の期限付決議について,株式会社の在り方は,その時点の株主が決定すべきであるから,原則として認められず,比較的短期の場合のみ例外的に認められる,とする考えがあるようである。仮にこの考え方を是とするとしても,公開会社と「公開会社でない株式会社」と区別して論じる必要があるであろう。

① 公開会社の場合
 公開会社にあっては,株式の自由な譲渡が可能であるから,「株式会社の在り方は,その時点の株主が決定すべきである」という立場に立てば,株主総会の期限付決議は,原則として認められないことになりそうである。

 しかし,基準日の制度においては,基準日現在の株主が最長3か月先の株主総会において意思決定することができることに鑑みると,上記の立場に立っても,最長3か月の期限付決議を認めることは十分可能であろう。

② 公開会社でない株式会社の場合
 公開会社でない株式会社にあっては,株主の異動は,ほとんど生じない。長期にわたって株主の異動がないのであるから,「株式会社の在り方は,その時点の株主が決定すべきである」という立場に立っても,相当長期の期限付決議が許容され得るであろう。

 仮に限度を設けるとすれば,1年に1度定時株主総会が開催されるのであるから,次の定時株主総会の開催時期を超える期限付決議は不可,ということになろうか。

cf. 平成22年12月26日付「期限付解散決議に基づく解散登記の可否について」
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期限付解散決議に基づく解散登記の可否について

2010-12-26 15:21:47 | 会社法(改正商法等)
商業登記漫歩 平成22年12月20日号(39号) by 神満治郎先生
http://www5a.biglobe.ne.jp/~legal/public/mp2/mp2039.htm

法務省HP商業・法人登記申請 
1-21 株式会社解散及び清算人選任登記申請書(清算人が1人の場合) 記載例pdf
http://www.moj.go.jp/content/000058720.pdf

 コメント欄に情報提供がありましたが,「解散の日を数箇月後の日とする期限付解散決議に基づく解散の登記の申請は、受理することができない」とする商事課補佐官事務連絡が発出されているそうです。そこで,反論を唱えます。



○ 「解散の日を将来の日としようとする場合には、存続期間の定めとして定款に定め、その登記がされることが会社法の趣旨に沿う。」

 会社法の立案過程においては,大胆に改正がされた部分と,漫然と,深く検討もされないままに平成17年改正前商法のルールを存置した部分があり,「存続期間の定め」については,言うまでもなく後者である。

 起業にあたって,「存続期間の定め」を設けて事業を行いたいというニーズがあり得ないものではないことは,否定しない。しかし,現実問題として,そのような会社がどれほどあるのだろうか?昭和初期に設立された会社を別にすれば,ほとんど皆無といっても過言ではないであろう。実態を考慮せずに,「会社法の趣旨に沿う」というのは,机上の空論に過ぎない。

 会社が事業の将来を慮って,例えば3か月後に事業の継続を中止しようと決意するのは,会社の本意としては,あくまでも「解散」の意思決定である。



○ 「株主総会が自由に期限付解散決議をすることができるとすると、定款で存続期間を定めたことと何ら変わりがないにもかかわらず、その旨を登記しなくてもよいことなり、存続期間を登記事項とし、これを公示することにより、取引の安全を図ろうとした会社法の趣旨に反する。」

 株主総会が条件付決議をすることができることについては,それほど異論はないところである(もっとも,どれほど長期間の間隔を置くことができるかについては,明確な基準はない。)。商号や目的などの定款記載事項であり,かつ,登記事項であるものについても同様の問題があるはずであるが,これらについては,上記のような指摘がされることはない。上記の論で行けば,登記されている事項の変更について条件付決議がされた場合は,条件付決議がされたこと自体を,すべからく登記事項とするように,会社法を改正すべきであろう。

 また,会社は,解散の決議を行うことにより,即時に解散することもできるのであるから,取引の安全云々は問題とならない。上記の「取引の安全」の論理によれば,逆に「株主総会の決議による解散」を全否定し,「存続期間の定め」への一本化を主張する方が筋が通っているが,支持は得られないであろう。

 会社法は,一つの目的を実現するために,複数のメニューを提示していることが多く見られる。巷間「会社法はツールボックス」と言われる所以である。例えば,会社法第111条第1項の定める方法により取得条項付種類株式を導入するためには,当該種類株主全員の同意が必要とされているが,全部取得条項付種類株式を利用すれば,いわゆる特別決議で可能となる(私は,この点に関しては,強い違和感を覚えるのだが。)。「会社法は,やりたい人がやりたいことをやれるように様々な手法を可能にした」というのが,改正の理念ではなかったのか。

 会社法が,「株主総会の決議による解散」(会社法第471条第3号)及び「定款で定めた存続期間の満了による解散」(同条第1号)の2つのメニューを用意しているのであるから,会社が3か月後に事業の継続を中止しようと決意する場合に,
 ① 条件付解散決議を行う。
 ② 定款に存続期間の定めを設ける。
という2つの選択肢があり,会社の合理的判断によっていずれか決定することができる,ということで,何ら問題はないはずである。そして,会社の判断は,通常の場合,①であり,②が選択されることは皆無であろう。これは,単に登記を1回パスしたいというような矮小な考えによるのではなく,3か月後の解散を決定するといういたってシンプルなものだからである。



○ よって、解散の日を数箇月後の日とする期限付解散決議に基づく解散の登記の申請は、受理することができない。ただし、当該議事録を添付した存続期間の定めに関する変更の登記の申請は、受理することができる。

 上述のとおり,「解散の日を数箇月後の日とする期限付解散決議に基づく解散の登記」の申請は,受理されるべきである。

 逆に,解散の決議をしたのみで,定款変更の決議をしたわけではないので,存続期間の定めに関する変更の登記の申請は,受理されるべきではない。

 私は,法律論としては,例え解散の日を数年後の日とする期限付解散決議も可能であり,当該決議に基づく解散の登記の申請も受理せざるを得ないと考える。解散の日を数年後の日とするような場合の会社の合理的判断は,②であろうから,そのような登記申請がされることは稀であろうが,会社法上採用可能な複数の選択肢の中から,会社がその判断によって自由に選択することを,登記実務が否定する合理的理由は,(少なくとも本件に関しては)ないと思われる。

cf. 平成21年10月27日付「条件付解散決議と存続期間の定めの登記」
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