司法書士内藤卓のLEAGALBLOG

会社法及び商業登記に関する話題を中心に,消費者問題,司法書士,京都に関する話題等々を取り上げています。

改正社会福祉法と経過措置

2016-06-03 11:10:57 | 法人制度
 改正社会福祉法の附則による経過措置の主要なところは,次のとおりである。

1.定款変更
 施行日前に設立された社会福祉法人は,施行日(平成29年4月1日)までに,必要な定款の変更をし,所轄庁の認可を受けなければならない。この定款の変更は,施行日において,その効力を生ずる。

附則
第7条 この法律の施行の日(以下「施行日」という。)前に設立された社会福祉法人は、施行日までに、必要な定款の変更をし、所轄庁の認可を受けなければならない。
2 前項の認可があったときは、同項に規定する定款の変更は、施行日において、その効力を生ずる。


2.会計監査人の選任
 政令が定める大規模な社会福祉法人は,会計監査人を置かなければならない(新法第37条)が,施行日以後最初に招集される定時評議員会の終結の時から適用される。
※ 資産額100億円以上若しくは負債額50億円以上又は収支決算額10億円以上の法人は2年に1回,その他の法人は5年に1回の外部監査が望ましいとされている(通知)。

附則
第8条 第2条の規定による改正後の社会福祉法(以下「新社会福祉法」という。)第37条の規定は、施行日以後最初に招集される定時評議員会の終結の時から適用する。
※ 「第2条」は,「改正法第2条」の意。「新法第2条」ではない。


3.評議員の選任
(1)社会福祉法人は,評議員及び評議員会を置かなければならない(新法第36条第1項)。従前の評議員(社会福祉法に基づくものではない。)は,施行日の前日に任期満了となる。新法に基づく評議員は,施行日までに選任しておかなければならない。

附則
第9条 施行日前に設立された社会福祉法人は、施行日までに、あらかじめ、新社会福祉法第39条の規定の例により、評議員を選任しておかなければならない。
2 前項の規定による選任は、施行日において、その効力を生ずる。この場合において、新社会福祉法第41条第1項の規定の適用については、同項中「、選任後」とあるのは「、社会福祉法等の一部を改正する法律(平成27年法律第 号)の施行の日以後」と、「を選任後」とあるのは「を同日以後」とする。
3 施行日の前日において社会福祉法人の評議員である者の任期は、同日に満了する。

(2)評議員の員数
 評議員の数は,定款で定めた理事の員数を超える数でなければならない(新法第40条第3項)が,経過措置(附則第10条)が置かれている。

附則
第10条 この法律の施行の際現に存する社会福祉法人であって、その事業の規模が政令で定める基準を超えないものに対する新社会福祉法第40条第3項の規定の適用については、施行日から起算して3年を経過する日までの間、同項中「定款で定めた理事の員数を超える数」とあるのは、「4人以上」とする。


4.役員(理事及び監事)の選任
(1)役員の選任手続
 役員及び会計監査人は、評議員会の決議によつて選任する(新法第43条第1項)。

附則
第11条 新社会福祉法第43条第1項の規定は、施行日以後に行われる社会福祉法人の役員(理事及び監事をいう。以下同じ。)の選任について適用する。

(2)役員の員数
 理事は6人以上,監事は2人以上でなければならない(新法第44条第3項)が,施行日以後最初に招集される定時評議員会の終結の時から適用される。

附則
第12条 この法律の施行の際現に存する社会福祉法人については、新社会福祉法第44条第3項の規定は、施行日以後最初に招集される定時評議員会の終結の時から適用し、当該定時評議員会の終結前は、なお従前の例による。

(3)役員の資格要件等
 役員の資格要件等については,施行日以後最初に招集される定時評議員会の終結の時までの間は,なお従前の例によるものとされた。

附則
第13条 この法律の施行の際現に在任する社会福祉法人の役員については、施行日以後最初に招集される定時評議員会の終結の時までの間は、新社会福祉法第44条第4項から第7項までの規定は適用せず、なお従前の例による。

(4)役員の任期
 役員の任期は,現行法上は,定款で定める期間(2年を超えることはできない(現法第36条第2項本文)。)であるが,新法では,「役員の任期は、選任後2年以内に終了する会計年度のうち最終のものに関する定時評議員会の終結の時までとする。ただし、定款によつて、その任期を短縮することを妨げない。」(新法第45条)となる。現任役員の任期に関する経過措置として,「なお従前の例による」規定は置かれず,「施行日以後最初に招集される定時評議員会の終結の時まで」とされた。

附則
第14条 この法律の施行の際現に在任する社会福祉法人の役員の任期は、新社会福祉法第45条の規定にかかわらず、施行日以後最初に招集される定時評議員会の終結の時までとする。

(5)理事の代表権
 現行法上,社会福祉法人の理事は,原則として代表権を有する(現法第38条第1項本文)が,定款の定め(同項ただし書)により特定の理事のみが代表権を有するものとされているのが一般である。この代表権を有する理事の代表権について,施行日以後に選定された理事長が就任するまでの間は,なお従前の例によるものとされた

附則
第15条 この法律の施行の際現に在任する社会福祉法人の理事の代表権については、施行日以後に選定された理事長が就任するまでの間は、なお従前の例による。

(6)役員等の損害賠償責任
 施行日前の行為に基づく損害賠償責任については,なお従前の例によるものとされた。

附則
第16条 この法律の施行の際現に在任する社会福祉法人の役員及び評議員の施行日前の行為に基づく損害賠償責任については、なお従前の例による。

cf. 社会福祉法等の一部を改正する法律案
http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_gian.nsf/html/gian/honbun/g18905067.htm

新旧対照表
http://www.pref.okayama.jp/uploaded/life/468110_3294337_misc.pdf

その他
http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/soumu/houritu/189.html
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6 コメント

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理事長 (高橋)
2017-03-31 15:27:06
社会福祉法附則15条に理事長の任期につき「なお従前の例による」とありますが、
施行日以後最初の定時評議員会終結により理事が入れ替わった後、最初の理事会で理事長が選ばれるまでの間は、
「従前の例」によりますと仮理事を選任するものと思いますが、いかがでしょうか。
御回答 (内藤卓)
2017-03-31 16:29:56
新社会福祉法第45条の17第3項の規定により,同法第45条の6第1項の規定が読み替えて準用されているので,退任した理事長は,新たに選任された理事長が就任するまで,理事長としての権利義務を有することになります。

附則第15条の規定は,同様の状態を実現しようとしたもので,定款の規定により唯一代表権を有していた理事が,新法により選任された理事長が就任するまで,代表者としての権利義務を有する,という意味合いであると解されます。
Unknown (高橋)
2017-04-05 19:37:16
なるほど。
ありがとうございました。
評議員数 (田舎書士)
2017-09-02 10:15:13
質問
 社会福祉法人の登記完了しましたが、疑問が出ました。
 小規模法人の評議員数についてですが、3年間の経過措置で評議員は4人です。
でも、定款の規定は7名となっています。
今回定款添付がなかったのでよく読んでおらず、平気で申請しました。
 経過措置は、定款規定と齟齬があっても良いのでしょうか?
御回答 (内藤卓)
2017-09-02 10:23:21
おそらく定款の附則に,次のような経過措置が置かれているものと思います。なければ,定款変更のミスですね。

 (経過措置)
第2条 第〇条の規定にかかわらず,評議員の定数は,平成29年4月1日から平成32年3月31日までの間は,「4名以上」とする。

御礼 (田舎書士)
2017-09-02 12:47:06
早速の御回答ありがとうございます。
今、読み直して、お答えくださった文言がチャァ~ンと
あることを確認しました。
これで何の気がかりもなく休日を過ごせます。
本当にありがとうございました。

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