司法書士内藤卓のLEAGALBLOG

会社法及び商業登記に関する話題を中心に,消費者問題,司法書士,京都に関する話題等々を取り上げています。

取締役の辞任の「時点」

2013-02-25 01:05:11 | 会社法(改正商法等)
 辞任届において,取締役等の辞任の「時点」が明確でないものが少なくないようである。

 取締役が辞任しようとする場合に,いつから辞任の効力が生ずるかというと,次のパターンがある。

1 口頭の意思表示の場合
(1)即時辞任の意思表示の時
(2)意思表示において定めた将来の日

2 辞任届を提出した場合
(1)辞任届が株式会社に到達した時
(2)辞任届に記載された将来の日(当該日を経過後に到達した場合は,(1))

 また,「平成25年3月1日付け辞任」と「平成25年3月1日をもって辞任」が混同して用いられている嫌いがある。

 前者は,「平成25年3月1日0時」に,後者は,「平成25年3月1日24時」に,辞任の効力が生ずると解するのが正しい理解であるが,逆を意図して辞任届が作成されているケースもまま見受けられるからである。なお,前者の意図からすれば,「平成25年2月28日終了時」と解するのが妥当であろう。

 したがって,辞任によって権利義務関係が生ずる場合を別にすれば,例えば平成25年3月1日10時開催の取締役会の時点においては,前者の場合は既に取締役ではなく,後者の場合は取締役として在任中であるから,定足数への算入の要否,議決に加わることの可否の相違が生ずるものである。

 確かに,登記記録には「辞任の日」が記録されるのみで,「時点」は不明であるが,株式会社と取締役との委任関係がいつ終了したかによって,ある時点において取締役の権利義務が存するか否かという重要な区別が生じるわけであるから,辞任届等を作成する際には,もっと「時点」が明確になるように意識すべきである。

 子供の遊びではないが,「何時何分何秒?」を意識すべきなのである。

 とは言え,難しいことではない。上記の場合分けを意識して,「平成○年○月○日終了時に」「平成○年○月○日開催の株主総会の終結の時に」「平成○年○月○日開催の取締役会の終結の時に」を明確に記載したらよいだけなのである。「時点」に関する特段の意思表示がなければ,「辞任届が株式会社に到達した時」ということになるが,後日の紛争を避ける意味では,受領する株式会社の側において,「受領した時」をきちんと記録しておくべきであろう。

 なお,電話による意思表示については,もちろん上記1の場合であり,電子メールによる意思表示については,上記2に準ずることになるが,登記実務においては,辞任した取締役作成の辞任届の提出がほぼ不可欠であるので,辞任の効力が生じた「時点」を明確にした辞任届を作成するようにすべきである。
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