会社分割によって承継される権利の一として「株式」がある場合に,当該株式の承継が「譲渡による取得」に該当するのか,あるいは「相続その他の一般承継」に該当するのかという問題がある。
平成17年改正商法前は,会社分割による権利の承継は,「相続その他の一般承継」に該当するものとして扱われていたが,会社法においては,「相続その他の一般承継」には含まれないと解されている。
法令上の根拠は,会社法施行規則第35条第1項第4号イ及びロ である。
会社法施行規則
(単元未満株式についての権利)
第35条 法第189条第2項第6号に規定する法務省令で定める権利は、次に掲げるものとする。
一~三 【略】
四 法第133条第1項 の規定による請求(次に掲げる事由により取得した場合における請求に限る。)をする権利
イ 相続その他の一般承継
ロ 吸収分割又は新設分割による他の会社がその事業に関して有する権利義務の承継
ハ~へ 【略】
五~七 【略】
2 【略】
江頭教授は,会社分割による権利の承継は,「一般承継」に含まれるという立場のようである(江頭憲治郎「株式会社法(第4版)224頁等」(有斐閣))が,会社法等の立案担当者が「一般承継には含まれない」として,省令の規定も区分しているのであるから,実務上は,「含まれない」として対応すべきである。
よって,会社分割によって譲渡制限株式が承継される場合は,「譲渡による取得」に該当し,譲渡承認の手続を行う必要がある,ということになる。
会社分割による株式の承継についても,個別の移転行為を要せずに有効に承継される,という意味では,他の契約上の地位等と同様であり,単に発行会社の承認を得るまでは発行会社に対して対抗できない,というだけのことであるから,不合理とも言えない。
したがって,実務的には,会社分割によって株式を承継させることを企図する場合には,事前に発行会社の承認を得ておくようにすべきである。
なお,既に実行された会社分割において発行会社の承認を得ていなかった件に関しては,会社分割後に株主名簿の名義書換えの請求をしているであろうし,発行会社が何も言わずに株主名簿の記載を行ったのであれば,黙示の承認があったということで,発行会社が今後争うのは背理であるから,懸念には及ばないであろう。
cf. 編著「会社分割の理論・実務と書式(第6版)」(民事法研究会)2013年1月刊
http://www.minjiho.com/wp/wp-content/themes/custom/euc/new_detail.php?isbn=9784896288100
※563頁 論点として解説しています。
相澤哲編著「Q&A会社法の実務論点20講」(金融財政事情研究会)2009年12月刊
※17頁以下
平成20年6月15日付け「会社分割による株式の承継と株式会社の承認の問題」
平成17年改正商法前は,会社分割による権利の承継は,「相続その他の一般承継」に該当するものとして扱われていたが,会社法においては,「相続その他の一般承継」には含まれないと解されている。
法令上の根拠は,会社法施行規則第35条第1項第4号イ及びロ である。
会社法施行規則
(単元未満株式についての権利)
第35条 法第189条第2項第6号に規定する法務省令で定める権利は、次に掲げるものとする。
一~三 【略】
四 法第133条第1項 の規定による請求(次に掲げる事由により取得した場合における請求に限る。)をする権利
イ 相続その他の一般承継
ロ 吸収分割又は新設分割による他の会社がその事業に関して有する権利義務の承継
ハ~へ 【略】
五~七 【略】
2 【略】
江頭教授は,会社分割による権利の承継は,「一般承継」に含まれるという立場のようである(江頭憲治郎「株式会社法(第4版)224頁等」(有斐閣))が,会社法等の立案担当者が「一般承継には含まれない」として,省令の規定も区分しているのであるから,実務上は,「含まれない」として対応すべきである。
よって,会社分割によって譲渡制限株式が承継される場合は,「譲渡による取得」に該当し,譲渡承認の手続を行う必要がある,ということになる。
会社分割による株式の承継についても,個別の移転行為を要せずに有効に承継される,という意味では,他の契約上の地位等と同様であり,単に発行会社の承認を得るまでは発行会社に対して対抗できない,というだけのことであるから,不合理とも言えない。
したがって,実務的には,会社分割によって株式を承継させることを企図する場合には,事前に発行会社の承認を得ておくようにすべきである。
なお,既に実行された会社分割において発行会社の承認を得ていなかった件に関しては,会社分割後に株主名簿の名義書換えの請求をしているであろうし,発行会社が何も言わずに株主名簿の記載を行ったのであれば,黙示の承認があったということで,発行会社が今後争うのは背理であるから,懸念には及ばないであろう。
cf. 編著「会社分割の理論・実務と書式(第6版)」(民事法研究会)2013年1月刊
http://www.minjiho.com/wp/wp-content/themes/custom/euc/new_detail.php?isbn=9784896288100
※563頁 論点として解説しています。
相澤哲編著「Q&A会社法の実務論点20講」(金融財政事情研究会)2009年12月刊
※17頁以下
平成20年6月15日付け「会社分割による株式の承継と株式会社の承認の問題」