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眠り竜は二度寝する


うっかりして1億年の眠りについてしまった寝姿。Copyright 2012 Gao et al.

面白いタイトルを付けたかっただけで、内容はトロオドン類の特徴がメイではどうなっているのか、メイの特徴との関連はどうかということである。

詳しい人はご存知と思うが、中国でメイの第2標本が発見され、この個体もやはりホロタイプと同様に、体を丸めて眠る姿勢で保存されていた。二度寝ではないとしても、非常に稀有なことであり、この動物の生活様式の中で典型的な姿勢であったことは確かである。
 この第2標本の発見によってメイの特徴が若干追加された。また後肢の骨の断面を組織学的に観察した結果、体は小さいけれども2才以上の成体と考えられた。新しいデータを追加して系統解析した結果は、従来の解析とあまり変わらず、メイはトロオドン類の中で基盤的な位置にきた。ビロノサウルスやタロスとの関係が多少変わっている。



改訂されたメイの特徴は、外鼻孔が非常に大きく、上顎骨の歯列の1/2 を越えて後方にのびる;中央部の上顎骨歯が密集している;上顎骨の歯列がpreorbital barの位置まで後方にのびている;仙骨の後方部が非常に幅広く、長く延びた第4・第5仙肋骨をもつ;背面からみて腸骨が強くS字状で、側面へのカーブはヴェロキラプトルとアンキオルニスよりも強い;などである。
 さらに他の種類にもある形質の組み合わせとして、前頭骨の後方部分が丸く膨らんでいる、短くとがった吻、小さく丈の低いmaxillary fenestraと丈の低い前方突起をもつ上顎骨、後縁がまっすぐな鋸歯のない歯、U字型に近い叉骨、上腕骨の90%以上の長い橈骨と尺骨、中手骨III がIIより長い、などを示す。

Gao et al. (2012) は、この第2標本にみられるトロオドン類の特徴として、歯骨の側面に神経血管孔を収める溝がある、方形骨の後方面に含気孔がある、多数の歯、歯骨と上顎骨の前方の歯が密集している、後方の尾椎には神経棘がなく、代わりに背側正中の溝sulcusがある、をあげている。写真を見る限り、この第2標本では歯列の保存状態はあまりよくないようで、多数の歯とか前方で密集しているというのは難しいようにもみえる。例えばメイの特徴とされる中央の上顎骨歯は線画には描かれていない。確認が難しいということではないだろうか。
 一方ホロタイプの方は、上顎骨の歯列がよく保存されている。Xu and Norell (2004)によると、他のトロオドン類と同様に、多数の上顎骨歯(24)があり前方で密集している。さらにメイの特徴として中央の上顎骨歯さえも密集している。後方の歯は太く後方にカーブしている。また歯骨の側面に溝があり、その中に神経血管孔が並んでいる。Internarial barはひも状とある。メイでは多くのトロオドン類と異なりmaxillary fenestraは小さく、interfenestral barという言葉も出てこない。吻が短くとがっているので、maxillary fenestraが大きくなる余地はない感じである。

メイの足はシノヴェナトルと同様に、アルクトメタターサルではない。これらの中足骨は第3中足骨が細くなりアルクトメタターサルに近づいているが(サブアルクトメタターサル)、まだアルクトメタターサルにはなっていない。

メイの第2標本では恥骨は関節してはいないが、保存状態から恥骨は前腹方を向いていたと考えられている。これは後方を向いているシノヴェナトルとは大きく異なる。

9番目より後方の尾椎(10-18)は同じ形をしていて、椎体は長く、側面が平坦またはわずかに凹んでいる。この部分の尾椎には神経棘と横突起がなく、前後に走る背側の溝sulcus がある。この溝は、"サウロルニトイデス"、ビロノサウルス、シノルニトイデス、シヌソナスス、トロオドンにもみられる。



参考文献
Gao C, Morschhauser EM, Varricchio DJ, Liu J, Zhao B (2012) A Second Soundly Sleeping Dragon: New Anatomical Details of the Chinese Troodontid Mei long with Implications for Phylogeny and Taphonomy. PLoS ONE 7(9): e45203. doi:10.1371/journal.pone.0045203

Xu X, Norell MA (2004) A new troodontid dinosaur from China with avian-like sleeping posture. Nature 431: 838-841.
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