大野威研究室ブログ

おもにアメリカの自動車産業、雇用問題、労働問題、労使関係、経済状況について、最近気になったことを不定期で書いています。

NY連銀、連日、レポ市場に巨額介入

2019年11月27日 | 経済

 2019年9月17日、アメリカで国債などを担保に短期資金を貸し借りするレポ取引の金利が10%まで急上昇した。

 この理由について、当初は税金の収納時期などがせまり一時的短期資金が足りなくなったためと説明された。

 しかし、ニューヨーク連銀は、それ以降も短期金利を安定させるためレポ市場に巨額の資金を供給し続けている。

 たとえばニューヨーク連銀は先週だけでも

 11月18日(月)に610億ドル(6.7兆円:1ドル=110円)

 11月19日(火)に1024億ドル(11.3兆円)

 11月20日(水)に744億ドル(8.2兆円)

 11月21日(木)に1037億ドル(11.4兆円)

 11月22日(金)に806億ドル(8.7兆円)

 という巨額の資金をレポ市場に流し込んでいる(1日および14日レポの合計)。

 この理由については、

(1)近年、ひとにぎりの機関投資家がレポ市場で短期資金供給を独占するようになっている(少数の影響力が大きくなっている)

(2)この少数の資金供給者が、資産買い入れを増やし現金資産の比率を引き下げた結果金融危機後の規制強化のためレポ市場への資金供給をしぼらざるをえなくなった

 との指摘もなされている。

 理由はともかく確実に言えるのは、いま短期市場で資金ショートがおきている-いまの短期金利では低すぎてお金を貸せない-という状況になっているということである。

 米連銀は短期資金市場の安定化を目的に月600億ドル(6.6兆円)の国債買い入れもはじめている。

 これにより来年には短期資金市場は落ち着くとの見方もある。

 はたしてもくろみどおり、短期資金市場は安定にむかうのであろうか。

 注意してみていきたい。

 

2019/12/9追記

 NY連銀は先週も月曜から金曜まで毎日700億ドル(8兆円:1ドル=110円)を超える資金をレポ市場に供給した。

 ところでFT紙によると国際決済銀行(BIS)は、ヘッジファンドからの現金需要が高まっていることもレポ市場の混乱の一因と指摘し、供給側だけでなく需要側にも混乱の原因があるとしている。

 BISによると、国債を買うと同時に金利先物のデリバティブを売ってそのさやを取るようなトレードをしているヘッジファンドが、手元の国債をレポ市場で現金化し、それをまたトレードに使うといったことがおこなわれている。

 しかしこれが本当だとすると、NY連銀は金融システムの安定化のためだけでなく、ヘッジファンドの利益追求のためにも巨額の資金をレポ市場に提供し続けていることになる。BISの指摘に対しNY連銀がどのような反応をみせるか(あるいは反応しないか)少し注意してみていきたい。


ロンドン、ウーバーの免許更新せず

2019年11月25日 | 経済

 2019年11月25日(月)、ロンドン交通局は配車サービス・ウーバー免許を更新しないと発表した

 2017年9月、ロンドンはドライバーの身元確認などタクシーなどに求められる基準をみたさないとしてウーバーの免許を更新しないことを決定。

 しかしその後、ウーバーは決定の取り消しを求めて提訴。

 これまで2回、免許が延長されたが、その最終期限が2019年11月24日(日)だった。

 これ以上免許を更新しないとする今回の決定に対し、ウーバー21日以内に異議を申し立てることが可能。

 この間は、サービスを続けることが可能

 ウーバーは異議を申し立てるとしている。

 ロンドンはウーバーにとってヨーロッパ最大の市場

 ロンドンでは4.5万人のドライバーが働いている。

 

 

 

ロンドン、ウーバーの免許を2か月延長 (2019/9/25)

カリフォルニア州、配車サービスのドライバーを労働者とみなす法律を可決 (2019/9/11)

カリフォルニア州、ウーバーのドライバーを労働者とする法案の可決へ? (2019/9/6)

配車サービス・ウーバー、ロンドンで免許取り消し (2017/9/24)

英司法、ギグ・エコノミーに待った: ふたたびウーバーのドライバーを労働者と認定 (2017/11/11)


英保守党、圧勝のみこみ

2019年11月24日 | 政治

 イギリス議会選挙の投票日(2019年12月12日)がせまっている。

 そうしたなか、2019年11月24日(日)、英保守党選挙公約(マニュフェスト)を公表した。

 高額所得者への増税を公約にうちだしている労働党に対し、保守党は一切の増税をおこなわないと宣言。

 また労働党が、保守党をNHS(イギリスの医療保険制度)の民営化を進め、サービスの低下をまねいたと批判していることに対して保守党は、低所得者の医療保険負担の軽減、(米国との貿易交渉をうけて)民営化を進めることはない、といったことを公約している。

 このほかに保守党は、医療・教育予算の増額などをうちだしている。

 前回選挙時に圧勝すると予想されていたメイ首相は、突然、自宅介護が必要な人に自宅を売ることを義務化する政策をうちだし(あとから撤回)、過半数割れに追い込まれた

 みるかぎり今回の保守党の公約にとくに大きな問題はなく、予想どおりの選挙結果になる可能性が高まった。

 ちなみにフィナンシャルタイムズによれば、調査会社YouGovは、保守党349、労働党213、スコットランド国民党(残留派)49、自由民主党(残留派)14を予想している(過半数は326)。

 同紙は、あまり保守党のリードが広がると、ジョンソン首相にフリーハンドを与えることへの警戒感から保守党への投票が少なくなる可能性があるとも指摘している。

 保守党が圧勝した場合、年内に離脱法案の再審議開始、来年1月末でのEU離脱という可能性が高まる。

 その後は、最低でも2020年末までを猶予期間としてEUと自由貿易交渉をおこなう予定になっているが、1年で交渉がまとまる可能性はちいさいと考えられている(保守党は2020年末までに交渉をおわらせることを公約としているが)。

 

 

英議会、解散総選挙の行方 ふたたび混迷 2019/10/30

英議会、解散総選挙へ 2019/10/29 

英議会、解散総選挙の可能性 2019/10/28

英政府、今週中のEU離脱案可決を目指す 2019/10/22

英ふたたび、EU離脱の国民投票か? 2019/10/18

英保守党、最低賃金を5年で1420円に引き上げると発表  2019/10/8

英議会、強硬離脱禁止法案を可決 2019/9/5

英保守党、支持広げる  2019/9/4

EU、英離脱期限を4月12日に延期 2019/3/22

英議会、EUに離脱延期を求める決議を可決: 今後の焦点は、EUの対応 2019/3/15

イギリス、合意なし離脱の場合、輸入品の87%を無関税に 2019/3/13

英メイ首相、明日、不信任投票 2019/1/16

英メイ首相、信任投票の結果 2018/12/13

英保守党、過半数を失う: 若者の投票率が大幅上昇 2017/6/10

英下院選挙、保守党が大勝か? 2017/6/8

英メイ首相、在宅介護をうける人に自宅売却を義務化で支持率低下 2017/6/4

イギリスの最低賃金 2016/9/22

イギリス、EU離脱の出口調査の誤り 2016/6/24

イギリスがEUを離脱したら 2016/6/19


正伝寺の枯山水

2019年11月23日 | 日記

 いまから1年前(2018年11月中旬)、枯山水で有名な正伝寺を訪れた。

 枯山水では立命館大学のそばにある龍安寺が有名だが、時間によっては多くの人がおしよせる。

 こちら正伝寺は交通の便がわるいせいだと思うが、少なくとも昨年については人が少なくぞんぶんに枯山水を堪能することができた。

 デビットボーイが訪れたこともあるということだが、何を想ったのであろうか。

 ちなみに、正伝寺の近くにはゴルフ場があってやや趣きをこわしている。

 日経によれば、正伝寺はもともと6つの別坊をもつ大寺院だったが、廃仏毀釈により別坊がなくなり、昭和中期にゴルフ場となった。

 海外の仏教遺跡の復元のはなしはよく聞くが、廃仏毀釈により破壊・改変された日本のお寺を復元するはなしはあまり聞いたことがない(調査は多い)。別坊のある正伝寺をみてみたかったなあ。


欧州で韓国現代自動車が大躍進

2019年11月21日 | 経済

 ヨーロッパの乗用車市場で韓国の現代自動車(起亜含む)が急成長を続けている。

 

 

                

 上は、ヨーロッパの乗用車市場(登録車)の日韓のシェアの推移(出所は欧州自動車工業会)。

 日本のシェアが30年近くほとんど変化がないのに対し、韓国のシェアが急速に伸びているのがわかる。

 日韓についてメーカー別の登録台数の推移(欧州・乗用車)をみたのが上のグラフ。

 韓国の現代自動車の登録台数がうなぎのぼりになっているのがわかる。

 2019年1-9月の登録台数は、現代自動車(起亜含む)が79万2693台。

 VW、プジョー、ルノー、フィアットに次いで欧州第5位の販売規模となっている。

 アメリカの品質調査(J.D.Power)では現在、現代自動車がほとんどの日本メーカーより高い評価を得ている。

 また現代自動車は欧州高級車メーカーのデザイナーを積極的に登用し、内外装で高い評価をえている(ちなみにユニクロも欧米デザイナーを積極登用して大成功している)。

 私は韓国メーカー躍進の大きな理由として、優れた外国から積極的に学ぼうという姿勢を持ち続けていること、ことなった市場環境に適応する努力を続けていること(自国の市場環境を基準としないこと)のふたつがあるように思う。

 一方、日本は停滞が長くつづくなか、外国から学ぼうとする意欲が低下しているようにみえる。 

 気になる違いである。