大野威研究室ブログ

おもにアメリカの自動車産業、雇用問題、労働問題、労使関係、経済状況について、最近気になったことを不定期で書いています。

ゆうちょとウエルズファーゴ、無理なノルマが不正を生みだす

2019年09月29日 | 経済

  先日、ゆうちょ銀行は会見で、厳しいノルマ投信などの不適切販売に関係はみられないと発表した。

 これをそのとおりに受け取る人はほとんどいないだろう。

 ところで、少し前、アメリカのウェルズファーゴという銀行で同じ問題がおこっている。

 ウェルズファーゴはサンフランシスコに本店がある、アメリカで資産規模第3位の銀行。

 同行は、金融機関のなかで高い利益率をほこったが、その原動力になったのが厳しいノルマと活発な販売活動。

 ウォールストリートジャーナルによれば、ウェルズファーゴの窓口販売員の基本年収は3万ドル(300万円:1ドル=105円)。

 同行には口座新設やクロスセールス(顧客がすでにもっている商品に関連した商品の追加販売)などについてノルマがあり、窓口販売員は目標を達成すると四半期ごとに500から2000ドル(5-20万円)、地域マネージャーには年1-2万ドル(100-200万円)のボーナスが支給されていた。

 またノルマを達成できない行員に対しては、しっせきなど厳しいプレッシャーがかけられていた。

 こうしたなか、同行ではノルマを達成しようと顧客に無断で口座を開設したりする不正が広がっていくことになった。

 そして同行は、そうした不正の広がりに気がついていたが、抜本的な改革がなされることはなかった。

 しかし、2013年12月、ロサンジェルスタイムズの調査報道で同行の不正販売が広く知られるところとなった。 

 同行は、2017年1月に販売目標の設定を中止

 2017年4月には、第3者による調査報告書が公表され、ウェルズファーゴ首脳の責任を認めている。

 ゆうちょ銀行、かんぽ生命についても真相の解明を望みたい。


インド、自動車販売が大幅減少

2019年09月27日 | 経済

 インドで自動車販売がふつう見られないような大きな落ち込みをみせている。

 インドの自動車販売2019年7月が前年比31%のマイナス同8月が前年比41%のマイナスと大幅減少している。

 自動車産業は規模が大きいため数%の減少でも大きなニュースになる。40%を超える減少というのは、ほとんど聞くことがないような大きな減少である。

 配車サービスの普及自動車保険コストの上昇などいろいろな理由があるようだが、最大の理由はこれまでインドで自動車ローンの半分を提供してきたノンバンクが資金難におちいり、ローン提供ができなくなっていることにあるようだ。

 具体的にいうと、昨年(2018年)末にインドのノンバンク大手IL&FLが経営破綻

 この結果、ノンバンクへの資金流入が減少。フィナンシャルタイムズによれば、2019年第2四半期のノンバンクによる自動車ローンは前年比30%のマイナスとなっている。

 ノンバンクは信用の低い人向けのローンが多かったため、とくに低所得層の自動車購入に大きな影響が出ていると指摘されている。

 2019年後半、インドにおける自動車販売がどの程度回復するか注目される。


ロンドン、ウーバーの免許を2か月延長

2019年09月25日 | 経済

 2017年9月、ロンドンはドライバーの身元確認などタクシーなどに求められる基準をみたさないとしてウーバーの免許を更新しないことを決定した。

 その後、ウーバーは決定取り消しを求めて裁判をおこし、2018年6月に免許の15か月延長がみとめられた。

 その期限が切れるのが2019年9月25日(水)だったが、ロンドンは免許を更新するか否かの調査を続けるため免許をさらに2か月延長することを決定した。

 

カリフォルニア州、配車サービスのドライバーを労働者とみなす法律を可決 (2019/9/11)

カリフォルニア州、ウーバーのドライバーを労働者とする法案の可決へ? (2019/9/6)

配車サービス・ウーバー、ロンドンで免許取り消し (2017/9/24)

英司法、ギグ・エコノミーに待った: ふたたびウーバーのドライバーを労働者と認定 (2017/11/11)


100人以上の米企業、詳細な賃金データの提出期限が迫る

2019年09月24日 | 経済

 今年からアメリカでは、100人以上の企業EEOC(雇用機会平等委員会)に従業員の詳しい賃金データを提出することが義務づけられることになった。提出締め切りは9月30日。

 提出が義務づけられるのは、販売職、会計事務職といった職務カテゴリー、人種、性別ごとの労働者の労働時間、賃金など。

 こうしたデータを集めることで、性や人種による賃金差別があった場合、その発見、認定が容易になるとされている。

 あるいはデータの公表を迫られることで、性や人種による差別の是正がより進むとされている。

 この仕組み、もともとはオバマ政権で作られたものだが、トランプ政権になりその執行が止められていた

 しかし、トランプ政権に対し女性の人権団体(NWLC)が訴訟をおこし、2019年4月、連邦地裁から執行命令が出されることになった。今回の賃金データ提出は、この命令をうけたもの。

 どのようなデータがでてくるのか注目される。


米大のTA、労働者の権利失う

2019年09月22日 | 経済

 アメリカでは多くの院生がTA(ティーチング・アシスタント)として教育を支えている。

 ウォールストリートジャーナルによれば2019年9月20日(金)、NLRB(全国労働関係局:日本の中央労働委員会に相当)はこれまでの判断をくつがえしTAを労働者として認めないという決定をおこなった(3対1)。

 NLRBの定員は5名で、大統領が任命(上院の承認が必要)。このため政権がかわるたびNLRBの多数派がかわり、それとともにNLRBの判断もころころとかわってきた。

 TAについていえば、NLRBは長年TAを労働者として認めてこなかったが、クリントン政権の誕生により2000年に判断を転換しTAを労働者と認定するようになった。

 しかし、ブッシュ(子)政権でNLRBTAを労働者ではないと判断転換。

 オバマ政権下の2016年、NLRBはふたたびTAを労働者と認定。

 今回、トランプ政権下でNLRBはまたまた判断を転換しTAを労働者ではないと判断転換した。

 私はかつて1年以上かけてアメリカのTA(大学院生)の経済状況、就職状況、労働組合結成の動きなどを調査し論文にまとめたことがある。

 インターネット上では公開されていないが、興味のある方がいたらご参照いただけたら幸いである。

 

大野威, 2008年, 「アメリカにおける大学の変化とTAの組織化:TA組織化の背景と経緯」, 『労働社会学研究』, 9号 pp. 1-33