大野威研究室ブログ

おもにアメリカの自動車産業、雇用問題、労働問題、労使関係、経済状況について、最近気になったことを不定期で書いています。

米の失業保険は月30-40万円

2020年04月30日 | 経済

 アメリカ失業保険を申請する人が歴史的に例をみない水準にふえているが、その理由のひとつに失業保険が月30万円以上もらえるというのがある。

 アメリカの失業保険ごとに異なっているが、失業前の給与の4-6割程度が支給される仕組みになっている(日本は収入により4-8割)。

 ただし州ごとに、月10万円(ミシシッピ州)から月36万円(マサチューセッツ州)という支給上限がきめられている(日本は年齢により異なるが最高で20万円程度)。

 ところが新型コロナウイルス対策のいっかんとして現在、これに週600ドル(6.6万円:1ドル=110円)が4か月間一律加算されることになっている。にすると25万円の加算である。

 この結果、アメリカでは失業保険給付が月30-40万円以上という日本からすると驚くような水準になっている。

 もとの仕事よりたくさんの手当をもらっている人も少なくない。

 このほかアメリカでは、大人一人1200ドル(13万円)の支給もすでに終わっている。

 日本でアメリカはレッセフェール(自由放任主義)で弱者支援が少ないとよく言われるが、日本では考えられないような手厚い水準である。

 ちなみに、アメリカの失業保険の支給期間は基本的に26週(半年)だが、失業が増えると52週(1年)に延長される。

 リーマンショック後は、これが99週間(約2年)まで延長された(日本は勤続年数などによるが最高330日)。

 雇用が短期間で回復にむかえば、こうした手厚い手当は個人消費の落ち込みを軽減させるのに大きな力になるかもしれない。


米石油採掘企業が破綻

2020年04月28日 | 経済

 2020年4月26日(日)、新型コロナウイルスによる経済悪化の影響をうけ、アメリカの海洋石油採掘企業ダイヤモンド・オフショア・ドリリングが日本の会社更生法にそうとうする破産法第11章(chapter 11)を申請した。

 負債総額26億ドル(2800億円:1ドル=110円)。

 フィナンシャルタイムズによれば、同社は10日前に5億ドル(550億円)の社債の利子を支払えず、ムーディーズは4月16日に同社の格づけを21段階の下から4番目に引き下げたところだった。

 現在、各国中銀が社債やCP(コマーシャルペーパー)の買い入れをはじめたり、その金額を増やしているが、対象となるのは基本的に投資適格の企業。

 Fed(米連銀)は、最近になって投資不適格に格下げされた企業の社債も買い入れ対象にしているが、現在もっとも資金を必要としている長く格づけの下位に沈んでいた企業に救済が拡大される見込みはいまのところゼロ。政府が補填できないほど大きな損失を中銀がかぶる可能性が高いためである(一部で、減産と引きかえに資金援助との報道もあったが実現は難しそう)。

 原油価格が低迷するなか、このような動きがどこまで広がるか注意してみていきたい。


米、中小企業に8週間分の給与を無償提供

2020年04月20日 | 経済

 アメリカでは新型コロナウイルスによる経済悪化から労働者と中小企業をまもるため、労働者を8週間解雇せず賃金を支払い続けた場合、その賃金総額プラスアルファを連邦政府が中小企業に無償提供するという、おどろくほど気前のいい仕組みがおこなわれている。

 それは給与保護プログラム(paycheck protection program)と呼ばれるもので、2020年3月末に議会で成立した2.2兆ドル(240兆円)の経済対策のうちに含まれている。

 仕組みはつぎのようになっている。 

<対象企業>

 労働者(+個人請負も含む)が500人以下の中小企業および非営利団体(NPO)

<金額>

 8週間分の賃金および賃料・光熱費(賃料・光熱費は全体の25%以下)。

 上限1千万ドル(11億円:1ドル=110円)。

<無償条件>

 企業がローンを受け取ってから8週間、以前からいる労働者をそのままフルタイムで雇用し続けた場合、返済は必要なくなる。

 労働時間を短縮した場合は、一部について返済の義務がしょうじる。

 この仕組みのため3490億ドル(38兆円)の予算がくまれたが、あっというまに資金がなくなった。

 このため、現在、3000億ドル(33兆円)ほどの資金を追加することが議会で検討されており、フィナンシャルタイムズ(2020/4/20)は合意が近いと報じている。

 

2020/4/22追記

 2020年4月21日(火)、米上院は給与保護プログラムに3200億ドル(35兆円)追加する予算を承認した

このほか、病院への補助に750億ドル(8兆円)、検査の拡充に250億ドル(2.7兆円)の追加予算も承認された。 


エクアドルとアルゼンチン、デフォルトの可能性

2020年04月19日 | 経済

 新型コロナウイルスの影響により、南米のエクアドル政府アルゼンチン政府デフォルト(債務不履行)におちいる可能性がでてきた。

 フィナンシャルタイムズによれば、エクアドル政府は、これから4か月間、国債の償還を一時的に停止することで債権者と合意した。

 エクアドルでは、3月から8月15日までに8.11億ドル(900億円:1ドル=110円)の国債が満期をむかえるが、その払い戻しが延期される。

 2028年に償還予定のエクアドル国債は現在、額面の26%で取引されている。

 エクアドル政府は2019年、IMFから42億ドル(4600億円)を借り入れ財政再建を進めることで合意していたが、新型コロナウイルスによる急速な経済悪化をうけIMFに追加の借り入れを求める予定。

 またすでに日本でも報じられているが、アルゼンチン政府は債権者に、これから3年の間、満期となる国債の払い戻しを停止するとともに国債の利払いを62%減額することを提案している

 しかし債権者はこれに大きく反発2001年以来、9度目となるデフォルトの可能性がでてきている。

 

2020/5/23追記

 2020年5月22日(金)、アルゼンチン政府は5億ドル(550億円)分の外貨建て国債利払いができずデフォルトとなった。債権者との話し合いは今後も続けられる予定。

 


GM、最初の人工呼吸器を完成

2020年04月15日 | 経済

 2020年4月14日(火)、GMは最初の人工呼吸器ロールアウト(完成)した

 GMは4月中に600台以上、6月末までに1.5万台、8月末までにさらに1.5万台の人工呼吸器を生産する予定になっている

 GMは先週、米政府と4.894億ドル(600億円:1ドル=110円)で8月末までに3万台の人工呼吸器を生産、納入する契約を締結したばかりで、動きの早さは驚くばかりである。

 これとは別に、米政府はオランダのフィリップス社と、6.47億ドル(700億円)で年末までに4.3万台の人工呼吸器を購入することでも合意している。

 さらにフォードGE(ジェネラルエレクトリック)と8月末までに5万台の人工呼吸器を生産する計画を進めている。

 ウォールストリートジャーナルはフォードとGMの様子をつぎのように記している。

 フォードとGEはAiron社から人工呼吸器のライセンスを取得。

 3月27日にフォードの研究所に、Airon社の1台の人工呼吸器が到着。

 翌日の午後までに、すべての部品が分解され、組み立てる順番に並べ替えがおわった。

 フォードは2交代制(各組260人)で、1分に1台の人工呼吸器を生産する予定になっている。ちなみに、Airon社は週に10台の人工呼吸器しか生産していなかった。

 ところで人工呼吸器の部品数は数百(GMの場合で約700)。大量生産の成功は、部品の確保にかかっている。

 GMは多くの部品について短期間にサプライヤー(約100社)を見つけることができたが、いくつかの部品でどうしても供給が確保できないものがでてきた。

 ここでGMは、自社の2万社のサプライヤーに詳細な設計仕様をおくり、部品供給の可能性を打診。

 数時間のうちに供給企業がみつかった。

 社会の変化にすばやく対応できるアメリカ(企業)の強みをあらためて世界に知らせることになった今回のできごとであった。

 なお日本国内の人工呼吸器は3万台以下。日本でも人工呼吸器の増設が必要とされているが、異業種の参入はなかなか進んでいない

 

2020/4/15追記

 米保険福祉省は、GE、Medtronic PLC、Hamilton Medical、Hill-Rom、ResMed、Vyaire Medical、Zoll Medicalなどと人工呼吸器購入で合意し、5月8日までに6,190台、6月1日までに29,510台の人工呼吸器の納入をうける予定になっていることを明らかにした2020年末までの納入数は137,431台、契約総額は25億ドル(2750億円)となっている。

 現在、アメリカには6.2万台の人工呼吸器があるが、新型コロナウイルスの感染拡大によりその増強が大きな課題になっている。

 

米自動車販売が急減: 4月は78%マイナスの可能性も 2020/3/28