大野威研究室ブログ

おもにアメリカの自動車産業、雇用問題、労働問題、労使関係、経済状況について、最近気になったことを不定期で書いています。

米中、追加関税の無期限延期などで合意

2019年06月29日 | 日記

 2019年6月29日(土)、トランプ大統領と習国家主席の会談が大阪でおこなわれ、3000億ドル(33兆円:1ドル=110円)の追加関税を期限を定めず延期し、中断していた貿易協議を再開することで合意した。

 また、先日のブログで書いたように、中国政府はファーウェイへの米製品の販売禁止の取り消しを求めていたが、今回、その取り消しがきまった。

 ここまでの内容は中国政府に有利な取り決め(米国の妥協)にみえるが、ウォールストリートジャーナルは、そのかわりとして

 (1)中国は米国からの農産物の輸入拡大を即座に実施する

 (2)貿易協議は協議が中断したときの内容が出発点となる

 ことがきまったとしている。

 ちなみに前者についてWSJは、首脳会談がおこなわれる前日(金)にすでに、中国はアメリカから54.4万メトリックトンの大豆を購入していたとしている。

2019/7/1追記

 米メディアは、米製品のファーウェイへの販売は米国の安全保障に影響しないものに限って認められると報じている。


中国、関税の全撤廃、ファーウェイへの規制撤廃を要求か

2019年06月28日 | 日記

 ウォールストリートジャーナルは、中国が貿易協議妥結の条件として、米製品のファーウェイへの販売禁止の撤廃、これまでかけられてきた関税の全撤廃などを求めていると報じた。

 WSJによれば、ライトハイザー氏と劉鶴(リュー・ホー)氏は今週に電話協議をおこなっており、トランプ氏と習氏の首脳会談の前にさらに直接会談を予定している。

 こうしたなか、中国は貿易協議妥結の前提条件として、(1)米製品のファーウェイへの販売禁止の撤廃、(2)中国に対する懲罰的関税の全撤廃、(3)アメリカからの輸入増加目標を現実的なものとする、ことなどを求めていることが明らかになった。

 (3)についていうと、現在、アメリカから中国への輸出は1200億ドル(13兆円:1ドル=110円)程度にとどまっている。WSJによると、ある中国政府関係者はアメリカから3000億ドル(33兆円)分の輸入増加を求められたが、非現実的な目標だと述べている。

 一方、WSJは、アメリカ側は5月に貿易協議がまとまりかけた際の協議内容(中国がそこから突然態度を変えて合意内容の見直しを求めたため交渉中断になったとされている)が、交渉の出発点になるとしている。

 米中首脳会談が実現したことで、中国からの輸入3000億ドル(33兆円)に対する関税(10-25%)の適用はしばらく留保となる可能性が高い

 しかし、WSJをみるかぎり米中の距離はいぜん大きく、どちらかが大きな妥協を準備しているようにはみえない。中国政府が、来年の米大統領選挙でトランプ氏が再選されないと考えるなら、この時期に中国が交渉妥結をいそぐ理由は小さい。

 明日の米中首脳会談では、貿易協議の再開(スケジュール)が決まるかどうか、交渉の期限(関税引き上げまでの期限)がどうなるか(1か月といった短期になるか3-6か月といったものになるか)、などに注目したい。


米中首脳、G20会談で合意

2019年06月19日 | 日記

— Donald J. Trump (@realDonaldTrump) June 18, 2019

 2019年6月18日(火)、トランプ大統領はツイッターで習主席と電話会談をおこない、G20大阪サミットで首脳会談をおこなうことで合意したと発表した。

 またツイッターでは、会談に先立ち(中断されていた)実務協議を開始するとされている。

 2019年5月10日にアメリカが中国からの輸入2000億ドル分(22兆円分:1ドル=110円)の関税を10%から25%に引き上げてから両国の貿易協議は中断したままになっている。

 それ以前には、劉鶴(リュー・ホー)氏が率いる交渉団とライトハイザー氏とミュニーシン氏が率いる交渉団がワシントンと北京を交互に訪問し交渉をおこなっていた。

 次回の交渉は北京で開催することが決まっているが、現在までのところ開催はなされていない。

 ライトハイザー氏とミュニーシン氏がG20までに北京を訪れることになるのかどうか、またそこでどのような交渉がなされるのかが注目される。

 

2019/6/20追記

 WSJによれば、ライトハイザー氏は2019年6月19日、上院においてG20大阪サミットで中国の要人と会談する可能性を示唆した。


G20でトランプ氏と習氏の交渉なければ、25%関税発動のカウントダウンはじまる?

2019年06月15日 | 日記

 ウォールストリートジャーナルによれば、穏健派のクドロー国家経済会議委員長は2019年6月13日(木)、6月28日と29日に大阪でおこなわれるG20サミットでトランプ大統領と習主席の会談が実現しなければ、中国からの輸入品3000億ドル(33兆円:1ドル=110円)に対して25%の関税をかける結果になる可能性を示した。

 トランプ大統領は習主席との会談を強く望んでいるが、現在までのところ両者の会談は予定されていない

 両者の会談があっても貿易協議に大きな進展を予想するむきはほとんどないが、事実上中断している貿易協議の再開やそれにともなう関税の一時留保などが期待されている。 

 関税引き上げについてのアメリカ国内の情勢は非常に読みにくくなっている。

 2019年6月13日、ウォールマートやコストコなど米600社はトランプ大統領あてに、関税引き上げを避けるため中国との交渉再開をうながす書簡を提出した。

 しかしその一方で、共和党の穏健主流派ルビオ上院議員と民主党のマーク・ウォーナー上院議員が連名で「安全保障上の理由から、貿易交渉の進展にかかわらずファーウェイ製品を米国内で許可すべきでない」との書簡をポンペオ国務長官とライトハイザー氏に送るといったことがおこっている。

 また、関税引き上げをてこにメキシコから移民問題で大きな譲歩を勝ち取ったことからトランプ氏の支持率は上向いている。

 さらに、貿易紛争による経済悪化を見越して米連銀に対する利下げ期待が高まり、現在、米株はふたたび史上最高値を試す展開になっている。このことは、貿易紛争の悪化を危惧する米連銀の意図とは逆にかえってトランプ氏の関税引き上げを容易にする役割を果たしている。

 とりあえず今週はG20におけるトランプ氏と習氏の会談がいつどのような形で発表されるのか注目したい。


VWチャタヌーガ工場の組合承認選挙、UAWが敗北

2019年06月15日 | 日記

 2019年6月12日(水)から14日(金)にかけてテネシー州にあるVWチャタヌーガ工場で労働組合承認選挙がおこなわれ、833(51.8%)対776(48.2%)の差でUAW(全米自動車労組)が否認された。投票率は93%だった。

 ニューヨークタイムズによれば、VWチャタヌーガ工場の入社時の時給(生産労働者)は15.5ドル(1700円:1ドル=110円)。これが7月からは16ドル(1760円)にアップすることが決まっている。

 時給は勤続とともにアップし、最高は23.5ドル(2600円)。

 このチャタヌーガ工場の時給は地域の賃金の中央値は上回っているが、ビッグ3の賃金を大きく下回る水準となっている。

 オートモーティブニュースによれば、チャタヌーガ工場における生産労働者の平均年収は5.5万ドル(600万円)、熟練労働者の平均年収は7.8万ドル(860万円)。

 これに対し、GMにおける生産労働者の年収は9.5万ドル(1050万円)、熟練労働者の年収は12.3万ドル(1350万円)となっている(残業代および利益分配ボーナス含む)。

 テネシー州は共和党の強固な地盤。選挙では、共和党のビル・リー知事やマーシャ・ブラックバーン上院議員からUAWの承認に反対する発言が相次いだ。

 またUAWでは、一部の幹部が自動車メーカーから便宜供与をうけ労使交渉を企業に有利なように運ぼうとしたとして裁判になっており、このこともUAWに不利に働いたとみられている。

 

過去の関連ブログ

UAW(全米自動車労組)、VWチャタヌーガ工場で組合承認選挙を実施へ (2019/4/12)

UAW、VWチャタヌーガ工場で専門工の組合承認選挙に勝利(2015/12/5)

VWの組合承認選挙にかんして、UAWが異議申し立てを撤回(2014/4/22)

VWチャタヌーガ工場の組合承認選挙でUAWが手痛い敗北(2014/2/26)