大野威研究室ブログ

おもにアメリカの自動車産業、雇用問題、労働問題、労使関係、経済状況について、最近気になったことを不定期で書いています。

秋篠寺の苔庭

2016年02月27日 | 日記

 

 昨年はいろいろ忙しく、結局、年賀状を出せずじまいにおわってしまった。

 そんな中、年末に立ち寄った秋篠寺(奈良市)の風景。一瞬、忙しさを忘れた。

 2月に入り、かわりに寒中見舞いをと思っていたが、それも難しそう。

 なんとか暑中見舞いはと、この寒さのなか思うのでした。 


ココ債を誰が買っているのか?

2016年02月22日 | 日記

 先週、ココ債を発行しているドイツ銀行がデフォルトに陥るのではないかという心配から世界同時株安が進行した。とりあえずその不安は払しょくされたようだが、疑問が残った。ココ債を誰が買っているのか?という疑問だ。2016年2月20日のWSJ(ウォール・ストリート・ジャーナル)でその手がかりを得ることができた。その内容は以下のとおり。

 欧州では、リーマンショック後、銀行救済のため多くの国費が投入されたことが強く批判され、ふたたび不測の事態が生じても国費を投入しなくてもいいよう、銀行に資本増強が強く求められるようになった。そのための仕組みのひとつがココ債である。
 この債権は、銀行の自己資本比率が一定水準以下になったら銀行の株式に強制的に転換され、元本が保証されなくなるというもの。危機の際は、ココ債の保有者(債権者)を犠牲にして、国費投入をせずに銀行を守ろうというもの。こうしたリスクがあるためココ債は高利回りで、なかには利回りが8%を超えるものもあるという。
 最近まではココ債のリスクはあまり心配されず、高利回りで多くの投資家を引き付けてきた。WSJによれば、2012年以降、900億ユーロ(約12兆円:1ユーロ=130円で計算)のココ債が発行されてきた。問題のドイツ銀行は2014年5月に35億ユーロ(4500億円)のココ債を発行したが、引き合いが強く、さらに25億ユーロ(3000億円)のココ債を追加発行したとされている。
 WSJによれば先週、ココ債は額面の9割で売買されていたということだが、ココ債の保有者は誰なのか?7-8割はPacific Investment Management Co.(ピムコ)や BlackRockといった資産運用会社に保有されているという。またプライベートバンクなどを介して、アジアの投資家などに売られているものもあるという。
 WSJはアジアの投資家という以上のことは言っていないが、インターネットで少し調べると、日本のたくさんの証券会社や銀行がココ債ファンドを売っていることがわかる。

 ココ債の最終保有者の具体像はいまだによくわからないが、日本の金融機関や個人投資家もココ債に無縁ではないことはわかった。

 しかし次から次へ問題となる高リスク金融商品が出てくるものだ。とてもこれで打ち止めと思えないのが怖い。

  潮が引いたとき、はじめて誰が裸で泳いでいたかわかる、というバフェット氏の言葉の意味がようやくわかった。


アメリカ連邦最高裁、保守派が少数派に転落の可能性

2016年02月14日 | 日記

  ようやく試験の採点が終わった。徹夜を覚悟していたが、10時まえに終わった。ふー。

 ところでアメリカ連邦最高裁判所スカリア裁判官が亡くなった。アメリカの政治、司法を大きく変えるかもしれない大事件だ。

 米連邦最高裁判所の裁判官は9人。大統領が指名し任命するが(上院の同意が必要)、定年はなく、文字通り死ぬまで終身身分が保証されている。自分から辞めるか、亡くなる以外に交代させられることはない。

 最近の勢力バランスは保守派5人、リベラル派4人。昨日までは、このバランスが相当長い間続くものと思われていた。

 ところが先のニュースである。スカリア氏は保守派の最右翼とされていた人物。オバマ大統領の任期中の死去ということで、かわりにリベラル派の裁判官が指名、任命される可能性がでてきた。もっとも上院は共和党が多数派を占めており、すんなり任命が決まることはなさそう。

 近年、米最高裁判所は、保守的傾向(アメリカの保守主義はティーパーティー運動に見られるように国家の権限を極力小さくしようとする立場で、日本の保守主義とは全く異なる)を強めていたが、もし最高裁の勢力バランスが変わることがあれば、オバマ大統領の誕生ぐらいインパクトのある大事件だと思う。これからの動きを注視していきたい。

2016年2月25日追記

 上院で過半数をにぎる共和党は、スカリア氏の後任は次期大統領が決めるべきと主張し、それまで審議に入ることを拒否するとしている。ところが2月24日のWSJは、オバマ大統領はスカリア氏の後任として穏健保守派のネバダ州知事サンドバル氏(共和党)を考慮していると伝えた。事態打開につながるか注目される。 


株安・円高でGPIFの損失が拡大

2016年02月11日 | 日記

 黒田日銀総裁によるマイナス金利導入発表後、世界同時株安が加速している。

 ところで気になるのが2015年9月末時点で135兆円の年金資産を運用しているGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)だ。

 GPIFは、安倍政権が誕生する直前の2012年9月末には資産(108兆円)の約23%を国内外の株で運用していたが、それが2015年9月末には43%と2倍近くに増えている。その結果、株価が下落すると以前より損失が膨らみやすくなっている。

 ちなみにチャイナショック(中国人民銀行による突然の4%の元の切り下げとそれに続く中国本土の株暴落に端を発した世界同時株安)があった2015年7-9月の運用実績は7.8兆円の大幅赤字であった。

 現在はチャイナショック時以上に株安が進行している。また急激な円高によって、海外株(21.6%)や海外債権(13.6%)を円換算したときの評価損が膨らんでいる(債券価格は上昇が期待できるが為替差損のほうがはるかに大きい)。

 2015年10-12月期はチャイナショック後の株価回復で4.7兆円の運用益を計上したが、このまま株価が戻らなければ2016年1-3月期の損失はチャイナショック時以上のものになると思われる(2016年3月2日修正)。

 私は、年金資金が株の運用をすること自体は悪いことだとは思わないが、GPIFが、株が上昇局面(高い水準)にあるときに株の運用比率を大幅に引き上げ、短期間に大量の株の買い入れをおこなったことは、はたして年金受給者のためになることだったかと疑問に思う。株の運用比率の引き上げのスピードとタイミングに問題があったのではないかということだ。将来の年金受給者のひとりとして、ここに書いた心配が杞憂でおわることを願っているのだが。

★ 2016年8月27日追記

 GPIFは2016年8月26日、2016年4-6月期の運用成績が5兆2342億円の赤字になったことを明らかにした(GPIFの公表資料)。内訳は、国内株が2兆2574円、国外株が2兆4107億円、国外債権が1兆5193億円の赤字、国内債権が9383億円の黒字。

 また日経新聞(2016/8/26)によれば、2014年10月に株の資産運用比率を倍増させて以降の累積でも1兆962億円の赤字と、初めて赤字に転じた

 なおGPIFの公開資料によれば、2016年6月末の日経225は1万5575.92円、TOPIX配当なしは1245.82。

★ 2016年9月10日 追記

 国際的にみても、GPIFの株への配分比率は高い。

 2015年に出されたIMFのワーキングペーパーでは、各国年金の国内外株への配分比率は次のように紹介されている(今はこれより上がっているかもしれない)。

デンマーク 23%

フランス 29%

ドイツ 11%

オランダ 23%

スイス 31%

イギリス 39%

オーストラリア 52%

出所:Arslanalp, Serkan and Dennis Botman, 2015, 'Portfolio Rebalancing in Japan: Constraints and Implications for Quantitative Easing.'