大野威研究室ブログ

おもにアメリカの自動車産業、雇用問題、労働問題、労使関係、経済状況について、最近気になったことを不定期で書いています。

米長期国債(10年国債)と2年国債の金利差縮まる

2018年04月30日 | 日記

 アメリカで長期国債(10年国債)と2年国債の金利差が縮まっている。そのわかりやすいグラフはこちらにあるので見ていただけたらと思う。 

 アメリカでは、2年国債の金利が長期国債(10年国債)の金利を上回るいわゆる逆転現象がおこると、その6-8か月ぐらいあとに景気がピークをつけることが多い。短期国債の金利が長期国債より高くなるということは、短期の景気見込みが将来の景気見込みを上回っていること、つまり将来景気が後退することを想定していると説明されることが多い。

 もっともアメリカ以外では、このような現象がみられない国も多い(日本など)。アメリカについても、逆転現象がおきても景気拡大が続いたケースがある。また日欧でつづく金融緩和や世界同時好況など過去と経済状況が大きく違うことから、過去と同じことがおこるとはかぎらないという意見も少なくない。

 長期国債と2年国債の金利差はまだ0.5%ほどあるが、その推移をホームページで追っていくことにしたい。


ポルシェ、アメリカで急速充電網を構築へ

2018年04月29日 | 日記

 2018年4月16日のオートモーティブ・ニュースは、ポルシェが2019年末までにアメリカに急速充電施設を最低500カ所新設する予定だと伝えた。

 ポルシェは2019年に電気自動車ポルシェ・ミッションEを発売する予定。また2020年には、同車とおなじプラットフォームを用いたミッションEクロスツーリスモも発売されることになっている。そして電気自動車の発売にあわせポルシェは、800ボルトの急速充電施設を最低500カ所、アメリカの高速道路沿いおよびディーラーに設置する予定。ポルシェ・ミッションEは300マイル(480キロ)の航続距離をほこるが、この急速充電をつかうと20分以内に80%の充電(400キロ)が可能となる。

 日本では電気自動車は充電に時間がかかるのでそれほど普及しないという意見がまだ多いが、欧米では短時間で電気自動車を充電する急速充電の普及が急ピッチで進んでいる。急速充電は自動運転とおなじように価格の高い高級車から普及していくと思われるが、高級車の少ない日本メーカーには不利となる厳しい状況だ。

 新しい技術や規格は、市場の大きなアメリカか中国でいちはやく普及したものが勝者となる。とくに電子部品は量産効果が大きく、その法則は電気自動車によりよくあてはまる。ひじょうに簡単なルールだ。ポルシェ(VWのグループ企業)がまず世界にさきがけてアメリカで急速充電網を構築しようとしているのはそのためである。しかし日本の行政はそのことを理解していないのか無視しているのかしらないが、新しい技術や規格はとくにかく世界にさきがけて日本で普及させればそれが世界標準になるといまだに信じているようだ。技術で先駆けながら普及に失敗した携帯の失敗から何も学んでいないように思える。水素自動車も本当に普及させようと思うなら、なによりもアメリカでの市場開拓を優先させるべきだが、行政にそのような視点が強くないことは残念でならない(民間企業ではトヨタがカリフォルニア州に水素インフラを重点投資している)。

参考

電気自動車によって自動車産業の分業構造が激変(2017/8/22)

電気自動車の急速充電、欧米で急速に進む: 日本は決定的に出遅れ(2017/7/19)

これから電気自動車の時代が来る(2016/8/31)


イギリス3月の自動車生産、前年比13%の減少

2018年04月28日 | 日記

 2018年4月26日、イギリスの2018年3月の自動車生産が前年比13%減となったことがわかった。

 イギリス自動車工業会によれば、3月の自動車販売(登録)は前年比15.7%の減少。とくにディーゼル車の販売が37.2%と大幅に減少した。

 イギリスで生産された自動車の3/4がヨーロッパなどに輸出されているが、輸出は前年比4%の減少にとどまっている。

 

 


フォード、乗用車生産から事実上の撤退へ

2018年04月27日 | 日記

 2018年4月25日(水)、フォードのジム・ハケットCEOは、北米においてムスタングフォーカスを除く乗用車生産を中止すると発表した。オートモーティブ・ニュース(2018/4/26)によれば、フォードは、フィエスタフュージョントーラスを廃止。フォーカスについても、2019年に発売予定のハッチバック(5ドア車)のみの生産となる予定。アメリカではこれを、フォードの乗用車生産からの事実上の撤退ととらえる報道が多い。

 この背景にあるのが、リーマンショックを破産せず乗り越えた唯一の国内自動車メーカーであるにもかかわらず、近年、利益率が低迷していることがある。ウォール・ストリート・ジャーナル(2018/4/21)によると、フォードの営業利益率は5%。GMの9%に大きく見劣りしている。

 こうしたことから新しくCEOとなったハケット氏は、2020年までに140億ドル(1.5兆円:1ドル=110円)のコストカットをおこなうほか、労働者を20万人削減するとしている(長期的な利益率目標は8%)。そしてコストカットの手段として登場したのが、利益率の低い乗用車生産の大幅な削減である。

 現在、アメリカでは自動車販売の2/3が利幅の大きい大型車になっており、その比率は現在も上昇し続けている。一方、乗用車は販売台数が減少傾向にあるうえに、日韓メーカとの価格競争が激しく利益率が低く、開発負担も大きい。こうした事情が、フォードに経営資源を大型車に集中することを決定させたと思われる。私は自分自身の数少ない経験からではあるが、内装や乗り心地は日本の乗用車より米メーカーのコンパクトカーの方が優れていると思っている。ただ価格が同等の日本車より高いことや、耐久性の問題から中古車価格が日本車ほど高くならないなどの問題があり、販売が伸びない状況となっているのではないかと考えている。

 ところで問題は、現在の大型車(アメリカではライト・トラックと分類される)ブームがいつまでも続くかどうかである。かつてはガソリン価格が上昇すると大型車の販売が急減し、米メーカーの経営を直撃した。しかし近年、大型車の燃費は大幅に改善している。オート・モーティブ・ニュース(4/26)によれば現在、フォードの大型車エスケープの燃費(mpg:ガロン当たりマイル)は小型車フュージョンとあまりかわらず、EPA基準では小型車トーラスよりすぐれている。こうしたことがあるからか、以前のブログで指摘したように、2010年代前半にガソリン価格が高騰したとき、大型車の売り上げはほとんど影響を受けなかった。

 ただ心配も残る。現在の大型車ブームはある程度、低金利やサブプライム・オート・ローン(信用の低い人向けの自動車ローン)に支えられている。そのような条件が変わっても今のような大型車ブームがはたして続くのであろうか。気になるところである。

参考

米自動車メーカー、セダン生産を縮小(2018/4/7)

アメリカで4か月連続自動車販売が減少: サブプライムローンの損失拡大(2017/5/6)

アメリカでローンを払えず差し押さえられる車が増加(2017/8/24)


低格付け企業の債務増加、懸念高まる

2018年04月20日 | 日記

  

  株式市場が不安定になるたびに繰り返されてきたことではあるが、最近また、欧米の経済メディアで低格付け企業の負債増加を懸念する記事が増えている。

 たとえば2018年4月12日のフィナンシャル・タイムズ(FT)は、レバレッジ・ローン(leveraged loan)と呼ばれる投資適格以下の企業の債務が1兆ドル(110兆円:1ドル=110円)に達するとともに、今年に入ってさらに債務増加が加速しているとしている。

 FT紙は、その背景(債務側の背景)として活発な企業買収をあげている。同紙によれば、今年これまでに1.2兆ドル(130兆円)の企業買収が発表されたが、これは昨年の同時期より45%も多い。

 そしてFT紙は、欧米でEBITDA(税・利払い・減価償却前利益)に対する買収価格の倍率(10倍超)がリーマンショック前のピーク時(10倍弱)を超えているデータを示し、買収価格の高騰に警鐘を発している。

 また2018年4月1日のウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は、投資適格のなかでは最低グレードであるトリプルBの社債がかつてないほど増加していることを指摘している。

 同紙によれば現在、アメリカにおけるトリプルBの社債は2.5兆ドル(270兆円)で、5年前の1.3兆円(140兆円)、10年前の0.686兆ドル(75兆円)から急増している。

 WSJは、現在、トリプルBの社債は、投資適格の社債の50%を占めるとしたうえで、景気後退がはじまれば、格付けが投資不適格に引き下げられ借り換えが困難になるケースが増加する可能性があるとしている。

 WSJは、トリプルBの社債増加の一因として、企業買収などで負債を増加させた結果、もともとは高かった企業(社債)の格付けが低下するケースがあるとしている。同紙は、そのような例としてCVS、キャンベル、ジェネラル・ミルズなどを挙げている。

 ここからは私の意見だが、いまのところ低格付け企業のデフォルト率は依然低い水準を維持している。したがって、現在のような低金利が続くうちは問題にならないと思うが、金利が大きく上昇するとFT紙やWSJ紙が指摘するように、借り換えや借り換え後の利払いが困難になる企業が増えてくることも考えられる。低格付けの社債は償還までの期間が短いものが多く、とくに2019年以降に償還をむかえるジャンクボンドが急増する。これから金利およびそれを規定するインフレ率の動きには今まで以上の注意が必要である。