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2023年1月25日 弁理士試験 代々木塾 特許法34条

2023-01-25 04:04:26 | Weblog
2023年1月25日 弁理士試験 代々木塾 特許法34条

 特許法第三十四条
1 特許出願前における特許を受ける権利の承継は、その承継人が特許出願をしなければ、第三者に対抗することができない。
2 同一の者から承継した同一の特許を受ける権利について同日に二以上の特許出願があつたときは、特許出願人の協議により定めた者以外の者の承継は、第三者に対抗することができない。
3 同一の者から承継した同一の発明及び考案についての特許を受ける権利及び実用新案登録を受ける権利について同日に特許出願及び実用新案登録出願があつたときも、前項と同様とする。
4 特許出願後における特許を受ける権利の承継は、相続その他の一般承継の場合を除き、特許庁長官に届け出なければ、その効力を生じない。
5 特許を受ける権利の相続その他の一般承継があつたときは、承継人は、遅滞なく、その旨を特許庁長官に届け出なければならない。
6 同一の者から承継した同一の特許を受ける権利の承継について同日に二以上の届出があつたときは、届出をした者の協議により定めた者以外の者の届出は、その効力を生じない。
7 第三十九条第六項及び第七項の規定は、第二項、第三項及び前項の場合に準用する。

〔解説〕
・1項(特許出願前における特許を受ける権利の承継の第三者対抗要件)
(1)34条1項は、特許出願前における特許を受ける権利の承継は特許出願により第三者に対抗することができるものになる旨を規定している。
 特許を受ける権利は、発明をすることにより発生するものであるから、特許を受ける権利の承継という行為は、特許出願前にされることもあり得る。しかし、その承継については適当な公示手段もないので特許出願をもって対抗要件とすることとしている。
 34条4項の場合においては届出をもって効力発生要件としているにもかかわらず、34条1項の場合は第三者対抗要件としたのは、もし34条1項の場合も34条4項の場合と同様に効力発生要件とすると、特許出願前においては特許を受ける権利の承継をすることができないということになり、そうなると社会の実情から考えて不便が多いということで、34条1項に規定する場合については旧法(大正10年法)と同様に第三者対抗要件とすることとしている。

(2)特許出願前に特許を受ける権利の二重譲渡があった場合において、異なった日に2以上の特許出願があったときは34条1項が適用され、同日に2以上の特許出願があったときは34条2項が適用される。
 すなわち、34条1項及び2項は、特許出願前に特許を受ける権利の二重譲渡があった場合の調整規定である。

(a)甲が発明イを独自に完成した後、甲が、発明イについての特許を受ける権利をX会社に譲渡し、さらに、発明イについての特許を受ける権利をY会社に譲渡したときは、特許を受ける権利の二重譲渡に該当し、34条1項が適用される。
 この場合は、X会社が先に発明イについて特許出願をしたときは、特許を受ける権利の承継について、X会社は、その後に発明イについて特許出願をしたY会社に対抗することができる。
 逆に、Y会社が先に発明イについて特許出願をしたときは、特許を受ける権利の承継について、Y会社は、その後に発明イについて特許出願をしたX会社に対抗することができる。
 特許を受ける権利の二重譲渡があった場合には、先に特許出願をした者が特許を受ける権利の承継について第三者に対抗することができる。

(b)X会社の従業員甲が職務発明イを独自に完成した後、甲が、発明イについての特許を受ける権利をX会社に譲渡したが、先に甲が発明イについて特許出願Aをし、その日後、X会社が発明イについて特許出願Bをしたときは、特許を受ける権利の二重譲渡に該当しないし、甲とX会社は第三者の関係にはあたらないので、34条1項は適用されない。
 この場合は、甲の特許出願Aは特許を受ける権利を有しない者の特許出願であるとして、49条7号の冒認の拒絶理由に該当する。
 X会社の特許出願Bは特許を受ける権利を有する者の特許出願であるとし、49条7号の冒認の拒絶理由に該当しない。
 ただし、甲の特許出願Aについて特許権の設定の登録がされたときは、冒認出願であっても、先願の地位が確定するので(39条5項反対解釈)、X会社の特許出願Bは、甲の特許出願Aを引用して39条1項違反であるとして、拒絶理由に該当する。
 この場合は、発明イについて特許を受ける権利を有するのはX会社であるので、74条1項により、X会社は、甲に対して、特許出願Aに係る特許権の移転を請求することができる。

(3)特許出願前に特許を受ける権利の二重譲渡があったときは、先に特許出願をした者が特許を受ける権利の承継について後に特許出願をした者に対し対抗でき、後に特許出願をした者は冒認者となる(49条7号)。

・2項(複数の承継人が同日に出願した場合には協議制を採用)
(1)34条2項は、34条1項の特別規定といえるものである。
 34条1項の規定によれば、同一の者から承継した同一の特許を受ける権利について2以上の特許出願があったときは、最先に特許出願をした者が優先し(たとえ承継が後になされた場合でも)、その他の者の特許を受ける権利の承継は無効なものとなるが、特許法においては、新規性又は進歩性の判断の場合を除き、特許出願の先後については、日の先後のみを問題とし、同日中の時間の先後は問題としないこととしているので(39条)、34条2項もその趣旨から同日に2人以上の者による2以上の特許出願があったときは、これらの特許出願人に協議を命じ、協議により定められた者のみが承継について第三者に対抗することができることとした。

(2)甲が発明イを独自に完成した後、甲が発明イについての特許を受ける権利をX会社に譲渡し、その後、さらに発明イについての特許を受ける権利をY会社にも譲渡した場合(二重譲渡)において、X会社とY会社がそれぞれ同日に発明イについて特許出願をした場合に、34条2項が適用される。

(3)協議により定めた者以外の者の特許出願は冒認出願となる(49条7号)。

(4)34条2項の場合は特許庁長官が協議命令をするので、34条2項の「第三者」には特許庁長官も含まれると解されている。
 これに対し、34条1項の場合は、特許庁長官が関与することはないので、34条1項の「第三者」には特許庁長官が含まれないと解されている。

・3項(同日に特許出願と実用新案登録出願があった場合も協議制)
 34条3項は、34条2項とほぼ同じような問題について規定したものである。
 34条2項は、同一の者から2人以上の者に同一の特許を受ける権利が承継された場合に適用されるが、34条3項は、同一の技術的思想を一方では発明としてとらえ他方では考案としてとらえ、それぞれについて同日に特許出願及び実用新案登録出願があった場合に、34条2項の場合と同じように、これらの出願人の協議により定められた者のみが対抗することができる旨を規定している。
 旧法(大正10年法)においては、特許出願と実用新案登録出願との間の先後願関係を審査しないので、同一の技術的思想について一方では発明としてとらえ、他方では物品の型としてとらえれば、特許権と実用新案権が並存することもあり得たが、現行法(昭和34年法)においては、両者の先後願関係は審査の対象となる(39条3項及び4項)ので、34条3項はそれとの関連規定として新しくおかれたものである。

・4項(特許出願後の特許を受ける権利の特定承継は届出が効力発生要件)
(1)34条4項は、特許出願後における特許を受ける権利の承継について規定している。
 34条4項の場合は、旧法(大正10年法)と異なり、届出をもって効力発生要件としている。これは特許権の移転等についての改正と同じように権利の帰属関係を明確にするためである。
 なお、34条4項において、相続その他の一般承継については除外しているが、もし除外しない場合は、相続等の事実が発生した時点から承継の届出がされるまでの間は権利者はいないという事態が発生するので、それを防ぐためである。
 したがって、相続その他の一般承継の場合は、届出をしなくても承継の効力が生ずることになる。
 ただし、相続その他の一般承継の場合は、34条5項に規定するように、承継があった旨を特許庁長官に届け出なければならない義務が課せられている。

(2)特許出願後の特許を受ける権利の譲渡の場合は、届出、すなわち「出願人名義変更届」を提出するまでは、当事者間で譲渡の契約をしても、その譲渡の効力が生じないこととなる。

(3)特許出願後の特許を受ける権利の相続その他の一般承継の場合は、「出願人名義変更届」を提出しなくても、一般承継の効力が発生する。

(4)甲が発明イを独自に完成した後、甲が、発明イについて特許出願Aをした後、特許出願Aに係る発明イについての特許を受ける権利をX会社に譲渡し、その後、さらに特許出願Aに係る発明イについての特許を受ける権利をY会社に譲渡した場合(二重譲渡)において、先にY会社が出願人名義変更届を提出したときは、名義変更の効力が生ずるので、その後にX会社が出願人名義変更届を提出しても,甲とX会社との間の譲渡契約では名義変更届は不適法となり、却下の対象となる(18条の2)。

・5項(特許を受ける権利の相続その他の一般承継)
(1)特許出願後に特許を受ける権利の相続その他の一般承継があった場合には、遅滞なく届出をしなければならない。
 届出、すなほち「出願人名義変更届」を提出することは、義務的である。

(2)「相続その他の一般承継」には、相続のほかに、会社合併、包括遺贈が含まれる。

(a)「会社合併」には、設立合併と吸収合併がある。

(b)「包括遺贈」
「遺贈」は、生前に遺言書を作成して、自分の財産を無償又は一定の義務を果たす条件を付けて譲渡する相続の方法である。
 相続人が全員で話し合って遺産の分け方を決める「遺産分割協議」とは異なり、法定相続人ではない者にも財産を遺す(のこす)ことができる方法である。
 法定相続人には該当しない、孫や介護をしてくれた長男の嫁、ボランティア団体、会社などに財産を与えることも可能である。
 「遺贈」には、「包括遺贈」と「特定遺贈」の2種類あり、それぞれ権利や義務、受遺者が受け取る手続などが異なっている。
 「包括遺贈」は、財産全てや半分など財産の割合を指定する遺し(のこし)方で、相続人と同等の権利や義務を負うことが特徴である。
 すなわち、借金などマイナスの財産があれば合わせて相続し、他の相続人とともに「遺産分割協議」で財産の分け方を具体的に協議することになる。
 「特定遺贈」は、特定の財産を指定して与える遺し(のこし)方である。
 「包括遺贈」とは異なり、マイナスの財産があるとしてもそれを相続することにはならない。

・6項(同日に二以上の届出)
 34条6項は、同一の者から承継した同一の特許を受ける権利の承継について同日に2以上の届出があったときは、特許法においては同日中の時間の先後については問題にしないという趣旨から両当事者に協議を命じ、その協議によって定められた者の届出のみが効力を生ずべきことを規定している。
 協議で定めた者以外の者の届出は効力を生じない。

・7項(39条6項及び7項の準用)
 準用する39条6項は「特許庁長官は、相当の期間を指定して、協議をしてその結果を届け出るべき旨を命じなければならない。」と規定している。
 準用する39条7項は「特許庁長官は、指定期間内に届出がないときは、協議が成立しなかったものとみなすことができる。」と規定している。


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