「SFとはハッタリである!」と『神狩り』は言った

2013年12月07日 | 

 「SFとは筋の通ったホラ話である」



 そう喝破したのは、SF作家の山本弘さんである。

 読書好きという人種は、大きく2つに分けられる。

 それはミステリを読む者と、SFを読む者。

 というのは、ものすごい、ざっくりした分け方であるが、イメージとしてはわかってもらえるのではあるまいか。

 私の場合は、ミステリ派であった。

 元の読書の入口が江戸川乱歩ということもあって、自然に路線は推理小説に決まることとなったのだ。

 少年探偵団から、ホームズクリスティーときて、クレイグライスウールリッチロアルドダールなどに広がっていくという、典型的な王道ミステリ野郎である。

 とはいえSFも、まったく読まないわけでもなかった。

 根が早川創元っ子なので、SFというジャンルは身近なもの。

 高校時代には、早川の『ミステリハンドブック』と『SFハンドブック』を購入し、ボロボロになるまで読みこんで、せっせと青い背表紙の本を買い集めた。

 なんといっても、はじめて女の子プレゼントした品というのが、プレゼント包装をした

 『夏への扉

 『火星人ゴーホーム

 だったというのだから、今思い返すと冷や汗もの。

 『夏への扉』はまだしも、なぜ『火星人ゴーホーム』なのか。

 火星なら、せめてブラッドベリの『火星年代記』にしろよ!

 いや、『夏への扉』も、一見さわやかに見えて実は問題だらけの小説だしなあ。

 受けとたっときの、彼女の困ったような笑顔が忘れられません。

 そんなこともあったので、この読書男子の分かれ道としては、ここでSFにシフトしてもおかしくなかったのだが、やはり乱歩チルドレンとして、



 「いや、オレはミスヲタ道をつらぬくのだ」



 という、よくわからない求道的な哲学と、あとハードSF苦手だったことも、とどめをさした。

 今でも、科学考証がどうとか、延々とSF的設定を語られる作品はつらい。

 山本会長も、フェブラリーから最新の『MM9』までだいたい全部読んでるけど、『地球移動作戦』は、最初の100ページがしんどくて挫折してしまったくらいだ(のちに読了、超おもしろかった)。

 なもんで、比率で言えばミステリ8に、SF程度の割合で読み分けていた。

 いわば、ミステリが本妻で、SFは二号さんのような存在であったわけだ。

 そんな私だが、ある時期からこの比率が

 ときにはSFの方が上回ることにもなるほど、SFに傾倒することとなったのである。

 そのきっかけは、『神狩り』であった。

 『神狩り』。いうまでもなかろう、山田正紀の書いた、日本SFの古典であり、名作中名作


 「人間は、関係代名詞が7重以上入り組んだ文章を理解することができない」にもかかわらず、冒頭で出てくる古墳に書かれた古代文字は、なんと論理記号が2つしかなく(人間の言語では5つらしい)、しかも関係代名詞が13重以上に入り組んでいるという」。


 このつかみで、「おお!」とばかりにグッと引きこまれる。

 そこからのストーリーもものすごく、神学論的展開から、最後には全知全能人間知恵を集結させて立ち向かうという、とんでもないスケールのものに。

 もうページを繰りながら「なんやこれ!」「すげえ!」と、ブレイクなしの一気読み

 当時の私はミステリもSFも海外物一辺倒であったが、日本のSFがこんなにもおもしろいとは思いもしなくてショックであった。吃驚しました。

 ちなみに、これがなんと山田正紀のデビュー作

 おいおい待てい。はじめて世に出た小説が、このクオリティー

 いかついな。あんたこそやないか! と、本気で文庫本に向かって、つっこんでしまったものである。

 でもって、読み終えての感想というのが、



 「なんちゅうハッタリや……」



 すごい。こんな壮大なハッタリは、私の読書生活の中でもはじめてであった。

 つかみの関係代名詞うんぬんとか、果ては神と戦うとか、ようこんなとんでもないこと考えつくなあ。あんたは、どんなホラ吹きや!

 そう、私はここで、はじめてSFの本質を理解したのである。

 SFとは科学がどうとか、タイムパラドックスがどうとか、シュレディンガーの猫がどうとか、なんだか理屈がややこしくて、そこが敷居の高さになるという人もいるだろうけど、なんのことはない。

 そういうのは、すべて「ホラハッタリ」なのである。

 そのことがわかった瞬間から、私のSF感は変わった。

 「いやーん、こんなアホな(ほめ言葉)物語書いてもええんやー」

 目がハートになってしまったのだ。

 それ以降は、ミステリとSFは半分ずつくらいで共存共栄して、楽しい読書ライフを送っている。

 最近おもしろかったのは、松岡圭祐人造人間キカイダー The Novel』。

 売れっ子作家が書いたノベライズなんて、どうせスッカスカでつまらんのやろ。

 なんて、あなどりながら読んでたら、あにはからんや、無茶苦茶におもしろくて腰を抜かしてしまった。

 物語の進行やアクションシーンのテンポが良く、なによりも「SFしてる」感がすばらしい。

 完全になめてました。「ごめーん」と心で土下座しながら一気に読了。超オススメ


 (続く→こちら




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