『マネーボール』の「セイバーメトリックス」とは何か? 鳥越規央『9回無死1塁でバントはするな』

2017年03月11日 | スポーツ

 鳥越規央『9回無死1塁でバントはするな』を読む。

 野球の世界では「バッティングの基本はセンター返し」や、「左打者には左投手」といったセオリーがある。

 この本は、そういった「常識」が本当に正しいのかどうか、マイケル・ルイス原作の映画『マネーボール』で有名になった「セイバーメトリックス(野球統計学)」によって検証していくというものだ。

 本書を手に取ったのは、野球に関して、昔から不思議に思っていたことがあるからだった。

 それは、「高校野球、バントしすぎではないか」。

 私はとりたてて野球好きというわけではないが、子供のころは夏休みのヒマつぶしに、甲子園の試合などテレビで観戦することがあった。

 そこで気になるのが、バントである。

 とにかく高校野球ではバントをする。ランナーが出れば送りバント、バント、バント、バント。

 これが、いつも不思議であった。いくらなんでも、バントしすぎではないのか。

 『和をもって日本となす』のロバート・ホワイティングさんのように、



 「バントはつまらない。日本野球はバント禁止令を出したらどうか」

 とまではいわないけれど、それよりも根本的に、

 「この場面でバントって、どう考えてもなんじゃね?」

 と、つっこみたくなるケースが、多々あるのだ。

 たとえば、ノーアウトのランナーが出る。すかさずバントで送る。これはまあ、いいとしよう。

 これが1死でランナーが出ても、バントさせる。

 そりゃ、スコアリングポジションにランナーを進めたい気持ちはわかるが、当然ツーアウトになるわけで、それって得なのかいな? 

 時には4番バッターにもさせる。打率3割とか4割とかでも、平気で1打席捨てさせる

 しかも、9回裏の負けているときとかにも。なんてもったいない!

 これが1点を争うシーソーゲームならまだしも、高校野球の場合はそれ以外のケースでも送りバントを行う。

 中盤くらいで大量リードをされていても、バントするのはどうなのか。そんな悠長なことで間に合うのか。

 私が見た甲子園での試合では、6点リードされてる試合とかでも、ノーアウト、ときにはワンアウト1塁でもバッターはきちんとバントしていた。

 どう考えても利敵行為だと思うが、解説の人は、



 「いいですね。まずは1点ずつ返すことですよ」



 感心したように語っていた。

 まずは1点って、そんなの全然遅すぎる気がするし、ワンアウトをタダであげて相手はではないか。

 27アウトの「寿命」を減らしてるってことだと考えると、ずいぶんとリターンが少ない気がする。

 そもそもバントしたからって確実に点が入るとは限らないし、1点返した次の回で2点取られたら(だいたいが今負けているんだから、その可能性も大いにある)いつまでたっても追いつけないし、それってホンマにええ作戦なんかいな。

 実際、その試合では、バントで返した1点など焼け石に水で、その後も点を取られて、12-2くらいで負けていた。なんだか、見ていて物悲しいものがあった。

 などなどといった、私のような素人が思いつくような基本的な疑問を、本書ではわかりやすく解き明かしてくれる。

 「先頭打者にヒット四死球ではどちらが悪いか」

 とか

 「ノーボール2ストライクで1球はずすべきか」

 などの、やはり「昔から気になっていた」お題も、データを見ると「あー、やっぱそうなんやー」と興味深い話が多いが、ことバントに関してもやはり……。


 (続く→こちら





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