続・浜田節子の記録

書いておくべきことをひたすら書いていく小さなわたしの記録。

Ⅱ-1-6 所有・雰囲気・振動ーSLITⅠ④

2019-11-29 06:43:35 | 美術ノート

 世界は全体開放されている。しかし、自分はこの道を行くだろう、むしろ(ねばならない)と言うべきかもしれない。双璧は世界を遮断している、逃げ道も用意されておらず前方も定かではない。

 この道を進むとき、この道を進む景を水平線(絶対的な条理)を望む位置から監視する他者の眼差しがある。それは自身の眼差しかも知れないが、空間は重層している。地下でさえも変革を見せ幾重にも時代を経過している。しかし、ここは終点(目的)ではなくあくまで時間の途中、切れ目(SLIT)である。

 平面と見えたものが坂(傾斜地)になるような視覚の振動である。この未来予測の不能な空間を所有している、確かにわたしたちはここに存在している故にこの不可思議な振動に錯視を覚えるのである。
 現実と幻視の二重機関、その間を風が吹いている。未来圏からの風かもしれない。


 写真は『若林奮 飛葉と振動』展・図録より 神奈川県立近代美術館


『忘れえぬ人々』44.

2019-11-29 06:25:29 | 国木田独歩

大津は無名の文学者で、秋山は無名の画家で不思議にも同種類の青年がこの田舎の旅宿で落合ったのであった。


☆他意を審(つまびらかにする)。
 夢(空想)の冥(死後の世界)である。
 問(責任や罪を聞きだし)楽(心が和むように)赦(罪や過ちを許す)。
 衆(人々)の懺(罪の赦しを乞う)夢(架空)の冥(死後の世界)を書く。
 化(教え導くこと)は普く死を義(人として行うべき道)に導く趣(ねらい)の類(たぐい)である。
 照(あまねく光が当たる=平等)の念(思い)を伝え赦(罪や過ちを許すこと)を慮(考える)。
 宿(前世)からを絡(結びつける)の業(前世の悪行の報い)がある。


『城』3313。

2019-11-29 06:12:25 | カフカ覚書

そのあいだに従僕は、仕事を終えていた。ただ、書類が一枚だけ(と言っても、じつは小さな紙片、メモ用紙一枚にすぎなかった)、助手の手落ちで車のなかに残っていて、だれのところへ配達してよいのかわからなかった。〈あれは、どうやらおれの書類かもしれんぞ〉という考えが、Kの頭にひらめいた。

☆したがって従僕(死人)自身の現場不在は打ち切られた。ただ一つの記録、まったく一枚の紙切れ、先祖のメモ用紙だけだった。助手の落ち度で引き起こされた小さな秤(平等)が残っていたが誰に分配すべきか分からなかった。あれはわたしの書類(記録)かも知れない、と頭のなかに浮かんだ。


Ⅱ-1-6 所有・雰囲気・振動ーSLITⅠ③

2019-11-28 07:14:29 | 美術ノート

 地平線に続く道、左右は切り立った壁(山/樹林)である。空に続くトンネルは外部を遮蔽している。地平線の上にある点線は水平線なのだろうか。
 地面と海、高所からの展望である。

 道の前方に立つ眼差しと、水平線の位置にある高所の眼差し、二つの視点が複合的にこの面に内在している。

 平面(二次元)でありながら、空間(三次元)を暗示するこの作品の真意は何だろう。
 存在するが不在であり、見えないが存在しているという振動する雰囲気の所有にあるのではないか。

 ここには実在はなく、感じるための企画の提示が設置されている。
 空間が重複する提示である。時間と空間を封じ込める発想、見えないものを見る眼差しにより見えてくる構築である。


 写真は『若林奮 飛葉と振動』展・図録より 神奈川県立近代美術館


『忘れえぬ人々』43.

2019-11-28 07:01:38 | 国木田独歩

秋山は二十五か六という年輩で、丸く肥満て赤ら顔で、眼元に愛嬌があって、いつもにこにこしているらしい。


☆終(命のおわり/死)の懺(罪の赦しを乞うこと)を普く自由な語(言葉)で録(書き記している)。
 念(思い)は拝啓(敬い尊重する)を含んでいるが、秘(人に見せないように隠している)。
 釈(意味を解き明かす)源(元)は、幻が現れ間から教(おしえ導く)。


『城』3312。

2019-11-28 06:51:13 | カフカ覚書

彼が、こんなにわめいたり、愚痴をこぼしたりする理由が、あんまりはっきりしなかった。どうやら書類の分配のことではないらしかった。


☆彼は、なぜ嘆きや苦痛の声がするのかを完全にはっきり分かっているわけではなかった。
 ひょっとすると、書類の分配のためではないかもしれなかった。


Ⅱ-1-6 所有・雰囲気・振動ーSLITⅠ②

2019-11-27 07:01:42 | 美術ノート

 彫刻である、ゆえに平面として捉えないことを前提にすると、この道は水平線(彼方/消失点/無限)に向かい、平坦ではなくとてつもない急坂(銅板は立てかけてある)を暗示しているのではないか。(含んでいると換言してもいい)

 人の近づけない、辿りつき得ない領域の提示である。
 精神的な所有、希求としての雰囲気、世界観と自己内の鼓動の共鳴としての振動。

  簡潔に見えて、驚異・・・脅威、人力の及ばないエリア、神域である。
 地球の相を幾重にも重ね来た歴史上の想念の幻影・夢幻を追っている。

 若林奮にとって振動とは、深淵なる神(未知の原点)と、風(大地と天空)の終わりなき響き合いと自身の存在(呼吸/生命)との共鳴である。
 ※神としか呼びえない不可思議な存在の核。

 
 写真は『若林奮 飛葉と振動』展・図録より 神奈川県立近代美術館


『城』3311。

2019-11-27 06:39:25 | カフカ覚書

その役人は、長いあいだじっとだまっていたが、これは、元気を回復するためにすぎなかった。やがてまたわめきだした。それもまえより弱々しい声ではなかった。


☆どうしても落着かないのは先祖の大群(大勢の人々)だった。彼は長い間黙っていた、しかし、死により再び自由になり、元に復帰し、以前より不明確ではなかった。


Ⅱ-1-6所有・雰囲気・振動ーSLITⅠ

2019-11-26 06:52:12 | 美術ノート

   Ⅱ-1-6所有・雰囲気・振動ーSLITⅠ

 幾重にも重ねられた四角の鉄板(銅板?)の四隅は、鋲で打ち止められている。
 表面には水平線、そして双璧の切り立った山、深い谷底の一本道、水平線を隠す山の続き・・・。

 開放された空間から天にも届くほどの高い絶壁のある谷底へと続く道、SLIT、細長く切れた道。

 重ねられた鉄板は地層だろうか、古代から続く膨大な時間の凝縮…その上を進まざるを得ない人の道(時間)。

 じつは空は底の知れない洗いがけの虚空で(「風の偏倚」より・宮沢賢治)

 逃避を拒む終わりの見えない道、所有していると思っている空間に束縛され、脈々と時を刻む空間の揺れに対峙している人の時間の在り様は歴史の堆積の上に浮上した泡のようなものかも知れない。


 写真は『若林奮 飛葉と振動』展・図録より 神奈川県立近代美術館