緑陽ギター日記

趣味のクラシック・ギターやピアノ、合唱曲を中心に思いついたことを書いていきます。

LPの音源のCD化

2017-02-19 19:22:27 | バイオリン
1月初めの記事「今年の抱負(4)」で、バッハのヴァイオリン無伴奏組曲の聴き比べについて書いたが、今日までの間に演奏者の数は拡大していく一方で、鑑賞熱はなかなか収まらない状態が続いている。
CD代の出費が痛いが、毎日の缶コーヒーを止めるなどして少しでも和らげている。
コーヒーを止めれば逆流性食道炎の悪化も防止されるから都合がいいか。
1月初めの記事を書いた段階では、①~⑪の演奏者にとどまっていたが、今日までの間に⑫以降の録音を聴いた。

①ヘンリク・シェリング 旧録音
②ヘンリク・シェリング 新録音
③ジョルジュ・エネスコ
④ヨーゼフ・シゲティ
⑤ヨーゼフ・スーク
⑥ギドン・クレーメル
⑥ヤッシャ・ハイフェッツ
⑦ナタン・ミルシティン
⑧和波孝禧 旧録音
⑨和波孝禧 新録音
⑩オスカー・シュムスキー
⑪カール・ズスケ

⑫ヨハンナ・マルツィ
⑬アルテュール・グリュミオー
⑭スザーネ・ラウテンバッハー(旧録音)
⑮ライナー・キュッヒル
⑯ユーディ・メニューイン
⑰イダ・ヘンデル
⑱加藤知子
⑲シギスヴァルト・クイケン(新録音)
⑳前橋汀子(旧録音)

今までヴァイオリンの音には違和感というか、どちらかというとあまり好きでない、という感じ方を持っていた。
しかしこうして何かのきっかけで聴き始めてみると、そんな先入観はどこにいってしまったのか、欲望のおもむくまままに随分と聴き込んでしまった。
ヴァイオリンも、ピアノやギターと同じように奏者により音色にかなりの違いが認められた。
技巧の大きな差はさほど感じられなかったが、演奏解釈は大きな差があった。

ベートーヴェンのピアノソナタもそうであるが、バッハの無伴奏ヴァイオリン組曲のような巨匠その他多くの奏者が力を入れて録音した演奏を聴き比べることは、音楽鑑賞にとって最大のテキストとなる。
どの演奏者が作曲者の感情や考え方を最も理解しているか、そしてそれを演奏上でいかに具現化しているか。
バッハの無伴奏のような曲は、演奏者の音楽の力量を最も露わにするので、テクニックだけでなく、精神性の成熟を待たなければとても人々に披露できるものではない。

聴き手も同様で、安易にこの盤がお勧めなどと言えるものではない。
どのくらいの時間を要するか見当がつかないが、いずれこの曲の聴き比べの結果、そして自分がこれだ、という名盤を記事にしたいと思う。

しかしこうして多くの奏者の録音を聴いてみると、奏者の音楽に対する考え方、感じ方が随分違うものだと感じざるを得ない。
まだ紹介できるレベルではないが、今まで聴いた中で、自分の心に強く響いてくる録音があった。
初めYoutubeで見つけたのだが、後で全集のCDを買った。
それが⑫のヨハンナ・マルツィ(1924~1979、ハンガリー)である。



女流ヴァイオリニストであるが、音が生命的なエネルギーに満ちており、清冽で、一本筋の通った力のある音なのである。
ヴィブラートを多用するので、好みが分かれるところであるが、私はこの音の力、生命力を感じさせる力に惹かれた。
Youtubeで聴いたあと、早速CDを買って聴いたのだが、最初の印象に比べ、何か物足りない感じがした。
EMIなので原盤からのCD化なのであろうが、何か、最初に感じた清冽さが感じられなくなっていた。
ヨハンナ・マルツィのバッハの無伴奏全曲の録音は1種類しかないが、現在ではEMIの他、Testament、グリーンドア音楽出版など複数のレーベルからCDが発売されている。
しかし最近、Profilというレーベルから、アナログ盤(LP)から録音されたトランスファーCDが出ていることを知り、早速注文して聴いてみた。
聴いてみるとEMIのCDよりもマルツィの音の清冽さが再現されていた。



10年ほど前に、札幌のタワーレコードで、ムラビンスキー指揮のチャイコフスキー作曲「交響曲 悲愴」のCDでLLPレコードから録音されたものが販売されていたのを見て、「何で?」と感じたことを思い出す。
しかし考えてみたら、1950~1960年代の録音に使用されたマスターテープは経年で老朽化し劣化すると、録音当時の音源を忠実に再現することは不可能である。
1988年頃に、アンドレス・セゴビアの1950~1960年代の録音がCD化され、私も買って聴いたのだが、劣化したマスターテープの音をそのまま再現しているため、残念ながら干からびた音となってしまっていた。
中学生や高校生の時にLPで聴いた感動からかなり遠ざかる音になってしまっており、いささかがっかりした。

だからLP、それもできるだけ初物で状態の良いものを使って、そのLPが出す音を録音してCD化しているのである。
マルツィのような貴重な録音のLPは中古ショップやヤフオクでも非常に高値が付いており、庶民が手を出せるようなものではないので、このようなCD化はありがたいことだ。
著作権の疑問があるが、録音されてから50年以上経過したものは大丈夫なのだろうか。

最近、LPやカセットテープなどとっくの昔に生産終了し、中古でしか入手できないものが、新品として販売され、注目されはじめていると聞く。
私もアナログ派なので、CDを止めてLPやカセットテープに戻ってもらいたいものだと思う。

【追記】
近年、古い音源をリマスターして録音当時の状態にしてCD化することが増えているようだが、これは既に失われたオリジナルの音源に、人間の手で主観的に味付けが加えられたものだと思う。
だからオリジナルの音源が忠実に再現されたものではなく、元の音源はこうであったにちがいないという想定や加工者の好みや主観が反映される余地が多分にある。
映画でも、古い時代のもの、確か京マチ子の若い頃の映画、何という映画だったか忘れたが、平清盛が天下を取った時代の映画のリマスター版を見た時、色彩が妙に鮮やかで不自然さを感じたのを思い出す。
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