今回は新宿バルト9さんで観てきました。
先日「プリキュアオールナイト」で大変お世話になったのと同じ所です。
そしてその「オールナイト」の最中に気がついたこと。
「プリキュア映画は、その年のシリーズテーマの圧縮版になっている」。
プリキュアさんの凄い所は多々ありますが、テーマを貫いているところもその一つだと思う。
そんなことを強く思った映画でした。
売上とメッセージ性、その両方を高い次元で実現してるプリキュアさんは、本当に凄い。
■映画「ハートキャッチプリキュア!花の都でファッションショー…ですか!?」
【in花の都】
初の海外ロケが敢行され、今回の舞台は花の都・パリ。
来海さんを始め一行は生き生きと動きまわっておられます。
ですが花咲さんは「花の都なのに、ちっともお花がない」とぶんむくれ。
「花の都」とは「花がある」の花であってフラワーではなかったと思うのですが、花咲さんの難癖は止まりません。
お花がないです。理屈は分かりました。でもお花がないんです。どこですかお花は?ないんですか?もういいです。探しますから。
こうして単独行動を取った彼女は、屋根から降ってきた謎の少年と遭遇。
すぐに立ち去ろうとする少年さんを見て、花咲さんの悪女スキル発動。
いきずりの少年を押し倒すと、事情を話せと詰め寄ってみた。
少年は断固拒否。でも花咲さん食い下がる。ぶらんぶらんと食い下がる。
そうこうする内、今度はサラマンダーなる男爵がやってきた。
そのまま唐突に少年にデザトリアン療法を執行。
強制的に少年の心が駄々漏れ状態に。
事情は分からないけれど、何かが困っていることは分かる。
だから花咲さんもすぐに応戦。開け、マイハート。今こそチェンジの時!
さあ貴方のお悩み何ですか?
少年デザトリアン:
「世界を破壊したくないんだ…!」
スケールが、でかいです。
花咲さんも踏鞴を踏む。
キャッチボールしたいとかステージで唄えないとか、それくらいにして置いてください。
何の準備もなくこんな悩みを聞かされても、何をどうしようもない。
花咲さんの一撃はあっさり堪えられ、反撃の一打で吹き飛ばされる羽目に。
嗚呼、パリの空にプリキュアさんが舞う。
その光景を来海さんおよび生徒会長さんはキャッチ。
あのふっ飛ばされてるプリキュアは、うちのブロ子じゃないかしら?
慌てて駆けつけてみれば案の定。即座に応戦に出て、即座に殴り倒してみた。
【変わりたい人】
デザトリアン療法を施された少年は夢を見る。
数年前、はるか昔に幽閉された男爵と出会った時のことを。
少年は大天使さんにお祈りをしていました。
そこに声が聞こえた。
導かれるままに扉を開き、行った先には古ぼけたお兄さんが。
少年は尋ねます。あなたが大天使様なのかと。
お兄さんは答えた。残念ながら違う。でももっと強くて格好いいものだと。
そこで少年はお願いしました。僕には親が無いから欲しいと。
お兄さんはちょっと困りつつ言ってみた。そんなものは自分も持っていない。
だからお兄さんは言った。では少年。二人で一緒に探しに行こうかと。
それから始まる数年間。
狼男の力を移植され、男爵と共に旅した数年間。まるで本当の親子のように。
そして封じられた力を回収した男爵は、世界に対して復讐を始めようとして…。
…夢から覚めた少年は、だけど事の経緯を話すことは拒否。
そりゃそうです。
唐突にコスプレ変身して殴って来るお姉さんなんて信じられるか。
【変わった人】
花咲さんらはファッションショーのためにパリに滞在中。
準備だって自分でこなします。
もはや「普通にパリで生活している」感が熱い。
ショーの準備をしながら、来海さんは少年に語る。
自分が母や姉にコンプレックスを持っていたこと。今でもそれは変わらないが、それはそれとして自分の長所を認めていること。
そして彼女の持論たる「外見を変えれば中身も変わる」。
同じく生徒会長さんも語る。
過去の思い込んでいた自分、「可愛いものが好き」と認めた自分。
そしてだからといって過去を全否定するのではなく、過去の頑張りを認めた上で、確立している今のことを。
更に月影先輩も語る。
語ると言うか脅されてるような気がしてならなかったですが、とにかく語る。
親に言いたいことがあるのなら、今のう…
だけどそこにやってくるサラマンダー男爵。
【変えられない人】
現場にいたの月影先輩一人。
少年を庇って前に立ち、男爵と対峙します。
その様子に、男爵は言う。
男爵:
「プリキュアでもないお嬢さんでは、勇敢と無謀を間違えていないかな?」
先輩:
「それはどうかしら…?」
煌めくこころの種。
今や女子学生を見たらプリキュアと思えの時代。
サラマンダー男爵の幽閉されていた間に、こんなろくでもない時代になった。
呆れ果てた男爵は、月光さんに己の過去を語ります。
彼は砂漠の使徒。でも良く分からん理由でデューンさんの不興を買い追いだされたそうです。
流れ着いたフランスの地で待っていたのは、こころの大樹流初代プリキュアであるキュアアンジェ。不憫だ。
初代プリキュアさんは血も涙もない方だったようで、男爵はそれはそれは酷い目に遭いました。
具体的には、400年ほど封印された。生きながらにして。
そして目の前で彼の力の結晶を砕かれ、世界中にばらまかれた。男爵曰く「ひどい嫌がらせだ」。返す言葉もない。本当に申し訳ない。
【変えたい人】
そこで男爵は決めました。
こんな世界、壊してやる。
世界が自分を認めないなら、全部全部壊してやる。
状況を理解した月光さんは、当然ぶん殴りに出て見る。
だけどそれを見ていた少年は、改めて決心した。
父さんは、僕が止める。
そこで月光さんを殴り倒すと(ひいっ)、自ら男爵と共に根城のモンサンミッシェルへ。
そして語りかける。
たとえ世界が父さんを拒絶しても、僕の世界には父さんがいる。
この世界には、大切な人たちがいる。
だから世界を破壊するなんて止めよう。
【変わる人】
しかしながら時すでに遅く。
少年の体は狼男反応の極限に達し、男爵の体は長年の封印で崩壊を始め。
変えられないまま変わっていく。
そこにやってくるプリキュアさん。
どうにか狼男は食い止めたけど、男爵は謎のドラゴン化。
それを見てもうダメだと膝をつく少年に、プリキュアさんは言う。
プリキュアさん:
「男爵の心を照らすのはあなただ」
「あなたが諦めない限り、私達も諦めない」
本シリーズのテーマは「変わる」。
その中の一つは「外見が変わっても、中身が変わらないと変わったことにならない」。
同じテーマのお話自体はよくあるものの、これをプリキュアさんで採用したのは深い。
なにせその意味は、「プリキュアに変身しただけでは何も解決しない」と続くのだから。
史上最弱プリキュアの名は伊達じゃない。プリキュアさんは、問題の本質に介入できない。
今回の映画の熱い所は、個人的には「花咲さんは狼男の事情を全く理解していない」点。
感想を書きながら思ったのですけど、回想シーンの部分が非常に多い。
どこからどこまで、花咲さんも情報として持ってるのか、書きながら悩みまくり。
結局、本人の問題は本人しか解決できない。
プリキュアさんが来て殴ったからって、ご家庭の問題は解決しないのです。
だけどほんのちょっぴりの手助けならできるし、そのほんのちょっぴりの手助けが欲しい。
「変わるということは、過去の自分を全否定することなのか」。
テレビ本編でも扱われたテーマが、男爵と少年にも当てはまる。
アンジェ姉に封じられた日々は、彼が間違っていたのか。
砂漠の王に追放されたのは、彼が間違っていたからなのか。
だから自分が全面的に悪かったと否定して、変わるべきなのか。
少年との旅は世界への復讐のためだったかもしれないけど、でも間違っていたことばかりではないはず。
花咲さんらと少年の言葉が、暴走するサラマンダー男爵に投げかけられる。
これが夢原さんだったら、即座にボコ殴りだったような気がしてなりません。
自分が暴れた時に、どのプリキュアがやってきてくれるかは死活問題だな…。
皆さま強固なポリシーを持っておられるから、噛み合わない娘さんがやってくると悲惨なことに。
更にもう一つ大事なこと。
「たとえ変わってしまっても、良いことは変わったりしないでそのままだ」。
本編中で誰かダーク化(変わってはいけない変わり方)するんじゃないかと微かに思ってたのですけど、その役目はサラマンダー男爵が担ってた。
【変える人】
少年は諦めない。父さんに向かい合う。
だからプリキュアさんも諦めない。発動するシルエットフォーム。
影絵と言うあたり、プリキュアさんが裏方であることを示しているようです。
そしてテレビに先駆けて打ち放たれた「何か」。
劇場内がざわりと騒然。殴っ…た…。
言っていることとやっていることが何か違わないか、花咲さん。
一連の光景は、映像中継されて全世界へ。
事情は分からないけれど、何かが困っていることは分かる。
だから世界の人々も、ほんのちょっぴり手助けしてみた。
かくして男爵の暴走は食い止められ、彼は元の男爵姿に。
サラマンダー男爵:
「忌々しい」
「プリキュア…。次は必ず勝ってやる」
呟く彼の横で、少年は笑う。
また、ふたりで旅に出よう。
辛いことはこれからも沢山あるだろうけど、いつか花に変えられる。
少年:
「ありがとう。プリキュア」
パリにお花が咲き乱れ、一つ何かが変わったところで、幕。
【今年の映画】
全編に流れる独特の空気が、非常に印象的でした。
多分、「芝居がかった演出」が続くことと、「詳しい説明がされていない」ことによるんだろうと思う。
そもそも何で花咲さん達がパリにいるのかも、最低限の情報しか出ていない。
花咲さんがお世話になってるアパートに、名前も不明の婦人がいらっしゃいましたが、あの人一体誰ですか。
順当に言えばアパートの持ち主なんでしょうけれど。
そのため、「通りすがりのプリキュア」感が非常に強く打ち出てる。
テレビ本編でも真の主役はデザトリアン療法を受けるゲストキャラであって、プリキュアさんはそのアシスト役でしかない。
今回の極めつけは、少年・オリヴィエの事情を、花咲さんは理解していない。
あなたが困っているから、手助けをする。
それ以上には踏み込めないし、踏み込まない。スケールが大きくなっただけで、本編でやっていたことをきっちり貫いてる。
花咲さんたちが、既に「変わっている」のも影響してるんだろうな。
交互にオリヴィエ少年に語りかけるシーンは、ちょっと今までのプリキュアさんになかった。
(強いて言えば、ミルミルさんに夢原さんのことを語るプリキュア5の面々…と似てるかも)
【史上最弱のプリキュア】
花咲さん、炸裂。
何が炸裂したって、必殺技以外の攻撃を繰り出さなかった。
戦ってた相手がオリヴィエくんだったため、一度も攻撃してなかったと思う。
なお事情を知らない来海さんらが、容赦なくオリヴィエデザトリアンをぶん殴っていたのが愉快でした。
花咲さんも、なぜ止めない。
そういうところが悪女なんだ。
【今年の敵】
イメージとしてサーロインさんを思い描いていたのですが、今年の敵さんは今までと毛色がかなり違う。
度々プリキュアさんを見逃す場面が登場し、オリヴィエ少年にも優しい。
何か妙に泣けた。
(でも案外、語られてないだけでサーロインさんも似たような境遇だったのかもしれない。
彼の主張は、ダークフォールのそれとかなり違う。美翔さんに、もっとリスニング能力があれば引き出せたかもしれないのに…!)
元々男爵がなぜアンジェ姉に封印されたかは、詳しく語られてません。
復活して、その時にやろうとしていた「何か」をやろうとしてるわけでもない。
男爵の言葉によれば「こんな星、簡単に破壊できると思った」とのことなので、何らかの破壊意識はあったのでしょうけれど。
話を額面通りに受け取るなら、こころの大樹流プリキュアさんは、砂漠の使途と戦うことが目的なのに、最初の発動相手は除名されたサラマンダー男爵。
物語によっては、これがストーリーの肝になりそうなトリックだと思います。
でもまぁプリキュアさんなので、勘違いで殴りだしても何ら不思議はない。
【今年の敵2】
少年は言った。
「憎しみもまた、心じゃないか」。
だから砂漠の使途といったところで、人と何も変わりはしない。
プリキュア映画は本編の圧縮版であることも踏まえ、テレビの方の決着の様子が見えたようです。
【パリの人々】
何と言ってもパリが熱かった。
観光案内的なシーンもあるかと思いきや、もはや当たり前にそこにあるものとして扱ってるのがまた良い。
パリには3度ほど行きましたが、馴染みのあの場所を、プリキュアさんが疾駆するだけで心躍る物がありました。
こういうことをやって映えるのは、やっぱりパリを置いて他にないと思う。
突然巻き起こったデザトリアン騒ぎにも、さほど動じないパリ市民は流石です。
城塞都市の住人を舐めるな。
明日のパンのためには王族でも殴り、国が陥落してもレジスタンスを続け、赤い巨大円盤の砲撃戦や数々の怪人や怪獣の襲来も経験済み。
今更そこらの娘さんが変身したところで驚かないんですよ。パリにはそんな雰囲気がある。
普段はぬいぐるみの振りしてる妖精たちも、普通に空飛んでるあたりに「この街は何かがおかしい」具合がよく出てた。
そのパリの人たちが、さりげなくプリキュアさんと絡んでるのも印象的だった。
花咲さんのいるアパートの謎のご婦人。街で泣いてた花咲さんにハンカチをくれた誰かさん。来海さんにカメラを向けられても、にこやかに対応する通行人。
プリキュアさんが事情を知らぬまま助けてくれたように、一般民間人だってそうなんだ。
ライトを振る演出も相変わらず良いですね。
今回は多少唐突にも見えますが、「事情を知らぬ人が手助けする」「本質的な解決にはならないが、とても嬉しい」というテーマにも見事に合致。
花咲さんらが何故パリにいるのかを説明していないことが、ここに効いてくる。
詳しい事情なんて知らない。直接的に助けることもできない。でも何かの力にはなれる。
昨年の「おもちゃの国」もそうでしたが、単に「パワーアップさせる」だけでない演出も入れられてるのが凄い。
【世界同時中継】
モンサンミッシェルでの惨事を、日本にいる花咲祖母さんがネットで見てるのが面白かった。今はそういう時代。
実際、フランスに嫁いだ孫娘と連絡を取るために、家にSkypeを配備した祖母さんを身近に知っている。
接続される日本の片田舎とフランスの片田舎。
【400年の歴史】
男爵:
「今度のプリキュアは随分とお節介だな!」
この発言から察するに、初代のアンジェ姉は問答無用で殴ってくるタイプだったようです。
プリキュア城の謎の殴り合い試練も、おそらくアンジェ姉が決めたんだろうな…。
鉄拳制裁タイプが初代だと、後輩も苦労する。
400年たってみれば、そこら中にプリキュア娘が溢れる時代に。
ここまでプリキュアだらけだと、多分オリヴィエくんは「もも姉もプリキュアなんじゃ?」という疑惑を抱えたような気がする。
あのカリスマモデル様は、本人の知らぬ間にガンガンとハードルを上げられてく。
【オープニング】
クレジットが街の光景に埋め込まれてたのを見て無闇に感動。
すごい!パリの街に、プリキュアさんが!
いかにも「パリでロケしました」感がバリバリに伝わってくる。
蛇足ですが、現実のパリにも漢字があふれてます。
大抵は微妙に間違ってるのですけれど。
あのOP光景は、意外と普通にありえる。
【エンディングと3D】
今回はお馴染みのダンスEDはなし。
代わりに劇中のあちこちで3Dが使われてた。
もうお祭りではなく、当たり前に使われるように…。デジタルセンター様に喝采。
【来春の映画】
祝・「オールスターズDX3」公開決定。
やるだろうと思ってはいたものの、無事に決定してとても嬉しいです。
「ついに最後の!?」とのキャッチフレーズが冠せられましたが、確かにそろそろ限界なのかもしれない。
商業的にもお話的にも問題はないとしても、物理的に人数が増えすぎた。
美翔さんの大躍進もこれで最後になるかもしれません。
心して見に行こう。
公開は2011年の3月19日。
【舞台挨拶】
今回初めて舞台挨拶なるものを見に行きました。
感想はまた別記事に書いてみようと思います。(追記:書きました。)
くどまゆさんが、頑張っておられた!
先日「プリキュアオールナイト」で大変お世話になったのと同じ所です。
そしてその「オールナイト」の最中に気がついたこと。
「プリキュア映画は、その年のシリーズテーマの圧縮版になっている」。
プリキュアさんの凄い所は多々ありますが、テーマを貫いているところもその一つだと思う。
そんなことを強く思った映画でした。
売上とメッセージ性、その両方を高い次元で実現してるプリキュアさんは、本当に凄い。
■映画「ハートキャッチプリキュア!花の都でファッションショー…ですか!?」
【in花の都】
初の海外ロケが敢行され、今回の舞台は花の都・パリ。
来海さんを始め一行は生き生きと動きまわっておられます。
ですが花咲さんは「花の都なのに、ちっともお花がない」とぶんむくれ。
「花の都」とは「花がある」の花であってフラワーではなかったと思うのですが、花咲さんの難癖は止まりません。
お花がないです。理屈は分かりました。でもお花がないんです。どこですかお花は?ないんですか?もういいです。探しますから。
こうして単独行動を取った彼女は、屋根から降ってきた謎の少年と遭遇。
すぐに立ち去ろうとする少年さんを見て、花咲さんの悪女スキル発動。
いきずりの少年を押し倒すと、事情を話せと詰め寄ってみた。
少年は断固拒否。でも花咲さん食い下がる。ぶらんぶらんと食い下がる。
そうこうする内、今度はサラマンダーなる男爵がやってきた。
そのまま唐突に少年にデザトリアン療法を執行。
強制的に少年の心が駄々漏れ状態に。
事情は分からないけれど、何かが困っていることは分かる。
だから花咲さんもすぐに応戦。開け、マイハート。今こそチェンジの時!
さあ貴方のお悩み何ですか?
少年デザトリアン:
「世界を破壊したくないんだ…!」
スケールが、でかいです。
花咲さんも踏鞴を踏む。
キャッチボールしたいとかステージで唄えないとか、それくらいにして置いてください。
何の準備もなくこんな悩みを聞かされても、何をどうしようもない。
花咲さんの一撃はあっさり堪えられ、反撃の一打で吹き飛ばされる羽目に。
嗚呼、パリの空にプリキュアさんが舞う。
その光景を来海さんおよび生徒会長さんはキャッチ。
あのふっ飛ばされてるプリキュアは、うちのブロ子じゃないかしら?
慌てて駆けつけてみれば案の定。即座に応戦に出て、即座に殴り倒してみた。
【変わりたい人】
デザトリアン療法を施された少年は夢を見る。
数年前、はるか昔に幽閉された男爵と出会った時のことを。
少年は大天使さんにお祈りをしていました。
そこに声が聞こえた。
導かれるままに扉を開き、行った先には古ぼけたお兄さんが。
少年は尋ねます。あなたが大天使様なのかと。
お兄さんは答えた。残念ながら違う。でももっと強くて格好いいものだと。
そこで少年はお願いしました。僕には親が無いから欲しいと。
お兄さんはちょっと困りつつ言ってみた。そんなものは自分も持っていない。
だからお兄さんは言った。では少年。二人で一緒に探しに行こうかと。
それから始まる数年間。
狼男の力を移植され、男爵と共に旅した数年間。まるで本当の親子のように。
そして封じられた力を回収した男爵は、世界に対して復讐を始めようとして…。
…夢から覚めた少年は、だけど事の経緯を話すことは拒否。
そりゃそうです。
唐突にコスプレ変身して殴って来るお姉さんなんて信じられるか。
【変わった人】
花咲さんらはファッションショーのためにパリに滞在中。
準備だって自分でこなします。
もはや「普通にパリで生活している」感が熱い。
ショーの準備をしながら、来海さんは少年に語る。
自分が母や姉にコンプレックスを持っていたこと。今でもそれは変わらないが、それはそれとして自分の長所を認めていること。
そして彼女の持論たる「外見を変えれば中身も変わる」。
同じく生徒会長さんも語る。
過去の思い込んでいた自分、「可愛いものが好き」と認めた自分。
そしてだからといって過去を全否定するのではなく、過去の頑張りを認めた上で、確立している今のことを。
更に月影先輩も語る。
語ると言うか脅されてるような気がしてならなかったですが、とにかく語る。
親に言いたいことがあるのなら、今のう…
だけどそこにやってくるサラマンダー男爵。
【変えられない人】
現場にいたの月影先輩一人。
少年を庇って前に立ち、男爵と対峙します。
その様子に、男爵は言う。
男爵:
「プリキュアでもないお嬢さんでは、勇敢と無謀を間違えていないかな?」
先輩:
「それはどうかしら…?」
煌めくこころの種。
今や女子学生を見たらプリキュアと思えの時代。
サラマンダー男爵の幽閉されていた間に、こんなろくでもない時代になった。
呆れ果てた男爵は、月光さんに己の過去を語ります。
彼は砂漠の使徒。でも良く分からん理由でデューンさんの不興を買い追いだされたそうです。
流れ着いたフランスの地で待っていたのは、こころの大樹流初代プリキュアであるキュアアンジェ。不憫だ。
初代プリキュアさんは血も涙もない方だったようで、男爵はそれはそれは酷い目に遭いました。
具体的には、400年ほど封印された。生きながらにして。
そして目の前で彼の力の結晶を砕かれ、世界中にばらまかれた。男爵曰く「ひどい嫌がらせだ」。返す言葉もない。本当に申し訳ない。
【変えたい人】
そこで男爵は決めました。
こんな世界、壊してやる。
世界が自分を認めないなら、全部全部壊してやる。
状況を理解した月光さんは、当然ぶん殴りに出て見る。
だけどそれを見ていた少年は、改めて決心した。
父さんは、僕が止める。
そこで月光さんを殴り倒すと(ひいっ)、自ら男爵と共に根城のモンサンミッシェルへ。
そして語りかける。
たとえ世界が父さんを拒絶しても、僕の世界には父さんがいる。
この世界には、大切な人たちがいる。
だから世界を破壊するなんて止めよう。
【変わる人】
しかしながら時すでに遅く。
少年の体は狼男反応の極限に達し、男爵の体は長年の封印で崩壊を始め。
変えられないまま変わっていく。
そこにやってくるプリキュアさん。
どうにか狼男は食い止めたけど、男爵は謎のドラゴン化。
それを見てもうダメだと膝をつく少年に、プリキュアさんは言う。
プリキュアさん:
「男爵の心を照らすのはあなただ」
「あなたが諦めない限り、私達も諦めない」
本シリーズのテーマは「変わる」。
その中の一つは「外見が変わっても、中身が変わらないと変わったことにならない」。
同じテーマのお話自体はよくあるものの、これをプリキュアさんで採用したのは深い。
なにせその意味は、「プリキュアに変身しただけでは何も解決しない」と続くのだから。
史上最弱プリキュアの名は伊達じゃない。プリキュアさんは、問題の本質に介入できない。
今回の映画の熱い所は、個人的には「花咲さんは狼男の事情を全く理解していない」点。
感想を書きながら思ったのですけど、回想シーンの部分が非常に多い。
どこからどこまで、花咲さんも情報として持ってるのか、書きながら悩みまくり。
結局、本人の問題は本人しか解決できない。
プリキュアさんが来て殴ったからって、ご家庭の問題は解決しないのです。
だけどほんのちょっぴりの手助けならできるし、そのほんのちょっぴりの手助けが欲しい。
「変わるということは、過去の自分を全否定することなのか」。
テレビ本編でも扱われたテーマが、男爵と少年にも当てはまる。
アンジェ姉に封じられた日々は、彼が間違っていたのか。
砂漠の王に追放されたのは、彼が間違っていたからなのか。
だから自分が全面的に悪かったと否定して、変わるべきなのか。
少年との旅は世界への復讐のためだったかもしれないけど、でも間違っていたことばかりではないはず。
花咲さんらと少年の言葉が、暴走するサラマンダー男爵に投げかけられる。
これが夢原さんだったら、即座にボコ殴りだったような気がしてなりません。
自分が暴れた時に、どのプリキュアがやってきてくれるかは死活問題だな…。
皆さま強固なポリシーを持っておられるから、噛み合わない娘さんがやってくると悲惨なことに。
更にもう一つ大事なこと。
「たとえ変わってしまっても、良いことは変わったりしないでそのままだ」。
本編中で誰かダーク化(変わってはいけない変わり方)するんじゃないかと微かに思ってたのですけど、その役目はサラマンダー男爵が担ってた。
【変える人】
少年は諦めない。父さんに向かい合う。
だからプリキュアさんも諦めない。発動するシルエットフォーム。
影絵と言うあたり、プリキュアさんが裏方であることを示しているようです。
そしてテレビに先駆けて打ち放たれた「何か」。
劇場内がざわりと騒然。殴っ…た…。
言っていることとやっていることが何か違わないか、花咲さん。
一連の光景は、映像中継されて全世界へ。
事情は分からないけれど、何かが困っていることは分かる。
だから世界の人々も、ほんのちょっぴり手助けしてみた。
かくして男爵の暴走は食い止められ、彼は元の男爵姿に。
サラマンダー男爵:
「忌々しい」
「プリキュア…。次は必ず勝ってやる」
呟く彼の横で、少年は笑う。
また、ふたりで旅に出よう。
辛いことはこれからも沢山あるだろうけど、いつか花に変えられる。
少年:
「ありがとう。プリキュア」
パリにお花が咲き乱れ、一つ何かが変わったところで、幕。
(左画像) 「映画ハートキャッチプリキュア! 花の都でファッションショー・・・ですか!?」オープニング&エンディング主題歌シングル (右画像) 「映画ハートキャッチプリキュア! 花の都でファッションショー・・・ですか!?」オリジナル・サウンドトラック |
【今年の映画】
全編に流れる独特の空気が、非常に印象的でした。
多分、「芝居がかった演出」が続くことと、「詳しい説明がされていない」ことによるんだろうと思う。
そもそも何で花咲さん達がパリにいるのかも、最低限の情報しか出ていない。
花咲さんがお世話になってるアパートに、名前も不明の婦人がいらっしゃいましたが、あの人一体誰ですか。
順当に言えばアパートの持ち主なんでしょうけれど。
そのため、「通りすがりのプリキュア」感が非常に強く打ち出てる。
テレビ本編でも真の主役はデザトリアン療法を受けるゲストキャラであって、プリキュアさんはそのアシスト役でしかない。
今回の極めつけは、少年・オリヴィエの事情を、花咲さんは理解していない。
あなたが困っているから、手助けをする。
それ以上には踏み込めないし、踏み込まない。スケールが大きくなっただけで、本編でやっていたことをきっちり貫いてる。
花咲さんたちが、既に「変わっている」のも影響してるんだろうな。
交互にオリヴィエ少年に語りかけるシーンは、ちょっと今までのプリキュアさんになかった。
(強いて言えば、ミルミルさんに夢原さんのことを語るプリキュア5の面々…と似てるかも)
【史上最弱のプリキュア】
花咲さん、炸裂。
何が炸裂したって、必殺技以外の攻撃を繰り出さなかった。
戦ってた相手がオリヴィエくんだったため、一度も攻撃してなかったと思う。
なお事情を知らない来海さんらが、容赦なくオリヴィエデザトリアンをぶん殴っていたのが愉快でした。
花咲さんも、なぜ止めない。
そういうところが悪女なんだ。
【今年の敵】
イメージとしてサーロインさんを思い描いていたのですが、今年の敵さんは今までと毛色がかなり違う。
度々プリキュアさんを見逃す場面が登場し、オリヴィエ少年にも優しい。
何か妙に泣けた。
(でも案外、語られてないだけでサーロインさんも似たような境遇だったのかもしれない。
彼の主張は、ダークフォールのそれとかなり違う。美翔さんに、もっとリスニング能力があれば引き出せたかもしれないのに…!)
元々男爵がなぜアンジェ姉に封印されたかは、詳しく語られてません。
復活して、その時にやろうとしていた「何か」をやろうとしてるわけでもない。
男爵の言葉によれば「こんな星、簡単に破壊できると思った」とのことなので、何らかの破壊意識はあったのでしょうけれど。
話を額面通りに受け取るなら、こころの大樹流プリキュアさんは、砂漠の使途と戦うことが目的なのに、最初の発動相手は除名されたサラマンダー男爵。
物語によっては、これがストーリーの肝になりそうなトリックだと思います。
でもまぁプリキュアさんなので、勘違いで殴りだしても何ら不思議はない。
【今年の敵2】
少年は言った。
「憎しみもまた、心じゃないか」。
だから砂漠の使途といったところで、人と何も変わりはしない。
プリキュア映画は本編の圧縮版であることも踏まえ、テレビの方の決着の様子が見えたようです。
【パリの人々】
何と言ってもパリが熱かった。
観光案内的なシーンもあるかと思いきや、もはや当たり前にそこにあるものとして扱ってるのがまた良い。
パリには3度ほど行きましたが、馴染みのあの場所を、プリキュアさんが疾駆するだけで心躍る物がありました。
こういうことをやって映えるのは、やっぱりパリを置いて他にないと思う。
突然巻き起こったデザトリアン騒ぎにも、さほど動じないパリ市民は流石です。
城塞都市の住人を舐めるな。
明日のパンのためには王族でも殴り、国が陥落してもレジスタンスを続け、赤い巨大円盤の砲撃戦や数々の怪人や怪獣の襲来も経験済み。
今更そこらの娘さんが変身したところで驚かないんですよ。パリにはそんな雰囲気がある。
普段はぬいぐるみの振りしてる妖精たちも、普通に空飛んでるあたりに「この街は何かがおかしい」具合がよく出てた。
そのパリの人たちが、さりげなくプリキュアさんと絡んでるのも印象的だった。
花咲さんのいるアパートの謎のご婦人。街で泣いてた花咲さんにハンカチをくれた誰かさん。来海さんにカメラを向けられても、にこやかに対応する通行人。
プリキュアさんが事情を知らぬまま助けてくれたように、一般民間人だってそうなんだ。
ライトを振る演出も相変わらず良いですね。
今回は多少唐突にも見えますが、「事情を知らぬ人が手助けする」「本質的な解決にはならないが、とても嬉しい」というテーマにも見事に合致。
花咲さんらが何故パリにいるのかを説明していないことが、ここに効いてくる。
詳しい事情なんて知らない。直接的に助けることもできない。でも何かの力にはなれる。
昨年の「おもちゃの国」もそうでしたが、単に「パワーアップさせる」だけでない演出も入れられてるのが凄い。
【世界同時中継】
モンサンミッシェルでの惨事を、日本にいる花咲祖母さんがネットで見てるのが面白かった。今はそういう時代。
実際、フランスに嫁いだ孫娘と連絡を取るために、家にSkypeを配備した祖母さんを身近に知っている。
接続される日本の片田舎とフランスの片田舎。
【400年の歴史】
男爵:
「今度のプリキュアは随分とお節介だな!」
この発言から察するに、初代のアンジェ姉は問答無用で殴ってくるタイプだったようです。
プリキュア城の謎の殴り合い試練も、おそらくアンジェ姉が決めたんだろうな…。
鉄拳制裁タイプが初代だと、後輩も苦労する。
400年たってみれば、そこら中にプリキュア娘が溢れる時代に。
ここまでプリキュアだらけだと、多分オリヴィエくんは「もも姉もプリキュアなんじゃ?」という疑惑を抱えたような気がする。
あのカリスマモデル様は、本人の知らぬ間にガンガンとハードルを上げられてく。
【オープニング】
クレジットが街の光景に埋め込まれてたのを見て無闇に感動。
すごい!パリの街に、プリキュアさんが!
いかにも「パリでロケしました」感がバリバリに伝わってくる。
蛇足ですが、現実のパリにも漢字があふれてます。
大抵は微妙に間違ってるのですけれど。
あのOP光景は、意外と普通にありえる。
【エンディングと3D】
今回はお馴染みのダンスEDはなし。
代わりに劇中のあちこちで3Dが使われてた。
もうお祭りではなく、当たり前に使われるように…。デジタルセンター様に喝采。
【来春の映画】
祝・「オールスターズDX3」公開決定。
やるだろうと思ってはいたものの、無事に決定してとても嬉しいです。
「ついに最後の!?」とのキャッチフレーズが冠せられましたが、確かにそろそろ限界なのかもしれない。
商業的にもお話的にも問題はないとしても、物理的に人数が増えすぎた。
美翔さんの大躍進もこれで最後になるかもしれません。
心して見に行こう。
公開は2011年の3月19日。
【舞台挨拶】
今回初めて舞台挨拶なるものを見に行きました。
感想はまた別記事に書いてみようと思います。(追記:書きました。)
くどまゆさんが、頑張っておられた!
オールスターが「ついに最後の!?」ということは
ついに今期で7年続いたプリキュアシリーズもフィナーレなのだと私は感じました。
(もしこれ以上プリキュアシリーズが続くなら、最後なんて言葉は使わないはず)
さてならばDX3の内容が気がかりです。
DX2でネタは出しつくしたと思います。ブンビーさんや藤P先輩や歴代の名脇役も漏れなく出演し
これぞプリキュアのすべてを飾るに相応しい出来だと、涙が出そうになったほどです。
これをDX3が超えられるのでしょうか?是非とも超えて欲しいです。
私の予想としては。DX1ではザコ(ザケンナー系)
DX2では幹部(キントレスキーやウラガノス)が出たことを考えると、DX3ではいよいよ。歴代のラスボスが結託して出てくると思います。
ジャアクキング(バルデス)+ゴーヤーン+カワリーノ+館長+メビウス
のトンデモタッグは是非観たい。
変身&名乗りシーンだけで何分かかるのやら。
万が一、新人研修も入れるとなると、
二時間あっても足りないような…。
多分、観に行く事になるような気がしますが(苦笑)
あ、今回の映画も良かったですよ。
来海さんの語るシーンとか、変身シーンとか。
久しぶりに来海さんのステキな笑顔を、
観れて嬉しかったです。
来海さんもチェンジしてるなぁ…と感じました。
こんばんは。お返事遅くなりました。
「最後の!?」はよくある煽りキャッチフレーズではあるものの、本当に終わりかどうかは気になるところです。
私としてはシリーズを終える理由が見えないので、「全員集合は制約が大きすぎるのでこれで最後」なのかなと思います。
戦隊ヒーローの「VSシリーズ」のような形に移行するのかと。
大ボス勢ぞろいは迫力ありそうですね。
ネタバレに関わって来るのでちょっと厳しい気もしますが、実現するならぜひ見てみたいです。
バンクシーンはアニメの華…とはいえ、尺のためのあえての省略も逆に熱いかも。
とにもかくにもプリキュアさんが多すぎで、地獄で天国すぎです。
普段は最も背の低い来海さんよりも、少年の方が背が低いのが演出として上手いと思いました。
彼女のお姉さんぶりが嬉しかったです。
http://q.hatena.ne.jp/1289666110#a1046712で、このページを紹介されて参りました。
とても読み応えがあり、楽しい記事でした。独特の非常に心地よい日本語が、物凄く上手だなぁと思いました。
実は以前にもRubyGillisさんのページを目撃したことがあり、ディケイドプリキュアの記事だったのですが、その時は(失礼ながら)読み取りづらい文章だなぁ…くらいの印象で・あまり真剣に読まずに立ち去ってしまいました。
一旦RubyGillisさんの語り口に慣れてしまうと、本当に味があって楽しいです。ディケイドプリキュアの記事も改めて楽しく読ませて頂きました。(取り敢えず「フレッシュの世界」を)
それにしても今回の映画は、非常に良かったですよね?
どこもかしこも良いトコロだらけで大満足なのですが、RubyGillisさんもおっしゃる「詳しい説明がされていない」辺りは特に僕好みでした。映画とほぼ同じ内容を別な切り口から描いたTV(37~38話)が台詞で直接描写しちゃっているのと対照的で、見比べると楽しいですよね。
映画では僕は、えりかの「つぼみって時々本当にすごい」の台詞が深みがあっていいなぁ…と感じます。
僕はこの間の日曜までで5回観ましたが、これだけ詳細なレポートを書かれたRubyGillisさんは初日で5回くらい鑑賞されたンではないかと思います。(確かバルトには初日に夜の回もありましたよね?)
他の記事も、もう少し読ませて頂くと思います。素敵な記事をありがとうございます。
こんばんは。ご紹介いただいていたとは光栄です。
トリップしながら書き殴っているので、読みづらいと感じられるのはごもっともだと思います。
特に今回の劇場版は、映画の雰囲気自体が独特だったので、それを意識していつもよりも強調して書いてみました。
>つぼみって時々本当にすごい
これも取り立てて説明はせずに、「何がすごいのか」は聞き手に任せられてる部分がありますね。
色々と解釈出来て、本当にすごいです。
映画はまだ2回しか見れていません。
確か工藤真由さんも前回の映画は5回以上見たと聞いています。
私ももっと参加してみたいです。