国際情勢の分析と予測

地政学・歴史・地理・経済などの切り口から国際情勢を分析・予測。シャンティ・フーラによる記事の引用・転載は禁止。

「コソボ独立後の支援はするが、国家承認については加盟各国の判断に任せる」というEUの無責任さ

2008年01月09日 | 欧州
●コソボ独立優先を確認・EU新議長国スロベニア  日本経済新聞 2008年1月8日
 【リュブリャナ(スロベニア)=下田敏】新規加盟国で初の欧州連合(EU)議長国に就任したスロベニアと欧州委員会は8日に首脳協議を開き、セルビア・コソボ自治州の独立問題に最優先で取り組む方針を確認した。バルカン地域の安定がEUの利益につながるという認識で一致。コソボによる独立宣言をにらみEU加盟国を独立支持でまとめるほか、独立阻止に動くセルビアやロシアとの調整を急ぐ。

 欧州委との首脳協議でスロベニアのヤンシャ首相は「(コソボ問題で)EU加盟国が統一した行動を取ることが必要だ」と強調。EUの枠組みでコソボの平和的な独立を支援する必要があると訴えた。国連暫定統治下のコソボは2月中にも一方的な独立宣言に踏み切る構えで、それを阻止する意向のセルビアと対立を深めている。
http://www.nikkei.co.jp/news/main/20080108AT2M0802Y08012008.html






●コソボ自治州で連立内閣合意、来月にも独立宣言 読売新聞 2008年1月8日
 国連が暫定統治するセルビア・コソボ自治州議会(120議席)の最大勢力コソボ民主党と第2党のコソボ民主同盟は7日、民主党のサチ党首を首班とする連立内閣樹立で最終合意した。

 両党合わせた議席数は62で過半数を占める。

 新内閣は9日に見込まれる議会の承認を経て、正式発足する。自治州は来月にもセルビアからの独立宣言に踏み切る見通し。
http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20080108id25.htm






●EU、コソボ独立容認で調整 旧ユーゴを完全解体 朝日新聞 2008年01月08日

 セルビア・コソボ自治州の独立について、欧州連合(EU)は、国連安保理決議に基づかない独立でも認める方向で加盟国間の調整を進める方針だ。当事者のセルビアのほか、安保理常任理事国のロシアも独立反対の立場を取るなか、いかに摩擦を減らして軟着陸させるかが、EUの役割となってきた。

 今月から半年間、EU議長国を務めるスロベニアは8日、リュブリャナでEUの行政機関である欧州委員会との会合を開き、コソボ問題の解決に最優先で取り組むことを表明する。

 フランスのサルコジ大統領は先月14日、「コソボ独立は避けられない」と述べ、独立支持を鮮明にした。スロベニアのルペル外相も年末、「後戻りはできない」と述べるなど、EUの大勢は独立容認になっている。

 EUがコソボ問題の決着をめざすのは、旧ユーゴスラビア諸国が欧州で最後に残った紛争の舞台だからだ。ボスニア・ヘルツェゴビナやコソボの紛争で、欧州は有効な手を打てないまま、犠牲者を増やした。これは欧州の傷として残り、コソボへの「負い目」につながっている。

 EUは米国、ロシアとともに、コソボの最終地位をめぐる調停にあたってきたが、昨年末に決裂した。国連安保理決議に基づく独立は、ロシアが反対する以上、不可能なことは明らかだ。

 一方で、コソボの独立志向も止められない。最終地位をめぐるアハティサーリ元フィンランド大統領の仲介案では、EUがコソボの行政監督にあたる国際文民代表を派遣することになっている。EUは当事者として、今後もコソボにかかわらざるを得ない立場にある。

 コソボ独立に強硬に反対するセルビアに対しては、EU加盟支援を「見返り」として示している。旧ユーゴを構成した6カ国のうち、スロベニアは04年にEU入りを果たした。EUは他の5カ国とも加盟交渉や安定・連合協定交渉を進めるなど、扉を開いている。将来は旧ユーゴをまとめて取り込むことで、地域の安定を実現する戦略だ。

 ただコソボ独立については、EUも一枚岩とまでは言えない。キプロスやスロバキア、ギリシャ、ルーマニア、スペインなど、国内に分離・独立問題を抱える国には消極論が強い。昨年末のEU首脳会議では、コソボ問題の合意形成はできなかった。

 独立容認派は「EUとしてコソボ独立後の支援はするが、国家承認については加盟各国の判断に任せる」とすることで、反対派を説得すると見られる。
http://www.asahi.com/international/update/0108/TKY200801080305.html







●コソボ独立宣言「来月上旬にも」 新首相が単独会見 朝日新聞 2008年01月08日

 国連暫定統治下にあるセルビア・コソボ自治州のコソボ自治政府の新首相に就任するハシム・サチ氏(39)が7日、朝日新聞との単独会見に応じ、セルビアからの独立宣言を2月上旬にも行う考えを明らかにした。セルビアの抵抗による混乱も予想されるが、サチ氏は米国や欧州諸国から国家承認が得られるとの見通しを示した。

 コソボ独立が実現すれば、90年代から始まった旧ユーゴスラビア連邦解体の最後となる。

 サチ氏は、昨年11月に行われた州議会選挙(定数120)で第1党になったコソボ民主党(37議席)の党首。第2党のコソボ民主同盟(25議席)と連立政権樹立で合意しており、9日、議会で新首相として承認される。

 サチ氏は会見で「独立はこれ以上待てない」と話し、セルビアやロシアが求める交渉継続を改めて拒否。独立宣言の時期について「4~5週間以内になる」と述べ、議会が2月上旬にも独立宣言する方向で調整していることを明らかにした。

 また「新政権は米国と欧州連合(EU)と十分に調整しながら、民主的な主権国家としての独立を目指す」と述べた。EUが中心となって行政などを支え、北大西洋条約機構(NATO)主体の国際部隊が治安を維持する国際社会の監督下での体制となる見通しだ。

 他国の独立承認の見通しについては「米国やEUの国々がすぐに行い、承認国は相当数になるだろう」と自信を示した。「独立はバルカン地域全体の安定に貢献する。セルビアとも良好な関係を目指したい」と話し、予想される混乱や周辺国への影響に対しても楽観的な見方を強調した。

 サチ氏はアルバニア系武装組織コソボ解放軍の元政治局長。紛争終結前に暫定自治政府の首相に指名された。
http://www.asahi.com/international/update/0108/TKY200801080334.html







●セルビア民族主義という毒をもって、バルカン半島のイスラム教徒という毒を制する戦略?
http://blog.goo.ne.jp/princeofwales1941/e/446fd3b8b5dd82c7ae609e439add3bd2









【私のコメント】
コソボの独立を巡るEU内部の調整が大詰めを迎えているようだ。しかし、自国内に分離独立運動の芽を抱えるスペイン・ルーマニア・スロバキア・ギリシャ・キプロスはコソボ独立に反対ないし慎重論の構えを崩していない。

1月8日の朝日新聞では、「EUとしてコソボ独立後の支援はするが、国家承認については加盟各国の判断に任せる」という線での合意を狙うという驚くべき妥協案が述べられている。つまり、独立したコソボをスペイン・ルーマニアなどが国家として承認しないことを容認するというのだ。これはあまりに無責任な妥協案であり、そのような提案が存在すること自体、EUが本気でコソボ問題に取り組んでいないことを示している様に思われる。では、EU諸国の真意は何だろうか?

ボスニア紛争が多くの死傷者を出した上で解決に向かいつつあることからも分かるように、民族問題は一度戦争を起こして多くの犠牲者を出さない限り解決できない傾向がある様に思われる。戦争の痛みが当事国を平和的解決に向かわせる原動力になるのである。EU諸国はそのような観点からわざとコソボの独立の意志を煽り、セルビアと激突させることを狙っている様に感じられる。

仮に戦争になったとしても、コソボの住民の大部分がアルバニア系であることから、コソボの独立を撤回させることはセルビアには困難だと思われる。セルビアにできるのは、コソボの一部をセルビア領にすること程度であり、戦争の落とし所はその様な条件闘争になるのではないだろうか。

1月20日にはセルビアで大統領選挙が予定されており、民主派と民族派が争っている。選挙戦によりセルビア国民の民族意識が鼓舞されることで、2月にも予想されるコソボの独立宣言の後にはセルビアとコソボの間で戦争が勃発するのではないかと私は想像している。セルビアがルーマニアと国境を接している事を考えると、ロシア軍がルーマニアを経由してコソボに介入するという可能性もあるかもしれない。

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4 コメント

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Unknown (Unknown)
2008-01-09 17:32:19
西村議員の子が殺られた。テロ国家
日本が救われる朗報です! (ようちゃん)
2008-01-10 03:10:41
昨年の12月14日の青皮の手帖▼ バルカン主戦論2008)http://extremist5123.iza.ne.jp/blog/entry/421252/
をお読みください。結論は後半にあります。

そのお前に、今年の念頭から日本は欧米に仕掛けれた結果が、あの「大発会は御祝儀相場」にしては、2008年の大発会は616.37円という大幅安に見舞われた。金融現象として、欧米はジャパン・パッシングからジャパン・ナッシングで、売りポジ、プット、カラ売りの対象を日本市場と特定した。>と考えるとこの異常な株価は説明できる。 こういう現象が見られたのです。その後で日本市場や日本社会が荒廃しようとも、欧米主要バンクにとっては「知ったこっちゃない」。これがマネーゲーム、国際金融市場の本性だと知る事になる。回避の手段はあるのか? その解答が 思わぬ「朗報」となったのが、上記の昨年12月14日の「青皮の手帖」の中の文章に有った。

では、その部分をコピペします。
(ならば打つ手は奇手しかない。米国による「ジャパン・ナッシング」を避けるためにも、より遠方で騒動を起こすことは有効だ。手法としては、セルビア側だけでなくコソヴォ側にも援助をして、なるべく紛争が派手になるように仕向けるのが良い。計は小を用いて大なる成果をあげるのが、その妙味でもある。外交で「汚い」とか「卑怯だ」「ズルい」なんてのは当たり前だ。つまり、“戦略的”とはこれらの「汚い」「卑怯だ」「ズルい」手法を用いることに他ならない。よって、戦略的外交というものには、あらゆる手法が含まれるのも当然である。
日本を取り巻く環境が急激に悪化している今日において、もはや「バルカン主戦論」は日本の自衛戦争と言っても過言ではない。中国や北朝鮮、韓国の振る舞いや対日本非難決議案にカッカしてる場合ではない。近視眼的な漸減邀撃(ぜんげんようげき)観だけではダメだ。今こそ、世界的な鳥瞰観が必要とされるのである。少なくともそういう戦略的な知性を持っても良いだろう。)

★そしていよいよ、日本は何もしないで、これが来た。正に「待てば 、海路の日和」です。コソボの決定は、日本には朗報です!
Unknown (Unknown)
2008-01-10 10:43:44
第一次世界戦もバルカンが発火点で日本は漁夫の利を得たんだよな。
Unknown (Unknown)
2008-01-10 21:45:09
NATO軍はエアパワーが主体です。

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