国際情勢の分析と予測

地政学・歴史・地理・経済などの切り口から国際情勢を分析・予測。シャンティ・フーラによる記事の引用・転載は禁止。

サハリン産ガスを直接供給=パイプラインで北海道へ

2006年06月26日 | ロシア・北方領土
◆サハリン産ガスを直接供給=パイプラインで北海道へ

 【モスクワ22日時事】北海道の財界などが設立した「北日本パイプライン開発機構」(JPDO)は22日、ロシア極東・サハリン産の天然ガスを北海道に直接供給するガスパイプライン建設計画をロシアの政府系ガス独占企業ガスプロムと交渉していることを明らかにした。モスクワで開かれているロシア石油ガス会議に出席中の蝦名雅章同社取締役が記者団に語った。
 ルートはサハリン南部のアニワ湾から北海道・稚内を結ぶ海底パイプライン敷設など2つの候補が挙がっており、ガスプロムの子会社が調査中。同取締役は、2008年に建設を始め、11年に輸入を開始したいと述べた。総事業費は約3000億円。日本側は将来、青森県のむつ小川原工業地域までパイプラインを延長したいとしている。 
(時事通信) - 6月22日23時1分更新
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060622-00000175-jij-int


◆地球環境時代におけるエネルギー政策
http://www.geocities.jp/shuzo_yamada/index.html

◆衆ノ雑感
http://blog.drecom.jp/yamada_shuzo/


◆北日本パイプライン開発機構株式会社

 

- 進捗状況のご報告と御支援のお願い -

サハリン天然ガス導入北日本パイプライン事業実施準備作業は、内外各界地域の絶大なご支援により順調に進展しています。このうち国境以北のロシア側事業についてはロシア国営企業のガスプロムグループ並びにロズネフチグループとの共同作業により、エンジニアリング調査報告書、事業実施計画説明書、許認可申請書等を作成し、ロシア連邦政府並びにガスプロムに提出して具体的な協議を進めています。

日本側の稚内から名寄までのパイプライン建設ルート用地確定作業については、予定通り粛々と進捗しており、稚内市並びに名寄市においては都市ガス会社設立の検討に入りました。名寄発電所については1月をもって環境アセス方法書の縦覧を終え、5月11日~5月12日には経済産業省環境審査顧問会により現地調査が行われ6月2日には経産省にて火力部会が開催されるなど、着々と準備作業が進行しています。

既に広く知られている通り、サハリン1日本方面沿岸海底パイプライン構想を進めていた石油資源開発(株)中心の「日本サハリンパイプライン(株)」が、昨年10月に正式に清算されたため、政府関係各省庁や国会・財界からの御支援はもとより、日本および外国の多くの関係企業から御協力・御参加の申し入れが相次ぐなど、内外関係機関の空気が大きく変化し、日本に残された最後のサハリン天然ガス導入パイプライン遂行者としてのJPDOに対して、支援の輪が拡大しているところです。

そこで、JPDOは、(1)ロシア側における事業実施権益(天然ガス長期安定的導入権・ロシア内パイプライン等施設整備権・ロシア国営企業の本事業への参入権等)、(2)日本側における事業実施権益(本格的ガス導管事業実施権・パイプライン敷設用地使用権・都市ガス新設権・発電所新設権・パイプライン沿線各地域ガス需要並びに産業用大口需要確保権等)を全力で取りまとめながら、早期実施に向けて必要な業務を粛々と進めているところです。

JPDOは関係する様々な事業者や投資家が参加できる開かれた事業実施受皿会社として、わが国における新しい基幹インフラ整備・基幹産業創出による着実な収益性・成長性を目指しています。すなわち、国策に即した民間主導型社会インフラを整備し保有する新しい民営公益事業者として、エネルギー業界はもとよりあらゆる関連業界との共存共栄をめざしています。その実施する事業はエネルギーインフラの投資案件でもありますので、皆様の更なる御理解と御協力・御参加を切望します。
 
2006年6月5日
 
北日本パイプライン開発機構(JPDO)
代表取締役 小川英郎


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商号 北日本パイプライン開発機構株式会社(略称:JPDO)
役員 代表取締役 小川英郎 (北海道政経文化同友会理事長)
取締役   加来照俊 (北海道大学名誉教授)
取締役   白藤芳春 (前北海道市長会事務局長)
取締役   蝦名雅章 (元米国テキサコ社日本代表)
監査役   千葉寛樹 (札幌学院大学大学院教授)
相談役   大塚 茂 (元通商産業省大臣官房審議官)
顧問   黒木正章(元東京ガス(株)R&D企画部長)
顧問   柏木義憲(弁護士・東京)
顧問   高橋秀夫(弁護士・札幌)
顧問   保坂圭作(公認会計士)
参与   堀田正剛(稚内商工会議所参与)
参与   石崎正文(司法書士・前札幌法律相談センター委員長)
参与   萩原亨(北海道大学大学院工学研究科助教授・工学博士)
参与   茄子川捷久(北海道自動車短期大学教授)

設立 1998年12月
事業内容 天然ガスパイプライン輸送事業
天然ガス供給事業
天然ガス発電事業
天然ガス有効利用事業
光ファイバー通信事業
所在地 札幌市中央区北4条西7丁目1番地5札幌ホワイトビル

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・ ロシア側ガス田群と日本側需要地群とを直結するわが国初の国際パイプラインを整備します。
・ 日ロ関係緊密化促進はもとより、東ユーラシア国際関係緊密化促進に寄与します。
・ 長期安定的なエネルギーの大動脈を整備することにより、わが国のエネルギー安全保障に寄与します。
・ クリーンな天然ガスの普及拡大により、地球環境保全に寄与します。
・ 積雪寒冷地の北海道及び北東北の産業経済・住民生活の活性化に寄与します。
・ 新しい日本に必要な民営基幹インフラ整備による基幹産業創出をめざします。
・ 新しい日本の民間主導型公共協力方式・地方主導型中央協力方式による国家的プロジェクトの民営モデル事業をめざします。
・ 地域振興・日本国益・国際平和共存の三位一体的公益性の実現をめざします。
・ 社会インフラとして沿線各地域の住民・事業所・各産業に共通のチャンスを提供する公平性の実現をめざします。
・ 法令遵守・企業倫理・社会正義にもとづく公正な業務執行方法を実践します。
・ 民営事業として必要な収益性・安定性・成長性をめざした着実な経営活動を実践します。

http://www.jpdo.co.jp/project/index.html



ロシア連邦サハリン州から宗谷海峡を渡り、稚内市に上陸して北海道を縦貫し、青森県むつ小川原に到るパイプラインを建設し、ガス導管事業者として天然ガスの輸送事業並びに供給事業を実施します。また、初期需要創設のために名寄市及びむつ小川原に天然ガス発電所を建設して、売電事業を実施します。



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フェーズ1
  コルサコフー稚内 海底パイプライン長 約170Km
稚内-名寄 陸上パイプライン長   約190Km
ガス初期需要   約5億M3/年
(300MW名寄発電所等)
スケジュール   2011年供給開始

  フェーズ2
  名寄-苫東 陸上パイプライン長 約260Km
苫東-むつ小川原 海底パイプライン長   約220Km
ガス初期需要   約30億M3/年
(2,000MWむつ小川原発電所等)
スケジュール   2013年供給開始


JPDO幹線パイプラインルート図

 
稚内港ガスパイプラインターミナル予定地



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【私のコメント】
北方領土問題の解決と共に、ロシアと日本を直結するガスパイプラインの建設が始まろうとしている。日本国内では既に最大の消費地の首都圏から新潟までのパイプラインは完成しており、むつ小川原とこれらの地域の間を結ぶパイプラインを建設することは日本にとってもロシアにとっても大きな利益となる。

ロシアはトルコ・ウクライナなどの中進国が西欧と同じ価格ではガスを購入できずに価格を値切ることに腹を立てており、アジアで安定的に高値でガスを購入してくれるであろう唯一の先進国である日本に直接ガスを売りたがっている。中国や韓国と比較して、日本の市場としての安定性は圧倒的だからだ。また、将来シベリアのガスパイプラインが建設されてロシアが欧州にもアジアにも自由にガスを輸出できる状態になることは、ロシアのランドパワーとしての力を圧倒的に高めることになる。

北方領土問題の解決で日露関係が改善することが如何にロシアの国力を劇的に増大させるかということがよく分かる。これこそ、米国が北方領土問題の解決に強硬に反対していた最大の理由である。「Siberian Curse」には、「ロシアはシベリアの発展のために中国と安定した経済関係を築く必要があり、その為には米国の軍事的プレゼンスが必要」という内容のことが書いてあるが、これはつまりロシアを現在の日本のような米国の属国にして、中国の脅威から守って貰うために米国の言いなりになる状態にしたいという米国の戦略を示したものである。しかしながら米国は属国を脅迫して金を奪うしか取り柄のない三流国家に成り下がりつつあり、それを見越したロシアは米国を一蹴して日本との関係強化を望んだということであろう。

ロシアは表向きは米国の侵略に抵抗するために中国との親密な関係を演出しているが、実際には極東地区の住民を中心に中国の脅威に怯える悲鳴が上がっている。愚かな中国の人民はロシアに向かって「ウラジオストクやハバロフスクは中国のものであり奪還する」と豪語したり、シベリアの資源に露骨な関心を示したりしてロシア人の恐怖心を煽ってきた。実に愚かな外交であったと言わざるを得ない。小渕政権以後の日本の首相の中国に対する毅然とした姿勢は、中国の脅威に怯えるロシア極東の住民にとって非常に頼もしいものであったと思われる。今や米国の世界覇権消失とともに日露平和条約が締結されようとしており、日露友好を基盤とした日本とロシアの輝かしい未来が始まろうとしている。第二次大戦後に一世紀に渡る戦争の歴史を終えて固い同盟を結んだ独仏両国が欧州を政治的・経済的に事実上支配しているように、冷戦後に一世紀以上に渡る戦争と対立の歴史を終えて日露が同盟を結ぶならば、それはアジアを政治的・経済的に支配するものとなるだろう。





<石油から天然ガスへのエネルギーシフトがもたらすユーラシアの地政学的転換>

ピークオイルという言葉が示すように、世界の石油生産は既に頂点を過ぎて徐々に減少し始めている。今後の世界のエネルギーは、石油に比べ残存埋蔵量が多く、石油ほどは中東地区に偏在していない天然ガスと石炭に切り替わっていくことだろう。

液体・固体で輸送が容易な石油・石炭と異なり、天然ガスは気体である点が輸送を困難にする。海上輸送はLNGの形で行われるが、液化の際に膨大なエネルギーを必要とし、更に液化・気化の設備投資のコスト、高価な輸送船も必要である。これと比べると、パイプラインでの輸送は気体のまま輸送できるし、陸上パイプラインの場合は沿線地域でも利用可能である利点がある。海底パイプラインも、既に黒海を経てロシアかトルコに至るブルーストリームパイプラインが順調に運営されており、樺太と北海道、北海道と本州の間の海底パイプライン建設は技術的に問題ないと思われる。沿海州から日本海海底を経て新潟に至るルートの建設も不可能ではないだろう。

また、日本国内でも首都圏・名古屋周辺・関西地区では都市ガス会社による地域ガスパイプライン網が完成しており、これらを連結するパイプラインを建設することで日本の人口の大部分が安価なパイプライン輸送の天然ガスを利用可能になると思われる。首都圏と名古屋の間のパイプライン建設については、第二東名高速道路中間分離帯等に設置し、高速道路と同時に建設することで用地取得コストを引き下げるという提案もあるようだ。

これらのパイプラインの建設、電気自動車の普及などによって、日本の石油消費は暖房用灯油・ガソリン・軽油・温室農業用の重油などの分野で大幅に減少させることが可能と思われる。また、日本は工業分野で競合する韓国や台湾よりもパイプライン輸送ガスの供給で先行することにより、エネルギーコストの面で優位に立つことが可能になる。

パイプラインは主に陸上に建設されるものであり、そのネットワーク形成は広大な面積を有する大陸国家のランドパワーを大きく増大させるものである。石油から天然ガスへとエネルギー源の移動が起こることは、ロシアやイラン・カザフスタン・パキスタンなどの中東~中央アジア諸国のランドパワーを増大させる。海上輸送の優位性は失われる訳ではないが、相対的に低下することになる。強大な海軍力で世界の海を支配することにより世界覇権を維持してきた米英ユダヤ連合の力もこれにより相対的に低下する。その焦りが、米国のアフガン・イラク侵略やイランへの軍事圧力、中央アジアへの軍隊派遣などの一連の行動の理由であろう。また、北方領土問題解決に反対して日露関係を悪化させることで、中国の脅威に対してロシアが米国の軍事的援助に依存するしかない状況に持ち込んでロシアを属国化したいという米国の戦略も、中東侵略と同様の焦りが原因であると思われる。

今後のユーラシア地区の地域間競争を考えると、ロシアなどのガスパイプライン網を有する内陸国家と良好な関係を持ち、大陸国家と自国の間に不安定な外国を持たない、海洋に面した地域が海運やパイプライン輸送天然ガスの安いコストを武器に優位に立つと思われる。

最近のインドとパキスタンの関係改善はガスパイプライン建設に関連したものであり、両国は今後の発展が期待される。一方、中国は漢民族に支配された西部の少数民族の不満が高まっている。これらの地域を経由するガスパイプラインが最近完成したばかりであるが、今後チベットやウイグル、内蒙古自治区などで分離独立を求める運動が高まるとパイプライン輸送が滞り困難な事態となるであろう。また、事態収拾のためにこれらの少数民族を独立させた後も、漢民族による弾圧への強い憎悪が継続し、現在のバルト三国やポーランドの反ロシア政策と同様の敵対的政策のため円滑なパイプライン輸送は困難となると思われる。ロシアも人口14億の中国が強大化することは望まないと考えられるので、ロシアからのガス輸出もあまり期待できないだろう。台湾も中国の沖合という地理的条件を考えると不利である。韓国は北朝鮮地域の情勢と中国を含めた東アジア情勢次第ではロシアからのガス輸出が期待できるが、日本の安全保障を考えると中国だけでなく韓国もロシアのガスパイプライン網から切り離された低開発地域に留まらせることが理想的であろう。日韓併合による文明化という恩を忘れて、捏造された従軍慰安婦強制連行問題等で日本を罵倒する主張を世界に撒き散らし続けた韓国という国に対して日本は強い罰を与える必要がある。これは、韓国・イスラエルを見せしめにして東欧諸国の反ロシア感情を抑制したいロシア、イスラエルを見せしめにして東欧諸国の反ドイツ感情を抑制したいドイツも同意すると思われる。


【9月3日追記】
NBonline(日経ビジネス オンライン):世界鑑測  畔蒜泰助の「ロシア・リポート」 コラム・トップで、ロシアの戦略に関する興味深い論説が多数紹介されている。私の考える「新たな世界覇権国ロシア」論と同じ方向性である。

ところで、独露同盟の象徴としてバルト海パイプラインの建設計画が取り上げられている事を考えると、樺太から日本に至るガスパイプラインの建設計画は日露同盟の象徴であることも考えられる。ただ、日露間では紛糾している北方領土問題があり、このまますんなり同盟締結というのは難しそうでもある。
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