ロンドンのナショナル・ギャラリー、記念すべき最初の絵は?
イタリア・盛期ルネッサンスの三大巨人のひとりレオナルド・ダ・ヴィンチ(1452-1519 )の「岩窟の聖母」が架かる壁の後ろ、そこに小さな部屋があって、壁に “ Carton da Vinci ” と表示されている。
カタリナ、同じ展示室に架かるダ・ヴィンチの生涯のライバル、ミケランジェロ(1475-1564/イタリア/盛期ルネサンス )の未完作品、「キリストの埋葬」を探していたので、一足先にこの部屋に入った。
この傑作を保護するため、太陽光を完全に遮り、かつまた、照明が殆ど施されていない空間。
その部屋の中央に、「ダ・ヴィンチのカルトン」(上)は架かっていた。
ちなみに、カルトンとは、“ イタリア語のカルトーネを語源 ” とし、幾つかの意味があるらしいが、美術用語としては、“ 絵画の仕上げの画面と同寸に描かれた素描、下図 ” とある。
薄暗い暗い空間に浮かぶイエスと聖母マリア、そして、聖母子を見守る聖アンアと寄り添う幼い洗者聖ヨハネ。
天才が描こうとしたものは、ルーブル美術館が所蔵する傑作、「聖アンアと聖母子と幼児聖ヨハネ」の下図。
この習作、継ぎ合わされた8枚の紙に描かれている。
ルーブル美術館、グランド・ギャラリーに架かる本絵(下/右端の絵:09年)にも優るとも劣らない、「ダ・ヴィンチのカルトン」。
部屋に入った者は等しく、声は勿論のこと、咳(しわぶ)きひとつなく見入り、そして、ひとくさり何かを語ろうと思うのだろうが、結局は無言で、挙句、肩をすくめながら半ば呆れ顔で引き下がる。
白チョークと木炭を褪色から守るために薄暗く絞られた照明、それが作り出す敬虔な雰囲気はこの作品にこそ相応しく、一層厳かにさせる。
余談だが、この目を凝らせなければよく見えない薄暗い部屋、オルセー美術館のルドン(1840-1916/フランス/象徴主義)やドガ(1834-1917/フランス/印象派)のパステル画の架かる部屋でも体験した。
ひとしきり唸った後、展示室で他の絵を見ているカタリナに、この絵があることを告げた。
カタリナ、部屋に入ったきりなかなか出てこない。
暫くして、「・・・・・」、深い感銘を受けたのだろう、そのことがありありと見て取れる表情で、その小さな部屋から出てきた。
美術館の案内書にも、“ この作品を見るためこの美術館を訪れる人も少なくない ” とある。
「岩窟の聖母」と並んで、まさに、高がカルトン、然(さ)れどダ・ヴィンチのカルトンであった。
Peter & Catherine’s Travel. Tour No.764
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