いきなりだが、カタリナ がガラシア病院に入院中のこと。
病室の壁に架かる一枚のポートレートに気付かれた方もおられると思う。
話は飛ぶが、ロンドンのチャリングクロス駅、その地下鉄の階段を昇ると、そこはトラファルガー広場である。
そのトラファルガー広場の奥に鎮座する1838年建造のネオ・クラシック様式の堂々たる建物、ロンドン・ナショナル・ギャラリーのセインズベリー棟に架かる一枚の絵が今日の話。
その絵とは、盛期ルネッサンスの巨人レオナルド・ダ・ヴィンチ(1452-1519/イタリア)の 「岩窟の聖母」。
絵は二枚あって、先に描いたとされる絵は、ミラノの無原罪信心会からサン・フランチェスコ・グランデ聖堂の礼拝堂を飾る祭壇画として制作を依頼されたとされ、その中央部分、無原罪の御宿りをダ・ヴィンチ自らが描き、両翼部分の奏楽の天使は当時ミラノで寄宿していた彼が、弟子デ・プレディス兄弟に描かせたとされている。
その絵は、宗教上の解釈の相違から依頼者に受け容れられず、訴訟事件で仲介をしてくれたフランス王ルイ12世に感謝の印に贈ったという説、当時のミラノの摂政官イル・モーロが買い取りフランス王に献上したという説など、諸説あるようだが、現在はルーヴル美術館(写真:左列)が所蔵している。
そのおよそ10年後に、彼が再び描いた絵は依頼者に受け容れられ、その後、何らかの事情でナショナル・ギャラリー(写真:右列)が所蔵するに至ったとされている。
まず、幼児洗礼者聖ヨハネ(下/三段目)にアトリビュート・属性として十字の杖と衣を加え、幼子イエス(下/二段目)と明確な区別がなされ、聖母子と聖ヨハネには神的人格の象徴である光輪が描かれていることにある。
また、大天使ウリエル(下/四段目)の軽やかな衣服の表現や姿勢など、依頼者の求めるものにより即した表現が用いられている。
尤も、最も重要な部分については彼自身が描いたものの、ルーヴル版に比してやや硬質的な表現手法や明暗対比の大きい暗中の陰影表現などから、デ・プレディス兄弟が彼の構図、下絵などを素に描いたとする説が有力とされているようだ。
しかし、主イエスが祝福を授けるために掲げた右手の表情、聖母マリアの気高さと優しさ、大天使ウリエルの凛とした清々しさと聖ヨハネの利発さなど、やはり優れた作品であることには間違いはない。
ちなみに大天使ウリエルとは、ミカエル、ガブリエル、ラファエルとともに “ 神の御前に立つ四人の天使 ” の一人で、神の光、神の炎を意味する。
冒頭に戻って、カタリナが大好きなそのナショナル・ギャラリー版の “ 大天使ウリエル ” が、ポートレートのその人である。
Peter & Catherine’s Travel. Tour No.721
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