※ オランダ ‐ アムステルダム/ゴッホ美術館編(7)‐ ベネルクス美術館絵画名作選(28)
孤高の画家フィンセント・ファン・ゴッホ(1853-1890/オランダ/後期印象派)。
耳切り事件の後、サン・レミの診療所に入所、その一室をアトリエとして借り制作していたものの、苦悩と退屈の生活から抜け出すため、90年5月、友人であり精神科医でもあったポール・ガシュのいるオーヴェル=シュル=オワーズへと出発する。
その数週間前に描いたとされているのが「アイリスのある静物」(1890年/92×74cm)。
ちなみに、描かれているのはダッチ・アイリス、和名では文目(あやめ)にあたるようだ。
本作、「花瓶に入った背景が黄色のアイリス」とも呼ばれているように、鮮やかな黄を背景に、丸みを帯びた花瓶に生けられたアイリスがくっきりとした輪郭で描かれている。
取分け青い花弁、その間から覗くこの花特有の直線的な緑の葉が、背景の黄との色彩対比を際立たせ、全体に力強さを与えている。
ただ、本作が描かれた頃は、精神状況が危機的状況にあったらしく、弟テオに宛てた手紙の中で、“ 僕には新鮮な空気が必要だ。サン・レミいては退屈と哀しみに押しつぶされてしまう ” と窮状を訴えている。
萎れて垂れた一束のアイリスが、そんな不安定で漠然とした恐れを表しているとされている。
療養所を退所したゴッホ、テオの家で数日間過ごしたもののパリの喧騒を嫌い、早々とオーヴェルへと向かったという。
彼は、「<アイリス>」(1889年/カリフォルニア‐ポール・ゲティ美術館蔵)や「<アイリスのある花瓶>」(1890年/NY‐メトロポリタン美術館蔵)など、アイリスのまた別の表情を描いている。
Peter & Catherine’s Travel. Tour No.1532
アイリスの絵の雰囲気はどこか浮世絵的でもありますね。
ゴッホがアイリスのことをそんな風に呼んでいたことは寡聞にして知りませんでした 勉強になりました