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No1006『人生の特等席』~早朝、心に飛び込んでくる、すてきな音~

一番好きなシーンは、エイミー・アダムスが、
父親とも、恋人になりかけた男性ともうまくいかず、
大事な仕事も人にとられ、八方ふさがりで落ち込んだ朝、
窓の外から聞こえてくる音。

それは…

早朝のキャッチボール。
心に直接投げ込んでくるような、爽快感あふれる音で、
思わず、涙があふれてしまった。
ここで、キャッチボールをしているのが予想外の人物。
地道に努力を重ねてきた者が、活躍するチャンスを与えられるという
さわやかな逆転の展開には、ただもう胸がいっぱいで
演じる俳優の控えめな表情もよかった。 
(最後の解雇とかは、若干いきすぎのようにも思えたが)

タイトルは
イーストウッド演じるガスが、野球スカウトとしての自分の人生が
三流だと思っていたところからくる。
自分と同じ「三流の人生」を歩ませたくない、という親としての思い。
娘は、そんな父親に認められたくて、必死で勉強して、
弁護士としての人生をつかむ。

でも、娘にとって、本当の「人生の特等席」は
そこではなかった。
父親の隣で、一緒に野球を見ていたかったという。
実にすてきなタイトル。
原題は『TROUBLE WITH THE CURVE』。
長年、現場に足を運んで経験を積んできた者だからこそ気が付ける“touble”
という意味が込められている。
しかし、野球そのものともいえる原題だったとは、驚き。
イーストウッド自身の俳優としての人生も重ね合わせて
「イーストウッドの隣で、人生を眺める
そんな気持ちにさせてくれる映画」とは、
日本人好みの、なんて魅力的なキャッチフレーズだろう。

エイミーの、野球大好きなオタクぶりがすてき。
自分の心の傷には、今まで、目を向けようとしてくれなかったと
父親に思いをぶつける姿が痛々しくて、
すれちがったり、ぶつかってばかりいても、
父親のことが好きだという感じが、なんとも愛らしい。
父娘ものが、まったく不得手な私には、
そう思えるすてきな父親がいることがうらやましく思えた。

イーストウッドとエイミーの姿を見つめながら、
人生のやり直しなんてできるわけないけれど、
せめて、スクリーンの中の二人に、自分にできなかったこと、
多分できないことを、託しているような気がした。

脇役も魅力的で、
老スカウトのガスの親友のピートを演じる、ジョン・グッドマンが
ガスの目を信じ、父娘をつなぐ役割を果たし、存在感があった。

パンフレットを買うと
思い切りイーストウッド色満載で、
「俳優イーストウッドの軌跡」と題して
過去の出演作まで紹介されていた。

連休初日の夜6時半の上映を梅田ブルク7で観たが
観客は、なんと15,6人くらい。
大阪駅周辺では、ステーションシネマでも上映されているとはいえ、
この閑古鳥ぶりは、残念至極。

映画が終わって出ると、午後9時に近いというのに、
受付ロビーは、派手な衣装で身を包んだ若者でひしめきあっていた。
エヴァンゲリオンと、TIGER & BUNNY というアニメ映画のせいだったよう。
あまりの活況ぶりの違いをさびしく感じながら、映画館を後にした。

コメント ( 2 ) | Trackback ( 0 )
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Unknown (ケンシロウ)
2012-11-24 10:22:36
見てもいないのにエヴァンゲリオンやダイガー&バニーを批判する様な事は言わない様に。どちらも素晴らしい作品です。
 
 
 
失礼しました。 (ぱらぱら)
2012-11-24 23:12:32
批判するようなつもりで書いたわけではなかったのですが、思わずそういう文面になってしまい、大変失礼しました。
イーストウッドは、本当にガラガラで、満席に近いかもと急ぎ駆け付けた身としては、あまりの活況ぶりの違いに、年齢のギャップまで感じ、おまけに、ブルクのロビーは、ちらし置き場までエスカレータ奥にしまいこんでいて、なんだか居場所がないなあと、さびしく思ったわけです。
少なくともエヴァについては、私のまわりの大人たちの中にも熱烈ファンがたくさんいますし、批判と読める表現は、書き直しました。
ご指摘ありがとうございました。
 
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