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著書『芸術家たちの生涯』
『ほんとうのこと』
『ねむりの町』ほか

4月9日・ブルネルの円

2024-04-09 | 歴史と人生

4月9日は、詩聖ボードレールが生まれた日(1821年)だが、英国の技術者ブルネルの誕生日でもある。

イザムバード・キングダム・ブルネルは、1806年、イングランドのポーツマスで生まれた(ちなみに日露戦争の講和条約が結ばれたのは米国のポーツマス)。父親も著名な技術者だった。フランスで教育を受けたイザムバードは、14歳のときフランスへ渡り、リセ(大学予備校)、大学を卒業して英国にもどり、20歳のとき、父親が手がけていたテムズ川トンネルの建設にアシスタント技師として参加。このテムズ川トンネルは、もともと馬車用の道路で、世界で最初の本格的川下トンネルの試みだった。
工事中の22歳のとき、イザムバードは浸水事故に巻き込まれた。トンネルに水が入り、濁流に打たれて気を失ったブルネルは濁流によってたまたまトンネル管の上のほうへ打ち上げられた。九死に一生を得た彼は、トンネル工事現場から身を引き、24歳のときにエイヴォン川に架けるクリフトン橋の設計に参加。この橋は彼の死後に、当時世界最長であったクリフトン吊り橋として完成した。
この橋梁建設のかたわら、ブルネルは、27歳でロンドンからブリストルまでを高速で走るグレートウェスタン鉄道の敷設を手がけ、さらに蒸気船を建造し、31歳のときに世界最初の大西洋横断客船、蒸気船グレートウェスタン号を就航させた。この船は帆と外輪の動力により、それまで通常2カ月かかっていた大西洋横断を、半分の29日に短縮した。
その後も、鉄道橋建設、世界初の鉄製船体船建造など、水陸さまざまな大プロジェクトを成し遂げた後、1859年9月、心臓発作によりロンドンで没した。53歳だった。

ブルネルは、英国からオーストラリアまで途中寄港なしのノンストップで行ける船を作ったが、彼が設計したスクリューの羽の効率は、21世紀現代のコンピュータが計算した最高に効率的なデザインと五パーセントしかちがわなかったらしい。

2002年に英国のBBCが「100名の最も偉大な英国人」というアンケートをおこなった。結果、第一位がチャーチル、第2位がブルネルだった。その調査結果で自分は、はじめてブルネルを知った(ちなみに、3位はダイアナ妃、4位ダーウィン、5位シェイクスピア、8位ジョン・レノン、29位デヴィッド・ボウイ)。

シルクハットとくわえ葉巻がトレードマークのヴィクトリア朝きっての偉人、ブルネル。
どの国にも、その国の人ならみんな知っているえらい人だけれど、国際的にはほとんど無名な人というのはいるものだ。たとえば、米国のマダム・C・J・ウォーカーとか、インドのオーロビンドなど、そうかもしれない。英国のブルネルもはそのひとりである。
日本で言えば、二宮金次郎とか坂本龍馬にあたるだろうか。
職人を尊ぶ日本ならわかるが、あの階級社会の英国で、エンジニア(技術者)が、ナンバー2の偉人だというのがおもしろい。
手塚治虫もそうだったと聞いたが、天才設計士ブルネルはフリーハンドで完全な円を描けたそうだ。何度トライしても自分は、いびつな円以外描けたためしがない。
(2024年4月9日)


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