パピとママ映画のblog

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ハッピーエンドの選び方 ★★★★

2016年02月05日 | は行の映画
第71回ベネチア国際映画祭ベニス・デイズ BNL観客賞などを受賞した、人生の終盤に差し掛かった老人たちの最期の選択に迫るヒューマンドラマ。監督の実体験をベースに、命尽きる瞬間まで自分らしく生きようとする人々の姿をユーモアを交えて映す。ベテラン俳優のゼーブ・リバシュとレバーナ・フィンケルシュタインが夫婦役で出演。死に直面しながらもポジティブに生きる主人公たちの姿に勇気と元気をもらう。
あらすじ:発明が好きなヨヘスケル(ゼーブ・リバシュ)は、妻のレバーナ(レバーナ・フィンケルシュタイン)と共にエルサレムの老人ホームに住んでいる。ある日、彼は死の床にある親友マックスに、何とか自らの意志で穏やかな最期を迎えられる装置を発明してほしいと頼み込まれる。人のいいヨヘスケルはレバーナの反対にも耳を貸さず、新たな発明に挑む。

<感想>誰しもが老いるのは避けて通れない高齢化時代。どう人生を締めくくるかということ。つまり死を自分のものと受け止めて、どうハッピーエンドを迎えるかということなのだ。安楽死、尊厳死、老老介護の問題を、自分や周囲の人々の行く末を考えさせられ、ユーモアを含んだ温かみのある映画でもある。

尊厳死をテーマとする映画はこれまでもたびたび製作されてきたが、これほどユーモアを持って、客観的な眼差しで死を見つめた映画も珍しいのではないだろうか。
高級老人ホームの仲良し問題児グループといった老人たちが、はからずも「死の配達人」となることを余儀なくされる。発明マニアの老人が、そこで知り合った友人が延命治療に苦しんでいるのを見て、「自らスイッチを押して最期を迎えられる秘密の装置」を作ったという何ともはや突飛な設定であります。

ですが、設定はともかく、延命に苦しみ尊厳死を願う本人にとって、これは救いの手に違いない。現に秘密の装置を作った友人が尊厳死を実行して、その噂を聞きつけた人々から、発明老人ヨヘスケルに装置の注文が殺到するというブラックコメディ仕立てで展開する。そのあたりのユーモア感覚と虚実のさじ加減が絶妙であり、ついつい乗せられて見てしまった。
ですが、なんと発明老人のヨヘスケルの妻も尊厳死を望んだのはいいが、認知症の症状が現れて、・・・。中身は面食らうほどヘヴィネスで、随所に笑いがあるとはいえ、やはり笑っては見過ごせないところもある。

妻のレバーナが認知症で壊れていく過程の哀しさが際立っており、全裸になって皆の前に出てくるシーンでは、涙が出てきた。本人は恥ずかしさなど微塵もなく、健全な回りの人たちが唖然としてしまうから。
死にゆく側は納得して尊厳死を選べても、残された側はそれを許した後悔をどこかで抱えながら孤独に死を待つに違いないのだ。そんなアンハッピーをしっかりと伝えてくれている。

私の母親も75歳くらいから認知症になり、途中で肺炎や腎不全といった余命宣告を受けて、それでも心臓が強かったのか94歳まで長生きしてあの世に旅立ちました。ですが、最期の1年間は、延命治療のお世話になり、これも私が医師にお願いして延命治療をしたもので、最期の1ケ月は植物人間状態で意識もなく点滴だけで生き長らえた状態で、今日か明日かと、毎日病院通いを続け心労と睡眠不足で見守る家族も生きた心地がありませんでした。
国の事情を越えて、心を打つ人間存在の悲喜劇になっているのも良かったですね。国民的俳優と言われる主人公ヨヘスケルを演じたゼーブ・リバシュ、妻のレバーナを演じたレバーナ・フィンケルシュタイン他、アニタ・ローゼンたちは、馴染みは薄いが風格があり存在感があって良かった。

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