仁左衛門日記

The Diary of Nizaemon

日本侠客伝 関東篇

2017年04月10日 | ムービー
『日本侠客伝 関東篇』(1965年/マキノ雅弘監督)を見た。
物語は、「大正12(1923)年。東京魚市場は日本橋から築地へと移転した。郷田勢之助(天津敏)は、移転に伴い東京魚市場協同組合を組織し、石津組のやくざを使って強引に加入者を増加させた。魚の取り扱いを独占することで価格を意のままに操ることが目的だった。老舗問屋"江戸一"は、父亡きあと男勝りの長女・市川栄(南田洋子)が妹・光子(藤純子)と共に切り盛りしていたが、強引に組合加入を迫る郷田の妨害工作があって商いは細る一方。ある日、光子と恋仲の磯村松夫(長門裕之)とケンカの挙句に仲良くなった船員の緒方勇(高倉健)が、"半年経たないと戻ってこない船に乗り遅れてしまったので次の航海までの期間、雇ってほしい"と江戸一を訪ねてきて・・・」という内容。
定価というものがなく"時価"で取引される商品市場を独占することができれば、それ以降の価格は意のままだ。
とことん妨害を続ける郷田は市の水産局長をも抱き込み、江戸一らが最後の手段として買い取ったカナダ船のマグロの陸揚げを妨害するのだが、心配に思った緒方は事前に、手続きを自分でせずに日南物産の森田(原健策)に任せっきりの栄のやり方を指摘していた。
折角の忠告を生かすことができなかったのは残念だったが、ここで栄を見捨てず、体を張って助けようとする緒方が素晴らしい。
(^_^)
小揚組合・三谷加平(大木実)の資金援助もあって、実現にこぎつけた焼津の網元・八十川波右衛門(丹波哲郎)との取引はまさしく命懸け。
これで上手くいかなければお手上げという土壇場だったのだが、この壁を乗り越えた後もなお、郷田の妨害工作は執拗だった。
「誰だ!?」「ここの潮っ気で育った男だよ」という台詞が何とも格好良い江島勝治(鶴田浩二)は、磯村をかばって一度は身を隠したはずだったが、やはり黙ってはいられない。
江島がおでんの屋台で酒を飲んでいると、女の子が「お兄ちゃん、どどいつのおみくじ買って」と寄ってくる場面があったのだが、当時は"おみくじ"を打って歩く小遣い稼ぎがあったのだろうか。
何も言わずに買ってあげて、「惚れた女には縁がないってさ」と少し切なそうな口調でおでん屋のおやじに言う。
信じはしないのだろうが、それなりに気には掛けるというのがあるあるだ。
(^。^)
北島三郎が三郎寿司の店主サブ役で出演していたのだが、すごい高下駄を履いていて、少し笑ってしまったのだった。
(^_^;)

幕末太陽傳

2016年07月07日 | ムービー
『幕末太陽傳』(1957年/川島雄三監督)を見た。
物語は、「幕末。文久2(1862)年の品川宿。遊郭旅籠"相模屋"に男数人を引き連れた佐平次(フランキー堺)がやって来たが、この男は無一文。当初からすっかり居残りを決め込んでの豪遊だった。すっからかんの懐具合を打ち明けると、主・伝兵衛(金子信雄)と女房・お辰(山岡久乃)によって行灯部屋に移されるものの、元々海が近くて環境が良い品川宿での養生が目的だった佐平次は、要領よく相模屋で勝手に働き始める。何事にも器用に立ち回ることもあって、番頭の善八や若衆の喜助(岡田真澄)らには疎まれるが、遊女のおそめ(左幸子)やこはる(南田洋子)らに重宝がられては、その度に御祝儀を頂戴し、懐を温めるのだった。また、こはるの部屋に居座る尊王攘夷に燃える長州藩士・高杉晋作(石原裕次郎)、志道聞多(二谷英明)、久坂玄瑞(小林旭)らとも交流を持ち・・・」という内容。
この作品が劇場公開されたのは1957(昭和32)年7月14日とのことだったらしいが、同年4月1日に施行された"売春防止法"が翌年に完全実施されたことにより、かつては「北の吉原、南の品川」とも称された旧品川宿の遊郭から続いたその辺り(品川橋通り?)の354年にも及ぶ歴史は、"城南の楽天地 北品川カフェー街と呼ばれる16軒の特飲店"を最後に姿を消したようである。
作品冒頭のナレーションで昭和のその辺りの様子が紹介された後に、本編へと繋がっていくのは面白い演出だった。
(^_^)
主人公の佐平次という男は"お調子者"というか"適当"というか、何事にもへこたれない超前向きな思考の持ち主のようで、行灯部屋に押し込められても「蜘蛛の巣の張り具合がいい具合だねぇ」と、めげる様子が一切ないのには笑ってしまった。
また、女中おひさ(芦川いづみ)に惚れた相模屋の息子・徳三郎(梅野泰靖)から仲の橋渡しを頼まれて手数料を取って引受けるなど儲け放題だ。
(^。^)
落語の演目『居残り佐平次』を元ネタにして作られた物語とのことだが、他にも、遊女のおそめや貸本屋の金造(小沢昭一)といった『品川心中』の登場人物も取り上げられている。
テンポも良く、ナカナカに面白い(モノクロ)作品だった。