二草庵摘録

本のレビューと散歩写真を中心に掲載しています。二草庵とは、わが茅屋のこと。最近は詩(ポエム)もアップしています。

音楽におけるレセプターの問題

2013年01月20日 | 音楽(クラシック関連)

売れゆきがよくないせいか、このところ、BOOK OFFの値付けが、一時期よりさらに低下している。マンガやゲームソフトのことは知らないけれど、音楽CDでは、半額コーナーから500円コーナーへ、さらに数ヶ月店ざらしとなると250円の棚へと移動する。
移動しないCDもある。いったいどんな基準で、これらの値下げを決めているのだろう。

写真は昨日、会社帰りに買った4枚のディスク。
インターネット上の配信サイトからダウンロードして楽しむ音楽ファンがふえて、CDの売れゆきが鈍っていたが、昨年はポピュラーミュージック業界で、AKB48(ほとんど聴いたことがないから知らないけれど)等の活躍のため、CD売上げが盛り返したというニュースを眼にした。

CDは今後も長期低落傾向がつづくだろう。デジタル音源にしてしまえば、SDカード、MiniSDなどに、何百曲も収録し、持ち歩きできるようになる。

しかしなあ。
「もの」としての手応えがないと、なんだか心細く、物足りないのですね。
ぎっしりとつまったCDラックを眺めながら「さて、つぎはなにを聴こうか」というあの瞬間のワクワク感が味わえなくなる(^^;) わたしのようなおっさん、おばさんもまだまだ元気なのだ(笑)。

写真のCDは、ギーゼキングのモーツァルトをのぞいて、すべて250円。
もちろんライナーノートがついている。これを読んでから聴きはじめるのも、楽しみのうち(^_^)/~
モーツァルトのピアノ曲は、クララ・ハスキル、ピリス、内田光子あたりでこれまで聴いてきたし、その前はグルダ、ブレンデルで「決まり!」とかんがえていた(笑)。
ギーゼキングはどうにも古臭い・・・いやいや、「これまでとってあった」のだ!
ということにしておく。

音楽はレセプターがないと、なんのことやらわからない。
3分4分ならともかく、興味のもてない音楽を、30分、あるいは1時間聴きつづけるのは、ある種の拷問だろう。前衛ジャズや、ヘビメタ系のロックは、わたしには騒音としか思えない(ファンの方、ごめんなさい)。

しかし、分子生物学でいわれる遺伝子レベルのレセプターと違って、このレセプターは、ある程度の訓練で、つくり出すことが可能であると、わたしはかんがえる。
はじめにあるのは、直観というか、霊感のようなもの。
「おれはいつか、きっとこの音楽を理解し、好きになる」というような。
5回、あるいはそれ以上聴きこんでわからなければ、一時撤退する。

あんなに退屈だったモーツァルトのディヴァルティメントが、ある日、驚くべき親しさで、わたしに寄り添ってきたときの感動を例にあげたらわかってもらえるだろうか?
若かりしころ山歩きをしていて、つまらないうねうねした登山道をひーひーいいながら汗まみれになって歩き、尾根に出たとき、豁然と眼前が開けて、白雲たなびく美しい緑のスロープと、広大な風景につつまれて、浄福のひとときをすごした経験がある。
わたしや行動を共にした友人の心の中で起った、眼に見えないサプライズ!
・・・be impressed
それと似ている。




さて、このところ、ちょっと目覚めかけなのがマウリツィオ・ポリーニ。
それはこの2枚のディスクと出会ったことによる。
左はピアノ協奏曲第23番と、第19番のカップリングCDで、ベームの指揮するウィーン・フィル、1976年輸入盤。
右はポリーニの弾き振りによる第17番第21番で、オケは同じくウィーン・フィル、2006年輸入盤。どちらもずいぶんお安く手に入れた(^^)/

「そうか、そうか・・・。こんなモーツァルト、はじめて聴くぞ」
彼の場合、一般には超絶技巧で一世を風靡した若いころの演奏のほうが評価が高い。
しかし、ゆっくりと時間をかけて成熟したポリーニのピアノのなんという、他では味わえないクリスタル感あふれる抒情だろう。しかも力強く、確信みなぎるタッチが、凄い説得力をもって迫ってくる。
それはいうまでもなく、ブレンデルとも、グルダとも違う、ポリーニのモーツァルトなのである。聴きつくしたつもりになっていたモーツァルトのピアノ・コンチェルトからこんな、切れば果汁がしたたり落ちるような鮮度がありながら、堅牢性をも兼ね備えた典雅な音楽が香り立つとはね。

わたしは遅ればせながら、ようやくポリーニの演奏にたどり着こうとしているのだろう。内田光子のモーツァルトからは得られなかった感動を、わたしはポリーニからもらった。

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