変えられる性格、変えられない性格 2の記事で、
「『ねばり強さ』が低いことは遺伝の影響を受ける因子だから、変えることは難しい」
という話を書きました。
変えることが難しい気質を、叱ったり責めたりするのは無意味ですが、
ねばり強くない子はない子なりの、根気との付き合い方が必要だと思っています。
というのも、現在は、飽きっぽくて我慢が苦手な子が、さらに飽きっぽく、
さらに我慢が苦手になるような物があふれかえっているからです。
テレビゲームや携帯ゲームやテレビは、自分から働きかけなくても、
次々、目新しい刺激を与えてくれます。
遊園地もショッピングモールも、飽きるという気持ちを味わう間もなく、
楽しい刺激に満ちています。
話がちょっと脱線しますが……
うちのダンナは、もうかれこれ10年あまり、
校庭キャンプやジュニアリーダーの養成のボランティアなどをしているのですが、
年を追うごとに、子ども向けのイベントに対する周囲の大人たち(親御さんや
スタッフなど)の捉え方が変わってきていて、困惑しているようです。
子どもたちが自分たちでテントをたてたり、自分たちで料理をしたり、子ども同士で相談
させて自主性や社会性や思考力を育むことが従来の主旨だったのに、
「準備は大人がしてあげて、子どもたちには楽しんでもらったらいいのでは?」
「料理は危ないから親がしてあげたらいいのでは?」
「塾があるので、お友だちと相談する時間には出られません。」
「もっとこうしたら、楽しいし、ラクになるのでは?」
といった意見がたくさん出るようになって、
イベント当日に、勝手に手出し口出しをする人も増えて、
自主性や社会性を育むという主旨は忘れ去られて、
単なるお祭りと化してきているそうです。
本当なら、ちょっとめんどくさくてブツクサ言う場面があってもいいはずなのです。
クレームが出ない、楽しいだけの世界を作り出そうなど思わず、
「ちょっとしんどいけど、面白さがそのしんどさを忘れさせてくれる」
「友だちと一緒だから、嫌だったこともがんばって我慢できた」くらいの体験こそ、
子どもの心身を鍛えてくれるはずだからです。
先日いただいたコメントでは、学校の授業も、
子どもの自主性や社会性や思考力を育むことより、授業がよりスムーズに脱線しないで
進行し、子どもたちが考えたり悩んだりしないで楽に参加できることを優先しているよ
うな内容だったそうです。
コチラです↓
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娘が小学一年生になり、授業参観がありました。「自分の顔をかきましょう!」という
テーマの授業でしたが、配られた画用紙には卵形の顔の輪郭が描いてありました。
「まず、色を塗ります。肌色を横に持って~わたぬりと言います。次に白をわたぬりし
ます」と先生のする通りに生徒は描きます。先生が見て、色が濃すぎた子は先生が勝手に
ティッシュでふきとります。
「次に目を描くよ~隣の人の目を見て~こんな風に描いて~」と先生は黒板に写実的な目
を描いてみせます。私は思わず「隣の子の目を見て描くなら自分の顔じゃないじゃん!」
と心の中でつっこみをいれましたが(笑)子供は素直ですね~。誰も文句を言わず先生の
言うとおりに描いて絵は出来上がりました。みんな同じような特徴のない顔です。
私は「はあ~!」と疲れて、「何?この授業!」と怒りがこみ上げてきました。
一年生の授業って昔からこんなものなんですかね?自分の時の記憶がないのでわからない
のですが。
こんなつまらない、それこそ苦行のような事をもくもくと五時間目まで続けられると勉強
嫌いになってしまわないか心配です。
算数のプリントも絵の中の動物を数えるだけの問題なのに先生が黒板に書いた通りに写さ
ないとダメらしいです(涙)。休み時間に折り紙をして良いのですが、一日2枚しか使っ
たらダメらしいです(涙)。今の小学校は何なのでしょうか?
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こうした子どもをめぐる環境の変化のダメージを特に受けやすいのが、
もともと「ねばり強さ」が低い子どもです。
飽きっぽかったり、我慢が苦手でも、
友だちと駆け回って遊ぶ時間がたっぷりあれば、体や心が鍛えられて、
少しずつ我慢ができるようになるでしょうし、
お手伝いをしたり、物作りをしたりする時間があれば、
飽きずにがんばれることも増えることでしょう。
でも、それが難しい昨今です。
使う道具も、使い方など練習しなくても、「スイッチ オン」で動く便利なものばかり。
そうした便利で刺激的でラクで楽しい環境の中で、
我慢が苦手な子たちが我慢を強いられる場面といったら、「お勉強をするときだけ」と
なってしまいます。
「ねばり強さ」が低く飽きっぽい子というのは、好奇心が強くて、
目新しいものに強く惹きつけられる子が多く、
次々新しい刺激を求めるので、頭の回転が速い子も多いです。
ですから本当なら、決してお勉強が嫌いなわけではないのです。
でも、便利で楽チンな世界で、唯一、勉強だけが自分に嫌な我慢を強いてくるとなると、
そうした子たちの頭の中では、
「お勉強」=「我慢すること、苦痛」
とイコールで結ばれてしまいがちなのです。
それこそ、ほんの一瞬でも考え込まなきゃいけないものは、
「いやいやいやいやいや!」とオーバーなほど毛嫌いして、
いつもいつも楽しくラクな時間だけ求めようとする習慣が身についている子もいます。
それで私は、そうしたタイプの子たちには、お手伝いや工作といった地味な活動の中で、
できるだけ飽きずに作業をやり遂げる力を養うようにしています。
多くの親御さんは、我慢が苦手な子に宿題をさせるのがあまりに大変なものですから、
「やりなさい、やりなさい」と叱って勉強させて、勉強の時間に苦痛を味合わせて、
その埋め合わせをするように、残りの時間をゲームやテレビで埋めてしまいがちです。
でもそれだと、どんどん勉強が悪者になるばかりです。
親御さんの心に、「遊びにエネルギーを使ってもしょうがない。
少しでも勉強に力を入れて!」という気持ちがあると、
なおのこと、勉強が悪者になりがちです。
しっかり何かに関わって、
集中力を継続する体験を、遊びや工作やお手伝いの場でさせていけば、
「ねばり強さ」が低い気質は変わらなくても、勉強だけを極端に拒絶することは
なくなってきます。
自分の手を使って何かをして達成した体験がいろいろあると、
勉強でもそれを生かして、勉強の面白い面に気づいたり、工夫したりしながら、
やるべきことはこなすようになってきます。
うちの子たちも、「ねばり強さ」が低い子で、
息子は大のテレビゲーム好きでしたから、これはキケン!と……。
昭和時代のような生活の不便さや地味な活動をわざわざ取り入れて、大切にするように
していました。
「買えばすむものも、作ってみる。
便利な道具があっても、あえて手間のかかる道具を使う。
遠出も自転車で行く。
友だちと遊ぶ時間をたっぷり取る。
たくさん失敗して自分で考えさせるため、
やりたがることは何でもやらせて、細かく干渉しない。
好きなことはとことんやらせる。」
といったことです。
うちの家族はみな、我慢強さからほど遠い気質なのですが、
そうした生活のおかげで、それぞれが自分のやろうと決めたことを途中で諦めたり、
放り出したりせずに、ずっと続けていける力がついていると思います。
ブロック講座 10日目 (それぞれの子にとっての「魅力を感じるレベルの難しさ」) 1
の続きではあるのですが、
ちょうど、飽きっぽい子我慢が苦手な子に根気をつける方法 の記事に
「他のタイプについても教えてください」という質問をいただいていたので、
ブロック講座での出来事を書くついでに、こちらも書かせてください。
この日のブロック講座に参加してくれていた3歳5ヶ月の●くんは通常レッスンにも通っ
てくれている子です。
ものをじっくり考えることと工作が好きな落ち着いた性質で、思考が優れている子だ
と思っています。
●くんが飽きっぽく我慢が苦手な状態に陥るのは、
先が読めているような易しくて単調な作業をする時です。
そんなわけで、ちょっと難しい課題でも、できるまでしつこくやり続ける●くんなのに、
同年代の他の子らが面白がって取り組んでいることに見向きもしないで、うろうろして
いる時もあります。
そんな時はお母さんが●くんの名前を読んでいても、自分で刺激的な面白そうなものを
見つけることに夢中になっています。
でも「これはちょっと頭を絞らなくてはならないぞ」というような物作りの見本を目に
するとすっ飛んできて、身を乗り出して見ています。
「やってみる?」と聞くと、真剣な表情でこっくりして
作り上げるまでじっくり関わります。
また算数の問題に答えるときも、
他の子らがさっさと答えを言ってしまって、
●くんも同じ答えだと思っているように見えるときも、
「あっ、言われちゃった」という顔をして考えるのをやめたりしないで、
それからも慎重に考えていて、正しい答えを言います。
●くんのお母さんはとてものんびりした大らかな子育てをしている方なので
心配はいらないのですが、
●くんのように考えること自体に強い喜びを感じる子らを、
大人が「頭のいい子の親として評価されたい」というエゴイスティックな欲望を満足させ
る道具として競争に駆り立てると、攻撃的になったり、飽きっぽくなったり、我慢が苦手
になったりするのを見かけます。
大人は安易に「考えることが好きなんだから、お勉強のようなことをさせて、よい点数を
とらせたらいい」と感じるかもしれませんが、
とても思考力の高い子の場合、最初から白黒つけて問いと答えが結びついているペーパー
上の問題よりも、五感をフルに使って多面的に深く考えていくような活動を好みます。
そうした体験の蓄積した上で、いずれ大きくなったら、
ペーパー上で抽象概念を練っていく作業を心から楽しむようになるのだと思います。
直感が優れているの飽きっぽさ、我慢の苦手さと 根気をつける方法について書いた記事。
直感が優れた子に「アウトプットする手段」を設けるということ
感情が優れているの飽きっぽさ、我慢の苦手さと 根気をつける方法について書いた記事。
感情が優れている子とお勉強 1
感情が優れている子とお勉強 2
感情が優れている子とお勉強 3
感情が優れている子とお勉強 4
感情が優れている子とお勉強 5
感情が優れている子とお勉強 6
感情が優れている子とお勉強 7
「飽きっぽい、我慢が苦手」といっても、
感覚が優れている子の飽きっぽさや我慢の苦手さと
直観が優れている子の飽きっぽさや我慢の苦手さと
感情が優れている子の飽きっぽさや我慢の苦手さと
思考が優れている子の飽きっぽさや我慢の苦手さとでは、
種類が異なるように思います。
ですから、どのような理由ですぐに物事を放り出しているのかよく見極めて、
対応をちょっと変える工夫が必要だと思っています。
感覚が優れている子は、本来、我慢強くコツコツがんばれる子が多いですが、
美意識が強くてプライドが高く、完ぺき主義なので、
自分の不器用さが原因で他の子より見劣りする作品が生まれたり、
字がくねくねとゆがんだりするのが我慢なりません。
「みんなと同じレベル」にできるくらいではダメで、
いつも周囲の人よりダントツですばらしくなくてはならない……くらいの期待を、自分にかけがちです。
といっても、
他の人の評価はまったくといっていいほど気にかけないことも多いのですが、
大人の作った完璧な作品とか、お手本の字とそっくり同じにできないから、
努力なんてしてもムダという気分にとらわれて、投げ出すことがよくあります。
感覚が優れている子たちは、
器用さに関わらず美しい仕上がりを楽しめる作品を好みます。
ブロックで作るときには、色の配分に気を配りながら、
直方体やピラミッド型といった均等な形をよく作っています。
感覚が優れている子たちは、先の見通しが立つものが好きです。
見通しが立つ課題で、自分の実力にあったものならとても集中力を示します。
同じことばかり繰り返したり、お手本の真似ばかりしているようにも見えますが、何度も
同じことをやり通した後では独創的で大人顔負けの完璧な作品を作り出します。
勉強では「算数の文章題を絵を描きながら考えなさい」といった課題はとても嫌がる子が
多いです。
具体物を操作して、数の世界の秩序の美しさを感じ取りながら学ぶのはとても好きです。
新しい未知の事柄には不安を感じやすいので、家庭の中でさまざまな概念に事前に触れさ
せておくことが、強い拒絶を防ぐコツだと思います。
感覚が優れている子が、飽きっぽく我慢が苦手になっている場合、
自分に対する自信が揺らいでいる可能性があります。
また周囲が期待して子どもにさせようとしていることと、
本人の気質がずれている場合があります。
私が気にかけているのは、
直観が優れている親御さんが、感覚が優れている子を育てているケースです。
直観が優れている親御さんは、どんどん新しいことを取り入れるのが好きで、
子どもにも、さまざまなことをやらせようとし、さまざまなものを与えて、
子どもがそれらに次々と興味を示し、新しい才能を発揮してくれることを望みがちです。
感覚が優れている子は、
見たり聞いたりする分には、とてもたくさんのことを受け入れる準備がありますが、
自分で何かするときは地味なほどに同じ作業にこだわります。
すると、そうした生活の中で、
「外の世界や他の子どもの中にはすばらしいものがたくさんあるけれど、
自分はつまらなくて価値がない」と思い込む感覚型の子がけっこういます。
そして、親御さんが子どもが同じことを繰り返すと進歩がないように感じて嫌がるため、
実際に訓練が不足して、
あれもこれも上手にできずに自信がない子に育ちがちです。
すると、自分では何もせずに、「これはつまらない」「こんなのしても意味がない」
「あの子の作っているの変」「○ちゃんの字がゆがんでる」といった
自分以外のものや人を評価することだけに力を注ぐようになることがあります。
感覚が優れている子たちは、もともと根気がある子が多いので、
そうした子が、すぐに飽きて何でも放りだす場合は、
環境や周囲の大人の態度を見直す必要があると思っています。
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直観が優れている子についてお話しますね。
直観が優れている子たちは、自分のアンテナに引っかかったものに次々飛びつきますから、
赤ちゃん時代から飽きっぽくて、我慢が苦手な子が多いと思います。
チャレンジャーで飲みこみが早いので、周囲より一足先にできるようになるわりに、
作業が雑だったり、すぐに飽きて放り出したり、
説明を聞くときに他のことに気を取られていたりするので
最後の仕上がりがいまいちに終わりがちです。
そのため始終叱られて、自分に自信を失って、
いっそう飽きっぽく、いっそう我慢が苦手になっていくケースがよくあります。
直観の優れている子たちは、感覚の優れている子たちとは正反対で先の見通しが立ったと
たんに、やっていることへの興味を失うことがよくあります。
ですから実際やってみるまでは、「やらせて!やらせて!」と大騒ぎするわりに、目新し
さがなくなると、たちまち見向きもしなくなります。
また既存のおもちゃや教具も、お手本通りに遊ぶことはまれで、
たいてい自己流にアレンジして好き勝手に遊びます。
まさしく「飽きっぽくて我慢が苦手」を絵で描いたような直観が優れた子たち。
このタイプの子たちに、根気を身につけさせるには、3つの大切なポイントがあると
思っています。
一つめのポイントは、新しいおもちゃや新しい服を次々買い与えたり、
刺激的な遊園地やショッピングセンターなどへのお出かけは控えるということです。
直観が優れている子たちが、一度「もっと、楽しく……」「もっと面白く……」
「もっとステキに……」と受動的な態度で、何か買ってもらったり、お出かけ先で見たり
聞いたりすることで直観を満足させることを覚えると、際限なく新しい刺激を求めだすか
らです。
子どものアンテナに引っかかる、楽しくてやってみたいことのハードルはどんどん上っていき、
お勉強や地味な作業は、どれも無意味でつまらないことのように感じるようになります。
もう一つのポイントは、想像力や創造力を使ってどんどん加工していけるような素材で、
工夫して遊ぶようにすることです。
紙工作やブロック遊び、積み木遊びなどが最適です。
そうしたものに、科学遊びのグッズ(プロペラや空気砲やプッシュライトや鏡など)を
組み合わせたり、歴史や宇宙などの知識を取り入れたりして、常に新しい未知の部分を
取り入れて、知的好奇心を満たすようにします。
すると、それまで困りものだった飽き性の一面が、多方面への興味の広がりを統合して、
創造的に問題解決に生かしていく態度へと変わります。
三つめのポイントは、はじめるまでの「何が何でもやりたい!」というエネルギーを
根気のいる作業にあてることです。
直観が優れている子たちは、まだやったことがないものが箱にしまってあると、
どんな苦労もおしまぬ勢いでやりたがるものです。
そこで、やらせる条件として、ちょっとした手間のかかる作業をさせるのです。
「もし、~をきちんとやりとげたら、してもいいんだけどな。でもきっと大変よ。
やめておいてもいいよ。」といった言い方をすると、他のタイプの子たちはたい
てい尻込みして諦めるのですが、
直観が優れている子たちは未知のもの知りたさに、たいてい飛びついてきます。
もともと我慢が苦手な直観タイプの子に、
ねだられたからといって高価なものを買い与えるのはムダそのものです。
「あれもこれもがんばるからやらせて~!」と言わせるのには、
ドライバーを使って電池を入れ替えるとか、新しいじょうろで花に水をやるとか、
お家の壁にフックを取り付ける仕事といったもので十分です。
「やりなさい」と指示するのでなく、「今から面白いことするんだけどやってみたい?」
と誘うときっとやりたがるはずですよ。
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