虹色教室通信

遊びや工作を通して 子どもを伸ばす方法を紹介します。

子どもの個性に添った次のステップアップのためのアイデア 2

2014-02-17 15:46:53 | 子どもの個性と学習タイプ

前回の記事に、★くんのお母さんからコメントをいただきました。

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記事にしていただいてありがとうございます。

レッスンではぽんすけは、ほとんどダダをこねているか、かんしゃくを起こしている。
恥ずかしがって何を聞かれても返事もできない、何を作ってもらっても興味が無いそぶりをしているのに、先生の洞察力はすごいなあ!と敬服いたします。
レンズやライトで遊んでいたときも、ぽんがいつまでも綿を触りたがってグズグズしていたのをすかさず「綿にあてたらどうなるかな?」と巻き込んでしまうテクニックもさすがです。
以前の記事で大人の教え方を洗練させていくことの大切さがあげられていましたが、あーーほど遠い・・といつも思います。

あんな態度ではありますが、レッスン後はいつもすごく何かしら刺激を受けたなと感じます。自分でもまずいなと思うのか、とても聞き分けが良くなり、今回は急に絵がレベルアップしてびっくりしています(突然多色使いがはじまり、細かくなりました)。

帰ってから数日、いろいろと小道具作りも一緒にしてみました!
照明もぽんは前から先生がやってた赤とかぐるぐるするのやりたい!と興味を持っていましたし、園で見た大好きな鬼の劇も、最初のピアノの導入の音楽を自分でめちゃくちゃながらキーボードで弾いたり、最後の舞台挨拶も同じBGM曲を要求したり、先生が出演者にインタビューするところまできっちり再現したがります。
衣装系だけでなく、大道具も途中の効果音も笛やら太鼓やらもこだわってひと通り準備したがります。

ですから今回の”ちょっとしたアイデア”はなるほどーー!と、いろいろと勉強になりました!!
箱に細かい貝殻をいれてざらざらざら・・「三途の川の音!」とやったり、
三色の照明はタピオカ用の太いストローでグルグル回せるようにすると大喜びでした!
その後、パパが休みにまた本格的な照明にグレードアップしてくれましたが、両方気に入って使っています。
昼間から雨戸を閉めて電器消して!!とうるさいです(壁に綺麗に色が映るので)。

カセットテープレコーダー、いいですね!懐かしい。
ぽんもiPhoneで写真を撮ったり動画で自分の劇を撮って見るのが好きですが、
まさにブラックボックスというか、カセットのあのカチッっと押す感じや、テープが伸びて音が変になるとか、いろんな仕組みを考えるきっかけになるものは今の便利な製品にはどんどんなくなっていますものね。
昔の物を知っていると、進化していくのを見るのもそれはそれでわくわくしますが、
今の子は赤ちゃんのおもちゃですら高機能ですもんね~!!

縦じゃなくて横に広げるアイデア、おかげ様でいろいろ浮かんできそうです!
ぽんすけから出てくるアイデアを活かして創るって楽しい!と思えるようにしてあげたいな~。
ちなみに飛び出す仕掛けは紐の材質がいまいちなのかいろいろ変えてみましたがすべりません。
エレベーターのときもそうでしたが、パーツを変えるといいときもあります。
(パーツによって隙間にも誤差があるのでしょうか?)
デュプロで地獄の釜を作ってそうべいたちが飛び出してくるようにしたかったのですが、
横にしか動かせなくて、でもぴょんぴょんしているのがお湯につかって歌っているようで
ぽんにはうけていました!!
うまくいかないときこそ、転んでも只では起きない、そこから考えたり工夫したりが大切なんだなって少しずつ実感できるようになってきました。

最近ちょっと思いついて10の合成なども、閻魔様が2匹の鬼を呼んで「今日は10人の子分を連れて行くから残りをつれてこい!!」なーんてやると、それはもうくいつきます!!(^^;)
幼稚園のマラソンもいつもビリ、ビリ2、3、って感じなのですが、
最近は鬼ごっこ(文字通り本物の鬼がおいかけてきます)でマラソン練習しよう!と本人が言い出して意欲的。鬼様々です!
算数も運動も遺伝的には期待できないなと思うのですが(算数はタイプにもよりますね)
楽しそうに取り組んでいるのをみると嬉しいですね!
苦手意識を持ったり自己肯定感が下がらないように親が協力でできることもいろいろあるかなと思います。
ゲームにも拒否反応の強いぽんですが(説明が聞けない、思いついた自分のやり方でやりたい)、
次は地獄双六かな?と話を振ると、かなり興味あるみたいです!
お友達と上手に遊べるようになるまで、ゆっくりじっくりつきあってあげたいなと思います。

毎日毎日ものすごい集中力で真剣に工作している姿に、行き詰まったらつまんなくなっちゃうかな?
何か次の階段にあがる手伝いができないかな?とちょっと焦っていましたが、
いつも本当に的確なアドバイスをいただき感謝しています!
私の集中力と体力が続くかという別の戦いでもありますが(^^;)、
私も楽しんで一緒に遊んでいきます

欽ちゃんの仮装大賞を見てからヤマタノオロチにも興味が!
オンライン教室の蛇、参考にしました。ありがとうございます。


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 前回の記事で、「こんな場合に、わたしが物作りや新しいアイデアのお手本を見せると

すると、大人の期待を満たすような良いものを提供することは滅多にないのです」と

書きました。

それについて、少し説明を加えさせてくださいね。

 

子どもに何か教えるとき、どのくらい手加減するか、どのくらい手抜きをするか、

どこで控えて、引き下がるか、ということにいつも気を配っています。

手抜きをするのに気を配る……なんておかしな話だと聞こえるかもしれませんが、

相手が子どもである場合、とても大事な関わり方の技術の一つだと感じています。

 

もちろん、時には大人も本気を出して、

子どもと一緒にする遊びや物作りに全力投球することは素晴らしいことでしょうし、

わたしも自分の知恵を総動員して、その日のうちに夢のように消えてしまう子どもの

遊びの世界に力をかすことは多々あります。

 

ただ、どんなときも、

子どもがある時点から主導権を握りだして、作品が不格好でも失敗だらけでも、

自分の力で何かしていっているという実感や達成感を味わい、

自分の中からアイデアが生まれてくることにわくわくし、

それを誰かに伝えて、遊びの世界で活かしていく喜びに気づいていくことを

目指すようにしています。

 

そのためには、子どもから「手伝って!」「教えて!」「作って!」と言われたときに

何度でも快く、子どもが望むように応じてあげながら、

同時に「自分でもできそう」「自分でやってみたい」と思い、

「自分にはこんなこともできるしあんなこともできる」「こんなことができた」

「全て自分でやった」と感じるくらいに手加減するようにしているのです。

騒がしい小学生たちのグループを相手にするときも、

赤ちゃんや幼児を相手にするときも、

会話をするのが難しい自閉症の子らと過ごすときも、

手加減や手抜きといった引き算の関わり方が、効果を発揮することは多いのです。

 

たとえば、自閉症の子が何でも自分でやらずに

こちらにやってもらうことを求めてくるような場合、

要求自体は気持ちよく受け止めながら、手助けする手に力を入れずにもたもたしたり、

子どもの目にも簡単にできそうに見える場面で「難しいな、こうかな、こうかな」と

試行錯誤して困っている姿を見せるようにしています。

すると「自分でやってみる」という行為につながりやすいのです。

もたつく姿からやり方のコツを学べるのもいいようです。

子どもが自分でやりはじめたら、成功するように……それでいて手伝ってもらわずに

自分ひとりでやっているという実感が味わえるくらいに控えめに助けます。

 

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脱線しましたが、

「子どもの個性に添った次のステップアップのためのアイデア」の話題に戻りますね。

この春、年中さんになる●くんのレッスンでこんなことがありました。

●くんは、2,3歳の頃に反抗期がほとんどなかった従順でおとなしい子ですが、

最近になって幼い妹へのやきもちが高じてきて、お母さんに対して

甘えたい場面で反抗するという複雑な態度を示すようになってきました。

 

お母さんが、「こんなことする?」「あれをしたら?」と勧めると、開口一番、

「いや」「やりたくない」「つまらない」と乗り気のない返事で応じます。

教室でも、こちらが口をきく前から「面白くない」「やりたくない」

「ぼく、やらない、しない!」と言いながら、

ほかの子らに背を向けて、ブロック遊びをはじめました。

 

 

話の途中ですが、次回に続きます。

 


子どもの個性に添った次のステップアップのためのアイデア

2014-02-15 19:52:34 | 子どもの個性と学習タイプ

4歳半の★くんは、もう長い間、鬼のかぶりもの(黄色い髪の毛に二本のツノがついた

もの)や小道具作りにはまっていて、教室に来るたびに、かなり迫力のある鬼の

子どもに扮して現れます。

劇の衣装を作るのも好きだけど、同時に役になりきって

周囲の人をびっくりさせることが楽しくて仕方がないようです。

 

★くんは極度の恥ずかしがり屋で神経過敏気味の子なのですが、

いったん何かの役を演じだすと、大胆に積極的に振舞い始めます。

個性って、本当に面白いなと感じます。

 

レッスン中、★くんのお母さんから、

この頃、工作がとても得意になって自分で物をどんどん作っています。

そろそろ次の段階に進む時期のようなので、(動くしかけのような)アイデアを

教えていただけたら……といったお話をうかがいました。

ちょうど一年前、★くんの工作する姿を記録した

お母さんがひとこと言いたいところを我慢したら……

という記事を思い出して、あの頃、お母さんは★くんが工作を通して

一つのことにじっくり集中して関われるようになってほしい、と強く望んで

おられけれど、今、その望みはすっかり叶って、今度は知恵を使ってより高度な

何かを作り出せるように・・・と考えておられるんだなと嬉しい気持ちになりました。

 

といっても、こんな場合に、

わたしが物作りや新しいアイデアのお手本を見せるとすると、

大人の期待を満たすような良いものを提供することは滅多にないのです。

これまでやったことがあるものだったり、未完成なものだったり、

本当にささやかなちょっとしたことだったりします。本当のことをいうと、

そうした手本なり見本なりを教えることが目的ではなくて、

そうやってこちらから何か投げかけることによって、その子が何に惹かれるか、

どんなことに夢中になるか、何に対して敏感か、どんなときに目を輝かせるか、

それをくわしく知りたいと思って、教えるふりをしているところがあります。

そうして子どもから返ってきた反応に対して、さまざまなことを感じ取ったり、

こちらも新たなアイデアを出したりすることを繰り返しながら、

子どもの個性が何かを生み出していく過程を見守っています。

 

★くんの次の工作の段階……と聞いたとき、わたしは一番に、

数日前に教室内で影絵劇を演じていた小学生たちの遊びを連想しました。

 

 

グループレッスンをしている子たちは教室に着いたとき、

その日、何をやってみたいか話し合います。

 

小学生たちが来る前に、幼い子たちがコピー用紙のスクリーンで

影絵遊びをしていたので、「これで影絵でも演じてみたら?」と言うと、

「影絵やりたいけど、こんなに小さいのじゃ嫌。もっともっと大きい画面で……!」

「天井から布を吊り下げて!」と大騒ぎになりました。

そこで、スクリーンを吊るところまで手伝ってあげると、

あとは自分たちだけで夢中になって、

観客に向けての注意書きを作ったり、即席の物語を演じたり、小道具を用意したり

していました。友だちに自分の考えを説明したり、

自分のアイデアをすぐさま実行に移してみたり、それを人に見てもらったりするのが

楽しくてたまらないようなのです。

 

創造力は、絵画のように、個人の作品として目で見て評価できるものでだけ発揮される

のではありません。

アイデアを言葉にするのも、小道具を探してくるのも、

舞台を作ったり椅子を並べたりすることも、友だちと協調して作業に参加するのも、

役になりきるのも、音楽や音を奏でるのも、即興で物語を語るのも

自分の創造的な力を活かすわくわくする活動です。

 

鬼のかぶりものや小道具を作っては、鬼を演じて大喜びしている★くんには、

もっと高度な工作技術というより、

自分がこれまで作ってきたものを使って、観る人を魅了するような

表現方法についてのアイデアを教えてあげる方がいいんじゃないかな、と思いました。

 

空き箱にビーズや小石を入れて動かすと、波の音などが作れます。

カセットテープに、鬼が現れるときの音やお話を吹きこんでおくのも面白いです。

トイレットペーパーの芯に赤や青のセロファンをつけて、懐中電灯で照らすと

ライトアップを楽しめます。

これまで教室でエレベーター作りやケーブルカー作りなどをしていますから、

そうした物を動かす基本の技で、小道具を動かすこともできます。

お祖母ちゃんを観客として招く際に、舞台あいさつを考えたり、花束を贈呈したり

するシーンを考えさせるのもいいかもしれません。

(小学生の子たちでしたら、舞台の最中に火災が発生して避難するシーンなんかも

遊びに取り入れるでしょうが……)

 

レッスンのあとで、★くんのお母さんからこんなコメントをいただきました。

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先日はレッスンありがとうございました!

今回は、自分で椅子を持っていったり、やってみる?と聞かれて即座にウン!と

答えたり、お!?と思う事が多かったです(笑)。まあ、やはりゲームには参加できず、

寝転がって眠い~!!と連発し、ご迷惑をおかけしましたが・・。

最近思うのですが、95点取ってきて、なんで100点じゃないの?という対応(身内の

体験談です・・・)にならないように、辛抱強くいきたいと思います。

(ご一緒させていただいたお母様方、騒がしくして本当にすいません!!

素敵なお母さんたちでした!)


「動く鬼」は実は奈緒美先生のとこに行ったら、作りたい!と言うと決めていたこと

なので、結局自分で言えた訳ではなかったものの、すごく嬉しかったようです。

記事の実験もレンズも「パパやばーばたちに手品してあげる!」と張り切って、

実際歓声を受け、大喜びでした。レンズは大流行りですね!

お友達遊びでもきっと盛り上がると思います!

レッスン後、京都の東寺に行きました。一寸法師はもちろん、

最近は大江山の酒呑童子や羅生門の鬼がブームなので、相当ワクワクしたらしく、帰りた

くない!!!とだだをこねていました。ちょうど五重の塔の初層公開中だったので私も

しめてラッキーでした!そうだ!都!!と、ほんの思いつきだったのですが、「まっくろ

だね、金太郎(坂田金時ブームです)がいたときからあった建物なのかな?「こういうと

こで剣の稽古したのかな?」「お姫様はお琴の稽古かな?」「鬼、あそこの陰に隠れてる

かも!」などとおしゃべりしながら、歴史的建造物に触れられて、それも私が触れさせた

いからではなく(←これでいつも失敗!)、ぽんすけが行きたいから、と一緒に大好きな

お寺巡りができて本当に良い時間を過ごせました。

実は残酷描写の地獄の絵本ばっかり見て、描く絵も工作も鬼だらけだし、

ちょっとどうしたもんかな?と考えていたのですが、帰ってきてからは閻魔様に似て

いると気に入った不動明王や五重塔を描きまくっているし、京都駅では仏像のガチャ

ポンを欲しがったりしているので、これは、単に残酷なものとざけるより広げてあげ

なくちゃ!と早速図書館にいって、鬼の伝承や地獄についての考察などいろいろな児

童書を一緒に借りてきました。仏教も奥が深いし、宗教学が好きな主人にいろいろ話

をしてもらったらぽんも楽しいかな?と考えています。もう毎日、地獄の絵本を読ま

されて辟易していたのですが、(あまりに絵面が残酷で・・)上手に広い知識欲につ

ながるように誘導したいです!!(笑)

合気道の発祥はお侍さんなのに全然興味持ってくれませんけどね・・(^^;)

ツナのおにぎり持って「渡辺綱と一緒だからこれ!」、仏像のガチャポンは「持国天」

だったのですが、「地獄に似てる!!」(違うし・・)と喜んでいるポンすけを見てい

ると子どもってほんとに面白い、と思ってしまいます!

私は相変わらずカッっとなって怒ってしまいますが、ぽんの方は「そうだね」と

冷静に反応してきて、ウギャー!!となるかと思っていたこちらが反省してしまう・・

といった日々。子どもは親をおいて成長しますね。精進精進!!

 

 

 

 

 

 

 

 


飽きっぽい子、我慢が苦手な子に根気をつける方法

2014-01-13 18:14:29 | 子どもの個性と学習タイプ

変えられる性格、変えられない性格 2の記事で、

「『ねばり強さ』が低いことは遺伝の影響を受ける因子だから、変えることは難しい」

という話を書きました。

変えることが難しい気質を、叱ったり責めたりするのは無意味ですが、

ねばり強くない子はない子なりの、根気との付き合い方が必要だと思っています。

 

というのも、現在は、飽きっぽくて我慢が苦手な子が、さらに飽きっぽく、

さらに我慢が苦手になるような物があふれかえっているからです。



テレビゲームや携帯ゲームやテレビは、自分から働きかけなくても、

次々、目新しい刺激を与えてくれます。



遊園地もショッピングモールも、飽きるという気持ちを味わう間もなく、

楽しい刺激に満ちています。



話がちょっと脱線しますが……

うちのダンナは、もうかれこれ10年あまり、

校庭キャンプやジュニアリーダーの養成のボランティアなどをしているのですが、

年を追うごとに、子ども向けのイベントに対する周囲の大人たち(親御さんや

スタッフなど)の捉え方が変わってきていて、困惑しているようです。

 

子どもたちが自分たちでテントをたてたり、自分たちで料理をしたり、子ども同士で相談

させて自主性や社会性や思考力を育むことが従来の主旨だったのに、

「準備は大人がしてあげて、子どもたちには楽しんでもらったらいいのでは?」

「料理は危ないから親がしてあげたらいいのでは?」

「塾があるので、お友だちと相談する時間には出られません。」

「もっとこうしたら、楽しいし、ラクになるのでは?」

といった意見がたくさん出るようになって、

イベント当日に、勝手に手出し口出しをする人も増えて、

自主性や社会性を育むという主旨は忘れ去られて、

単なるお祭りと化してきているそうです。



本当なら、ちょっとめんどくさくてブツクサ言う場面があってもいいはずなのです。

クレームが出ない、楽しいだけの世界を作り出そうなど思わず、

「ちょっとしんどいけど、面白さがそのしんどさを忘れさせてくれる」

「友だちと一緒だから、嫌だったこともがんばって我慢できた」くらいの体験こそ、

子どもの心身を鍛えてくれるはずだからです。

 


先日いただいたコメントでは、学校の授業も、

子どもの自主性や社会性や思考力を育むことより、授業がよりスムーズに脱線しないで

進行し、子どもたちが考えたり悩んだりしないで楽に参加できることを優先しているよ

うな内容だったそうです。

 

コチラです↓

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娘が小学一年生になり、授業参観がありました。「自分の顔をかきましょう!」という

テーマの授業でしたが、配られた画用紙には卵形の顔の輪郭が描いてありました。

「まず、色を塗ります。肌色を横に持って~わたぬりと言います。次に白をわたぬりし

ます」と先生のする通りに生徒は描きます。先生が見て、色が濃すぎた子は先生が勝手に

ティッシュでふきとります。

「次に目を描くよ~隣の人の目を見て~こんな風に描いて~」と先生は黒板に写実的な目

を描いてみせます。私は思わず「隣の子の目を見て描くなら自分の顔じゃないじゃん!」

と心の中でつっこみをいれましたが(笑)子供は素直ですね~。誰も文句を言わず先生の

言うとおりに描いて絵は出来上がりました。みんな同じような特徴のない顔です。

私は「はあ~!」と疲れて、「何?この授業!」と怒りがこみ上げてきました。

一年生の授業って昔からこんなものなんですかね?自分の時の記憶がないのでわからない

のですが。

こんなつまらない、それこそ苦行のような事をもくもくと五時間目まで続けられると勉強

嫌いになってしまわないか心配です。

算数のプリントも絵の中の動物を数えるだけの問題なのに先生が黒板に書いた通りに写さ

ないとダメらしいです(涙)。休み時間に折り紙をして良いのですが、一日2枚しか使っ

たらダメらしいです(涙)。今の小学校は何なのでしょうか?

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こうした子どもをめぐる環境の変化のダメージを特に受けやすいのが、

もともと「ねばり強さ」が低い子どもです。


飽きっぽかったり、我慢が苦手でも、

友だちと駆け回って遊ぶ時間がたっぷりあれば、体や心が鍛えられて、

少しずつ我慢ができるようになるでしょうし、

お手伝いをしたり、物作りをしたりする時間があれば、

飽きずにがんばれることも増えることでしょう。


でも、それが難しい昨今です。


使う道具も、使い方など練習しなくても、「スイッチ オン」で動く便利なものばかり。

そうした便利で刺激的でラクで楽しい環境の中で、

我慢が苦手な子たちが我慢を強いられる場面といったら、「お勉強をするときだけ」と

なってしまいます。

 

「ねばり強さ」が低く飽きっぽい子というのは、好奇心が強くて、

目新しいものに強く惹きつけられる子が多く、

次々新しい刺激を求めるので、頭の回転が速い子も多いです。

ですから本当なら、決してお勉強が嫌いなわけではないのです。

でも、便利で楽チンな世界で、唯一、勉強だけが自分に嫌な我慢を強いてくるとなると、

そうした子たちの頭の中では、

「お勉強」=「我慢すること、苦痛」

とイコールで結ばれてしまいがちなのです。

 

それこそ、ほんの一瞬でも考え込まなきゃいけないものは、

「いやいやいやいやいや!」とオーバーなほど毛嫌いして、

いつもいつも楽しくラクな時間だけ求めようとする習慣が身についている子もいます。

 

それで私は、そうしたタイプの子たちには、お手伝いや工作といった地味な活動の中で、

できるだけ飽きずに作業をやり遂げる力を養うようにしています。

 

多くの親御さんは、我慢が苦手な子に宿題をさせるのがあまりに大変なものですから、

「やりなさい、やりなさい」と叱って勉強させて、勉強の時間に苦痛を味合わせて、

その埋め合わせをするように、残りの時間をゲームやテレビで埋めてしまいがちです。

でもそれだと、どんどん勉強が悪者になるばかりです。

親御さんの心に、「遊びにエネルギーを使ってもしょうがない。

少しでも勉強に力を入れて!」という気持ちがあると、

なおのこと、勉強が悪者になりがちです。

 

しっかり何かに関わって、

集中力を継続する体験を、遊びや工作やお手伝いの場でさせていけば、

「ねばり強さ」が低い気質は変わらなくても、勉強だけを極端に拒絶することは

なくなってきます。

 

自分の手を使って何かをして達成した体験がいろいろあると、

勉強でもそれを生かして、勉強の面白い面に気づいたり、工夫したりしながら、

やるべきことはこなすようになってきます。

 

うちの子たちも、「ねばり強さ」が低い子で、

息子は大のテレビゲーム好きでしたから、これはキケン!と……。

昭和時代のような生活の不便さや地味な活動をわざわざ取り入れて、大切にするように

していました。

 

「買えばすむものも、作ってみる。

便利な道具があっても、あえて手間のかかる道具を使う。

遠出も自転車で行く。

友だちと遊ぶ時間をたっぷり取る。

たくさん失敗して自分で考えさせるため、

やりたがることは何でもやらせて、細かく干渉しない。

好きなことはとことんやらせる。」

といったことです。

 

うちの家族はみな、我慢強さからほど遠い気質なのですが、

そうした生活のおかげで、それぞれが自分のやろうと決めたことを途中で諦めたり、

放り出したりせずに、ずっと続けていける力がついていると思います。

 

 

ブロック講座 10日目  (それぞれの子にとっての「魅力を感じるレベルの難しさ」) 1

の続きではあるのですが、

ちょうど、飽きっぽい子我慢が苦手な子に根気をつける方法  の記事に

「他のタイプについても教えてください」という質問をいただいていたので、

ブロック講座での出来事を書くついでに、こちらも書かせてください。

 

この日のブロック講座に参加してくれていた3歳5ヶ月の●くんは通常レッスンにも通っ

てくれている子です。

ものをじっくり考えることと工作が好きな落ち着いた性質で、思考が優れている子だ

と思っています。

●くんが飽きっぽく我慢が苦手な状態に陥るのは、

先が読めているような易しくて単調な作業をする時です。

 

 

 

 

そんなわけで、ちょっと難しい課題でも、できるまでしつこくやり続ける●くんなのに、

同年代の他の子らが面白がって取り組んでいることに見向きもしないで、うろうろして

いる時もあります。

そんな時はお母さんが●くんの名前を読んでいても、自分で刺激的な面白そうなものを

見つけることに夢中になっています。

 

でも「これはちょっと頭を絞らなくてはならないぞ」というような物作りの見本を目に

するとすっ飛んできて、身を乗り出して見ています。

「やってみる?」と聞くと、真剣な表情でこっくりして

作り上げるまでじっくり関わります。

 

また算数の問題に答えるときも、

他の子らがさっさと答えを言ってしまって、

●くんも同じ答えだと思っているように見えるときも、

「あっ、言われちゃった」という顔をして考えるのをやめたりしないで、

それからも慎重に考えていて、正しい答えを言います。

 

●くんのお母さんはとてものんびりした大らかな子育てをしている方なので

心配はいらないのですが、

●くんのように考えること自体に強い喜びを感じる子らを、

大人が「頭のいい子の親として評価されたい」というエゴイスティックな欲望を満足させ

る道具として競争に駆り立てると、攻撃的になったり、飽きっぽくなったり、我慢が苦手

になったりするのを見かけます。

大人は安易に「考えることが好きなんだから、お勉強のようなことをさせて、よい点数を

とらせたらいい」と感じるかもしれませんが、

とても思考力の高い子の場合、最初から白黒つけて問いと答えが結びついているペーパー

上の問題よりも、五感をフルに使って多面的に深く考えていくような活動を好みます。

 

そうした体験の蓄積した上で、いずれ大きくなったら、

ペーパー上で抽象概念を練っていく作業を心から楽しむようになるのだと思います。

 

 

直感が優れているの飽きっぽさ、我慢の苦手さと 根気をつける方法について書いた記事。

直感が優れた子に「アウトプットする手段」を設けるということ

 

感情が優れているの飽きっぽさ、我慢の苦手さと 根気をつける方法について書いた記事。

感情が優れている子とお勉強 1

感情が優れている子とお勉強 2

感情が優れている子とお勉強 3

感情が優れている子とお勉強 4

感情が優れている子とお勉強 5

感情が優れている子とお勉強 6

感情が優れている子とお勉強 7

 

「飽きっぽい、我慢が苦手」といっても、

感覚が優れている子の飽きっぽさや我慢の苦手さと

直観が優れている子の飽きっぽさや我慢の苦手さと

感情が優れている子の飽きっぽさや我慢の苦手さと

思考が優れている子の飽きっぽさや我慢の苦手さとでは、

種類が異なるように思います。

ですから、どのような理由ですぐに物事を放り出しているのかよく見極めて、

対応をちょっと変える工夫が必要だと思っています。



感覚が優れている子は、本来、我慢強くコツコツがんばれる子が多いですが、

美意識が強くてプライドが高く、完ぺき主義なので、

自分の不器用さが原因で他の子より見劣りする作品が生まれたり、

字がくねくねとゆがんだりするのが我慢なりません。

 

「みんなと同じレベル」にできるくらいではダメで、

いつも周囲の人よりダントツですばらしくなくてはならない……くらいの期待を、自分にかけがちです。

 

といっても、

他の人の評価はまったくといっていいほど気にかけないことも多いのですが、

大人の作った完璧な作品とか、お手本の字とそっくり同じにできないから、

努力なんてしてもムダという気分にとらわれて、投げ出すことがよくあります。

 


感覚が優れている子たちは、

器用さに関わらず美しい仕上がりを楽しめる作品を好みます。

ブロックで作るときには、色の配分に気を配りながら、

直方体やピラミッド型といった均等な形をよく作っています。


感覚が優れている子たちは、先の見通しが立つものが好きです。

見通しが立つ課題で、自分の実力にあったものならとても集中力を示します。

同じことばかり繰り返したり、お手本の真似ばかりしているようにも見えますが、何度も

同じことをやり通した後では独創的で大人顔負けの完璧な作品を作り出します。


勉強では「算数の文章題を絵を描きながら考えなさい」といった課題はとても嫌がる子が

多いです。

具体物を操作して、数の世界の秩序の美しさを感じ取りながら学ぶのはとても好きです。

新しい未知の事柄には不安を感じやすいので、家庭の中でさまざまな概念に事前に触れさ

せておくことが、強い拒絶を防ぐコツだと思います。


感覚が優れている子が、飽きっぽく我慢が苦手になっている場合、

自分に対する自信が揺らいでいる可能性があります。

また周囲が期待して子どもにさせようとしていることと、

本人の気質がずれている場合があります。

 

私が気にかけているのは、

直観が優れている親御さんが、感覚が優れている子を育てているケースです。

直観が優れている親御さんは、どんどん新しいことを取り入れるのが好きで、

子どもにも、さまざまなことをやらせようとし、さまざまなものを与えて、

子どもがそれらに次々と興味を示し、新しい才能を発揮してくれることを望みがちです。

 

感覚が優れている子は、

見たり聞いたりする分には、とてもたくさんのことを受け入れる準備がありますが、

自分で何かするときは地味なほどに同じ作業にこだわります。

 

すると、そうした生活の中で、

「外の世界や他の子どもの中にはすばらしいものがたくさんあるけれど、

自分はつまらなくて価値がない」と思い込む感覚型の子がけっこういます。

そして、親御さんが子どもが同じことを繰り返すと進歩がないように感じて嫌がるため、

実際に訓練が不足して、

あれもこれも上手にできずに自信がない子に育ちがちです。

すると、自分では何もせずに、「これはつまらない」「こんなのしても意味がない」

「あの子の作っているの変」「○ちゃんの字がゆがんでる」といった

自分以外のものや人を評価することだけに力を注ぐようになることがあります。


感覚が優れている子たちは、もともと根気がある子が多いので、

そうした子が、すぐに飽きて何でも放りだす場合は、

環境や周囲の大人の態度を見直す必要があると思っています。

 

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直観が優れている子についてお話しますね。


直観が優れている子たちは、自分のアンテナに引っかかったものに次々飛びつきますから、

赤ちゃん時代から飽きっぽくて、我慢が苦手な子が多いと思います。


チャレンジャーで飲みこみが早いので、周囲より一足先にできるようになるわりに、

作業が雑だったり、すぐに飽きて放り出したり、

説明を聞くときに他のことに気を取られていたりするので

最後の仕上がりがいまいちに終わりがちです。


そのため始終叱られて、自分に自信を失って、

いっそう飽きっぽく、いっそう我慢が苦手になっていくケースがよくあります。

 

直観の優れている子たちは、感覚の優れている子たちとは正反対で先の見通しが立ったと

たんに、やっていることへの興味を失うことがよくあります。

ですから実際やってみるまでは、「やらせて!やらせて!」と大騒ぎするわりに、目新し

さがなくなると、たちまち見向きもしなくなります。


また既存のおもちゃや教具も、お手本通りに遊ぶことはまれで、

たいてい自己流にアレンジして好き勝手に遊びます。

 

まさしく「飽きっぽくて我慢が苦手」を絵で描いたような直観が優れた子たち。

このタイプの子たちに、根気を身につけさせるには、3つの大切なポイントがあると

思っています。

 

一つめのポイントは、新しいおもちゃや新しい服を次々買い与えたり、

刺激的な遊園地やショッピングセンターなどへのお出かけは控えるということです。

直観が優れている子たちが、一度「もっと、楽しく……」「もっと面白く……」

「もっとステキに……」と受動的な態度で、何か買ってもらったり、お出かけ先で見たり

聞いたりすることで直観を満足させることを覚えると、際限なく新しい刺激を求めだすか

らです。

 

子どものアンテナに引っかかる、楽しくてやってみたいことのハードルはどんどん上っていき、

お勉強や地味な作業は、どれも無意味でつまらないことのように感じるようになります。


もう一つのポイントは、想像力や創造力を使ってどんどん加工していけるような素材で、

工夫して遊ぶようにすることです。

紙工作やブロック遊び、積み木遊びなどが最適です。

 

そうしたものに、科学遊びのグッズ(プロペラや空気砲やプッシュライトや鏡など)を

組み合わせたり、歴史や宇宙などの知識を取り入れたりして、常に新しい未知の部分を

取り入れて、知的好奇心を満たすようにします。

 

すると、それまで困りものだった飽き性の一面が、多方面への興味の広がりを統合して、

創造的に問題解決に生かしていく態度へと変わります。


三つめのポイントは、はじめるまでの「何が何でもやりたい!」というエネルギーを

根気のいる作業にあてることです。

直観が優れている子たちは、まだやったことがないものが箱にしまってあると、

どんな苦労もおしまぬ勢いでやりたがるものです。

そこで、やらせる条件として、ちょっとした手間のかかる作業をさせるのです。

「もし、~をきちんとやりとげたら、してもいいんだけどな。でもきっと大変よ。

やめておいてもいいよ。」といった言い方をすると、他のタイプの子たちはたい

てい尻込みして諦めるのですが、

直観が優れている子たちは未知のもの知りたさに、たいてい飛びついてきます。

もともと我慢が苦手な直観タイプの子に、

ねだられたからといって高価なものを買い与えるのはムダそのものです。


「あれもこれもがんばるからやらせて~!」と言わせるのには、

ドライバーを使って電池を入れ替えるとか、新しいじょうろで花に水をやるとか、

お家の壁にフックを取り付ける仕事といったもので十分です。

「やりなさい」と指示するのでなく、「今から面白いことするんだけどやってみたい?」

と誘うときっとやりたがるはずですよ。

 

続きを読んでくださる方は下のリンク先へどうぞ


飽きっぽい子、我慢が苦手な子に根気をつける方法 5

飽きっぽい子、我慢が苦手な子に根気をつける方法 6

飽きっぽい子、我慢が苦手な子に根気をつける方法 7

飽きっぽい子、我慢が苦手な子に根気をつける方法 8

飽きっぽい子、我慢が苦手な子に根気をつける方法 9



その子らしさに導かれて成長する

2013-12-28 17:57:54 | 子どもの個性と学習タイプ

先日、ベビーのグループレッスンに1歳代から通ってくれている●ちゃん(3歳)のお母さんから

こんなうれしい報告をいただきました。

●ちゃんは出産予定月より数ヶ月はやく未熟児として生まれました。

そのため月齢は生まれた日から数えずに、お腹のなかにいたはずの数ヶ月分を引いて計算していくように

病院から指導されていたそうです。

未熟児で生まれた子は運動面や言葉や知能の発達がゆっくりになりがちだからということで、

定期的に検診に通い、発達の検査を受けておられます。

今回のうれしい報告というのは、

発達検査の後で、「運動面でも知的な面でも非常に発達が良好なので、

もう未熟児として生まれた分の月を引かずに、生まれた日を誕生日として

月齢を計算してください」と指導されたという話です。

数ヶ月の発達の遅れどころか、

言語面でも巧緻性の面でも、1年以上月齢が上の子の能力をしめしているので、

「未熟児で生まれて、こんなに複雑なことまでおしゃべりし、いろんなことができるなんて!

ととても驚かれたのだとか。

わたしも、まだハイハイで動き回っていた時期から●ちゃんの成長を見守ってきましたから、

それを聞いて、とてもうれしかったです。

(↓今回のレッスンの写真を撮りそびれたので、過去の●ちゃんのベビーのレッスンの様子の写真を

載せますね。)

 

 

子どもの知能を高めたり、発達をよくするために、

あんな方法がいい、こんな方法がいい、といろんな情報が飛び交っていますよね。

でもわたしは、そうして外から情報を集めてくるよりも、

目の前の子どもの「その子らしさ」としっかり付き合うことで、

その子の持って生まれた潜在能力は最も伸びると

感じています。

 

遊びにしても、工作にしても、会話にしても、何かするたびに

その子らしさはさまざまな形で表現されています。

そこで、親御さんのアンテナが、

「他の子よりできるか、上手か、参加しているか、失敗しないか、ママ友との関係」といった

ことにばかり向けられていると、

その子らしい個性の輝きに気づけけませんよね。

いつの間にか、その子らしさは曇っていくのではないでしょうか。

 

今回の記事で紹介した●ちゃんは、

「自分でやりたい」という気持ちが強い子で、はっきりしたひとつの目標を定めて

練習して、完璧にできるようになる達成感を求めるタイプでした。

 

「自分でやりたい」という気持ちが強いとひとことでいっても、

子どもによって

「どんなことがしたいのか」「どんな風にしたいのか」

「何を得意としているのか」「何を訓練によって洗練させていこうとしているのか」

「どのような接し方があっているのか」

「どのような環境が適しているのか」

千差万別です。


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少し前に、発達障がいの子の記事に対して次のような質問をいただいていました。

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奈緒美先生のブログだったかどうかははっきり覚えてないのですが、

“人の気も知らず、エジソンだなんだ言うのはやめてくれ”といった

親御さんの記事を目にしたことがあるのですが(断片的でゴメンナサイ)

こういったことに関してどのようにお考えですか?

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ちまたで「エジソンやアインシュタインが発達障がいだったのでは?」という話題が

よく取り上げられるため、

それに関して過敏に反応する方もいらっしゃるのだと思います。

 

発達障がいの子はどの子もエジソンのような天才的な能力を発揮する

ことができるとまで言ったら、極端で問題のある意見ですよね。

 

でも発達障がいのある子の「こだわり」や「過集中」といった特性が、

最もよい形で使われたなら、

それはその子の潜在能力を大きく開花させることにつながると

思っています。

わたしは発達障がいのある子ほど

「その子らしさ」に気づいて、それを支えることで伸びていく子らはいない

と感じています。

 

それは発達障がいのある子たちの身近にいる方の多くが

実感しておられることだとも思います。

 

エジソンやアインシュタインのようになれる子がいると言えばオーバーでも、

「エジソンやアインシュタイン並みに

 

寝ても冷めても○○のことばかり……それにどれだけ情熱と時間を

注げるかという点では世間で言う天才に引けを取らない……

 

という発達に凸凹のある子らは

一般的なバランスの取れた発達をしている子の

何十倍にものぼるのではないでしょうか。

 

バランスが悪い、凸凹がある、とは

裏を返せば、そういうことでもあるからです。

 

 

それが天才を生み出す確率にどう影響するかまでは

わかりません。

でも、そうした発達に凸凹のある子の凸部分やこだわることや、過度に集中することに

スポットライトを当てて、

「その子らしさ」を大事にしながら成長を見守ることで、

その子の成長する力は加速すると感じています。

 

「その子らしさ」や成長の可能性の芽は、

子どもの好きなことや喜ぶことで見つかるのはもちろん、

親御さんの目からすると心配しか感じ取れないようなシーンでも

たくさん見つかります。

 

たとえば、2、3歳の自閉っ子がお友達から

何かを奪い取りにいくことを繰り返すとします。

そんなシーンも、

客観的にふたつの視点から眺めれば、

子どもの成長のための鍵を見つけることができるかもしれないのです。

 

ふたつの視点というのは、

ひとつは、見たままに、

「他の子から物を奪い取る」という行為を止めに行って

「お友達のものを取っちゃダメ」と教えたり、相手の子を気づかったりすること

で、

たいていの方がそうした対応に追われて疲れ果ててしまっている

ことでしょう。

 

もうひとつの視点は、しつけはしつけとして対処しつつも、

奪い取りに行こうとする行為も、「その子らしさ」として

コミュニケーションを避けがちな自閉っ子にしては

成長のきっかけになるかもしれない、と捉えるのです。

 

 

「この子は何に惹きつけられて。繰り返し取りに行こうとしているんだろう?」

 

「物を取るという行為とはいえ、お友達に接近することは嫌でない様子。

もめない形で遊びを成り立たせる工夫はできないか?」

 

「この子がしつこくこだわる物の色は?素材は?

触った感触は?音は?動きは?お友達のどのような持ち方に

欲しい気持ちが刺激されているの?」

 

「この子の物を取りに行こうとするエネルギーをもっと肯定的な活動に

変化させられないかな?」

 

「物を奪おうとする時に、大人が相手をして、じらしたり、

アイコンタクトを取ったり、やり取り遊びのきっかけを作れないかな?」

 

そうした問いを自分にかけながら

子どもの姿を眺めて、いろいろと子どもへの働きかけを

ためしてみるとよいのではないでしょうか。

 

「その子らしさ」がなかなか見つからないようなタイプの子も

少し視点を変えて子どもの活動を眺めることで

新たな発見があるものですよ。

 

最初の質問からちょっと話が逸れてしまいましたね。

「人の気も知らず」というのは、親御さんの言葉なのか、

発達障がいの当事者の方の言葉なのかはわかりませんが、

おそらく辛い現実にたくさん遭遇されたのだと思います。

でも、凸凹のある人が生き辛く能力を発揮することができないのは、

ハンディーのせいだけでなく、

凸凹を許さない周囲の不寛容にも原因があるはずです。

 

シアトルに来て、こちらで暮らしている方に聞いたところ、

アメリカではADHD等の発達障がいを持った方が社長になっている率が

とても高いのだそうです。

アメリカでは人の能力に凸凹があることを

そのままでよしとして認めているお国柄があって

そうしたことが可能になっているという話でした。

アメリカにはアメリカの問題点もあるのでしょうが、

「人間、少しくらい凸凹があったっていいんじゃないか?」という

おおらかな考え方が、ハンディーがあってもがんばって努力していく力のもと

にもなるのではないか、と感じました。



『子どもの学力の基本は好奇心です』という本

2013-12-07 08:59:08 | 子どもの個性と学習タイプ

 

 

『子どもの学力の基本は好奇心です』(汐見稔幸著  旬報社)という

幼児や小学生の子を育てている親御さんにお勧めしたい本があります。

読むうちに子どもの教育に関することがシンプルに整理されて、

迷いが晴れるかもしれません。

 

この本にこんな話が載っていました。要約して紹介しますね。

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東京大学の数学科の教授があるインタビューのなかで、東大の数学科の学生と

アメリカの大学の数学科の学生と、どっちが優秀かという話が出てきたそうです。

その先生は入学時点では東大の学生が優秀かもしれないが、

4年間教育すれば、ほぼ例外なく逆転すると言ったそうです。

 

なぜ東大の学生が伸びないのかといわれ、先生は

「感性が育っていないからだ」と答えていたそうです。

こういう感性とは、「なんでだろう」とか「フシギだなぁ」とか「こういうものを論理で

あらわせないのかなぁ」というように、

なにかに感じて、そこに問題を見つけ、こだわっていくことらしいです。

数学とは、計算が複雑になったものではなくて、さまざまな現象を論理や数式で

あらわす、たとえば美意識というものを論理化できないかとか、こういうものを美しいと思う人と思わない人と

どこがちがうかを数式であらわせないなどと考える学問。

その根っこは不思議がりおもしろがる感性です。

 

「感性をそだてるためにはどうしたらよいですか」という質問に、

その先生は、「それは簡単だ。小さいときにあまり勉強しないことだ」といったのだとか。

幼いころから受験勉強のようなことをさせられて、正しい、間違い、という紋切り型の思考をおぼえれば、

ワンパターンにしかものごとが考えられなくなり感性の芽をつんでしまうそうなのです。

 

豊かな感情をたがやし、豊かな感情をたがやすこと、「おもしろそう」「なぜだろう」「知りたい、やってみたい」

といった好奇心が学力を伸ばす原動力なのです。

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今日は2歳になったばかりの子どもたちのレッスンでした。

そんな幼い子らも、、「おもしろそう」「なぜだろう」「知りたい、やってみたい」に

突き動かされるように活動しています。

ひとりひとりの子の発しているものをどう感受するか、

どのようなフィードバックを返していくといいかを親御さんに伝えています。

 

たとえば、2歳の◆くんは、お友だちの●くんがお母さんが作ってくれたトンネルに手を伸ばすために、

「だめぇ、こわれちゃう。こわしちゃだめぇ」と大騒ぎしていました。

遊びを観察していると、電車をぴったりそろえて並べて、

それはうれしそうにしていました。

「数や形やサイズがきちっと秩序だった並び方をしているのがうれしそうですね」

と言いながら、◆くん同様に秩序を好む感覚が優れている子の親御さんが

子どもにどんなブロック作品を作って遊んであげていたのか

駅の一部を作って見てもらいました。

すると合点した◆くんのお母さん、下のような歩道橋つきのトンネルを作ってあげました。

◆くんは大喜びです。

「だんだん高くなってる」とか「同じ長さでそろっている」とかいった

目で感じとる美しさを実感していると、

数学的な感性も育ってきますね。

 

 

工作タイムに作った船です。

引っぱるとビーズがカラカラ動きます。

気になって透明のコップ部分をはがしてしまい、

青いポリひもを振りながら、◆くんは「雨!」と命名。

お友だちの●くんは、ハンドルを回すとボールがのぼっていく仕掛けが

面白くてたまりません。

自分で何度も回しながら、ボールをつかまえてみたり、段の途中に乗せてみたりして、

「不思議だなぁ」という表情をしながら熱心に遊んでいました。

こうしたささやかな遊びを通して、子どもの好奇心ははぐくまれていきます。


個性と才能を伸ばすタイミング

2013-12-04 21:22:50 | 子どもの個性と学習タイプ

ブロックあそびが大好きな4歳8ヶ月の★くん。

お父さんお母さん、おじいちゃんおばあちゃんに目に入れてもいたくないほどの

可愛がられようで大切に育てられてきたこともあって、

ちょっと動くたびにシャワーのようにたくさんの言葉を浴びて過ごしていました。

そうした言葉かけに素直に従う一方で、創作物や遊び方からは

思考力の高さがうかがえるのに、自分から発する言葉がすくないことが

気になっていました。

そこで、極力、大人から発する言葉を減らしていただいて、

★くんの発するものをしっかり受信するように努めていただいていました。

 

今回のレッスンでいっしょに遊ぶうちに、★くんの口にする言葉も

アイデアの質も他人の意見を取り入れる柔軟性も問題解決能力も

前回までのレッスンでは考えられないほどしっかりしたものになってきていることに

気づきました。

それを付き添いで来られていた伝えると、★くんのお父さんも

それを実感していたそうで、

たくさん声をかけ過ぎるのをやめただけで、こんなにも

しっかりと自分の意見を言い、考えを展開していくようになるのかと

驚いていたそうなのです。

もちろん、それには、★くんの頭脳活動を好み、

細部にまで気を配るという本人の才能によるところもあります。

でも、そうした個性的なものが芽をだしはじめるのは、

大人が子どもを自分の好きなように動かすのを控えた時でもあるのです。

★くんは電車の駅作りに励んでいました。

電車の長さに合わせて、ていねいに駅を作りながら、

自分の作った駅がどのようなサイクルで運営されているのか

説明してくれます。

自分の考えをしっかり表現する力がついてきた★くんですから、

今、身近な大人が★くんにどんな見本を見せてあげると、

★くんの世界が広がるのかというと、次の2点だと思いました。

 

①図鑑や本の知識を自分の活動に取り入れるためのお手本をしめす。

●自分のしている活動をより広く多角的な視点から見えるように

●問題解決の方法を身につける

 

②★くんの今の敏感期に気づいて、それに適した活動が

行いやすいようにサポートする。

 

★くんが、駅を作っていたので、

自分の作品作りに新しいアイデアを取り入れるために図鑑を見る時の

コツを教えることにしました。

 

まず、どんな図鑑を見るかです。

大図解のように機械などの内部の仕組みがくわしい図鑑、

駅のなかのさまざまなものが載っている図鑑など、

いろいろなものがありますね。

子どもと大きな本屋や図書館で選ぶのも楽しいです。

 

★くんは、駅のイラストの階段を目にしたとたん、

自分の作っている駅を地下にする設定が浮かんだようで、

テーブルの上に切符売り場や改札口があって、

そこから階段を下りてきて、地下が駅になっていて、地下にもさらに下に行くための階段

があるんだ、と説明しました。

そしてユニークな構造の作品を作りだしました。

 

★くんは自分で考えて行動に移すことが好きな

子です。几帳面で完璧主義の性質ため、

一度やりはじめたことは、細部に至るまで自分のイメージ通りになるように

根気よくていねいに関わります。

 

そのように自発的に活動することができる長所の反面、

他人の意見に耳を傾けず、自己流のやり方にこだわるため

遊びも学びもワンパターンに陥りやすいきらいもあります。

 

わたしは★くんの個性に配慮して、

自分で新しい知識やアイデアを開拓していけるような

本や図鑑との関わり方を身に付けさせたいと思いました。

 

子どもに何かを教えるには、「タイミング」というのが

重要だと感じています。

幼児というのは、いつも一生に通じるような技能を習得するための

敏感期にいるものですから。

今、その子が何の敏感期であるのか、

よく把握した上で、適切なタイミングで教えるのでなければ、

何も教えない方がまし……だと感じています。

子どもは放っておいても自分で学びますし、子どもの自発的な行動は

敏感期によるものがほとんどだからです。

この日、★くんの2歳1ヶ月の妹さんも教室に来ていたのですが、

この子はちょうど数の敏感期に入りかけているところらしくて、

ひたすら椅子を並べたり、重ねたり、数を1対1対応させることに

熱中していました。

★くんは、がんばればできそうなレベルの

「ふたつ」のことに同時に注意を向けながら、

完璧にできているかどうか確かめられて

達成感が味わえる活動に

対して非常に敏感な時期にあるようでした。

文字でしたら、「はみださないでなぞること」と「書き順通りにすること」の

ふたつに注意して作業をすることに

面白さを感じる時期ということです。

こうした敏感期のあらわれは、子どものありのままの姿を認めて

自然な成長を大切にすればするほど、はっきりと出てくるものだと実感しています。

「2歳の子に字の書き方を教えよう」「書き順にも注意させよう」といった

敏感期を無視した大人主導の教え方をしていると、

敏感期と思われるものがほとんどなく、何事にも自信がないか、

攻撃的なほどのがんばり方をするかのどちらかで、最終的に無気力になるか

過剰に他人の評価にこだわる性質になりがちだと思います。

(図鑑との関わりの教え方については次回に)

 

算数の学習では、「じゃんけんをする」

「勝ったらマスに色を塗る」

「折り紙の16マスを塗り終えたら、それぞれの色の数を

数えて勝ち負けを確かめる」という3つの作業をきちんとこなすことが要求されている活動を

心から楽しんでいました。

こうした学習も、カリキュラムだから……とさせるのではなくて、

その子の敏感期によるタイミングと好みの個性に配慮した上で誘うのがいいと思います。

図鑑の話に戻りますね。

★くんは自分の頭のなかのイメージだけで繰り返し

同じことがしたいタイプです。

ですから、まずは自分でしたい活動を存分にやって、

ちょっと手持ちぶたさしたあたりで、それまでしていた活動に広がりや意味を持たせてくれる

ような図鑑を見せてあげるといいのかもしれません。

 

★くんといっしょに見たのは『はっけんずかん のりもの』と『大図解 21世紀こども百科』でした。

『はっけんずかん のりもの』は乗り物の内部の様子を、ポップアップ絵本のように

めくることで見ることができます。

 

工作で乗り物内部を作りたがる子に適しています。

★くんは駅の様子を作りたがっていたので、図鑑の駅の絵を、

「作ったら面白そうなものはないかな?」「いいアイデアはないかな?」

と言いながら、眺めました。

 

★くんは階段の絵を見つけて、最初、自分の作っている駅は階段はつけられない

と言っていました。

確かに、写真の状態の時には1階だけの平面しか

イメージできないですね。

でも、そこで、テーブルを利用することを提案すると、たちまち、★くんの想像の世界は

上にも下にも広がりだしたようです。

作っている駅を地下鉄ということにして、テーブルの上に切符売り場や改札口があって

地下に向けて階段が続いている様子がどんどん浮かんできたようなのです。

地下からさらに見えない地面の下に向けての階段も

作っていました。

 

わたしは、さらに新しく取り入れるアイデアはないか

図鑑の絵を眺めてみるようにうながしました。

吊ってある丸い時計があります。

「時計があるね。作れないかな?」とたずねると、

★くんは、「無理!無理!作れないよ」と興味なさそうに駅の屋根の続きを作りはじめていたのですが、

「でも、ほら、テーブルのところから吊り下げたらどう?」とさらに言うと、

「そうだ、セロテープで吊ったらいい!」とすっかり乗り気になって、いっしょに時計作りをすることに

なりました。

紙コップの底をはさみで切り取って、針や数字を書いて、

駅の時計に。

★くん、すっかりこの作業に夢中になって、帰宅する時間が来ても、

「もう1個!もう1個!」とコップの底を切り抜いて、好きな絵柄を描いて

遊んでいました。

この作業は、最初に力を入れて紙コップに切り込みを入れなくてはならないのですが、

その力加減が大人でもむずかしいのです。

 

ちょっとはちゃめちゃな遊び方をする動きがダイナミックな子たちは、

こうした作業をすることに躊躇しないのですが、★くんのように

几帳面で完璧主義の子にはハードルが高いものです。

 

でも、子どもって、そんな風に自分にとって限界すれすれにあるような作業を

「えいっ」とばかりにやってみて、うまくできた時、

「もっと!もっと!」としつこいほど夢中になることがあるのです。

 

★くんにとって大事なタイミングですから、

「紙コップがもったいない」などと思わず、

本人がやりたがるだけ切らせてあげることにしました。

 

★くん、自分の頭で考えて、自分の力で作りながら、

適度に他人のアドバイスを受け入れたり、

図鑑などから新しいアイデアを取り入れていくことが

できはじめているようです。

 


感覚を使って考え、過程を大切にする子。直観を使って考え、目的に焦点を合わせる子。

2013-09-19 20:34:19 | 子どもの個性と学習タイプ
過去記事です。

「メイクンブレイクのゲームする子?」とたずねると、

3歳6ヶ月の★くん、●くん、4歳0ヶ月の☆くんの3人が手を挙げて

集まってきました。

さいころを振って、その目に合わせてタイマーを合わせて、カードに描かれている

立体パズルを作るゲームです。

 

★くんと☆くんが、簡単レベルの課題のカードでチャレンジ。●くんの番になったとたん、☆くんが

積み木を渡すのを嫌がって一悶着。

 

そこで●くんには、メイクンブレイクによく似ているアングリーバードのゲームをしてもらうことにしました。

アングリーバードのゲームは課題のカードに合わせて積み木をくみ上げるところが

メイクンブレイクと同じで、

作った積み木の上に設置した敵のキャラクターを

鳥のパチンコで撃ち落とすゲームです。

●くんが楽しそうに遊んでいると、☆くんはこれもしたくてたまらなくなったようです。

自分から謝って●くんに許してもらいました。

お友だちといっしょにしているとこうしたトラブルがつきものですが、

だからこそ、「もっとやりたい」「面白い」という気持ちも高まるし、トラブルを解決する力もついてきます。

 

☆くんは感覚が優れている子で、物とゆっくり関わる過程が大事な子です。

ですからメイクンブレイクのきれいな積み木に触れて

課題をやってみたとたん、もっと自分でやりたくなって貸したくなくなったのです。

感覚が優れている子たちは、「自分のお気に入り」を大切にするので、

貸し借りで揉めることがよくあります。

 

1歳10ヶ月の弟くん。見立てるのが上手になって、お兄ちゃんたちが飽きて別の遊びを始めても、

ずっと「アイスクリーム作る」などと宣言しては、形を作って遊んでいました。

最初に線路を作り出したのはお母さん。整然と並んだ線にうっとりして、小さな歪みを

ていねいに直していってます。

ひとりひとりの子が素材と触れ合うように遊ぶ場面では、素材を五感で味わうように集中したり、

きれいなパターンを作ったりして、このタイプの子の長所がよくわかるのです。

でも人と人との関わりの中で、その場の流れに柔軟に合わせていくのは

苦手な子が多いです。

 

その点、直感を使って考え目的に焦点を合わせる子たちは、素材とていねいに触れ合うような

静かな場面では落ち着きのなさや乱雑さが目立つけれど、

勝ち負けがあるゲームや目標がはっきり決まっている課題では

高い能力を発揮する子が多いです。

 

そのどちらもよい資質なので、苦手な分野では、それに愛情を抱いて楽しく取り組めるような環境を用意して、

得意な分野では持って生れた才能がより洗練されていくように

手助けしています。

ザリガニの脱皮した皮です。日本酒につけています。

ビンを開けて、お酒の匂いを嗅いでみて、「水じゃない、いやな匂い~」「もう一回、匂わせて!」と

ザリガニの皮以上に日本酒の匂いが人気でした。

 


子どもの個性に合わせた知的な働きかけ 

2013-02-09 16:40:03 | 子どもの個性と学習タイプ

ユースホステルでのレッスンを記録した過去記事です。

子どもはひとりひとり個性が異なります。
ですから、親がその子の個性を感じ取る感受性を高めて、
子どもにピッタリ合った働きかけをすると、
子どもの思考力や集中力が急速に高まるようになります。

ユースホステルでのレッスンは、時間がたっぷりあったので、
それぞれの子の個性にフォーカスして働きかけると、
どれほど子どもの表情が輝きだして、うれしそうに学ぶようになるのか
実感していただけました。

たとえば、今回、参加していた3歳の★くんは、
外向的感情の直観寄りの子か外向的直観の感情寄りの子のようで、
いつも朗らかでいきいきとしていて、運動能力や人間関係能力が高く、柔軟で瞬発力があって、
創造的な性質でした。

知的好奇心が強く、自発的ですが、少し衝動的で飽きっぽいところがありました。お友だちにも、大人にも自分からどんどん関わっていって、上手に遊びます。ときどき、興奮して、ふざけすぎたり、ちょっと乱暴に振舞うときもありますが、
ちゃんと加減はできているおりこうさんです。

親御さんは大らかな子ども好きな方で、★くんとの相性はピッタリでしたが、
次々と新しい知的な刺激がほしい★くんの知的好奇心を満たしたり、
この性質の子の衝動性や飽きっぽさを
どのようにして根気よく探求していく態度に導いていったらよいのか
わからない様子でした。

★くんは、動きがあって、働きかけたことに対してフィードバックがすぐに返ってくることが好きです。


★くんの話の続きの前に少し前置きをさせてくださいね。

子どもの個性に合わせて知的な働きかけ方を変えるというのは、
すごく難しいように思えますが、
ひとつ簡単なコツがあります。

何かしている子どもに
「最初に声をかけるときの内容やタイミング」に注意するということです。

どうして、「最初に声をかけるときの内容とタイミング」が大切なのかというと、
次のような理由があります。


たいていの親御さんは、

親の願望とか親の動機とか、親の目に映ったものとか、
親の内面から出てくるもので、

子どもとの会話を始めようとします。

でも、子どもはぼんやりしているように見えるときも、

子どもなりの興味のある切り口で世界を眺めているし、
子どもがしてみたいことを「やってみようかな」と考えています。

幼くても、
子どもなりの見え方とか、子どもなりの面白さとか、子どもなりの動機や価値観を
ちゃんと持っているのです。

でも、親御さんの興味や願望から声をかけられると、
まだ自分の意志や思考を保つことはできませんから、
目的を定めたり、イメージしたり、考えたりするのをやめて、
親御さんの声の通りに動こうとします。

すると、とても気が散りやすくなるし、気持ちのこもらない取り組み方をするようになります。

といっても、親だって親自身が目にしているものを子どもと共感しあいたいし、子どもにあれこれ見せてあげたい、教えてあげたいと思いますよね。もちろん、それは構わないし、子どもにも、いい刺激になることも多いです。

でも、やっぱり、最初の声かけでは、それはしてはいけないと思うのです。

あたり前のように、「みてみて、●●ちゃん」「●●ちゃん、これしてごらん」「●●ちゃん、あれなあに?」と
言い続けている親御さんの子は、
何でも親に頼って自分で行動したり考えたりしなくなったり、
メタ認知力が弱くなったりするように思います。
また、子どもの個性的な長所が弱まったり消えたりするようにも思います。


なら、どのようにして声をかけるといいのでしょう?


その子が世界にどのような関心の向け方をしているのか、

どのような視点で見ているのか、

どのような態度でいろいろなものごとに関わろうとするのか、

まず子どもが発信するものをしっかり受信して、最初のうちは、親の言葉はほんの少しでいいと思っています。



「シャワーのように言葉を聞かせないと、知能が発達しないのでは?」と心配する方もいますよね。

もちろん、子どもは親の言葉をたくさん聞きたがります。
でも、子どもが親に聞かせてもらいたがるのは、
自分の関心があることを、
上手におしゃべりできるようになるために必要な言葉です。


自分の考えていることの気を散らすようなことばかり、
山ほど耳にしたいわけではありませんよね。

大まかに分類すると、子どもたちは、

感覚が優れている子、思考が優れている子、

直観が優れている子、感情が優れている子という性格タイプによって、

親から最初にかけてもらいたいと思う言葉がちがっているように思います。

それにとらわれる必要はないけれど、参考にすると、いつも子どもの気持ちを無視していないか
気づきを得ることができますよ。

感覚が優れている子たちは、たいてい、まずどんな色でどんな形状で、どのような順序で動いているのか、
計測するように観察することから
関わり始めます。
それから、それを「やわらかい」とか「冷たい」とか「赤と青のしましま模様」など、それを形容する言葉を
話題にしたがります。

親御さんにも、そうした細かい五感で感じ取る差異を表現する言葉を使ってもらいたがります。

感覚タイプの子には、秩序だった分類を好む子と、音や光の美的センスに敏感な子がいます。

「そうしたタイプによって、自分が言いたい言葉も親に使ってほしいと思う言葉もちがってくる」と知っていると、
まず、子どもが関心を持っている話題でたくさん話をしてから、
親の言いたいこともいう……というバランスが取れてくることと思います。


直観タイプの子でしたら、動きがあって、仕組みについて表現する言葉を好む子が多いです。
理由を探求するための言葉も使ってもらいたがります。

「エレベーター、あっ開いちゃった、あっ閉まっちゃった。どうしてかな?あれぇ?」とか
「上にどんどん、上にどんどん上がったねぇ。Aちゃんが、引っぱったら、カゴが、
バイバイって上に行っちゃうね。どうしてかな?」と問いかけて、
すぐに答えを出さずに「どうしてかな?」と探求しつづけることを好みます。

思考タイプの子たちは,
いろいろやってみる前に自分で結論づけたり、仮説をたてたりするのが好きな子が多いです。


2歳くらいの子でも、このタイプの子は、「ああ、虫さん行っちゃったね。太陽があるからね、暑いよ~暑いよ~って、行ったんじゃない?あのね、虫さんはね、~~なんだよ。だからねうんぬんうんぬん~」と延々とひとりでしゃべり続けています。

会話するというより、自分の考えを説明するように話します。
見ることよりも、自分の中に浮かんでくる考えに興味を奪われているように見えます。
思考タイプの子には、自分で考えるのが好きなので、
正しい知識を与えて、考える意欲をなえさせず、
質問したり、相槌を打つときに、新しい語彙が増えるように
親御さんがいろんな言葉を使う工夫が必要だと思います。

感情タイプの子はとてもおしゃべりで会話好きです。人の気持ちを表すことばや、実体験に基づく言葉や
ごっこ遊びで役立つ言葉が好きです。

「先生がね、お菓子ちょうだいって言ったら、●ちゃんが、いやよって言って、先生がもう一回ちょうだいって言ったら、またい~や~よって言ったのよ。悲しいな~悲しいな~えーんえーんって泣いたのよ」
といった感情の動きや人と人のやりとりを含んだ話を聞きたがります。

上の例は幼い子たちへの声かけの例ですが、
もちろん少し大きな子たちにも、その子たちの性質に合わせて
言葉を選ぶと、
喜んで話に乗ってきて、懸命に頭を使って考えはじめることがよくあります。

特に、最初の言葉は子どもの関心のあることから始めるようにすると、
キラキラした眼の輝きや集中力が変わってきますよ。


★くんの話題に戻りますね。

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親御さんは大らかな子ども好きな方で、★くんとの相性はピッタリでしたが、
次々と新しい知的な刺激がほしい★くんの知的好奇心を満たしたり、
この性質の子の衝動性や飽きっぽさを
どのようにして根気よく探求していく態度に導いていったらよいのか
わからない様子でした。

★くんは、動きがあって、働きかけたことに対してフィードバックがすぐに返ってくることが好きです。

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たとえば、エレベーターに乗る時に、★くんは、
開閉ボタンを押す役をしたくてたまりません。

記号や漢字も覚えてしまって、開きたいときに、「開」のボタン押して、
閉じたいときに「閉」のボタンを押すのを覚えてしまっています。

ここで、★くんが思考タイプの子だとすると、
「だったらこういう漢字のときはどうなるの? 
だったら、こういう記号のときはどうなるんだろう?」などと、
文字とそれが表現するものの関係について、
追及することに興味を持つかもしれません。

また感覚タイプの子ですと、
「この漢字は何?」「この漢字は何?この字はくねくねしてしっぽみたいなのが
ついているね」と
漢字を見分けることに興味を持つかもしれません。

でも、★くんの言動からは、感情と直観が優れている子だと思われました。
ですから、もし親御さんが、「この子は漢字を見分けることができるんだな」と感じて、
別の漢字も次々教えていこうとしたとすると、
おそらく気もそぞろの態度が増えて、
じっくり考えることをやめてしまうことでしょう。

なぜかというと、感情と直観が優れている子というのは、
とても合理的な一面があって

「今、自分が世界に向かって働きかけたいこと」

に直接、影響を及ぼさないことを
ごたごた考えたり、知識を身につけてもしょうがないと思っているところがあるのです。

それで、親御さんが、何かというと、ついでにあれこれ教えようとすると、
うるさがって勉強嫌いになることもあります。

こうしたタイプの子は、現実的で、空気を読むのがうまく、
世界から直に最重要事項を嗅ぎ分けて いつも そこにフォーカスしているとも
言えます。

といっても、大人があれこれ教えようとすると うるさがるからといって、
放っておくと、この開閉ボタンのような知的な興味も
たちまち、おふざけの種となってしまいがちです。

電化製品のスイッチを押したり、テレビのリモコンを連打したりして、
とにかくパッパと光が点滅したり、映像が変わりさえすれば、「おもしろい」となって
終わりがちなのです。

それなら、こうした性質の子には、どのように働きかけると、
集中して考える習慣が身につくのでしょう?




感情や直観が優れている子が、エレベーターの開閉ボタンに興味を持っていた場合、
どのように働きかけると、
集中して考える習慣が身につくようになるのかという話の途中でしたね。

どちらのタイプの子も言葉であれこれ説明されるよりも、
実際、自分で触ってみて、いろいろ試した後で、考えます。

感情が優れている子は「想像力」をたくさん使って考え、

直観が優れている子は「創造力」をたくさん使って考えるな~

と感じています。

(ついでに言うと、感覚が優れている子は「観察力」と「五感で感じる力」を使って考え、

思考が優れている子は「思考力」を使って考えている姿をよく見かけます。)

子どもが感情が優れているのでしたら、見立てる道具を用意すると、
それを使って小さな劇をしたり、周囲の人にパフォーマンスしたり、ごっこ遊びに発展させたり、
会話を楽しんだりするのをよく目にします。

感情が優れている子に対する働きかけの方法を紹介しますね。

たとえば、エレベーターに興味を持ったのなら、
ティッシュの空き箱を2つ用意するだけでもいいのです。

箱と箱を離したり、ひっつけたりして、エレベーターのドアを再現するでしょう。
「エレベーターのボタンを作ろうか?」とたずねると、
「作りたい!」と工作への意欲につながるかもしれません。
工作といっても、ペットボトルのふたを、セロテープで空き箱に貼る程度で十分です。
幼児期は技術よりも、物作りに対する能動的な姿勢を育てることが最重要と感じています。

それが勉強するときの めんどくさがらずに
絵や図を描きながら解いていく姿勢にもつながります。

直観の優れている子は、直観的な「気づく」力に訴える
易しい物作りがおススメです。


たとえば、↑の写真のように
色画用紙をくりぬいただけのものでも、
背後にドアが開閉できるように紙を2枚おくと、
開いたり閉まったりするドアになりますよね。

また、ティッシュ箱2つで、エレベーターのドアに見立てて遊ぶときも、

「輪ゴムを箱と箱の間に貼り付けて、箱同士を離した後で、
手を離すとドアが閉じる」という仕掛けや、

箱と箱に磁石を貼っておいて、ピタッとドアが閉まる仕掛けなどを
つけてあげると、
いつまでもそれで遊んでいたかと思うと、さまざまな発見をしたり、
自分でもその力を利用して何か作ってみたりします。

直観の優れている子は飽きっぽく見えますが、創造力を必要とされる場面では、
とても集中力があるし、
仕掛けを理解したり、科学的な力を探求したりするときには
とても熱心です。

その子の発達段階に対して、複雑すぎる見本は、
意欲や探究心を失わせます。
「仕組みに子どもが気づくレベル」「子どもが自分でも作れそうだと感じるレベル」が最適です。

工作に漢字の開くと閉じるの字を取り入れると、
直観が優れている子たちにとって、漢字は魅力的な工作の素材やおもちゃのように感じられるようになるかもしれません。
創作活動の場に引き込まれた知識をものにするのは、
直観が優れた子にとって、とても簡単ですし、自分でも漢字をいろいろな場で使うようになると思います。

感情が優れている子は、他人にパフォーマンスをして見せるときに、漢字が有効だと納得すると
すばやく覚えてしまうはずです。
現実に自分の利益になることは、取り入れるのが上手な子らです。
一方で、心が納得しないことは、意地でも覚えようとしません。



↑ひっぱると、上がっていくエレベーターを作りました。楽しそうに遊びながら
いろいろ考えています。

感情タイプの子も、直観タイプの子も、行動が先で言葉は自分の内面から後から出てきます。
じっくり遊んで考えが整理できていくまで、あれこれ質問して、
気を散らさないことが大切です。
 

今回のユースホステルでのレッスンには、
いつも穏やかでニコニコと笑顔を絶やさない2歳の◎くんが参加していました。

◎くんは、語彙が豊富で観察力が優れている利発な子です。
お友だちと遊ぶのも上手ですし、自発的に自分でやってみようとする気持ちも強い子です。

私は最初、◎くんについて、
いつもニコニコしているものの、喜怒哀楽を表現することが少なく
言葉で説明することを好む様子から、
「内向的感覚の思考寄りの子かな?」と感じていました。

でも、長時間いっしょに過ごすうちに、◎くんが2歳児とは思えないほど想像力が豊かな子で、
物語の主人公に共感して涙を流したり、
自分に絵本の世界のヒーローを重ねて、お友だちたちを助ける役をかってでる姿などから、
「内向的感覚の感情寄りの子ではないかな?」と思うようになりました。

「どちらにしても感覚が優れている子にはまちがいなさそう」と私は思っていたのですが、
親御さんは、これまでの私の性格タイプの記事を読んで
「うちの子は感覚タイプではないな」と感じていたようです。

理由は、飽きっぽくて次々と新しいことに興味を移しやすく、
コツコツと手を使った作業に取り組むことがめったにないからだそうです。

確かに◎くんは、多くの感覚が優れている子がそうであるように
はさみでチョキチョキ切る作業をしはじめたら、
「どれだけしたら気がすむの~?」とあきれるほど切り続けたり、
小さなおもちゃの椅子に人形を乗せていくといった作業を延々とし続けることを
好む子ではありません。

でも、◎くんの周囲を観察する様子の正確や、

音や触感に対する感覚的に敏感さ(ノイズとして嫌がるのではなく美しさを感じ取る力)

感受性の高さ、

物事に取り組むときに
お手本通りにていねいにやってみようとするところ、

見ることと行動の間に独特の間合いがあるところ、

最初に口を開くときに言う言葉が,ゆったりとした観察にもとづいたものであるところ、

お友だちや親とのほどほどの関わり方
(あまり激しい感情的なやりとりを好まず、強い感情的なつながりを求めないわりにいつも親しげで友好的。
気難しい自己中心的な言動が少なく柔らかな印象がある。)

などから、私は

◎くんは、やはり感覚が優れている子で、
飽きっぽさや指先を使った作業をあまりしたがらないのには
おそらく何か理由があって、
一時期そのように見えるだけではないかな?

と感じていました。

子どもが幼いうちに「この子は○○タイプだから」と決めつけて、
偏った育て方をする必要はないし、
その子に合わせた良い方法も
マニュアルっぽい対応になったり、そればかりに偏れば問題が生じます。

「この子は直観、感覚、思考、感情のうちどれが優れている子かな?」という眼で
子どもを眺めてみる良さは、

大人の先入観や習慣的な考え方が、

子ども本来の良い面の成長を邪魔したり、抑え込んだりしているときに、

それを自然な成長の流れに戻すのに役立ちます。
子どもが、その子の持って生まれた潜在能力を最善の状態で伸ばしていくのに
役立つのです。


ユースホステルでの朝食でこんなことがありました。

朝食には、個包装の海苔がついていました。
私は海苔の袋の端をちょっと切って、なかなか破れなくて困った風にしてみせてから、
「ああ、開けるのが難しい。◎くん、開けることができる?
この海苔の袋を開けてくれる?」
とたずねました。

すると、私と海苔の袋の格闘を真剣なまなざしで観察していた◎くんは、
うれしそうにこっくりして、手を伸ばしてきました。
海苔を手渡すと、ていねいに開いてみせて、満足そうな笑みを浮かべました。


◎くんについては、親御さんから「次々、興味を移していく飽きっぽい面があります」という
お話を聞いていて、
実際、遊んでいるときにも、何に対してもあっさりとしていて、
こだわりやしつこさからほど遠い印象がありました。

その一方で、ユースホステルで過ごしている間、私が他の子に向かって、
「○○してみる?」とたずねて作業を説明しているときには、
少し離れたところで遊んでいた◎くんも必ず現れて、
「ぼくも、○○する」と取り組みはじめ、ていねいにやりとげて、最後にうまくいって、にっこりと
満面の笑顔を浮かべるまで、途中で作業を放り出すことは一度もありませんでした。

また◎くん自身に私が、「○○してみる?」とたずねたときに、
「いや」と拒絶することは一度もなくて、
いつもこれからする予定のものを真剣な目で観察しながら、
うれしそうにこっくりする様子がありました。

その後の作業の様子には、感覚が優れている子特有のゆったりした秩序のある時間の感覚と、物の扱いに対するていねいさがありました。

感覚が優れている子たちが幼稚園の年中、年長さんくらいになると、
鉱物や化学実験遊びに夢中になるのには、
こうした性質と、五感で感じ取る能力の敏感さが理由にあると感じています。

感情が優れている子たちが、「○○してみる?」とたずねられて
何かに取り組むときには、
動機は、「好奇心」と「人と関わる楽しさ」にあります。

でも、感覚が優れている子たちは、
「作業そのもの」と、自分自身の「できる技能」を向上させることに
本能的にいつも強い関心を寄せているところがあります。

◎くんも私と過ごしている間、毎回、新しい課題にに関心を寄せて、
ていねいに作業をし、最後に達成感で満面の笑みが浮かぶまで
少しも気を散らすことがありませんでした。

でも、それなら、なぜ◎くんはお家で、
「次々、興味を移していく飽きっぽい面があります」と親御さんが気にかけるような
行動をとりがちだったのでしょうか?
 
◎くんのお母さんは直観が優れている方で、◎くんを楽しい遊びに誘ったり、
遊びを新しい切り口で展開させて◎くんを喜ばせるのが上手です。

そうした◎くんのお母さんの遊び上手(遊ばせ上手?)なところは、
◎くんの知能を高めることや、遊びの柔軟さにつながっているようです。
ただ◎くんは感覚が優れているようですから、
こうして次々面白い遊びを提供してもらうと、
ちょっと依存的なお客さん状態になって、遊びについていくのに精いっぱいで、
自分から発想したり、展開させたり、じっくり取り組んだりするのには至らない様子でした。

感覚が優れている子たちは、ひとつの動作がスムーズにできるようになるまで
同じ繰り返しを好むところがあります。
また、サイズや温度や質感に対する独特の敏感さを持っていて、
それを遊びに取り入れると喜びます。

私も直観タイプなのでわかるのですが、直観が優越機能の人には、
言葉にして伝えてもらわないと、
感覚が優れている子の大事にしている上のふたつの価値がわからないというか……気づけないところがあります。
すると、子どもの方が大人に合わせて遊ぶのでいっぱいいっぱいになって、
自分の学び方がおろそかになってしまうことがあるのです。





↑の写真は感覚が優れている2歳の女の子のお人形遊びの様子です。
この女の子は、最初に、小道具入れからマックシェイクのおもちゃを見つけて、「お人形さんにあげるの」と言いました。
そこでこの子のお母さんが、この子の好みそうなピンクの羊の小さな人形を椅子に座らせたところ、
「ダメ」と言って、人形をどけました。

理由は、「ストローが(口に)とどかないから」だそうです。

その後、人形のサイズをいろいろ調節して、最後にこのあまりかわいいとはいえない
オッチャン風のパンダがストローの口部分とぴったりだったので、
女の子は手を叩いて喜んでいました。

この場面で、この女の子のお母さんがお人形ごっこがとても上手で、
人形たちが繰り広げる物語を演じてみせたとすると、
この子はこれほどまでに喜ばなかったかもしれません。
それどころか、能動的に遊びに関わるのをやめて、お母さんがするのに合わせて
ちょっと遊んで、「お人形さん、おわり」と次に興味を移してしまったかもしれないのです。

この女の子のお母さんは、子どものペースにそって、ちょうどいい具合に接しているので、
遊びがそのまま性格のタイプに合わせた
知的な探究心や集中力や根気をつけるのに役立っていました。

遊び上手のお母さんは、子どもにとって
とても魅力的です。それに、子どもに知的な良い刺激を与えてあげることもできます。
けれども、その子の性質が十分発揮できるよう配慮した上で、楽しませてあげる必要があります。

◎くんの話に戻しますね。
ユースホステルにはお父さんも参加していらっしゃったのですが、
◎くんのお父さんは感覚が優れている方のようで、◎くんと似た気質をお持ちでした。
ただ、あんまり◎くんがかわいいものですから、
ごはんつぶがほっぺたにつけば、サッと取ってやり、
片手を挙げれば、手を拭いてやり……と、まるで◎くんの黒子のように
始終お世話をし続けていました。

そんな風に大切に大切にされているせいで、
◎くんは、
何事にも意欲的で自分からしようとし、いつも明るく、
気持ちや優しくて、穏やかな良い子に育ってはいました。

一方で、失敗した経験が少なく、正確に現実を体験する機会が減って、
年齢に対してメタ認知力の育ちが弱い一面もありました。

また、手を使う体験自体が少ないために、やる気はあっても、
あまり上手に手を扱えないところがありました。

自然に接していると、感覚が優れている子は
このどちらもきちんと自分で伸ばしていくはずです。

いきなり突き放す必要はないけれど、
無意識のままに、本人ができることまですべてしてあげるのをやめて、
自分でやってみて、失敗したり困ったりするのを、見守ることが大切だと思いました。




子どもの本質的な美点に気づいて褒めると、子どもが変わる

2012-12-18 20:15:08 | 子どもの個性と学習タイプ

過去記事です。

 

シアトルの工作のワークショップでの出来事。

 

もうすぐ5歳という★くんは、内向型の控え目で繊細な性質の男の子です。

集団の場でも、最初は何もせずにずっと観察していて、

誰が何をどのようにやっているのかを把握できるまで

仲間に入ろうとはしません。

 

外向型でテキパキした性質の親御さんは、

★くんの個性を認めて愛情を込めて育てていました。

でも、「アメリカでは自分から前へ前へ出ていって自己主張しなければ、成功はありえない。

評価もしてもらえない」とおっしゃって、

どうすれば、もっと積極的に振舞えるようになるのかという

相談をいただきました。

 

わたしは内向型の子なら、まず内向型の子だからこその長所にたくさん気づく前に

「外向的に振舞うようになるにはどうすればいいのか」と考えることは、

その子の本質的なものを否定することにもつながると

感じました。

 

そこで、「内向型の子は物事をていねいに観察していたり、

内省したり、じっくり考えることが得意だったりするので、

この子はこういう気質の子として、具体的な良い面に光を当てていく方がいいのでは?」

といった話をしました。

工作のワークショップでの

★くんの工作作品は「がちゃぽん」でした。

わたしが見せたお手本から

基本のしかけのアイデアを取り入れながらも

別の素材で別の作り方で工夫して作ってありました。

「がちゃぽん」の投入口が見つからなかったので、

「箱の上の部分にカプセルを入れるための穴をあけたら?」と

★くんにたずねました。

すると★くんは、回転部分を引き出しのように引っ張って、

「こうやって入れるんだよ」と言いました。

おとなしいようでも、他人の言うままにならずに、

きちんと主張するところはしているのです。

その姿から、

「この子はおとなしくて控えめだけれど、

自分の意志や考えがはっきりしている子なんだな」と感じていました。

親御さんたちとの談話中、(滞在先の)Aさんのご主人が

園庭で子どもたちを見てくれていました。

後から、Aさんのご主人からこんな話をうかがいました。

 

遊んでいるうちに、数名の男の子たちが叩き合いをはじめたそうです。

けんかを止めに入ると、

「あの子が最初に手をだした」「あの子が最初に叩いた」「あの子が……」

とそれぞれの子がてんでバラバラのことを口々に言ったのだとか。

 

どの子も好き勝手なでたらめを言うので

困ったご主人は、

けんかの一部始終をジャングルジムの上からずっと

眺めていた★くんを呼んで、

本当はどんなことがあったのかたずねました。

 

すると★くんは、「最初に○○がこんなことをして、次に○○がこうやりかえして、

その後に○○がこういうことをした」

と細かいところまでていねいに説明したそうです。

 

するとそれまで、適当なことばかり言っていた子らが、

「ぜーんぶ、★くんの言うとおりだった!」と意見がビシッと一致したそうなのです。

 

「最初から最後までちゃんと見ているな~」と感心すると、

★くんは急に自信に満ちた態度で

他の子らに混じって遊びだしたそうです。

 

★くんは、内向的で慎重で控え目な本来の性質のままで

褒められたからこそ、

自信に満ちた態度で遊び始めたのだと思いました。

★くんは来たときよりもいきいきとした明るい表情で帰っていきました。

 

練習してできるようになったこととは別に

「これはわたし」という部分について褒められると

本当にうれしいものです。

それは大人だって同じです。

 

わたしもシアトルに来て、思いがけないところで詩を褒めていただくことがあって、

他のどんなことを褒めていただいたときより

うれしい気持ちを味わいました。

 

日々の雑事に追われて自分が詩を書くことがすきだったことすら

忘れかけていたのに、そうして自分の詩について

感想をいただくと、

心の底から元気や自信が湧いてくる思いがしたのです。

 


大好きなことばかり、ずっと続けてきた♪ (恐竜の解剖図)

2012-11-30 18:25:44 | 子どもの個性と学習タイプ

今日は、半年前に東京に引越していった小学2年生の◆くん、4歳の●くん

兄弟が教室に来てくれました。

お兄ちゃんの◆くんは、3歳の頃から引っ越す前月まで、毎月、虹色教室に来てくれていました。

弟の●くんも、生まれてまもない時期からお兄ちゃんといっしょに教室に来てくれていました。

ですから東京に行っても、ずっと「虹色教室に行きたい」と言い続けてくれていたそう‥‥‥。

 

お父さんの用事のついでに、

教室にも顔を出してくれることになりました。

 

「久しぶりに虹色で何をしたい?」とお母さんにたずねられた◆くんは、

「恐竜の解剖図が作りたい。前になおみ先生と作ったみたいなやつ」と言ったそうです。

 

そういえば2年ほど前、◆くんと図鑑を見ながら解剖図を作ったことがあったのです。

↑の左がかつての解剖図。

当時は◆くんが恐竜の絵を全て描いて、内蔵部分を作る時は、

わたしも少し手伝いました。

が、2年生になった◆くんは、材料だけ用意してあげると、

最初から最後まで

自分で作っていました。

 

 

 

↑◆くんが幼稚園の頃から作り続けている

恐竜の図鑑。

これまで何百枚、何千枚と絵を描いてきているので、

見本も見ずにさらさらと恐竜や世界地図を描いていきます。

◆くんは好きなことをずっと続けるうちに、

恐竜のことだけでなく、世界地図、体の内部の名前や仕組み、歴史、動物の生態など

それはさまざまなことを深く理解しています。

算数もとても得意です。

それに気持ちが優しく遊び上手なので、同年代の子からも、

年上の子や年下の子らからも好かれています。

 

こんな◆くんも、幼稚園時代は、「自分の好きなことはやりたいけど、好きじゃないことはしたくない」

と言い張って、「わがままな子にならないか」「お勉強ぎらいないならないか」

とお母さんをやきもきさせていた時期もありました。

 

◆くんのお母さんは、「大好きなことばかり、ずっと続けさせてきたけれど、それだけでいいんだなって

最近思うようになりました。好きなことを思う存分させることで、

他に何もしなくても何でもよくできるようになっています」

とうれしそうにおっしゃっていました。

↑今日は4歳になった●くんも恐竜の解剖図を作っていました。

下のイラストは●くんが描いた恐竜です。

 

今日のレッスンには、恐竜好きの5歳の男の子も参加してくれました。

 

3人でゲームをしたり、ストローでUFOキャッチャーのおもちゃを作ったりして

遊びました。

算数の学習にも3人とも集中してしっかり取り組むことができました。