虹色教室通信

遊びや工作を通して 子どもを伸ばす方法を紹介します。

キュボロを購入したかった方へ

2017-11-30 11:05:11 | 積み木  ピタゴラスイッチ

藤井聡太4段が遊んでいたおもちゃとして、

キュボロという立方体のビー玉転がしのおもちゃが人気です。

玉の道をイメージしながら遊ぶうち、自然に、数学的・幾何学的な感覚や

理論的な思考が育まれる優れもののおもちゃです。

クリスマスプレゼントとして購入を考えているけれど、予約待ちの状態で

簡単に手に入らないという話も聞きます。

 

教室でもキュボロに似た内部を玉が動く積み木はとても人気があります。

でも、キュボロはとても高価なので、遊び込めるほど数をそろえるのは

難しいのが現状です。

それに、気に入ったからと簡単に買い足すわけにもいきません。

それにおもちゃというものは、やっぱりおもちゃであるという限界があって、

子どもにとって

自分がつくりだしたものほどの魅力はないのです。

 

そこで、キュボロのように

見えない通路に玉を移動させるワクワクを満喫できる

遊びを紹介します。」

 

【見えない玉の道遊び】

 <材料>

色画用紙2枚 とアルミハク少々。

はさみ、ペン、テープを用意。


<作り方>

紙の両端の2つの辺をだいたい1cmずつ折ります。

アルミハクを丸めて小さな玉を作り、紙の上に乗せて転がしてみます。


子どもが折っていない面から玉が転がり落ちることに気づいたら、

いっしょに残りの2つの辺を1㎝くらいずつ折ります。

 

折りかさなった部分の折り目のひとつに切り込みを入れてテープでとめると、

下の写真のように箱の形ができます。

この技術は単純なものですが、多くの子どもたちを魅了します。


これが玉の道のベースです。

穴を開けると穴から玉が落ちます。

 細長い紙の長い方の両端の辺を折ると、落ちた玉が通る通路ができることは、

子どもにすると、不思議でわくわくすることのようです。

玉はどこからでてくるかな?

 紙をじゃばらに折ると、玉を飛ばす道具ができるのですが、

子どもはこうした自分でできる技術を使ったしかけがとにかく大好きです。

子どもの熱中、ほこらしそうな顔、目の輝き、次につながる意欲、

難易度の高いことに挑戦しようとする前向きな気持ちが生まれることなどが

それを語っています。

10円かそこらの紙を使って、

高価な積み木と変わらないしかけをどんどん作っていきます。

 

玉の道の発展のさせ方は次回にでも書きますね。


ケンカの仲裁 (トラックの取りあいの後で)

2017-11-29 21:15:27 | 0~2歳児のレッスン ベビーの発達

ひとつしかないものの物の取り合いが起こると

「それなら、作ろうか?」とたずねるのが虹色教室のお約束となっています。

幼い頃から通っている子らは、友だちがおもちゃの取り合いを始めると、

「そんなの作ればいいじゃん!作った方が面白いよ」と仲を取り持つ子らもいます。

 

先日、子鉄くんたちのレッスンで、教室の佐川急便のトラックの取り合い勃発。

 

そこで、友だちのトラックを欲しがってかんしゃくを起こしかけている子に

「そのトラック作る?」とたずねると、すなおにうなずきました。

 

適当にあるもので。

 

アルミ箔の空き箱にプリンターのインクの空き箱を貼り付けたらできあがり。

アルミ箔の箱は刃の部分をはずし、後ろを両開きの扉にしています。

箱の底に輪ゴムを貼り付けているので、ブロックの車に簡単に装着できます。

 

このトラック、見栄えは悪いけれど、とても魅力的な使い道がありました。

 

教室にあるNゲージの新幹線がきれいに収まるのです。

新幹線輸送トラックです。

この日、トラックの取り合いを遠巻きに眺めていた2歳の○くんのお母さんから

こんなコメントをいただきました。

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電車の乗れるトラックのドアがお家で早速つくってみらた大ヒットでした。

虹色教室で、★くんの作っていたトラックなのに、

「せんせいのところでそうちゃんつくったねぇーー」と自分が作ったことに

なっていました。

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物の取り合いのけんかとも

トラック作りとも関係なかった(その場に居ただけ)の○くんですが、

○くんの記憶では自分が作ったこととして、いい思い出になっていたようです。


早期教育の弊害はなぜ起こるのか? 子どもの育ちを見ていて感じること

2017-11-29 21:13:31 | 幼児教育の基本

早期教育の弊害はちらほら耳にするけれど、

いったい何がどのように問題なのかよくわからないという方は

たくさんおられるかもしれません。

ずいぶん前に、徳島大学の佐野勝徳教授が、公文式から依頼されて、

幼児期に難しい計算や漢字を教えるような早期教育を受けた子たちについて

公文と共同研究した話を目にしたことがあります。

子どもたちのその後を追跡調査したところ、結果は、超優秀児たちですら

よくなかったそうです。

弊害が起こる理由は、一つひとつの発達段階を十分経ないままに、

次の段階でできるようになることを身につけてしまうことによるようです

ハイハイを十分する前に歩きだすとよく転倒するし、たくさんおしゃべりする前に

文字を覚えると、話し言葉にしかない自由な発想が育ちにくいという問題に

つながるという話でした。

 

虹色教室で幼い子たちと接していると、一つひとつの発達段階を十分経ないままに、

次の段階に向かわせることがいかに無意味か、

子どもにとって自分の内部にプログラミングされている課題がどれほど大切なものか、

目の当たりにすることが多々あります。

一つひとつが子どもの知能と身体の成長にとっての基礎工事、

土台作りといった重要なもので、いい加減に手を抜いて次に進むわけにはいかないことは、

子どもの無我夢中に取り組む様子とやり終えた時の満足そうな表情から伝わってきます。

 

子どもにより多くの知識をインプットし市販の教材を先へ先へと進ませようとする

早期教育的な関わり方は、子どもが、自分にとってもっとも大切な「今の課題」に

取り組むのを邪魔しがちです。

子どもの内部の要請がないままに、外からできるようにさせることで、

内部の要請が薄らいだり、なくなってしまったりするのをよく見かけます。

そうした要請があっても、親御さんがその重要性に気づかずにスルーしてしまうことも

よくあります。

 

  

↑の写真は3歳になったばかりの子が好む工作の様子です。

うさぎに帽子を作っているのですが、「帽子」という一般的なイメージに基づいて

作るのではなく、サイズと数に敏感なこの時期の子ならではの作り方です。

こうした作り方は、この前段階の、工作というより「ただ切りまくっている」だけ、

「ただ書きなぐっている」だけ、「ただ貼りまくっている」だけという

歩く前のハイハイのような状態を十分経た子が次に夢中になる活動です。

  

紙にえんぴつで切り取る線を入れて、線に沿ってはさみで切り取ってから

耳をくるんでテープで貼ります。

こうした一連の動作で、うさぎの靴も作っていました。

 

この時期の子にとって、 「紙にえんぴつで切り取る線を入れる」という作業は、

ままごとで大人がフライパンの中身をかき混ぜる真似をするのと同様、

大人の作業を模倣しただけで、それ自体に意味があるわけではなく、

線を入れているわりには、うさぎの耳の形と関連がありません。

 

でも、こうした作業は、4歳を過ぎた子たちが、必要に応じた下書きの線を入れる

意味のある活動の土台となります。

 

耳をくるむように帽子を作る作業は、2歳ちょっとの子たちが、

一つひとつがちょうど収まるような場所に、物を置いていこうとする仕事や、

ひとつの人形にひとつの食べ物を配ったり、ふとんをかけたりする作業の流れを

くんでいます。

また一歳の子の1対1対応に気づく活動は、一歳代の時、穴があると繰り返し

何かを突っ込みたがる活動を十分やりきった後で、強く現れるのをよく見ます。

 

わたしが最近あまり話題にのぼることがない早期教育の弊害について記事にしようと

思ったのは、いくつかのきっかけがあります。

そのひとつは、教室の年中のAくんのお母さんから聞いたこんな話です。

 

Aくんはよく、お母さんやお友だち相手に、

「どうして猫は屋根から落ちても大丈夫なんやと思う?」とか

「どうして猫は夜に目が見えるんやと思う?」「どうしてフクロウは……?」とたずねて、

「それはこうなんじゃないか?」「ああなんじゃないか」と持論を展開するのが

好きな子です。普段から身に回りにあるあれやこれやに疑問を抱いて、

「どうしてだろう?」とああでもないこうでもないと考え事をするのを

楽しんでいる姿があります。

 

本などで即席に詰め込んだ知識ではなく、自分の内面の「不思議だな」と思う気持ちを

動機にして、「こうなのかな?」「ああなのかな?」と自分の思考する力を総動員して

考えを練っているので、Aちゃんの「どうして○○なんやと思う?」という問いかけには、

同年代のお友だちの「どうしてだろう?」という思いに火をつける力があるようです。

「こうやからとちがう?」「でもそうやったら怪我するやん」

「そうしたらこうかな?」とめいめいが自分の考えを口にするものの、

 子どもたちの「こうだからじゃないかな?」は、たいてい間違っていますから、

「それなら、もしこうだったらどうなるの?」とつっこみを入れると、また一から、

「それは、こうかな?」「ああかな?」とその理由について考えを練り直すことになります。

 

今のAくんは、これまでの経験と知っていることを素材に

これは不思議だと心に引っかかるものを見つけてみたり、

論理的な意見を組み立ててみたり、想像力を膨らませてみたり、

自己流の仮説を立ててみたり、持論のおかしな点を指摘されてそれを修正してみたり、

必死で誰かを説得してみたり、答えが定まらないままに考え続けたりする楽しみに

どっぷりつかっていたいようです。

 

でも、実際には現在の子どもを取り巻く環境は、子どもがそうして

自分の頭を試運転してみる機会を許す余裕がないのが気にかかります。

 

先日も、ある子ども施設でAくんがお母さん相手に

「これはどうしてかな?こうなのかな?ああなのかな?」と自分で考えることを

楽しんでいると、それを聞きつけたボランティアの方が飛んできて、

「これはこういう理由なのよ。これはこうなのよ」と即座に正しい知識を

教え始めたそうです。こうした子ども向けの施設はもちろん、他の場所でも、

子どもが何か疑問を口にしようものなら、

すぐさま正しい答えを教えてあげなければならないと急く大人が多いことに

Aくんのお母さんは戸惑っておられました。

 

というのも、Aくんのお母さんは、Aくんが自分の頭の中であれこれ考える過程を

心から楽しんでいることをよく理解しているからです。

そしてAくんのお母さん自身、子どもの頃に、自分であれこれ考えをめぐらせた時の

心地いい記憶を持っているからです。

 

この話は、

「子ども向けの施設のボランティアがどのように子どもに接するべきか」といった

上っ面だけの問題に注目してもしょうがないことのように思いました。

社会全体が……学校も園も「子どものため」と整えられる環境も物も……どこか、

先の記事で書いたような早期教育的な色合いがあるのを感じるのです。

早期教育的という言葉に語弊があるとすると、

「子どもが自分自身の頭を使ってみること、自分の心で感じること」を

想定していないというか、

子どもが環境や人とゆっくり会話するのを助けるのではなく、自分の頭を使う前に

知識や技術をインプットしてしまうよう努めるというか……。

 

Aくんのお母さんの話をうかがって、わたしも自分自身が子ども時代に

さまざまなことに思いをめぐらせて、

自分で考える喜びに浸っていたことを思い出しました。

その考える筋道は、たとえ稚拙なものであっても、自分でたどるからこそ意味が

ありました。そんな話を書いたことがあったな……と思って過去記事を探していたら、

こんなものが見つかりました。

この記事で5歳だった☆くんは、もう小学6年生。

国語の読解問題が得意なしっかりさんに成長して

います。将来、科学者になる夢を抱いているそうです。

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もうすぐ5歳になる☆くんが、積み木を組み立てながら、

「宇宙ってどうやってできたの?」とたずねてきました。

ちょうど☆くんのお母さんから、レッスンに通って来る途中で、☆くんが、

「太陽って宇宙でできたんだよね~?地球は宇宙にあるから…(なんとかかんとか)」と

自問自答していたというお話を聞いていた日でした。

☆くんと私のお付き合いは3年目で、

☆くんがバナナを「なまま~」、卵を「ままご~」と呼んでいたころから知っています。

だから☆くんの疑問が、

宇宙の法則性を知識として知りたい外向的な思考から発せられたものでなく、

宇宙の中の自分の位置をつかもうとしたり、存在の意味を問うような…

哲学寄りの内向的な思考から生じていることがよくわかりました。

それで、すぐに答を教えるのでなく、そうした疑問を抱く☆くんの成長を

大切に見守っていく…という対応をしています。

こうした子に良い対応は、科学館に連れて行ってあげ、

本人の想像力が自由に膨らむままにしてあげたり、☆くんの話をよく聞きながら、

疑問を言葉にして詳しく表現できるように支援したり、

☆くんの興味を刺激するささやかな体験を増やしてあげることだと思います。

読書の習慣がつくように、環境を整えてあげるのも大事でしょう。

性急に大人が動くと、心を傷つけてしまう場合があります。

☆くんは、ゆっくり自分の考えを温めたいのです。

こうした疑問を抱く子は、外の環境への興味が薄い子が多く、生活習慣を覚えたり、

幼稚園に適応したりすることが難しい子もよくいます。

そうした時に、適応させることに力を入れすぎたり、

本人の中から生まれる疑問を無視した教育を押し付けると、

良いところが見えなくなったり、消えてしまったりするようです。

うちの息子も、この内向的思考の中にどっぷりつかっていたいタイプだったので、

幼い頃は他の子より遅れている面は大いに目をつむってきました。

信じてあげること。静かなその子の自由になる時間をたっぷり用意してあげること。

他の子と比べないこと…

が、自分の中から生じる疑問を追及していくこのタイプの子の成長に

欠かせないことだと思います。

 

「宇宙はどうやって生まれたの?」とたずねる☆くんに、

どう答えたらいいのか…もう少し補足しますね。こうした質問をする子は、

環境に敏感で知的好奇心が強い外向的な思考をする子と

自分の主観を通して世界を深く理解しようとする内向的な思考をする子の

2タイプがあると思います。

知識欲が旺盛な前者の子には、図鑑などを見ながら正確な知識を伝えてあげたり

さらに学習として発展する手助けをしてあげると良いと思います。

しかし、後者の内向的思考を好む子に、周囲が前者の子と同じ対応をすると、

心を傷つけてしまう場合があります。こうしたタイプの子は、知識が得たいのではなくて、

自分で考えたいのであって、考える行為そのものを愛しています。

たとえ行き着いた答が、客観的事実と異なるものでも、

自分で納得する答を求めているのです。

私も子ども時代、内向的な思考にどっぷりつかっているのが好きだったので、

どういう答がこうしたタイプの子を納得させるのかよくわかります。

私は幼稚園くらいのころ、「太陽はいったい誰のものなのだろう?」という疑問を

持ちました。それで毎日長い時間をかけてそれを考え続け、

さまざまなものを観察したあげく行き着いた結論は、

「太陽は私のものだ」という答えでした。

これはそのまま当時のつたない表現力で大人に伝えれば、笑われるか、

「誰のものでもありません」と事実を突きつけられるかのどちらかです。

しかし、私の「太陽は私のものだ」という考えには、

当時の私の思考や環境の全てが折りたたまれて含まれており、

今思い出しても面白いものがあるのです。

なぜ、私がそうした結論にいたったか…というと、

私はこの「太陽はいったいだれのものか?」を考えている時に、

この世界の自分以外のだれひとりとして、

今の私と同じ「時」と「場」を共有することはできないという事実を悟ったのです。

だから、地球上のあるスペースを占めている何時何分何秒という「時」の上に立つ自分が

その目を通して「見えている世界」というのは、私のものではないだろうか…?

と考えていたわけです。そういう考えにいたるまで、自分が見る世界は、

自分が目を閉じていても同じだとだれが証明するのだろう?

私が死んでも、世界は同じなのだろうか…?

というどこまでもどこまでも続く考えごとが連なっていたのです。

ですから、もし、当時の私に向かって、

「太陽なんて誰のものでもありません。なんてバカなことを考えるの?」と笑ったり、

事実を教えようと躍起になる人がいたとしたら、私は自分のカラに閉じこもるか、

自分を否定して考えるのをやめてしまったことでしょう。

うちの息子も、小学生の時に、「宇宙はアメーバーのようなものかな?」

という問いかけをしてきたことがあります。

宇宙を自己増殖するものとしてイメージしていた息子の考えは、

今さらに発展して深いものとなっているように感じます。

こうした内向的な思考を好む子は、実生活の面で幼く見えるので、

その言葉や考えが、大人によって簡単に決め付けられたり笑い話にされているのを

よく見かけます。

子どもの個性や性格のタイプについて理解のある親御さんや先生が増えることを

願っています。 

 

熊本でのレッスンの様子を記事にしていただきました。

2017-11-28 22:26:15 | 日々思うこと 雑感

↑ 空中に浮かぶUFO(左)と太陽系(右)です。

 

熊本での1泊2日のレッスンの講師として

毎年招いていただいています。

今年のレッスンの様子を

虹色教室奈緒美先生のレッスン2017

で紹介してくださっています。

興味のある方はどうぞのぞいてみてくださいね。

 

 


虹色教室文庫のふろく付きの雑誌

2017-11-27 22:45:12 | 虹色文庫出版局

小学2年生のAくんが、虹色教室文庫に加えるために、ふろく付きの雑誌を

作ってきてくれました。

最近のAくんのブームは展開図です。

 

下の写真はAくんのレッスンのひとこま。

「展開図を描いて、半透明の新幹線が作りたい」と言っていました。

曲線のある展開図は初めてで、とても難しかったようです。

苦労して完成した新幹線です。磁石をつけて連結できるようにしていました。

線路にはびっしりとクリップが貼り付けてありました。


次々と気持ちが移りやすい子、自分からやりたがらない子 と 工作をするには?3

2017-11-26 22:50:59 | それぞれの子の個性と才能に寄りそう

 はさみで切ったりテープで貼ったり色を塗ったりすることを、

自分から進んでやりたがるようになるには、

「自分でやりたい!」という気持ちが高まるそうした作業に対して敏感な時期に

やりたいと思うだけたっぷりやりきるのが大事です。

でも、そうした敏感期を過ぎてしまったら……?と心配になるかもしれません。

確かに、アレとコレと限定してしまうと、やりたがる時期を過ぎると

極端に自発的に取り組もうとする姿勢がなくなってしまうものもあります。

でも、子どもって、その時期その時期でやり残したことがあっても、

次の時期に別の形で、やり残したことを補おうとする姿があります。

 

Aくんにしても、切ったり貼ったりする作業は、すぐに飽きてしまうようでしたが、

「風船用の空気入れで水風船を膨らませる」といった作業は、

「この風船、全部、全部、膨らませたい!」と言うほど熱心でした。

水風船を空気入れで膨らませるのは、風船が飛んで行かないように指でしっかり押さえ

ながら、押したり引いたりする力も集中力もいる作業です。

それを何個もチャレンジしようとするのですから、

それをやりきることは、Aくんの心にとっても身体にとってもとても重要なことなのだと

思いました。

 

子どもが、自分から物事にしっかり関わるように成長していくか、

ひとつのことにじっくり関わる力が育たないままになるかは、

こうしたちょっとした子どもの姿への気づきとのつながりが大きいです。

 

「自分から物事にしっかり関わるように成長していく」ように関わるには、

そうした「たくさんたくさん挑戦したい、限界までチャレンジしたい」という姿を

目にした時に、風船を膨らます道具なども、本人にとって気持ちよく扱えるような

サイズを用意してあげることや、大人がその子のがんばりに強い興味を寄せることが

重要です。がんばりを応援し、注意深く扱えていることや、途中であきらめずに

努力していることを褒め、認めることです。

子どもが、がんばっている自分に喜んでいる時に、いっしょに喜びあって、

「○○ちゃんなら、はさみで切ることもテープで貼ることもきっと

上手にできるはず」と励ますことです。

 

ただ、そうした時に多くの親御さんは、

後者の「ひとつのことにじっくり関わる力が育たないまま」に

なるような対応をしがちです。

 

次回に続きます。


次々と気持ちが移りやすい子、自分からやりたがらない子 と 工作をするには? 2

2017-11-24 23:35:34 | 工作 ワークショップ

何度も何度も呼びかけたり、手を変え品を変え誘いかけても

子どもがこちらが提示するものに乗ってこない時、

大人は「いったいどうすればいいの?」と強いジレンマを感じるか、

「無理にやらせることはないのでは?」と働きかけること自体を諦めてしまいがち

なのではないでしょうか。

 

Aくんのお祖母ちゃんは、誘いに乗らないAくんに対して、

優しく根気よく諭しつづけていましたが、誘えば誘うほど頑なになるAくんに、

どう対応したらいいのかわからないようでした。

 

そんな時に、どんな言葉をかけたら、Aくんが乗り気になって取り組みだすのか……

といえば、そんな魔法のようなひとことは、おそらくないはずです。その場面には。

 

でも、レッスン中の別の場面では、

Aくんの意欲に変化をもたらす魔法の種(?)をまくのにピッタリの機会がいくつも

見いだされました。

 

Aくんは、大人が誘う活動には見向きもしないものの、自分が面白いと思う活動は

非常に熱心に繰り返そうとするし、あれこれ試してみようとしていました。

上の写真のようなガムマシーンを作り方を見せていた時、

ビー玉や星やハートの形の透明小物を入れてみて、穴を通るかどうか試してみました。

「穴の中に入れてみる」ということは、Aくんの強い興味をそそるようで、

底に穴を開けた紙コップの穴に大量のビー玉を入れから、

紙コップを持ち上げて、ザーッとそれが周囲に広がって行く様を

眺めるのも面白がっていました。

 

ストローにサイズの異なるストローを通して、動かすことにも関心がありました。

 

気になったのは、そのようにAくんが自ら強い関心を抱いて、

心がひとつのことに集中している姿に対して、お祖母ちゃんが、

「家でもこんなふうにちょっと貼ったり、ちょっと何かして、その後は、

それでずっと遊んでいるんです」と、おっしゃっていたことです。

 

それは確かにそのように見えるし、実際、ほとんどの親御さんが、

「工作に取り組む時間の短さ」という点にだけ焦点を合わせて

解釈してしまうような場面ではありました。

 

でも、Aくんが大人の誘いかけに極端なほど無関心なことを思うと、

本当は、大人の方が、こうしたAくんが面白がっていることに対して、

強い関心を寄せる必要を感じました。そうして同じひとつのことに好奇心を向けあって、

あれこれ試したりおしゃべりしたりする楽しさを味わうのです。

また、Aくんの活動は、工作とはいいがたいものですが、

実験としては、「こうしたらどうかな?」「ああしたらどうかな?」

「こうだったから、こうなったのかな?」

「ビー玉がザーッとなだれのように広がるように、大きなコップに入るだけビー玉を

入れてみようよ」などと、アイデアを出したり、推測したり、

原因と結果について話しあったりする機会を含んでいるものでした。

 

太めのストローを貼って、傾きを変えて、物を滑らせてみることにも

関心がありました。

 

コップにビーズを詰める作業を面白がっていたので、

何種類かエレベーターを上げ下げする方法を見せました。

 

ストローを使った巻き上げ式エレベーター。

車で引っ張る形で挙げるエレベーター。

車を斜面に置いて、滑らせてあげるエレベーターなど。

 

紙コップを一方にひもでつないで、

ビー玉の数で上がったり下がったりするエレベーター。

まだ、そうした仕組みへの関心はあまりありませんでしたが、

お家で楽しむと喜ぶのではないかと思いました。

 

あと少しだけ続きます。


次々と気持ちが移りやすい子、自分からやりたがらない子 と 工作をするには? 1

2017-11-24 23:05:07 | 工作 ワークショップ

親子向けの工作講座に、

出産間際のお母さんの代わりに4歳のお孫さん(Aくんとします)と

一緒に遠方から来てくださった方がいました。

工作に誘っても自分からしようとしないので、どのように誘ってモチベーションを

上げたらいいのかアドバイスを求められました。

 

Aくんは好奇心旺盛で頭の回転が速いおしゃべりさん。直感が優れている子のようです。

「花火」という言葉を耳にすると、即座にストローを放射線状に置いてみて、

「ほら、花火だよ」と言ったり、ストローとストローの間が

バランスよく均等になるように調整したり、

「風船を3つちょうだい」「それって、こういうことか」と自分が関わっていることに

的確なコメントをする姿がありました。

そのように意識がしゃんとした利発な子である一方で、

次から次へと興味が新しいことに移りやすく、一つのことにしっかり関われなかったり、

自分の興味は追うけれど、他者の誘いはいっさい無視したりする一面もありました。

 

「やりたい!」といった口の下から、別の何かをはじめているので、

おしゃべりする力はしっかりしているのに、連続した会話が成り立たないほどです。

ひとこと発する間に、新しいものに手を出しているのです。

 

Aくんが、ひとつの活動に集中できないのには、いくつかの理由が考えられました。

 

自分が「これはできる」と認識している活動のレパートリーが少ない。


Aくんは「花火みたい」「○○みたい」「これ○○だよ」と、

上手に見立てて平面上に物を配置してみるのは進んでやっていましたが、

自分が思いついたことだし、最初は非常に強い興味を抱いているように見えたことでも、

セロテープを貼るとか、はさみで切るといった作業を目にすると、

たちまちやる気が消失するようでした。

「花火」と言いながらストローを置いていた時も、

ストローをセロテープで貼る段になると、興味は次に移っていて、

促されてめんどくさそうに1、2枚テープを貼るのがやっとでした。

最初の興味はどこへやら、

「やって~」と大人に頼んで、できあがっていく過程を見守ることもしませんでした。

 

たいていの子が「自分で!」「ぼくが!」「わたしにやらせて!」と

手を出したがるような活動への無関心さが目立ちました。

Aくんには、器用さを伸ばす意味でも、自立心や意志力を育む意味でも、

工作のように、実際に手を使ってする取り組みが大事になってきます。

 

といっても、誘ってもやりたがらないのですから、どうすればいいのか戸惑いますよね。

 

「どうすればいいのか」のヒントは、この日のAくんの姿とお祖母ちゃんの関わりの中に

いくつかありました。

先に……Aくんが、「やって~」と大人に頼んで、できあがっていく過程を見守ることも

しませんでした……と書きました。

本来、大人に「やって~」と頼んで、自分は見ているだけ……という態度は

感心できるものではないかもしれません。

でも、もし、それすらしないほど、気持ちが次から次へと新しいものに移っているなら、

話は別です。

何かひとつに決めて、集中するには、Aくんが大人に頼ったり期待したりする気持ちを

育むことも、重要になってきます。


自分が興味を持った時にゆったり対応してもらうことで育つ

「相手に期待する気持ち」を育む必要性


大人が道具を使う姿をよく見ていると、子どもは自分も使ってみたくなるし、

どのように扱えばいいかもわかってきます。

子どもの興味に応える形で、道具を使ってみせると、

自分の好きなおもちゃを作ってもらう過程や自分のアイデアの実現を手伝ってもらう過程を

ワクワクしながら見守るようになります。

 

でも、そうは言っても、「ちゃんと見なさい」と呼んでも、知らんふりして、

別のおもちゃに手を出す子に、強制的に叱って見せるわけにもいかないし……と

悩んでしまうかもしれません。

Aくんにしても、お祖母ちゃんが、

「Aくん、Aくん、先生が呼んでいるよ」「先生のお話を聞きなさい」と

優しく声をかけている間は、意地でも誘いに乗らないぞという態度でした。

 

Aくんのそうした頑なな態度にやきもきするお母さんの姿が目に浮かぶようでした。

 

話を引っぱりますが、具体的な対応は次回に続きます。


クリスマスプレゼントに <ギアを使って遊ぶブロック>

2017-11-24 22:57:09 | 虹色教室の教具 おもちゃ

クリスマスやお正月が近いので、この商品についてお探しの方が多いようです。

 

教室の子が持ってきたギアや滑車がたくさん入っているレゴのセットが面白かったので

購入しました。

2000円ほどのおもちゃですが、品質はすばらしいです。

『Lego Crazy Action Contraptions

 

幼児や小学校低学年の子には、、

パーツの違いがわかるように「区分けできるケースに分類すること」と

「見本の写真やイラストの上にパーツを重ねたら、それが何番のパーツであるか

わかるシート」を作ってあげると、自分でできる作業が増えました。

 

 

「上から見た図」「横から見た図」の見方をていねいに教えます。

ギアのあるブロックを扱う時は、どれからはめるかの順番が

とても大切になってきます。

子どもに、図を見ながら、どれから先にはめるといいと思うか推理させ、

実際にやってみて、何度も失敗してみるのがいいと思います。


宇宙空間を作って遊びました。

2017-11-23 22:41:40 | 通常レッスン

小1のAくんと年中の妹のBちゃんといっしょに

教室を宇宙空間風に飾って遊びました。

宇宙好きの兄妹です。

100円ショップのクリスマスツリーの星の飾り物を切り取って、

夜光テープを貼りました。

好きな星座の星の数だけ夜光テープを貼った星を作り、

星座カードを3倍くらいに拡大した星座を作りました。

AくんもBちゃんも大満足。

 

Aくんの算数の様子です。

死ぬまでピラミッドというゲームで遊んだあとで、ピラミッドの一番上段から

1段ずつ最小のサイズの三角形の個数を数えていきました。

「4ずつ増えているよ」と気づいたAくん。

そこで、いちいち数えるのではなく、□段目の三角形の数を計算で求めることにしました。

「11段目は?」

「13段目は?」といった質問に、

Aくんは、4がいくつ分増えるか考えてきちんと答えていました。