虹色教室通信

遊びや工作を通して 子どもを伸ばす方法を紹介します。

遊べない子は、遊びに必要な技術を習得していない

2020-02-25 21:06:35 | 日々思うこと 雑感

また過去記事のアップで申し訳ないのですが、

その前に先日、小さい集まりをして、(コロナへの心配から、ぎりぎりまで

するかどうか迷っていて、

室内の消毒や体調などにかなり気を使った集まりになりました)

ちょっと感動した出来事があるので紹介しますね。

お母さんがトイレに入っている間、二歳後半の男の子と洗面所で待っていた時のこと。

ちょうど手にしていた材料でペットボトルの水鉄砲を作ってあげました。

二か所に穴を開けて、それぞれの穴にストローを通すとできあがりという一分工作です。

この工作の魅力は、ペットボトルが透明なところにあるんです。

「息を吹き入れると、空気で

水が押されてもう一方のストローから水が出てくる」という

子どもをワクワクさせるしかけが外から見えるのです。

おまけに二歳の子にとって、ふーっと息を吹くことは

「自分でできる」し、できた時に、心底、「できた!」という

満足感を味あわせてくれるものでもあります。

 

この二歳の男の子がストローに息を吹き入れると、

無事、ちゃんと水が出てきました。その瞬間の表情というのが、

喜んではしゃぐとか、うれしそうにするというのを超えて、

ものすごく大きな仕事をやり遂げた!という感じの

凛としたお腹の底から感動を味わっている顔でした。

 

その後、洗面所にあらわれたお母さんに

水鉄砲で水が出るところを披露してから、

「年長のお兄ちゃんにもこれを見せてあげよう」という

流れになりました。

お兄ちゃんがいる部屋までは長い廊下を通っていかなければなりません。

それに水鉄砲に入っている水は、揺れるとストローからあふれ出そうになるのです。

ですから二歳の子にすると、水鉄砲を自分の手で持ってその距離を移動することは

本当に大変なことでした。

でもその子があんまり真剣で、

水が出ないようにストローの先を手で押さえてみたり、

ひっくり返さないように慎重に慎重に歩いたり、

そのくせ、お兄ちゃんに見せたい一心で目がキラキラ輝いていて、

心が高ぶって前のめりになって進んでいる様子が伝わってくるので、

手だしせずに、そっと寄り添ってついていきました。

廊下を歩きながら、小さな子の大きな本気を眺めていると、

子どもの頃読んだ、さまざまな絵本や童話の山場シーンが浮かんできましたよ。

ようやく着いた先で、お兄ちゃんと他の年上の子どもたちが

水鉄砲を見て、わっと集まってきました。

みんな大興奮で洗面所に向かいました。

まるで二歳の子の真剣な思いが他の子らにも移ったかのようで

興味深かったです。

 

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「子どもは遊びの天才」なんて言われますが、

実際には、遊ぶのが苦手な子、遊び方が不器用な子がたくさんいるんじゃないかな?と

思います。

 

子どもたちが心の底から楽しそうに真剣に遊び込むことができるようになるには、

いくつか体得していかなければならない

技術のようなものがあると感じています。

 

遊ぶのに技術を体得しなくちゃならないなんて

おかしなことを言うように聞こえるかもしれませんね。

でもやっぱりいると思うんですよ。上手に遊ぶためのワザ!

 

目新しいおもちゃをちょっと触ってはうろうろするだけだったり、

 

遊び方の説明を聞いて、ちょっとうまくいかなくても何度か試してみるほどに

ひとつの物に根気よくつきあうエネルギーが乏しかったり、

 

遊びがワンパターンだったり、

幼なかったり、

依存的だったり、

友だちとふざけたり物を取り合ったりするばかりで遊びが発展しなかったりする子っていますよね。

 

そうした遊び方は性格や能力に起因しているように思われがちです。

もちろん、それらの影響も大きいはずです。

 

でも、それとは別に、

「遊びに必要な技術を持っているかどうか」というのも

遊びの質と密接に関わっているのではないでしょうか。

 

では、「遊びに必要な技術」って、どんなものなのでしょう?

 

★  まず最初に大事なのは、「何かとしっかり関わっていける力」をつけることかもしれません。

ひとつの遊びに愛着を抱いて、ひとつの活動を通して、

「面白いな、楽しいな」という気持ちを持続していくことができるようになることです。

 

★ 遊びというのは、おもちゃがあって、それをいじってさえいれば

発展していくわけではありません。

楽しく遊ぶには、「いろんな形で想像力を使ってみる」という

実際に自分の頭と心を使って遊んだ体験が必要です。

遊びの世界で自分の頭を使えるようになっておかないと、

おもちゃがあるから、遊具があるから、楽しめるわけではないのです。

子どもは、自然に、物を何かに見立ててみたり、ごっこ遊びに興じたりするものですが、

大人の接し方やおもちゃが子どもの想像力を枯らせてしまったり、奪ってしまったりすることも

よくあることです。

また、もともと想像力に弱さがあって、ていねいに育んでもらわないと、

自分から使おうとしない子もいるのです。

 

環境と大人の役割は大きいです。

 

 
 
★ 想像力だけでなく、思考力を遊びの中で活かしていく方法を習得すれば、
遊びはどんどん魅力的なものに発展していきます。
 
 
それでは、写真のブロック遊びをしている子どもたちを例に挙げて、
これまで書いてきたことを具体的に説明させてくださいね。
 
5歳と3歳の子たち、5人の遊びの風景です。
 
ひとりの男の子が電車のおもちゃを出してきて、ただ前後に動かしたり、好きな電車を集めたりして
遊んでいました。
遊んでいました……といっても、電車をいじっているだけなので、
それほど面白そうでじゃないのですが、飽きると新しいおもちゃを探しに行って
お気に入りに加えることで、本人の中では遊びが成り立っているようでした。
 
お家で、そうした遊びを遊びと思っている子がたくさんいます。
 
おもちゃをしばらくいじっていると、「片付けなさい」とお母さんに言われ、
片付けると、次のおもちゃが出したくなり、
出してきて触っているうちに、次の「片付けさい」という指示が来るということを
エンドレスに繰り返すうちに、「遊び」という活動が、「赤ちゃん時期の見て触って満足」という
段階から、少しも発展していない子がたくさんいるのです。
電車のおもちゃを出してきて、ただ前後に動かしたり、好きな電車を集めたりして
遊んでいた子に、「ブロックを使って、その電車の駅や線路を作らない?」と誘うと、
少しとまどった顔をしながらうなずきました。
 
そこで、「ほら、前に、長い長い道路を作ったことがあるわね。どんどん板をつないでいって」と言うと、
横でそのやりとりを聞いていた子が、パッと顔を輝かせて、
「あぁ、前にやった。もっといっぱい板がいる。もっともっと長くなくちゃ」と言いながら、
ブロックの板を並べだしました。
 

↑と↓は前にブロック用の板を並べた時の写真です。

↑ こんな風に道路を作って遊んだ楽しい体験を思い出したようです。

わたしが列車を走らせるためにブロックを横につないでいく見本を見せると、他で遊んでいた子らも

集まってきて、長い線路を作り始めました。

 

こうして手を使ってする作業に没頭し始めると、子どもの態度は素直で落ち着いたものになっていき、

同時に頭の中はいきいきと活発に動きだすようで、

意欲的でよく練られた考えや言葉が出てくるようになります。

 

線路をつなぎ終えたとたん、Nゲージを走らせてみてから、

「そっちとこっちとで発車したら衝突しちゃうよ。

こっちの線路は、こっちからあっちに行って、あっちに着いたら

戻ってくるようにして、

あっちの線路は、あっちからこっちに行って、戻ってくるようにしたら?」と

言う子がいました。

すると別の子は自分の好きなように走らせたかったようです。

線路に1台だけ走らせるのでは嫌らしいのです。

 

そのため何度かNゲージが衝突することになり、言い合いになりかけたものの、

「それなら、連結したら?」という意見が出て、問題が解決しました。

Nゲージをどんどん(セロテープで)連結すると、長い1台の列車になるので、

1台ずつを行き来させているのと同じになったのです。

 

そうして遊び出すと、ここが終点、こうやって切符を買って……とごっこ遊びを広げる子、

駅で電車に乗る人が住んでいるお家を作ってストーリーを膨らませる子などが出てきて、

遊びが広がっていきました。

 

遊びって、ある程度、「ああ疲れた」「やるだけやった」というところまで

自分の身体なり、頭なりを使いきらないと、

楽しさが湧いてこないものなのです。

その「やるだけやった」は、その時期その時期の子が

やっているうちにどんどん楽しくなっていって、「もうちょっともうちょっと」と

自分の限界までやり遂げないと気がすまなくなっちゃうような活動であること、

五感にとって気持ちいいこと、目で見て満足できるものであることが大事です。

 

だからといって、わざわざこういうおもちゃを買いそろえなくちゃいけないということはなく、

お家にあるもので十分だと思います。

 

今回の「つないでつないで長く長くしていく」という活動は、

子どもにとって楽しくて達成感のある活動のひとつですが、

ブロックの板がなくても、下の写真のように「柵だよ」と言いながら

ブロックを置いていくだけでも、子どもにしたらさまざまな想像力を

掻き立ててくれりものなのです。

 

↑の写真の作品を作った子は、教室の端から端まで柵を付けた後で、おもむろに立ちあがると、

しみじみと自分の作り上げた作品を眺めながら、

「どうして、こんなにすごいのが作れちゃったんだろう?」とつぶやきました。

置いていくだけ、並べていくだけ、囲むだけでも、道路ができ、線路ができ、工事現場ができ、公園ができます。

そうした作業に熱中するうちに、想像力がいきいきと働き始めます。

 

「新しいおもちゃを出して、ちょっと触ってはお終い」という遊び方をしていたら、

自分の想像力を使うところまで行きつかないのです。

 

そうして想像力を働かせて遊んでいると、次には、

「上から電車を眺める駅を作りたいな」「これは特急で、こっちは回送で……」

「こういう風にしたい」「ああいう風にしたい」と

今度は思考力を働かせて、遊び始めます。

↑ 電車をくぐらせようとしたら、人形がトンネルの屋根にあたってしまうから

トンネルを高く作り直しました。

どんどんどんどん線路を長くしていく遊びから、

「地下鉄が上の駅のところに登って行くようにしたい」という願望が生まれ、

苦労してだんだん高くなっていく高架を作りました。

 

どんどんつないでいく楽しみも、お城のなわばり図を作るという意味を意識しながら作ることで、

昔の人の知恵への関心が高まり、自分たちもあれこれ知恵を絞って遊びこむことができました。

↑通ろうとすると、橋が崩れる仕掛け。

どんどん並べて、どんどん乗せているうちに、いろいろな物語が生まれていました。

どんどんどんどんつないでつないで……に熱中していると、こんな素敵な街になった

こともあります。

 

夢中になって遊ぶには、簡単にすぐできて、何度も繰り返したくなるような作業を

思い存分やることができる環境が大事だと思います。

公園でする砂遊びでも、お花を絞って作る色水遊びでも、何でもいいのです。

そうした身体を使って集中する活動を洗練させていきながら、

それがごっこ遊びにつながっていって、

想像力をたっぷり使う機会が生まれるようにサポートしてあげることが大事だと思っています。

また思考力を使って

次々生まれてくる願望を言葉にしたり、それを達成したり、問題を解決したりする楽しさを

たくさん体験させてあげるのも

とても大切な身近な大人の役目だと考えています。

 

 

 

 

算数を学ぶ手動機械

2020-02-22 22:03:21 | 年中、年長

算数のレッスン中、子どもたちと自動販売機作りをすることがあります。

これがいろいろな年齢の子の算数の力を高めてくれる上、

作るのも遊ぶのも楽しいんです。

 

他にもさまざまな機械を作っているのでまたの

機会に紹介しますね。

 

<おつり暗算自動販売機です>

コイン3枚(100円2枚、500円1枚を段ボールなどで作ります。)

おつりのお金は口で言い、カードにチャージしてもらいます。

機械っぽくしゃべると面白いです。

カードは手のひらなどでカードのふりをしてもいいし、紙をカード風に切って

作るのもいいです。

 

遊び方

100円を投入して70円のボタンを押すと、

子どもに「おつりは30円です。カードをおつりの部分にタッチしてください。

おつりの30円をチャージします」と言ってもらうというしかけです。

 

200円投入したり、500円投入したりと

自然にレベルアップがねらえる上、チャージ式なので、

コインを増やさなくても遊べます。

 

 

↓の機械は1年生のAちゃんが作ってきてくれたものです。

年小の弟くんが自動販売機を作ってきたので、

自分用の大きな金額の機械を作ってきてくれました。

 

おみくじもついいています。


小2の子どもたちと暗算が得意になる手遊び

2020-02-19 19:18:56 | 算数

小学2年生の子たちとこんな手遊びをしました。

指2本でチョキを作って、「半分に分けるといくつずつ?」と

問います。「1」という答え。

次に、指3本で、「半分に分けるといくつずつ?」とたずねて、

「1.5ずつだよ」と教えます。

それからは、指4本、指5本と増やしていって

「半分に分けるといくつずつ?」とたずねていきます。

小数は初めてという子ばかりでしたが、

すぐに理解して、「9を半分に分けるといくつずつ?」とたずねたら

「4.5」と答え、「11を半分に分けるといくつずつ?」とたずねたら

「5.5」と答えていました。

 

こうやってどんどん大きな数の半分にチャレンジします。(二人分の指を全て使い終えた

後は、言葉だけで半分クイズを)

 

この記事は虹色オンライン算数教室のおまけブログでもアップしています。

(おまけブログとは、虹色オンライン算数教室を購入いただいた方に見ていただける鍵付きブログです。見ていただく方法については、こちらの記事で書いています。)

おまけブログには、この遊びをもう少し発展させる方法も

紹介しているのでよかったら見てくださいね。


100円グッズ 算数調査 と くりあがりの計算

2020-02-16 23:21:50 | 算数

 

小1のAちゃんが、100円ショップの六倍に膨らむ恐竜

のおもちゃを、「本当に六倍に膨らむの?」と調査してくれました。

その結果!!

六倍には膨らまず、だいたい五倍くらいのサイズに膨らんだそうです。

この調査のおかげで、「何倍」という概念に興味を持つ子が続出。

100円グッズのうさんくささに子どもたちはワクワクしています。

 

<おまけ>

年中のBくんの算数レッスン。

10たす6は?と問うと、16とすぐ答えます。

でも、

9たす6は?とたずねると、

10の方のケースから1つ取り出し、「うーん」と悩んでいます。

「んん……15?」とくびをひねりながら答えて正解しました。

大人気の金のトランプも使って、10+4と9+4、

10+3と9+3、を順番に置いてみて、くりあがりを計算を学びました。

Bくん、ちょっとわかってきた模様です。

 


「先生、やって!」から、自ら進んで行動し、よく考える姿へ

2020-02-11 22:31:47 | 年中、年長

ちょっとなつかしい過去記事を。

記事にした年中グループの子たちは今はみな一年生になって

自分で積極的に物事に取り組むようになりました。

「やって!」と甘えていた子たちは、複雑な物作りの過程を

ていねいに最後までやりとげたり、算数で高い能力を発揮するように

成長してきました。

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年中になると、年少の頃に比べて、

できることも思考力もグンと伸びる一方で、

「あれれ?こんなにしっかりしている子が?」と思う子が、

十分にこなせる簡単な課題を、「先生やって!」と頼る姿もよく見かけます。

年中児の子らにありがちな「先生やって!」は、甘えて言っているわけでも、

めんどくさがって言っているわけでもなく、

この時期特有の完璧主義に由来することが多いです。

はさみで切るならはみ出さないようまっすぐ切れるか、鉛筆で書くなら

お手本通りきれいに書くことができるかが気になって、「できない」「やって!」に

つながるのです。

 

できるけれど「先生、やって!」を連発する子と関わる時は、

「自分でしなさい」とつっぱねるのでも、

「やってあげるわ」と簡単に引き受けるのでもない

心の葛藤につきあいながら、関わり方を微調整しながら、

自分でやっていく作業を励ましていくことが大事です。

子どもが「やって!」という時、不器用さから「やって!」と言っているのか、

急に他者の目や自分自身で自分のしていることを評価するようになったため

不安にとらわれているのか、

手伝ってもらうことで、より大きな目標を成し遂げようとしているのか、など

「やって」の背後にあるものを理解してから、

対応するようにします。

年中頃の「やって」は、それまでできていたことについて

やってほしがるものなので、

ただ甘えたり、怠けたりしているようにも見えるので、

心を傷つけるような声かけをしてしまう親御さんもいます。

でも、それは完璧主義に陥ってできない状態にある子には、

一番よくない対応だと思っています。

 

その子なら充分できるということを、

「できない。お母さん、やって!」と言う時、

これが正解というひとつの対応があるわけではなくて、

「自分でできるよ、やってごらん」と、本人がしはじめるまで待つのがいい時も

あるし、少し進むごとに、

「上手にできているよ。」「大丈夫、よくできている」と励ましていくのが

いい時もあるし、大雑把な完璧とはいえない手本や、

大人が手間取りながらゆっくり作業する様子を見せるのがいい時もあります。

また、時には、「やって」という言葉をそのまま受け止めて、してあげるのがいい

場合だってあるでしょう。

「完璧にやりたい気持ち」と「できないかもしれない不安」の間で揺れる気持ちを

理解している限り、どう関わろうと、

さほど気にしなくていいのだと思います。

 

完璧にできないかもしれない不安から

「やって」と頼る子への対応というと、

どうしても、「子どもが自分でするように仕向けること」がゴールとして

設定されて、

見守る大人の気持ちは、どんな声かけをしたらいいのかというところの

向かいがちです。

 

でも、「やって!」への対応は、それを自分でやるかどうか

ということとは全然別のところにたくさん答えが広がっている

感じています。

 

つい最近、年中のの女の子たちが、手作りのカートに貼る絵柄について、

「線がぐらぐらしてゆがんじゃうから切れない。先生して!」

「上手に切れないから先生切って!」と頼んできた出来事がありました。

その日、Aちゃんが、「ユースでお友だちが持っていたプリキュアの

コロコロがついたカバンが作りたい」と言い、他のふたりもそれに乗り、

スーツケースを作ることになりました。

それぞれが検索で出した画像から好きな絵を選んで印刷し、切り抜く運びになった

時、BちゃんとCちゃんが、「先生、やって!」と不安気な

声をあげたのです。

 

 

 

虹色教室に使っている部屋は、

もともと駐車場にしていたスペースをリフォームして作った部屋で、

外に面したところがガラス張りになっています。

そのため部屋の電気を消しても、ロールスクリーン越しに光が

差し込んで、部屋は明るいままです。

 

教室ではよく影絵遊びや光の実験をするのですが、

本格的に室内に暗闇を作る際には、外のシャッターを下ろすようにしています。

 

この日のレッスンでは、

子どもたちと「教室の中に宇宙を作ろう」と約束していたので

ライト類やセロファンなどを準備していたのですが、当日になって

子どもたちはスーツケース作りに熱中しはじめて、

「先生、後で、宇宙にしようね」

「先生、色水作って光らせるのしたいから、

プリキュアのやつ作ったらそれする」とわたしがシャッターを下ろす約束を

忘れないよう念押ししていました。

 

スーツケースを作り終えて、いざ、シャッターを下ろす段になって、

子どもたちが口々に、

「シャッターおろすのやらせて!」「わたしもしたい!」

「棒、かして、わたしも!!」と言いました。

 

金属の長い棒を高く掲げてシャッターの突起に引っ掛けて、引き下ろす作業は、

背の低い子どもには危険な作業です。

そこで、ひとりひとりに厳しく注意をうながした上で、

(事故を防ぐため、棒が顔に倒れないよう棒の横で支えています)

シャッターを下ろさせることになりました。

すると、どの子も、こちらの注意をていねいに聞き取って、

真剣な面持ちで重い金属の棒を扱う作業をやり遂げました。

 

最初から最後まで集中力をとぎらせず、一生懸命、

重い棒を扱う姿を見ながら、

少し前には、はさみでまっすぐ切るだけのことを

「やって!きれいにできないからやって!」と言っていたけれど、

実際、切りはじめたら、真剣な面持ちで、自分のしている作業を

逐一チェックしながらしていた姿が浮かびました。

 

また、懐中電灯に電池をセットする際も、

「先生、どちらの向きに入れたらいいの?これであっているの?」と

入れ方にも注意しながら作業していた様子が浮かびました。

 

できるのにすぐに「やって!」と頼るように、

大人の目には「悪いこと」と映る場面に遭遇した時、

即座にそれに対する対応だけに注意を向けるのではなく、

もう少し大きな視野でそれを眺め直してみると、

思っていたものとは真逆の肯定的な側面

見えてくることはよくあります。

 

子どもの中で今、成長しようとしている新たな可能性の芽が、

まだ慣れない環境でバランスが悪い状態のまま顔をだしている、

そう感じます。

「そんなことで?と感じる場面で尻込みする姿」と

「行動することだけでなく、行動する内容の質を気にかけるようなった姿」が、

表と裏、合わせてひとつのセットとなっているような年中さんたち

を目にして、年少までの姿との違いを思いました。

 

シャッターの棒を下ろす作業は、年少の子たちもやりたがります。

でも、たいていは、危なっかしく棒をふらふらさせて突起に引っ掛けた挙句、

グーッと力を込めて棒を下に引く段になると、力が抜けて、

「もういい」とこちらに仕事を預けてしまうことでしょう。

また、電池を交換するにしても、年少までの子は、

プラス極、マイナス極なんておかまいなしに、

とにかく電池を押し込んでおしまい、となりがちです。

 

それが、年中児となると、している作業にに心が伴ってきます。

やってることの意味を理解したり、うまくいかない原因を

推理したり、自分が何を期待されているのか、

自分はどんな風にやり遂げたいのか、意識したりしています。

とはいえ、そうした気持ちは、身近な大人に認めてもらい、

言葉にしてもらわないことには、

そうした思いが自分の中で渦まいていることすら気づけない時期でもあります。

こんなことがありました。

スーツケースの取っ手の作り方を教えると、

Bちゃんがいいことを思いつきました。

スーツケースの取っ手は引っ張ると長くなるし、

押さえると短くなるので、取っ手をストローに通すと、

伸びたり縮んだりするというのです。

Bちゃんの指示通りにストロー2本をつなげて作った取っ手を太めのストローに

通すと、伸び縮みするようになりましたが、

引っ張るとストローが抜けてしまいます。

セロテープのストッパーをつけることを提案すると、

それを見ていた子どもたちが、感心した様子で、

「長くしても取れないね」と言いました。

 

子どもたちと工作する時、いつも感じるのですが、

どんなにささやかなアイデアでも、発見でも、

子どもが自ら気づいたことは、他の何ものにも代えられないやる気のもとで

あり、もっともっと自分で考え、自分の手で取り組んでいこう

とする態度の起爆剤です。

 

年中の子たちというのは、「自分が気にしているポイント」については、

こうしたい、ああしたい、これは違う、こんな風になっている、

こことここはいっしょ、など、それは細かく言いたいことがあるものです。

思いが複雑になった分、自分の手にあまることも

やりたくて、うまくできない自分に

不安を覚えたり、イライラしたりしています。

 

伸び縮みする取っ手を作ったBちゃんは、今度は、スーツケースの側面にも

取っ手がつけたかったのです。

でも、困ったことが起きました。

上下の伸び縮み、右左の伸び縮みの取っ手を

スーツケースの背面に貼り付けると、ストローとストローが交差して重なり合って、

不格好な上、動かなくなるのです。

そこで、側面の取っ手は穴を開けて内側に貼ってはどうか?とたずねると、

とてもうれしそうでした。

こんな風に大人が解決した方法も、「そうか、そんなやり方があるのか」と響くのが

この時期の子ですが、手出しや何かを学ばせる働きかけは、全体の1、2割にして、

作業の面でも、方法を考える面でも、

ほとんど自分でやり遂げたという満足が残るように気をつけています。

 

下の写真は、スーツケースの内部の様子です。側面の取っ手が

スーツケースの中で伸び縮みするようになっています。

 

今回の話題は、年中児を中心に書いているのですが、

どの年代の子も、「あれれ?困ったな」と映る気になるところと

表と裏で一体となっている「この年齢ならではの新しい魅力や可能性

の芽」があるのを感じます。

対応はというと、「あれれ?困ったな」に大人が足をすくわれずに、

対になっているこれから育っていく肯定的な側面に

じっくりていねいにつきあっていると、いつの間にか、

最初に目にした否定的な面は、影をひそめてしまいます。

 

たとえば、年長児のそれは、

「やりたいことがないよ」「そんなのつまんない」という

めんどくさそうな態度です。

年中までは、それが何であれ、「やりたい!」「やらせて!」

と飛びついていたことに対して、「そんなのやったって面白くないもん」

「どうせ作ったってお母さんが捨てちゃう」

「あんまり大きいもの作ったら、持って帰ったらダメって言われるよ。

うちのお母さんは、これくらい(ティッシュ箱くらいを手で作り)じゃないと

だめっていうと思う」「どうせ~じゃない?」なんて生意気な言葉を

つぶやくようになります。

 

倦怠感を帯びたこうした年長児の姿と対になっているのは、

「急に全体像が見えてきた」「先が読めるようになって、やった後のことまで

見えてきた」という自分のしていることをメタな視点でとらえだした

兆しがあります。

 


まるで強盗が入ったような……

2020-02-07 20:52:47 | 日々思うこと 雑感

書きたいことがたまっているのに

なかなかブログの更新ができずにいます。

大工さんに棚を作っていただいてから、そこに教室のものを

入れていく作業をしていたのですが、

とりあえず一通りおさまった……というところで、

棚にニスを塗ることにし、

入れたものをとりだして↓の惨状です。

まるで強盗が入ったかのよう。

 

ニスが乾いてから

せっせと本、ゲーム類、工作道具、実験道具、積み木などを棚にもどしていきました。

床一面を埋めていた物、物、物がそれぞれの物のサイズに作っていただいた

棚に収まっていきました。よくまあ、これほどたくさんの物があるものと

呆れるほどの量でしたが、何だか、すっきり。

ちょっとした驚きです。

 

↓もう一方の壁。

明日はレッスンの後で親しい友人の家に遊びに行く予定です。

こうしたバタバタした生活が一段落したら、

またがんばってブログを更新していきたいです。


2020年のカレンダー 

2020-02-03 11:06:17 | 日々思うこと 雑感

今日、幼児期から教室にききてくれていて、

虹色教室を卒業した後も時々教室に遊びに来てくれていた

★くんから、「第一志望の逗子開成に合格しました❗️」と

いううれしいコメントをいただいたんです。

「受験期間中、大変すぎて嫌になってしまう事はあったものの、

★は算数が好きでした。

★の算数好きは、虹色教室のお陰です。」

という★くんのお母さんの

言葉がとてもありがたかったです。

 

話は変わって、

教室のAくんとBちゃんのきょうだいが2020年のカレンダーを

作ってきてくれました。

本当にていねいに描かれていて、

感動しました。

 

1月

 

2月

3月

4月

 

 

5月

6月

7月

8月

9月

10月

11月

12月

 

2月

 

3月

 

4月

5月

 

6月

7月

 

8月

 

9月

 

10月

 

11月

12月