大田区は、8つの団体を外郭団体と定義しています。
その中の5つの団体については、法律で経営状況を議会に報告することが義務付けられていて、毎年第二回定例会に議会に報告しています。 それは、これら外郭団体が大田区の財政に大きな影響を及ぼす可能性があるからです。
ところが、議会には「報告」すればよく、たとえ、そこに大きな問題があったとしても、議会はこれを意見を言ったり否決したりすることはできません。
それだけに、議会はこの外郭団体の報告を読み、しっかりと問題点を指摘しなければならないと言えます。
ですから、大田区議会第二回定例会のもっとも重要な作業のひとつが、この外郭団体の経営状況の点検だと言えます。
【大田区土地開発公社】
大田区土地開発公社は、年間50億円を限度として議会が一つ一つの土地の購入について、その適否を議論し議決しなくても土地を買えるしくみになっています。
【各公益財団法人】
各公益財団法人は「公益」という名前がついているために、官の役割を担う民間といったイメージがありますが、
公益とは
・活動が求められている
・受益の機会が開かれている
であり、
『対象が特定又は少数であっても、その活動が求められ』『受益の機会が開かれていれば』「公益」と認められます。
逆に言えば、『公益』であっても、必ずしも大田区という行政が行うべき事業では無いものもあるということです。
【株式会社大田まちづくり公社】
一方、株式会社まちづくり公社は、株式会社ですから、株主利益最優先に経済活動を行います。
大田区と、それ以外に鉄道事業者や土木建設事業者などとともに出資している株式会社です。大田区とそれ以外の出資者とでは、利害が必ずしも一致しない部分もあり、大田区民の利益をどのように確保するかが重大な課題となります。
公社という名前はついていますが、国の全額出資によって設立される特殊法人、日本電信電話公社や日本専売公社、日本郵政公社でもなく、地方自治体が設立した公共事業を行う特殊法人土地開発公社、住宅供給公社でも、また、公益社団法人の略でもありません。
これらの外郭団体は、行政がやることができないことができてしまう組織です。
逆に見れば、外郭団体は、大田区ではできない、公平性や公共性に欠ける事業に税金投入する隠れみのになってしまう危険性をもっているとも言えます。
それぞれの、第三セクターは、大田区が大田区のために設立した機関ですが、いつの時も必ずしも大田区民の利害と100%一致するとは限りません。
それだけに、活動における事前も含めた住民の代表である議会への十分な説明や報告が求められるわけです。
平成22年の第二回定例会での議案質疑の際に、私が第三セクターの透明性の確保についてうかがったところ、「外郭団体の透明性の確保ということは出資者としても大変大切なところでございますので、引き続き指導、監督を行ってまいりたいと思っているところでございます。」と答弁しています。
【透明性の確保の現状】
■公益財団法人大田区産業振興協会
しかし、たとえば、昨今、海外との連携事業が目立つ産業振興協会ですがスイスヴォ―州と締結した協定書は、原語で締結していて未だに日本語の協定書さえありません。区長には、仮訳で説明したと聞いていますがそれも公表できないそうです。
産業政策と言いますが、イベントや海外出展が増えています。
これらに伴い、職員が海外へ言っているという話しも聞きます。
議員の海外視察が問題になっていますが、二年ぶりに大田区に戻ったら、これに限らず、税金で海外や地方に行く機会は以前に比べ増えていて驚きました。
厳密に考えれば、グローバル化による国内産業の空洞化が、大田区の中小企業の危機を招いているわけですが、一方で、積極的に海外進出を促しているのがこの産業振興協会です。
結果として大田区内の雇用を無くし、受発注は減ることになる構図です。
民間事業者であれば、企業の生き残りをかけた経営戦略の一つのみちではありますが、区民全体の利益を求める大田区が補助金を出してどこまで行うべき事業なのか、考える時期に来ているのではないでしょうか。
■株式会社大田まちづくり公社
昨年大幅に定款を変更し名前もかわった旧蒲田開発、株式会社大田まちづくり公社は、定款の目的の部分が大幅に変わったにもかかわらず事前に議会には一切説明されず、事後報告ですませています。
今回、担当に確認したら、以前に私が調査した時の大田区の出資割合56.67%が60%に変わっていました。(資本金1500万円)
議会の議事録にはどこにも載っていませんでしたから、議会への報告無く出資割合を変えた可能性があります。
いったん大田区と共同出資で会社を設立してしまえば、あとは、第三セクターの好きな通りに事業目的や出資割合さえ議会の報告なく自由に変えさせているとなると、経営内容も心配になります。
特に、まちづくりは、官の権限がおおきくものを言う分野でもあります。再開発、区画整理事業、鉄道、道路整備等々、どれも、官の権限により、地権者や事業者など一部の利害関係者の発意により莫大な税負担、利用負担を伴う事業です。
定款を変えたことにより、新しい目的の第一番に入った「公共と民間の連携・共同によるまちづくりの中間支援業務」は、官の権限を使い、民間利害関係者が公共のまちづくりにかかわろうというのが大田まちづくり公社株式会社の新たな一番の目的であるということを意味しています。
こうした、背景を考えれば、これら、外郭団体の透明性や議会への事前の説明は欠かせないはずですが、大田区は、真摯にこれに取り組む姿勢がありません。
確かに、公益財団法人や株式会社大田まちづくり公社から仕事をもらったり、補助金をうけて活動する方たちから見れば、「いいこと」をしていることになるのでしょう。
しかし、一部の利害関係者以外の、多くの区民にとっても、それが良いかどうかをチェックするのが議会の責務です。
出資者として、これら外郭団体に資金提供し、あるいは、その活動を認めることが更なる税負担を容認することになる大田区ですから、外郭団体の経営を積極的に公開し、議会や区民の理解を得る努力を今以上にすべきです。
大田区外郭団体改革プラン
大田区外郭団体改革プラン平成23年度の取組状況(PDF:72KB)
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